日本の周辺国が装備する兵器のデータベース


▼2007年10月10日のパレードで撮影された「天弓3」の写真


▼上記の写真と同日に撮影された「天弓3」の4連装ランチャー


性能緒元(「天弓3型」ミサイル)
全長7m
直径46cm
重量1,635kg
弾頭重量不明(HE 着発/近接信管)
最大速度マッハ4.5
最大射程200km以上
最大射高25,000m
誘導方式中間誘導:慣性+指令誘導(修正)
  終末誘導:アクティブ・レーダー誘導

「天弓3型」長距離対空ミサイルシステムは、「天弓1型」、「天弓2型」に続いて1996年から開発が開始された台湾国産の地対空ミサイルである。

【開発経緯】
「天弓3型」の開発の契機となったのは、1995年から1996年にかけて中国が実施した台湾近海での弾道ミサイル発射訓練であった。中国は3度に渡って、短距離弾道ミサイル「東風11(DF-11)」「東風15(DF-15)」を台湾近海に向けて発射、それに続いて台湾海峡付近で大規模な陸海空3軍の合同演習を実施。台湾海峡の緊張を受けてアメリカが、空母2隻を急遽台湾近海に派遣する事態に至った。

この大規模演習は、「台湾独立」論に対する牽制、台湾総統選挙に対する影響力の行使などの狙いを有していたが、中国が台湾全島を射程圏内に納める短距離弾道ミサイルを戦力化している事を明確に示す事にもなった。DF-11やDF-15は、中国のミサイル基地から発射後、わずか5〜7分で台湾に到達する。当時の台湾には、この種の弾道ミサイルを迎撃する能力はもとより、その飛来を探知する事も出来なかった。中国は、台湾攻撃の切り札として、この種の弾道ミサイルの戦力増強に力を入れており、年間30〜50発のペースで量産を続けていた(後には年100発に生産数が増え、2008年段階で1,300発以上が配備されるに到っている)。

短距離弾道ミサイルの脅威が現実の物として立ち現れてきた事に対して、台湾軍は早急に対策をとる事が求められた。DF-11、DF-15は、ピンポイント攻撃が可能なほどの半数必中界(Circular Error Probability:CEP)は有していないものの(DF-11がCEP:600m、DF-15がCEP:300m)、台湾のあらゆる地点への攻撃が可能であり、政治・軍事的中枢や陸海空軍の基地、通信施設などを同時・集中的に先制攻撃された場合、台湾軍の作戦能力に大きな影響が及ぶ事が懸念された。将来的には、誘導システムの向上により命中精度が飛躍的に改善される可能性もあり(実際、DF-11AではCEP:20〜30m、DF-15Aでは30〜45m、DF-15BではCEF:5mと着実に命中精度を向上させてきている[1]。)、このまま対処不可能な状態を継続するわけにはいかなかった。

台湾では、とりあえずの措置として限定的な戦術弾道ミサイル迎撃能力を有するMIM-104長距離地対空ミサイル「パトリオットPAC-2」をアメリカから調達する事を決定すると共に、DF-11やDF-15といった短距離弾道ミサイルを迎撃可能な対空ミサイルシステムの開発を本格的に行う事を決定した。台湾では、既に 「天弓1型」「天弓2型」という二種類の地対空ミサイルを実用化していたが、これらのミサイルには弾道ミサイルに対する本格的な迎撃能力は備わっていなかった。

1996年4月、台湾の参謀本部が中山科学研究院に対して、「天弓2型」をベースとして戦術弾道ミサイル迎撃システムの開発に必要な基礎研究を行い、その結果を踏まえて本格的な開発を行うとの開発計画を決定したと報じられた。開発経費は5年間で39億台湾ドルが見積もられた。開発計画には「層系計画」の名称が与えられ、「天弓2型」改造型は「天弓」ATBM(Anti Theater ballistic missile:対戦域弾道ミサイル。中国語では反弾道飛弾)システムと呼称された。

「天弓ATBM」システムの開発は、「天弓」シリーズの開発を担当してきた中山科学研究院の天弓計画室によって行われた。「天弓2型」のコンポーネントを流用した試作ミサイルは1999年9月に実施された射撃試験で標的への命中に成功した。この試作ミサイルの部品は全て台湾で製造された物であった。

