日本の周辺国が装備する兵器のデータベース


▼1番艦#455「チャオプラヤー」。


▼上海を訪問した2番艦#456「バンパコン」。


▼C-801 SSMを発射する3番艦#457「クラブリ」。


▼2004年12月26日のスマトラ沖大地震による津波で座礁した#457「クラブリ」。2005年3月には現役に復帰した。


▼4番艦#458「サイブリ」。




▼(左)#457「クラブリ」のC-801 SSM発射機と12.7mm機関銃。
(右)37mm機関砲をイタリアのブレダ70口径40mm単装機関砲に換装した#458「サイブリ」。


▼#457「クラブリ」近影。対艦ミサイルをC-802Aに、艦砲を99式100mm連装砲に、機関砲を76A式37mm連装機関砲に換装。兵装変更に合わせて艦橋上の火器管制レーダーも更新されている。


性能緒元
基準排水量1,676t
満載排水量1,924t
全長103.2m
全幅11.3m
主機ディーゼル 4軸
 MTU 20V-1163TB-83ディーゼル(合計29,440馬力)
速力30kts
航続距離3,500海里/18kts
乗員168名(うち22名が士官)

【兵装】
対艦ミサイルC-801(YJ-8/鷹撃8/CSS-N-4 Sardine)/ 連装発射筒4基
(改装後)C-802A/ 連装発射筒4基(#457)順次改装予定
対潜ロケット250mm対潜ロケット/85式250mm5連装対潜ロケット発射機(RBU-1200)2基(弾薬30発)
79式56口径100mm連装砲(H/PJ-33)2基(#455、#456)
 79式56口径100mm連装砲(H/PJ-33)1基(#457、#458)
(改装後)99式56口径100mm連装砲(H/PJ-33B)1基(#457)
近接防御76式37mm連装機関砲4基(#455、#456、#457)
(改装後)ブレダ40mm70口径単装機関砲4基(#458)
(改装後)76A式37mm連装機関砲4基(#457)
 M2HB 12.7mm重機関銃2基
搭載機ベル2121機(#457、#458)


【電子兵装】※就役時。
対空対水上レーダー354型(Eye Shield)1基
火器管制レーダー352C型(Square Tie)SSM用1基
 343型(Wasp Head)SSM&砲用1基
 341型(Rice Lamp)機関砲用1基
航海レーダーRM-1290(Racal Decca)1基
RA-71CA1基
敵味方識別装置651型 
ECMシステム 
 923型レーダー波探知装置 
 981型能動型電子戦対抗装備 
 チャフ/フレア発射装置 
ソナーSJD-5A/SJC-1B/SJX-4 
戦闘指揮システムZKJ-3A 

1980年代の中国は改革開放政策による経済発展が緒に就いたばかりであり、経済開発が優先され国防予算はかなり制限されていた。そのため、中国海軍も新型艦艇開発のため充分な資金を調達することは困難であった。それまで、海軍の要望に応じて艦艇の設計建造を行っていた中国船舶工業総公司は、改革開放によりある程度の自由裁量建を与えられたことを受けて、海外ユーザーを対象にした海軍艦艇の輸出に本格的に乗り出すことになった。中国船舶工業総公司が採った方法は、外国市場をターゲットとした輸出用艦艇を企画提案して、その提案を採用した国との間で共同開発を行うというものであった。これは、兵器の輸出により貴重な外貨を獲得でき、さらに共同開発のパートナー国から国外の進んだ軍事技術を導入することができ、両国の資金で共同開発した軍事技術を国内の兵器にフィードバックできるなどの利点があり、開発資金に制約があり技術的にも立ち遅れていた当時の中国にとっては望ましい方法であった。上記の開発方法は、F-7P戦闘機アル・ハーリド戦車などでも採用された手法である。

中国船舶工業総公司が積極的に各国海軍向けに宣伝を行ったのが、当時の建造が行われていた新型フリゲイト053H2型(ジャンフーIII/IV型/江滬III/IV型)であった。053H2型は、それまでソ連の影響を強く受けてきた水上戦闘艦艇の設計から脱却し、西側海軍の艦艇設計理念を大幅に取り入れて建造された初めての艦であった。中国船舶工業総公司は053H2型を低価格のフリゲイトとして各国に売り込みを行った。053H2型は、代表的な西側の輸出向けフリゲイトであるドイツのMEKO200型と比較すると、1/4の価格で建造が可能であり、兵装などカタログデータの上ではMEKO200型に近い数値を有していた。

