最終更新:
rglc85tj8h 2023年06月01日(木) 09:49:27履歴
▼動画「中国空降兵部队列装某型轮式装甲车」部隊配備された新型空挺装輪装甲車(12.7mm重機関銃搭載型)に関する報道
▼動画「深化练兵备战加快转型建设空降兵新型轮式装甲车跨昼夜强化训练」演習に参加する新型空挺装輪装甲車(30mm機関砲搭載型)を確認できる。
▼2018年の珠海航空ショーで展示された空挺装輪装甲車。これが上の新型空挺装輪装甲車(30mm機関砲搭載型)に直接繋がる車輛となる。(執筆者撮影)
■性能緒元(12.7mm重機関銃搭載型)
重量 | 6〜7トン |
全長 | |
全幅 | |
全高 | |
エンジン | |
最高速度 | |
浮航速度 | |
航続距離 | |
武装 | 88式12.7mmmm重機関銃×1 |
4連装発煙弾発射機×2 | |
装甲 | 均質圧延装甲 |
搭乗員 | 3+4〜5名 |
新型空挺装輪装甲車は、2019年に中国空軍の空降兵部隊に配備が開始されたことが確認された装輪装甲車[1]。制式名称はまだ明らかになっていない。
車輛の形状から、中国北方工業公司(NORINCO)が開発したVN-3やQL-550といった4×4装輪装甲車との関連性が指摘されている[1]
【性能】
新型空挺装輪装甲車の重量は6〜7t程度と見積もられている[2]。同車の構造は、避弾経始を意識して楔型に前方に突き出したフロント部に動力系統を収納し、その後方に操縦手席と車長席を左右に分離する形で設けている。座席を分離したのは動力系統との兼ね合いで、車体前方の中心線上にラジエーターと空気取入れグリルを並べた配置のため、それを避ける形で座席分離を余儀なくされた[1]。これはQL-550装輪装甲車と共通した特徴であり、同車との技術的関連性をうかがわせるものとなっている。座席配置は、左側が車長席で右側が操縦手席。車長席上部には全周旋回可能な車長用サイトが設けられている[2]。
近年の戦闘車両にとって不可欠な装備である情報関連機材も充実しており、各種の指揮管制システムやデータリンク/デジタル通信システムを装備しており、それらのシステムは統合作戦において重要な役割を果たすことになる[3]。また、新型空挺装輪装甲車自体が前線における自走式デジタルネットワークの中継ポイントとしての役割を果たすことで下車戦闘中の歩兵部隊を情報面でも下支えすることになる[3]。
車体は均質圧延鋼板装甲で構成されており、防御能力は空挺降下を前提とした軽量化が優先されていることから全周からの7.62mm機関銃弾に対する抗湛性を有する程度と見られている[2]。輸出向けの空挺装輪装甲車は付加装甲を装着して防御力を強化しているので、新型空挺装輪装甲車も必要に応じて付加装甲を装着する可能性も指摘されている[2]。
車体中央部は兵装搭載区画となっており、88式12.7mm重機関銃をピントルマウント方式で搭載したタイプと、30mm機関砲を装備した一人用砲塔を搭載したタイプが存在する。車体後部は兵員室となっており乗車歩兵が搭乗する。
固有の乗員は、車長、操縦手、射手の3名[2]。それに加えて乗車歩兵4名を車体後部の兵員室に搭乗させる[2]。これは新型空挺装輪装甲車と同じく空降兵部隊に配備されている03式空挺装輪装甲車と同じ組み合わせとなっている。乗員は、車体側面に装備された2組の横開き式ドアと、車体後部の横開き式ハッチを用いて乗降する。後部ドアとハッチ、車体後部側面にはそれぞれガンポートが設けられており、外部視認窓を利用して乗車戦闘が可能。
車体上面には、操縦手席と車長席にそれぞれハッチが用意されており、兵員室上部の大型ハッチを開口して搭乗歩兵が肩打ち式対空ミサイルを発射する様子も確認されている[1]。
新型空挺装輪装甲車は、Y-9輸送機(運輸9)に3輌を搭載して空中投下させることが出来る[2]。装輪車特有の高い路上走行性能を生かして迅速な展開を行う能力を備えているので、降下後の展開能力では装軌式の03式空挺装輪装甲車よりも高いものを有している。新型空挺装輪装甲車は水上浮航性能を有しており、車体後部には水上航行時に用いるスクリューを二基装備している。
【武装】
前述したように、新型空挺装輪装甲車には二種類の固定武装を装備したタイプが確認されている。
