「天弓2型」長距離地対空ミサイル
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rglc85tj8h 2008年02月03日(日) 23:47:10履歴
▼「天弓2型」初期型。ミサイル尾部に取り付けられたブースターが分かる。これは実用化されなかった。後方左側に立っているのは「天弓2型」の地上固定式の単装発射機。
▼「天弓2型」実用型。
■性能緒元（「天弓2型」ミサイル）
| 全長 | 567.8cm |
| 直径 | 41cm |
| 翼幅 | 100cm |
| 重量 | 1,135kg |
| 弾頭重量 | 90kg（HE 着発/近接信管） |
| 最大速度 | マッハ4.3 |
| 最大射程 | 200km以上 |
| 最大射高 | 25,000m（30,480mとの説もある） |
| 最大旋回荷重 | 35G |
| 誘導方式 | 中間誘導：慣性＋指令誘導（修正） |
| 終末誘導：アクティブ・レーダー誘導 |
台湾の中山科学研究院は、1980年代にアメリカの技術支援を受けつつ、国産の中距離対空ミサイルシステム「天弓1型」の生産にこぎ着ける事に成功した。この「天弓1型」の開発に並行して、さらに射程を延長した発展型「天弓2型」が研究されていた。台湾軍はこの「天弓2型」を、当時台湾が配備していた長距離防空ミサイルMIM-14「ナイキ・ハーキュリーズ」の後継とする計画を立てていた。
「天弓2型」の開発は、当初ロケットモーターを新開発のロケット/ラムジェット推進装置に換装し、射程の延長と飛行速度増加を達成することが目された。しかし、ラムジェット装置の開発は難航を極め、軍の要求を満たす装置は完成できなかった。1989年9月、方針転換が決定され、暫定的な措置として「天弓1型」の尾部にロケットブースターを追加して2段式ロケットとすることで推進力強化を図った。このミサイルは全長9.1mと「天弓1型」の倍近い長さになったため、既存のミサイルランチャーに格納することが出来ず、単装発射架に設置され、発射時には発射架を85度の状態にして打ち上げる方法をとった。完成した試製ミサイルを使用した射撃試験が行われたが、ミサイルの点火時のコントロールが困難になるなどトラブルが多発し、結局この方法は廃棄されることになった。
ミサイルの射程延伸に行き詰まった開発陣は、再び開発方針の見直しを迫られる事になった。中山科学研究院では、「天弓1型」ミサイルの構造を大きく変更せずに射程の延長を達成するのが最も合理的であるとの結論に達した。これを受けて開発された新しい「天弓2型」は、外見は、弾体をわずかに延長した以外、ほとんど「天弓1型」と変わらないスタイルとなった。しかし、中身の電子回路や各種装置は、小型で処理能力の高い集積回路に換装されると共に設計の再検討が行われ、徹底して小型化が図られた。これにより稼いだスペースに射程延長に必要な分の固体燃料が詰め込まれ、ロケットモーターも推力の高い物に換装された。これで漸く軍の要求した射程延長を達成する事に成功した。さらに、「天弓1型」とほとんど大きさが変化しなかった副産物として、「天弓1型」の4連装発射機をそのまま使用することが可能となった。
「天弓2型」の射撃試験は1990年代半ばに開始された。1995年9〜10月には実戦に即した射撃試験において、5発の「天弓2型」ミサイルが、異なる条件で飛翔する5つの標的機に発射され、全ての目標に120kmの距離で迎撃に成功。4目標はミサイルの直撃を受けて撃墜され、1目標は至近距離での爆発で大きな損害を被って海面に墜落した。
「天弓2型」の生産は1997年に開始され、同年6月に正式にその存在が公開された。中山科学研究院では、「天弓2型」の最大射高を2,5000mと公表しているが、外国の軍事媒体による推測では最大射高は30,480mに達するとの見方もある。最大射程は公式には公開されておらず、「天弓1型」の倍程度とされている。「天弓1型」の射程が100kmであることから、「天弓2型」の射程は200km以上になるのではないかと見られている。
「天弓2型」の主な諸元は以下の通り。全長567.8cm、直径41cm、翼幅100cm。重量はロケット推進剤を増加させた事で「天弓1型」から約200kg増えて1,135kgになった。弾頭重量90kg（HE 着発/近接信管）、最大速度マッハ4.3、最大旋回荷重35G。「天弓2型」の誘導方式は、弾頭部のレーダーによるアクティブ・レーダー誘導方式を実現しており、完全打ちっ放しが可能。ただし、通常の射撃では、中間誘導では「天弓1型」と同じく慣性＋指令誘導（修正）を使用し、終末誘導のみシーカーを作動させアクティブ・レーダー誘導を行う方式を最小している。これは、最初からレーダー波を敵に照射した場合、敵にミサイルにロックオンされていることを気づかせてしまい対応策をとられやすく、ミサイルの弾頭部に収納された小型レーダーの能力では、敵の電子妨害や急速な進路変更に対処しきれない危険性が高い。そのため、アクティブ・レーダー誘導を開始するのは終末誘導時にのみ限定しているのである。弾頭部には近接信管と着発信管が装備されており、地上からの指令で爆破する事も可能。ミサイル爆発時の有効撃破範囲は30〜50立方メートルで、目標に直撃しなかった場合でも、大きな損害を与える事が出来る。
