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055型は2020年1月に一番艦「南昌」(#101)が就役した中国海軍最新のエリア・ディフェンス防空駆逐艦[1]。満載排水量12,000〜14,000t(諸説あり)と、前級の052D型駆逐艦(7,000〜7,500t)の倍近い大型艦となっており[2]、その大きさ故にNATOコード名は「Renhai class cruiser」と駆逐艦ではなく巡洋艦扱いとされている[1][3]。一隻当たりの建造費用は60億人民元とされる[2][3]。これは052D型駆逐艦の建造費が約35億人民元であるのと比較すると倍近い費用となっていることが見て取れる[18]。

同艦は、長大な航続距離と強力な戦力投射能力を備え、空母艦隊の直衛や長大なシーレーンの護衛を遂行し得る大型水上戦闘艦として、今後の中国海軍の発展にとって大きな役割を果たす艦として注目されている[3]。

【開発経緯】
055型の建造計画が立てられたのは2000年代初めにまで遡る[2]。当時、中国海軍では2010年から2020年にかけて排水量6,000tを超えるエリア・ディフェンス防空駆逐艦を合計40隻以上建造して、アメリカ海軍に継ぐ規模の防空駆逐艦を揃える計画を進めていた[4]。さらに2020年以降になると、航空母艦や強襲揚陸艦を中核とした艦隊が複数編制され長期間にわたる外洋任務に従事するようになり、その護衛艦艇として少なくとも20隻以上の大型駆逐艦が必要になると見積もられていた[4]。055型はこの遠洋での護衛任務に就く大型水上戦闘艦の中核となる艦として開発が進められることになった。

055型の型式名はこの時が初出ではなく、1960年代後期に計画された未成艦「055型大型火砲ミサイル駆逐艦」が存在する。同艦は排水量8,000t以上の大型駆逐艦として構想され、エリア・ディフェンス防空能力を備え、外洋での長期作戦における護衛艦隊の中核を占める艦とされたが、当時の技術的限界から1981年に計画は予備研究に移行され、未成に終わっていた。

新たな055型はそれから30年近い時を経て検討が開始された。2009年12月20日には、「055型駆逐艦総合綜合立項報告」が北京での審査を通過。一年半を経た2011年中に、解放軍総部と海軍が北京で055型の重要な設計目標の修正が成され、2009年の要求とはかなり異なる内容になったとされる[2]。特に電子・情報技術については完全に元の要求が見直され、推進システムの統合化、汎用化、集積化、統合制御・リソースの共有化などの項目が定められたとの事[2]。

055型の設計主任は中国船舶重工集団公司の第701研究所の徐青技師[2]。搭載兵器やシステムの設計は2013年までに完了したと推測されている[2]。055型の設計は、2010年代初めの中国の艦艇技術の粋を尽くしたものであり、これまで外国の艦艇の後追いに終始してきた中国海軍にとって、初めて世界水準の先頭に立つ能力を有する駆逐艦を実用化することが目指された[4]。

これまでにない大型艦の建造に際して、技術陣では新しい手法を積極的に取り入れることになった。海軍の要求をすべて盛り込んだ場合、当初の見積もりでは新型駆逐艦の排水量は20,000tを超えるという試算結果が出た[2]。これは非現実的な数値であり、設計陣では海軍の要求を満たしつつ、現実的なサイズへの小型化を図るために、様々な工夫を設計に取り入れることになった[2]。

まず、搭載する各種コンポーネントの「融合と集成」が進められた[2]。これまでの中国海軍の艦艇設計では、航空、宇宙、船舶、兵器などの分野でそれぞれの産業が別々に設計を行い、相互交流は乏しかった。そのため、搭載装備で重複する機能が生じ、電力の消費量が増大、搭載スペースの冗長化、ミサイルが種類ごとに異なる発射機に搭載され、制御系統も別々になるといった問題が存在していた[2]。電子装備についても個別の製品を艦艇に搭載することでアンテナが林立し、マストの貴重な空間を占領するだけでなく、相互に電波干渉が生じ、ステルス性に悪影響を及ぼすなどの問題が生じていた[2]。