しかし低価格の反面、西側同世代のフリゲイトと比較すると技術的格差は大きく、さらに設計ノウハウの不足から実際の運用では各種の不具合を抱えており、居住性や航洋性能にも問題があった。船体は1950年代のソ連製リガ級フリゲイトに由来する、船体幅に比べて船体長が長い高速性重視の艦形であり、内部容積の確保や船体の安定性に問題があった。053H2型では、中央船楼型の採用によって内部容積の問題に対処したが、船体形状は旧来のままであったため重心の上昇を招き船体の安定性に問題を生じる結果となった。対艦ミサイルの迎撃に有効な対空ミサイルや近接防御火器システムを装備していないため、経空脅威に対しては脆弱であった。実際、中国海軍に就役した053H2型の性能は海軍の要求を満たすことが出来ず、建造は3隻で打ち切られる事になる。053H2型の問題点は、実際に輸出される際に問題として浮上することになる。

最終的に053H2型フリゲイトの海外カスタマーとなったのはタイ海軍であった。当時ヴェトナム軍のカンボジア侵攻を受けて、タイはカンボジアの3派連合(反ヴェトナム勢力)を支援して、ヴェトナムとの対立を深めていた。タイは、同じくヴェトナムと対立していた中国との間で利害の一致を見出し協力関係を深めていった。タイと中国の協力関係は軍事分野でも進展し、中国はタイに対して69IIS式戦車85式装甲兵員輸送車(YW-531H)、37mm/57mm対空砲、59式130mm加農砲(M-46)など多数の兵器を輸出した。中国は、外交的配慮からこれらの兵器を「友好価格」として格安の値段で提供を行っている。

この流れを受けて、フリゲイト6隻の調達を計画し選定を行っていたタイ国防省は1988年7月18日、中国船舶工業総公司との間で4隻の053H2型フリゲイト近代化型を購入する契約に調印した。契約総額は2億7200万ドルで、これは競争入札に参加した西側企業が提示した金額の4分の1という破格の金額であった。当初のタイ海軍の算段では、船体のみを購入し、電子装備や兵装は西側諸国のものをタイの造船所で搭載することを計画していた。しかし、中国側との交渉の結果、1〜4番艦は船体だけでなく電子装備や兵装も全て中国製とする事で合意がなされ、残りの2隻の建造方法については継続協議にて決めるとした。

タイに輸出される053H2型は、1・2番艦は053H2型とほぼ同型、3・4番艦はヘリコプターの発着能力を有する改良型として建造されることが決定し、前者には053HT型、後者には053HT(H)型の形式番号が与えられた。053HT型、053HT(H)型の建造は上海の滬東造船廠で行われ、1989年から1990年にかけて起工され、1991年から92年にかけて就役した。艦名は、1番艦#455「チャオプラヤー(Chao Phraya)」、2番艦#456「バンパコン(Bangpakong)」、3番艦#457「クラブリ(Kraburi)」、4番艦#458「サイブリ(Saiburi)」と命名された。

053HT/HT(H)型の主要項目は以下の通り。基準排水量1,676t、満載排水量1,924t、全長103.2m、全幅11.3m、喫水3.1m。乗員は168名で、うち士官22名。

機関は053H2型の12E-390VAディーゼルエンジン2基(合計16,000馬力)から、ドイツMTU社製20V-1163TB-83ディーゼル4基(合計29,440馬力)に換装され、出力が向上したため最高速力は原型の28ノットから30ノットに向上している。ただし、性能が向上した分価格も高く、一隻あたりの価格(4,000〜6,000万ドル)の多くがこのドイツ製機関の購入費用で占められることになった。航続距離は18ノットで3,500海里と比較的短いが、これは053H2型が沿岸用フリゲイトとして設計され航続距離は優先されなかったことに起因する。

053HT/HT(H)型は、中央船楼型を採用しており、ヘリコプター搭載型である053HT(H)型は船体後部の79A式100mm連装砲1基を撤去し、中央船楼から船尾まで伸びるヘリコプター着艦用甲板を設置している。居住区画は、13個の士官室と16個の水兵室、休憩室4、食堂、娯楽室が設けられていたが、その水準は西側艦艇の基準からすると十分な物ではなく、タイ海軍においても問題視されることになった。船体は13区画に分割されており、うち2区画が満水になっても浮力を維持することが可能。ただし、同級の輸出型(053T型)を調査したタイ海軍の情報によると、053H2型のダメージコントロール用の設備は事実上存在せず、消火設備も乏しいため、損害を受けた際には大きな問題が生じる危険性の高いことが指摘された。艦上には燃料およびドライ・カーゴ補給装置が設置されており、洋上での給油・物資補給を行う。運用する対艦ミサイルが小型化したことから、従来のフリゲイトでは不可能であった対艦ミサイルの洋上補給も可能となった。