2005年には、実用試験段階に入り、同年4月18日には目標迎撃試験が実施され標的の破壊に成功した。しかし、この試験では、少なくない不具合が発生し、実用化にはまだ解決すべき問題が有ることも発覚した。この年、台湾軍は対空ミサイルを一元的に管理するために新設した「導弾司令部」の公開に当たって、「天弓ATBM」の存在を公表し、このミサイルに「天弓3型」の名称を与えたことを明らかにした。

2007年3月、台湾軍は「天弓3型」の開発が基本的に完了したことを発表した。10年の開発期間と200億台湾ドルに及ぶ開発経費が費やされていた。この発表で台湾軍は、「天弓3型」を「経国」戦闘機「成功」フリゲイトという二大国防装備計画に続く重要な「自主国防の成果」であると強調した。この年10月10日の中華民国の建国記念日に挙行された軍事パレードで、「天弓3型」のミサイル本体と自走ランチャーがはじめて一般に公開されている。

【性能】
「天弓3型」対空ミサイルシステムは、ミサイル本体、「長白」対空レーダー、自走ミサイルランチャー、指揮管制車両、発電機搭載車、対レーダーミサイル用の電子デゴイ車両などで構成されているレーダーや指揮管制車両は、「天弓1/2型」のものをベースにしているが、さまざまな改良が施されており、その能力は大幅に向上している。

ミサイルの形状は「天弓1/2型」と良く似た形をしているが、性能向上のため直径と全長がそれぞれ少しずつ大型化されている。
全長直径重量最高速度最大射程最大射高
天弓1型5.3m41cm870kgマッハ3.5100km23,000m
天弓2型5.678m41cm1,135kgマッハ4.3200km以上25,000m
天弓3型7m46cm1,635kgマッハ4.5200km以上(天弓2よりも長いとされる)25,000m

射程延伸と速度向上のため、ロケットモーターの出力が強化されているミサイルの最大射程は200km以上、最大射高は25,000m、最高速度はマッハ4.5。ミサイルの制御は、方向制御用の操舵翼と、排気口に設置された推力偏向装置によって行われる。推力偏向装置は「天弓3型」で始めて導入されたものであるが、これは速度の速い弾道ミサイルの迎撃に際して、より高い機動性が要求されたことによる。

「天弓3型」の弾頭は、着発/近接信管が採用されており、地上からの爆破指示も出来る。目標を直撃するか、もしくは爆発により飛散する断片と爆風により標的を撃墜する。アメリカのパトリオットPAC-2と同じく、ミサイルの断片や爆風によって弾道ミサイルを撃墜する方式を採用しているため、弾道ミサイルに直撃させる方式を採用しているパトリオットPAC-3に比べると撃墜確実性には劣るとされる。そのため、弾頭部には断片の飛散方向を目標に集中させる技術が採用されており、少しでも目標撃墜率を向上させる試みが施されている。この技術により、通常弾頭に比べて撃墜可能半径は2〜3倍に拡大している。

ミサイルは方形の4連装ミサイル発射機、もしくは垂直発射装置での運用が可能。ミサイルはメンテナンスフリーで、5年間の品質保証が行われている。

ミサイルの誘導方式は、中間誘導が慣性+指令誘導(修正)方式、終末誘導がアクティブ・レーダー誘導方式を採用。弾頭部のレーダー制御用コンピュータのソフトウェアの改良により、低空域のグラウンド・クラッターを除去して目標を探知する能力が改善されており、弾道ミサイルだけでなく低空から飛来する巡航ミサイルに対する迎撃能力を高めている。「天弓2型」では、終末誘導に赤外線誘導方式も併用されていたが、「天弓3型」では赤外線誘導方式は廃止されている。