ミサイルは「天弓1型」と同じ4連装発射機に搭載されるが、そのほかに固定式の単装発射機や垂直発射装置（VLS）も試作された。
「天弓2型」の目標探知・追尾システムの中心を占めるのは、「天弓1型」と同じく「長白」フェーズド・アレイ・レーダーである。「長白」の詳細については「天弓1型」の記述に譲る。ただし、終末誘導がアクティブ・レーダー誘導に変更された事で、イルミネーターは不要となった。
「天弓1/2型」ミサイル大隊は、「長白」レーダー1基、CS/MPQ-25イルミネーター2基、発電機搭載車1両、複数のミサイル発射機＋牽引車両から構成され、40〜56発のミサイルを保有する。全ての装備が車両により牽引する事が可能である。
「天弓2型」は、これまでに「天弓1型」を合わせて500〜600発が生産されており、6個防空ミサイル大隊が編成され各地に展開している。これらの大隊は、台湾全土の防空システムである「強網」ネットワークの中に位置づけられ、各地のレーダーサイトや空軍のE-2T/K早期警戒機から随時目標情報を受け取ることが出来る。「天弓」は陸軍の防空ミサイル指揮部の統制下にあったが、防空体制を強化するため参謀本部直属のミサイル司令部に格上げされ、ミサイル部隊もここに移管された。ただし、多種多様のミサイルを節制下に置いたため、部隊での日常訓練、設備の維持・補修、戦時の作戦指揮などが極めて煩瑣になり、戦力発揮に支障をきたすと認識された。そのため、2005年12月には、もともと空軍指揮下にあった防空砲兵警護司令部を改組して成立した防空砲兵指揮部が、ホーク、「天弓1/2型」、パトリオットPAC-2＋といった防空ミサイル部隊を一元的に指揮する体制に改められた。
「天弓2型」の派生型としては、射程約300kmでGPS誘導方式を採用した「天戟」戦術弾道ミサイルが開発され1997年に実用試験に供されたとの報道がある。ただし台湾国防部はこの報道を否定しており、「天戟」の実態については不明な点が多いのが現状である。もう1つの派生型は、現在開発中の「天弓3型」である。これは「天弓1/2型」では十分ではなかった本格的な弾道ミサイル迎撃能力を実現することが目標とされている。「天弓3型」は、最大射程300km超、最大高度30,000m超で、弾道ミサイルを確実に撃墜するために目標に直撃する命中方法を採っている等の情報がある。「天弓3型」の詳細については別項に譲ることにする。
「天弓」ミサイルは、1型、2型合計で500〜600発がこれまでに生産された。「天弓」が配備された防空ミサイル大隊は、計6個が編成され台北県三芝区、高雄県大岡区、高雄県林園、馬公、台中、東引島に配置され防空任務に当たっている。ただし、「天弓1/２型」とも、中国軍が台湾海峡周辺に多数配備している弾道ミサイルに対する迎撃能力には乏しいことが判明している。台湾軍では、「天弓1/2型」は航空機や巡航ミサイルに対する迎撃任務に当てると共に、弾道ミサイル迎撃用にはアメリカからパトリオットPAC-2＋3個大隊分の装備を調達している。
【2008.01.20追記】
台湾空軍の防空ミサイル司令部は2008年1月20日、台湾北部にある三芝（Sanchih）の天弓地対空ミサイル発射基地を公開した。この基地には第611防空大隊が駐留しており、地下サイロの「天弓2型」及び車載タイプの「天弓1型」が配備されている。「天弓2型」は地下バンカーに収容されており、1つのバンカーに発射サイロが4基、サイロ1基に「天弓2型」ミサイル4発が装備されている。基地の全体規模は当然明らかにされなかったが、サイロ16基に「天弓2型」64発が収められているものと思われる。また同基地には捜索距離300kmで104目標を同時追跡できるレーダーや、指揮管制所も併設されている。「天弓2型」のミサイル基地は台湾に5ヶ所（三芝、馬祖島、林園、大肚山、台中省の某所）あるとの事。
【参考資料】
『台湾百種主戦装備大観』 2000年 (杜文龍：編著/軍事科学出版社)
『国際展望-全球熱天追跡』 2005年24号（総第530期）「台軍声称可pi美“愛国者”與S-300-台湾“天弓”防空導弾情報」（鄢東/国際展望雑誌社）
『江畑謙介の戦争戦略論[II]-日本が軍事大国になる日』1994年(江畑謙介/徳間書店）
『中国軍事用語辞典』 2006年（茅原郁生編/蒼蒼社）
DefenseNews 2008年1月21日「Taiwan Shows Off Base for Tien Kung Missiles」（Wendell Minnick）
Global Security
新浪網 2004年11月20日「台湾天弓防空導弾効能分析下（組図）」
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台湾陸軍