兵装は053H2型のものを基本的に踏襲している。砲煩兵装としては79式56口径100mm連装砲(H/PJ-33)を053HT型は2基、053HT(H)型は1基搭載している。近接火器としては中央船楼部の前後に76式37mm連装機関砲4基を搭載するほか、タイ海軍に就役後、低強度紛争や海上警備活動用に12.7mm単装機関砲×2基が追加装備されている。100mm砲の操作は艦橋部の343型(Wasp Head)と光電子火器管制装置によって行われ、37mm機関砲は341型(Rice Lamp)レーダーによって統制される。ただし、76式37mm連装機関砲は、この時期各国が装備するようになったシー・スキマー型の対艦ミサイルに対しては有効な対処を行うのは困難であった。4番艦「サイブリ」は、就役後に37mm機関砲をイタリアのブレダ70口径40mm単装機関砲に換装している。

053HT/HT(H)型は、艦中央部にC-801(YJ-8の輸出名)連装発射筒4基を搭載した。C-801のスペックは、全長5.814m、直径36cm、重量815kg、弾頭重量165kg(HE)。最大速度マッハ0.9、射程42km。誘導方式は中間段階が慣性航法誘導で終末段階がアクティブ・レーダー誘導。終末誘導に使われるJバンド・レーダーは耐ECM性が高く、高精度の電波高度計は海面ギリギリ(終末時は7m)を飛行するシー・スキミング能力をYJ-8に与えている。

原型の053H2型はミサイル発射筒を船体中央線に対して30度の角度で扇型に配置したが、タイに輸出された053HT/HT(H)型は、連装発射機を船体中心線に対して直角に配置する方法に変更された。053H2型の配置方法では、ミサイルを発射した場合、ミサイルの高熱の噴流と排気が艦の広い部分を覆うことになり、上部構造物や甲板、搭載艇の寿命を縮め、ミサイルの発射に際して後部37mm機関砲の操作要員は艦内に退避しなければならないなどの問題点が生じることになった。053HT/HT(H)型の配置方法はこの点を改善する物であり、ミサイル噴流は海面に放出され艦の上部構造物には及ばない様になっている。

対潜兵装も053H2型と同じく、艦首部に85式250mm5連装対潜ロケット発射機5連装発射機2基を搭載。対潜ソナーはSJD-5Aが採用。SJD5-Aは中国が西側から導入した技術を元に開発されたソナーで、デジタル化やLSI化が進められており探知距離や処理速度の改善が図られている。

後期建造艦の053HT(H)型はヘリコプターの運用が可能であり、搭載ヘリコプターはアメリカ製のべル212であるが、ヘリコプター用の格納庫は無いため整備などは陸上で行う必要がある。

053HT/HT(H)型の戦闘指揮システムは中国製ZKJ-3A。これは、イギリス製CTC-1629をコピーして国産化したものである。同システムは、対空・対水上捜索レーダー、航海レーダー、IFF(敵味方識別装置)、電子戦装備、ソナーの情報分析と処理を行い、各種目標に対する探知、識別、追跡、脅威判断、目標支持、使用兵器選定などを行い、200以上の目標を探知しながら同時に80目標の追跡を実施する。システムは集中指揮、分散コントロールの概念に基づいた設計がなされている。同システムは、1970年代中期頃の水準であると評価されている。ただし、完全なC3I(Command:指揮、Control:統制、Communication:通信)の統合は出来ていない、もしくはC2I(指揮、統制)のみであるとの説がある。

電子装備については、火器管制用に352型(Square Tie)、343型(Wasp Head)、341型(Rice Lamp)を各1基搭載、艦橋マスト頂部に354型(Eye Shield)対空対水上レーダーとRM-1290(Racal Decca)航海レーダーを装備している。これらは、中国で開発、もしくはライセンス生産された装備であった。053HT/HT(H)型の電子戦システムは、イタリアの企業が設計したものが搭載された。

タイは、新たに購入する4隻の053HT/HT(H)型についての再検討を行った結果、船体が過小であり航続距離や航洋性に問題があり、電子装備や各種装置の自動化が進んでおらず、兵器の多くが旧式であり対潜能力も低いことから、053HT/HT(H)型は第一線での戦闘に投入することは困難であり、近海の哨戒任務に使用するのが限界であるとの結論に達した。そのためタイ海軍では1989年になって、継続協議になっていた2隻のフリゲイトについては大幅な設計変更を施した新型艦として建造することを決定した。これが後のF-25T型フリゲイト(ナレースワン級)になる。