設計陣では055型の設計作業において、各種コンポーネントのすり合わせ作業に着手し、企業間の利害を超えて搭載装備の標準化・規格化を推し進めた[2]。各コンポーネントは統一された規格に基づいて設計され、それぞれのシステムは完全に共通化された情報・使用基準に基づいて、指定された期限までに完成させることでスケジュール通りの作業進捗を確保した[2]。電子、兵器、宇宙、航空、船舶のそれぞれの分野を超えた協力と、設計主任による一元的な管理を実現し、システムごとの重複を減らし、共通化できる分野を見極め、システム配置の合理化を進めていった[2]。055型の設計では、共通化・集成化・統合制御・リソースの共有化を進めることで、搭載されるシステムの圧縮化が図られた。さらにシステム間の共有リソースや情報については、個別のハードウェアではなくソフトウェア上で処理することでハードウェアを減らすことに成功した[2]。作戦システムにおいても統合化が進められ、偵察・指揮・攻撃・防御などを一体的に対処するように設計が成された[2]。これらの設計上の工夫により、055型の排水量は試算時の20,000tから三分の一程度減少させることに成功した[2]。

設計作業と審査を経て、2014年12月には一番艦の建造が上海江南長興造船廠で開始された。一番艦は2017年6月28日に進水式を行い、この時点でほとんどの艤装を終えた状態であり、建造作業の効率の高さが伺えた[2]。江南長興造船廠では、055型建造のために艦の溶接作業のデジタル化を進め、溶接部分の「痩せ馬」が出ない高精度な溶接を行うことを可能とした[2]。さらに、三次元の複雑な船体をプレス加工で一体成型することで資源とマンアワーを節約し、建造効率を10倍以上にする技術の開発にも成功した[2]。建造においては工程管理と部品供給時間の正確性が追及され、大量の部品を予定通りの期日と場所に配布することを徹底して、建造ペースの加速化を進めた[2]。

一番艦は「南昌」と命名されたが、これは江西省の省都であり、1927年8月1日に発生した南昌蜂起(中国共産党の武装蜂起。中国人民解放軍はこの日を建軍記念日としている)の地である[3]。「南昌」は2018年8月24日に初の洋上公試を行い、2019年4月23日に開催された人民解放軍海軍建軍70周年観艦式では艦番号「101」を付けた状態で参加。2020年1月12日、青島海軍基地において就役式を行った[2]。055型の艦名を見ると、国共内戦や日中戦争期における中国共産党の革命に関わる地名が多く選出されていることが見て取れる。

055型は中国海軍がこれまで建造してきた駆逐艦としては最大となる大型艦で、052D型駆逐艦に至るまでの技術的蓄積を背景に、一万トン級という大型船体に最新の技術を盛り込んで設計された。中国海軍が055型の設計に自信を持っていたことの現れは、一番艦の建造の最中から二番艦以降の建造に着手して、一万トンを超える水上戦闘艦艇を2020年から2023年までの3年間で合計8隻も就役させたことに示されている[2]。これまでの中国海軍では、「小步快跑」と呼ばれる少数の艦を先行して建造し、その結果を踏まえて量産化する手法が採られることが多かったが[4][5]、それとは異なり055型は最初から量産体制に入っていることから、055型の完成度の高さと中国海軍の艦艇建造方針の変化を伺うことが出来る。

055型の第一次発注艦8隻に続き、2022年12月には、江南長興島造船廠のドック内で建造中の艦幅20mの艦の写真が確認されており、艦幅からこれは055型第二次発注艦であろうと推測されている[2]。

055型は、今後、長期間に渡って中国海軍の水上戦闘艦艇の中核を占める存在となるとみられ、052B型駆逐艦から052C型駆逐艦、そして052D型駆逐艦へとスパイラル式に改良発展型が出てきたように、055型についても、連続した能力向上が図られてその能力をアップグレードさせていくものとみられている。

【船体】
055型駆逐艦の最大の特徴と言えるのはその大きさである。全長180m、艦幅21m、喫水6.7m、満載排水量12,000〜13,000tというサイズは、中国海軍の駆逐艦では最大のもので、世界を見渡してもこれを上回る排水量の駆逐艦はアメリカのズムウォルト級(満載15,995t)のみである[2][3]。

前級の052D型と比較すると、全長で15%、艦幅で20%、喫水10%、排水量で70%程度増加しており、艦内容積では55%の増加を達成している[4]。この余裕ある設計は、長期の外洋航行に必要な燃料、充実した各種センサー、大重量の電子機器、多種多様な兵装、大型艦に快速を与える大出力機関、艦の設備を稼働させるに足る充実した発電設備といった、新型駆逐艦の能力発揮に欠かせない装備の搭載を可能とする[4]。大きなプラットフォームとしたことは、中国海軍が055型を長期に渡って艦隊の中核的戦力として活用することを前提に、将来の発展余地を十分に与えたことも意味する。

