エレファント級哨戒・輸送艦
最終更新：
rglc85tj8h 2013年04月20日(土) 19:43:03履歴
エレファント級哨戒・輸送艦は、中国の武昌船舶重工有限責任公司がナミビア海軍向けに建造した領海警備と輸送を主任務とする艦（英語の艦種名は「OFFSHORE PATROL+LOGISTICS VESSEL」とされる）[1]。
エレファントは、ナミビア海軍で運用されていた支援艦Lt General Dimo Hamaambo（ブラジル海軍向けにオランダで建造、1955年就役。1994年にブラジルからナミビアに引き渡された）の代艦として建造[2]。武漢造船廠において2011年1月に起工、2011年10月に進水、2012年7月3日にナミビアに引き渡され、中国で6ヶ月間訓練を受けた乗員と共に本国に回航され、同年9月7日にナミビア海軍に就役した[1][3][4]。
【性能】
エレファントは前述の通り、輸送能力を備えた哨戒艦として設計された[2]。艦形や船体サイズから、中国の漁業監視船「漁政310」をベースにして設計された可能性が指摘されている[3]。
排水量2,580t、全長109m[1]。船体は中央船楼型を採用しており、艦首には波除けのためブルワークが装着されている。艦橋構造物は近年の水上戦闘艦に通じる、直線と平面を多用したレーダー反射率を低減させる設計が取り入れられている。艦橋構造物直後には三脚マストが配置されており、捜索レーダーや航海レーダーなどの電子装備を搭載。船体中央には煙突が配置されており、その両側に搭載艇とデリックが装着。上部構造物後端左側には物資搭載用大型クレーン、右側には小型搭載艇の昇降に使う小型クレーンが設置されている[3]。船体後部はヘリコプター甲板となっているが、格納庫はなく艦固有の艦載ヘリコプターは搭載しない。
推進系統はディーゼル機関2基を搭載。最高速力は21kts[3][4]。通常のスクリューのほか、船体前方には接岸/離岸時に使用するサイドスラスター1基を装備している[3]。
輸送艦として運用される際には、艦橋構造物直前の貨物搭載区画と艦後部のヘリコプター甲板の二箇所に物資を搭載する。搭載能力は貨物輸送の場合は12フィートコンテナ6個（重量24トンまで）、車両輸送の場合は12t級装甲兵員輸送車6両までの搭載能力を有している[1][2]。艦固有の乗員65名のほかに、150名までの人員の搭乗が可能で艦内には多くの寝台や乗員居住区画が設置されている[1][3]。
【武装】
エレファントは、艦首部銃座に37mm単装機関砲1門、上部構造物後部の第二甲板両舷に14.5mm連装重機関銃2門を搭載している[1][2]。
エレファントが搭載する37mm単装機関砲は近年中国の海洋監視船への搭載が進んでいる新装備で、海上警備活動や対テロ任務での対水上/地上目標への攻撃を想定して開発された。対水上/陸上目標に対して約5,000m、対空目標の場合約4,000mの有効射程を有している。機関砲の管制は砲側照準、もしくは火器管制レーダーなどを装備して管制を行う方法を選択可能。エレファントの場合は、艦橋構造物上部に搭載されたEFR-1型（中国軍の制式名347G型/NATOコード名Rice Bowl）火器管制レーダーによって同砲の管制を行う。このレーダーには光学/電子センサーが取り付けられており、レーダー管制射撃だけでなく、光学照準装置を利用して射撃を実施することも可能。
14.5mm重機関銃は中国の哨戒艦艇に広く搭載されている標準的な装備の１つ。機関銃の操作や照準は手動式。高度な火器管制システムは搭載していないが領海警備任務においては有効な装備といえる。
【展望】
ナミビア海軍は、エレファントを含めて中国に哨戒艦艇4隻を発注している[2]。ナミビアでは、エレファントの導入により海軍の沿岸警備体制と海上救難能力の向上が期待されている[2][4]。
ナミビアは独立以来、海軍艦艇の調達や人員の訓練については主にブラジルと南アフリカに依存していたが、近年中国との間で海軍建設に関する協力関係が増えており、今後その関係がさらに強くなることが予想されている[2]。
■性能緒元
| 排水量 | 2,580t |
| 全長 | 109m |
| 全幅 | |
| 主機 | ディーゼル2基 2軸 |
| 速力 | 21kts |
| 航続距離 | |
| 乗員 | 65名 |
【搭載能力】
| 貨物 | 12フィートコンテナ | 6個（24トン） |
| 車両 | 装甲兵員輸送車（12t級） | 6両 |
| 搭乗歩兵 | 150名 |
【兵装】
| 近接防御 | 37mm単装機関砲 | 1門 |
| 14.5mm連装重機関銃 | 2門 |
【電子兵装】
| 捜索レーダー | 1基 | ||
| 火器管制レーダー | EFR-1型（347G型/Rice Bowl） | 機関砲用 | 1基 |
| 光学電子/赤外線照準装置 | 機関砲用 | 1基 | |
| 航海レーダー | 1基 | ||
| 衛星通信用レドーム | 1基 | ||
| 一番艦 | エレファント | ELEPHANT | S11 | 武漢造船廠で建造。2011年1月起工、2011年10月進水、2012年7月3日ナミビアに引渡し、2012年9月7日ナミビア海軍に就役。 |
▼エレファントのイメージ図。艦橋直前にはコンテナ、ヘリコプター甲板には装輪装甲車を搭載している。この図では艦首部の機関砲として76A式37mm連装機関砲が描かれているが、実際には37mm単装機関砲に変更された
【参考資料】
[1]Beegeagle's Blog「NAMIBIA’S NEW 109m 2580t OFFSHORE PATROL+LOGISTICS VESSEL: ‘NS ELEPHANT’ S11」（2012年10月7日）
[2]DefenceWeb「Namibia Navy to auction long-serving warship」（Oscar Nkala/2012年10月19日）
[3]inamibia.co.na「Namibia’s latest naval ship, the NS Elephant, docks in Walvis Bay」（2012年8月14日）
[4]Africa Newswire「New state-of-the-art vessel for Namibian Navy」（2012年8月13日）
[5]Naval Technology「Namibian Navy christens new logistics support ship」（Oscar Nkala/2012年10月19日）
中国海軍