タイ海軍では上海で建造中の053HT/HT(H)型について要員を派遣して建造状況を確認させた。その調査の結果、艦は輸出仕様ではなく中国海軍の基準で設計建造されており、その居住性はタイ海軍の基準には適応しないものであった。さらに、当時の中国の造船技術の未熟さから、船体の溶接や電装の配置には大きな問題があり、艦の安全性を損ねる物である(水密扉に隙間があったとの話もある。)ことが判明した。これに加えて、ダメージコントロール用の設備が事実上存在せず、消火設備も乏しいため、損害を受けた際には大きな問題が生じる危険性が高いことが指摘された。これらの問題を解決するため、4隻のフリゲイトは、タイに回航後直ちにドック入りし、問題箇所の艤装のやり直しとダメージコントロール設備の強化を行う工事を施さざるを得なくなった。

チャオプラヤー級は現在も全艦タイ海軍に就役している。月ごとに交替で沿岸哨戒任務に従事するほか、練習艦としても運用されている。3番艦のクラブリは、2004年12月26日のスマトラ沖大地震による津波により座礁する損害を受けたが、2005年3月には現役に復帰した。タイ海軍では1999年、053HT/HT(H)型の戦闘指揮システムをドイツ製のミニCOSYS戦闘指揮システムに換装する近代化を行っている。また、2007年には、対艦ミサイルを射程180kmのC-802Aに換装する近代化を行うことを決定、2009年に対艦ミサイルの換装を実施した[1]。クラブリは、その後も改装を受けており艦砲をステルスシールドの99式56口径100mm連装砲(H/PJ-33B)|1基に、機関砲を76A式37mm連装機関砲に変更し、合わせて艦橋の343型(Wasp Head)火器管制レーダーも撤去して新型レーダーに換装している[2]。

053HT/HT(H)型の輸出は、中国にとって過去最大規模の艦艇の輸出であったが、同時に中国の艦艇、造船業の持つ問題点も明らかにした。中国海軍では、各国に比べて艦艇の兵装面での立ち遅れは自覚していたが、053HT/HT(H)型に対するタイ海軍の抗議は、兵装だけではなく艦艇の居住面、人間工学への配慮、ダメージコントロールといったさまざまな分野での立ち遅れを明らかにした。そして、実際に艦艇を建造する造船技術や品質管理においても重大な問題が存在することが判明した。これらの教訓は、中国海軍にとって自らのどの分野が立ち遅れているのかをはっきりと提示することとなった。053HT/HT(H)型に続いてタイ海軍から発注されたF-25T型フリゲイト(ナレースワン級)の建造では、上記の問題を解消することが至上命題となった。

 クラス番号艦名アルファベット表記艦番号経歴
1番艦053HTチャオプラヤーChao Phraya4551989年起工、1990年6月24日進水、1991年4月5日就役。
2番艦053HTバンパコンBangpakong4561989年日起工、1990年7月25日進水、1991年7月20日就役。
3番艦053HT(T)クラブリKraburi4571990年起工、1990年12月28日進水、1992年1月16日就役。
4番艦053HT(T)サイブリSaiburi4581990年起工、1991年8月27日進水、1992年8月4日就役。

【参考資料】
[1]China Defense Blog「YJ-82 (C-802) SSM upgrade for the Royal Thai Navy.」(2009年12月22日)
[2]新浪網「中国为泰国造3艘053HT舰齐现身」(2013年9月25日)

Jane's fighting ships 2007-2008 (Jane's Information Group)
『江畑謙介の戦争戦略論[II]-日本が軍事大国になる日』(江畑謙介/徳間書店/1994年)
「漢和防務評論」2008年1月号(漢和防務評論社)
「週刊ワールド・ウエポン」No.96(2004年/デアゴスティーニ)
「碧海争鋒-中日両国駆護艦艇50年的発展対比與反思」『戦場文集』第2巻 2006年6月専刊 (新民月報社)
「中国053系列護衛艦外形識別」『兵工科技』2006年1月号 (周録陽/兵工科技雑誌社)
「泰国軍艦中国造-訪F25T護衛艦副総設計師厳宝興」『兵工科技』2005年5月号 (董世紅・褚爽/兵工科技雑誌社)
「江湖級護衛艦的発展及現代化改装前景分析」『艦載武器』2007年2月号 (銀河/中国船舶重工業集団公司)
Forecast International “Project F25T Naresuan Class - Archived 11/1997” 
Chinese Defence Today

F-25T型フリゲイト(ナレースワン級)
053H2型(ジャンフーIII/IV型/江滬III/IV型)
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