船体設計では対レーダー波、対赤外線、対音響と総合的なステルス性向上を強く意識したデザインが採用されている[2][4]。舷側には顕著なナックルフレアがつけられており、これはレーダー波反射断面を減らす工夫の一つで近年の水上戦闘艦でよく見られる手法。兵装の多くは艦内に収納され、甲板上にある装備についてもそれぞれにRCS値の低減を意識したデザインが施されている。電子装備については、統合型ステルス・マストを採用して、アンテナの多くをマストに組み込まれた平面アンテナ化することでステルス性の向上が図られている[6]。

基本的な装備の配置は、艦首部に130mm艦砲と64セルのVLSを搭載。艦の中央部には艦橋と一体化した上部構造物を配置。二本の煙突も上部構造物と一体化した形となっている。上部構造物の後ろに48セルのVLSを配置、その後ろに上部構造物を設けヘリコプター二機を収納する格納庫を設け、艦尾のヘリコプター甲板に続いている。

長期の洋上任務に投入される055型では、余裕のある艦内スペースを前提に乗員一人一人に与えられる生活空間についても拡充が成され、艦の自動化の推進により乗員数をできるだけ抑えることが目指された[2]。船体の大型化により航行中の動揺は押さえられ乗員の乗り心地を改善し、水兵の就寝する二段ベッドの面積と高さも従来艦よりも余裕のあるサイズとされた[8]。

主機は中国海軍の駆逐艦としては初となるオールガスタービンのCOGAG方式で推進軸は2軸[9]。機関構成はウクライナのGAT-25000のライセンス生産型QC-280ガスタービンエンジンを4基搭載し、最高出力は140,000馬力[4]。052D型駆逐艦までのCODOG式からCOGAG方式に変更されたことで、振動が問題となるディーゼル機関を廃することができ、艦の静粛性に良い影響をもたらした[4]。

最高速力は30Ktsとされているが、機関出力からするとかなりの余裕を持った数値とみられている[9]。一部の資料では、公称出力は112,000馬力という説もあり、速力30ktsというのが事実ならこちらの方が妥当なデータである可能性も指摘されている[9]。航続距離はガスタービン機関二基を用いて20ktsを発揮した場合で5,000nm、機関一基を用いて12〜15ktsで9,000nmと見積もられており、052D型駆逐艦の16ktsで4,500nmと比較しても、航続距離が大きく伸びていることが見て取れる[4]。

055型では合計出力100MWを超える四基のガスタービン機関に加えて、艦内の電力需要を満たすため推進系統とは別に四基の発電用ガスタービンエンジンを搭載している。発電量は合計30MWで、これは現状の各種装備品の電力需要を十分に満たすだけでなく、将来的に電磁レール砲など大電力を必要とする装備を追加する余裕を持たせるための措置とみられている[6]。なお、近年の水上戦闘艦艇では、艦の電気消費量が増大していることを踏まえて統合型電気推進を採用する国が増えているが、055型では統合型電気推進方式は採用していない。中国でも1990年代以降、統合型電気推進に関する研究は進められていたが、055型の第一次発注艦については、早期の戦力化が要求されたことにより新機軸の採用に伴うリスクを避けるためにCOGAG方式が採用された[4]。

機関配置はQC-280二基を並列に並べて機関室として、機関室を前後に配置。機関室ごとに吸排気ダクトを設けて、船体中央の二本煙突に繋げている。この煙突はステルス性を考慮して上部構造物と一体化している。ただし、大連で建造された055型では上部構造物から煙突を突き出した形に変更されており、造船所もしくは配属艦隊の見解の相違が伺える[2]。052B型、052C型、052D型では、艦内スペース確保のため単一の機関室を採用したことでダメージコントロール上の懸念要素となっていたが、055型では機関室を分離したことで艦の生存性改善を図っている[2]。ただし、二つの機関室が並んで配置されていることで、機関室を離した配置に比べると生存性に劣る点は否めなかった[2]。055型では、機関室を挟んでVLSが置かれているため、設計上の融通が利かないためやむを得ない措置であったとされる。乗員は280名と船体が大型化したにもかかわらず、052D型から20名しか増えておらず、艦内の自動化・省力化が進んでいることが見て取れる。