「天弓2型」の目標探知・追尾システムの中心を占めるのが「長白」フェーズド・アレイ・レーダーである。「長白」は、「天弓1/2型」でも運用されているが、「天弓3型」では弾道ミサイルや巡航ミサイルの迎撃に必要な能力の改善が行われており、高速で飛来するレーダー反射面積の小さな目標や低空域の目標探知能力が向上している。レーダーの改善では、台湾で開発された多数の先進技術が採用されており、新型の集積回路や官民協同で開発された管制用コンピュータが装備されることとなった。

改善型「長白」フェーズド・アレイ・レーダーは、高度20,000mの目標探知距離が、原型の300kmから500kmへと大幅に延伸されている。探知距離の延伸は、高速で飛来するために迎撃可能時間が短くなる弾道ミサイルの迎撃にとって、極めて重要な要素である。一基の「長白」で、4両の自走ミサイルランチャーを指揮して、同時に数百目標を監視しながら、24目標を追尾、9個の弾道ミサイルに「天弓3型」ミサイルを指向させる能力を有している。弾道ミサイルの探知から、5〜10秒以内に発射準備を完了し、ミサイルの発射を行う。

「長白」フェーズド・アレイ・レーダーは、トラックに牽引されて移動する。ただし、制御区画を含めた装置のサイズは全長12m、幅3m、高さ4mと大型のため、路外機動性には問題があり、通行できない道路やトンネルも存在するとの事。

「長白」レーダーは「天弓」システムの要になる存在であり、これを敵の対レーダーミサイルによる攻撃から守るため、レーダーと同じ電波を発射して対レーダーミサイルを引き付ける電子デゴイ車両が二台配備されている。陣地に展開する際には周辺に配置され、「長白」レーダー本体への攻撃を防ぐ役割を果たす。

「天弓3型」ミサイル大隊は、「長白」レーダー1基、発電機搭載車1両、自走ミサイル発射機4両、電子デゴイ車2両などで構成される。全ての装備は車両により牽引する事が可能である。「天弓1/2型」は、レーダーなどの装備を共用することが可能であったが、「天弓3型」では、それらの装備が一新されたこともあって、従来の「天弓1/2型」用の部隊では「天弓3型」ミサイルを運用することは困難である。逆に「天弓3型」システムで、「天弓1/2型」ミサイルを運用することは可能であり、複数の性能の異なるミサイルを併用することにより、さまざまな目標に対する迎撃能力や電子攻撃に対する抗堪性を向上させることが意図されている。

【今後の状況】
「天弓3型」は、2007年末の段階で「長白」レーダーの改良の最終作業を実施しており、2008年には改良の成果を実証するための一連の運用試験が実施される予定。

「天弓3型」の今後の配備予定については、2008年7月の時点では未定。台湾軍では、射程の長い「天弓3型」と、それに比べると射程は短いが目標への直撃方式を採用しており高い撃墜率を有するパトリオットPAC-3を併用することで、多層的弾道ミサイル迎撃システムを構築することを計画している。ただし、2008年6月に、アメリカが輸出予定であったパトリオットPAC-3 四個大隊分の装備の輸出を一時凍結したこともあり、台湾の弾道ミサイル迎撃システムの将来図がどのような形になるのかに関しては不透明なのが現状である。

【参考資料】
Jane's Strategic Weapons Systems ISSUE 45-2006(Jane's Information Group)[1]
『台湾問題-中国と米国の軍事的確執』(平松茂雄/勁草書房/2005年)
『台湾百種主戦装備大観』(杜文龍:編著/軍事科学出版社/2000年)

漢和防務評論 2007年12月号「S300PMU地対空導弾的新対手天弓掘廖癖寝追/漢和防務中心)
兵工科技 2007年12月号「台湾“天弓”-3防空導弾解析」(王波/兵工科技雑誌社)
坦克装甲車両 2007年12月号「台湾“双十閲兵”中的“天弓”3型反導系統」(新復社/坦克装甲車両雑誌社)
国際展望-全球熱天追跡 2005年24号(総第530期)「台軍声称可pi美“愛国者”與S-300-台湾“天弓”防空導弾情報」(鄢東/国際展望雑誌社)

全球防衛雑誌公式サイト「弓三現身中科院秘密武器」(高知陽/2007年11月4日) 注:初出は『全球防衛雑誌第179期』

「天弓2型」長距離地対空ミサイル
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