最初に部隊配備されたのは12.7mm重機関銃を搭載したタイプであった。これは88式12.7mm重機関銃をピントルマウント式に搭載したもので、射手はハッチから身を乗り出して射撃を行う必要があり、身を護る防盾についても前方のみをカバーする小ぶりなものであることから、射手の安全性は十分と言えるものではなかった[1]。これは武装の強化よりも兵員搭載数確保を優先したための措置と思われる。副武装として、4連装発煙弾発射機×2を機関銃手ハッチの左右に搭載している。
新型空挺装輪装甲車のもう一つのバリエーションが30mm機関砲を搭載した一人用砲塔を搭載した武装強化型。こちらは2018年の珠海航空ショーで実車の展示が行われていた車両で、後に中国軍での配備が確認された。
砲塔はGCTWMと呼ばれるNORINCOが開発したモジュール砲塔で、86式歩兵戦闘車の近代化改修型や、03式空挺歩兵戦闘車など各種車両に搭載されている。コンパクトな砲塔に、30mm機関砲と7.62mm機関銃を同軸で装備した上に、HJ-73C/D対戦車ミサイルによる対戦車戦闘も可能であり、新型空挺装輪装甲車に歩兵戦闘車並みの攻撃力を持たせることに成功している。
なお、03式空挺歩兵戦闘車の場合は軽量化のため同軸機関銃を5.8mm機関銃に変更しているとの話もあるが、新型空挺装輪装甲車の機関銃の口径は現時点では不明。副武装である発煙弾発射機については、GCTWM砲塔の両側面にそれぞれ3連装発射機×1を装着している。
空降兵部隊では、12.7mm重機関銃搭載型を装甲兵員輸送車的に、GCTWM砲塔搭載型を歩兵戦闘車的に運用し、両者を組み合わせることで相互の利点を十分に発揮させることを意図しているものと見られている[2]。
【派生型】
新型空挺装輪装甲車は、上記二種類のほかに、12.7mm重機関銃搭載型にアンテナを増設したタイプも確認されており、これは通信車輛もしくは装甲偵察車型ではないかと推測されている[2]。
空軍空降兵では降下後は通常の徒歩歩兵となってしまう状況の改善に努めており、部隊の「全機械化」を目標として、CSK-002型空挺突撃車( 「猛士」四輪駆動車の空挺部隊向け改造車)、「山猫」全地形車、LYT-2021戦闘バギーといったソフトスキン車両を装備した「自動車化部隊化」、さらに03式空挺装輪装甲車の配備により「機械化空降団(連隊に相当)化」も推進されていたが、全部隊を「機械化空降団」化するには至っていなかった[2][3]。この状況において、空軍空降兵においても諸科連合部隊である合成旅への改組が進むにつれて、部隊の機械化の需要はさらに高まっている。
新型空挺装輪装甲車の配備は、空降兵部隊の機動力と戦闘力の底上げに直結し、特に装輪車両の特性を生かした展開能力の向上において重要な役割を果たすと見られている[2]。空挺作戦において敵地後方に降下したのちに、機動力を生かして迅速に展開し、敵の要地や防御が脆弱な所を打撃するために新型空挺装輪装甲車の能力が活用できると見られている[3]。
最初に新型空挺装輪装甲車が配備された空軍空降兵部隊の合成旅は、合計14輌を受領して、そのうち12輌が装甲兵員輸送車型であり最大8名の兵員が乗車する。残り2輌は装甲指揮車型で、こちらは固有の乗員とは別に4名の指揮要員を搭乗している[3]。
今後は、国産の大型輸送機Y-20の配備が進むことで空軍の輸送力が上昇し、空降兵の装備についてもさらなる重量増加を容認できるようになると考えられており、今後の新装備調達が注目される[2]。
【参考資料】
[1]捜狐「国产新型伞兵突击车亮相,自动火力仍然缺乏,美学设计还有待提升」(2020年8月7日/作者:虹摄库尔斯克) https://www.sohu.com/a/412032566_767131
[2] 捜狐「天降“装甲铁骑”,人民空军空降兵添“风火轮”,新型伞兵装甲车」(2020年5月9日) https://www.sohu.com/a/394043714_805242
[3]新浪网「中国空降兵列装新型轮式战车 究竟有何过人之处(图)」(2020年5月11日/澎湃新闻) https://mil.news.sina.com.cn/2020-05-11/doc-iircuy...
中国空軍