【兵装】
055型は、船体や機関については052D型から一新されたが、兵装については052D型で採用されたものを踏襲している。すでに実績のある兵装を搭載することで開発期間を短縮するとともに、兵器の共通性を持たせることで同一艦隊での装備統一や訓練・ノウハウの共有という利点が得られることが考慮されたものと思われる。

055型駆逐艦のVLSは、艦前部に64セル、ヘリコプター格納庫の直前に48セルの合計112セルと、052D型の64セルと比較すると倍近い増加を達成している。このVLSは052D型のために新規開発されたもので、軍事規格名称として「GJB 5860-2006」、輸出用名称としては「HT-1E型通用垂直发射装置」の名称が付与されている[10]。ミサイルの発射方式については、VLS内部でロケットモーターを点火するホットローンチ方式と、VLSから射出後に点火するコールドローンチ方式の双方の発射方式に対応しており、多種多様なミサイルに適合するVLSとされる。開発当初から汎用化、モジュール化を盛り込んだ設計を行う事で、各種艦艇への搭載を可能とするとしており、ミサイルのサイズに応じて大型、中型、小型の3種類のミサイルモジュールを開発し、異なるサイズのモジュールを混載する事も想定されている。モジュールに搭載可能なミサイルのサイズは以下の通り。
大型モジュール全長9mまでのミサイルの搭載が可能
中型モジュール全長7mまでのミサイルの搭載が可能
小型モジュール全長3.3mまでのミサイルの搭載が可能
モジュールの直径は850mmまでのミサイルの収納が可能なサイズ。新型多用途VLSの大型モジュールは、米軍のMK41 VLSやフランスのシルヴァーVLSよりもサイズが大きく、多用途VLSとしては世界最大級のサイズを備えている[11]。

一万トンを超える排水量の055型は大型モジュールを搭載している可能性が極めて高く、長射程のASBM(対艦弾道ミサイル)を含む多種多様な兵器のプラットフォームとして機能すると思われる。「GJB 5860-2006」VLSは8セルで1組となっており、各セルにはサイズに応じて1発から4発までの各種ミサイルの搭載が想定されている。VLSに搭載されたミサイルは密封された発射筒内での長期保存、メンテナンスフリーを実現する事が求められている。

VLSに搭載されるミサイルについては、052D型で搭載されたHQ-9A艦対空ミサイル、改良型のHQ-9B艦対空ミサイル、HQ-16B艦載空ミサイル、YJ-18A艦対艦ミサイル、Yu-8対潜ミサイル、CJ-10巡航ミサイルに加えて、YJ-21 ASBM、HQ-11艦対空ミサイルなどの搭載も考えられる[2][3][4][6][8]。特にHQ-11は三軍共通対空ミサイルとして開発された新型装備であり、米ESSMのように一つのセルに4発の搭載が可能なクアッドセル方式を採用していることから、055型の搭載ミサイル数を一挙に増やすことが出来る装備となっている[12]。

砲兵装としては、艦首に130mm艦載砲を一門搭載している。130mm艦載砲は、052D型に搭載されたH/PJ-45A 70口径130mm単装砲の改良型。実は、H/PJ-45Aは052D型に搭載した場合の重量過大が問題となり、設計当初は二つ用意されていた給弾機構を一系統に減じて、砲の反動抑制のため砲口にマズルブレーキを装着するなどの設計変更を施して実用化にこぎつけていた[2]。よって、排水量1万トンを超える055型では無理な軽量化の必要がないため、マズルブレーキは廃止され砲塔の外観も一部変更が見られる[2]。給弾機構も二つに戻されたことで発射速度についても改善されたことも考えられる。改造前のスペックとしては、発射速度40発/分で、最大射程29,500m[4]。通常弾のほかに、レーザー誘導砲弾の運用能力も付与されているとされる[4]。

近接防空火器は、艦橋前に1130型30mmCIWS(H/PJ-14型) 一基、ヘリコプター格納庫上にHQ-10A近接対空ミサイルの24連装発射機1基を搭載。この配置も052D型から引き継がれたものである[2][13]。

このほかの火砲として、フロッグマン対策用の55mm10連装擲弾発射機(輸出名CS/AR1対フロッグマンロケット砲/CS/AR1型反蛙人火箭炮)を必要に応じて艦橋構造物直後に搭載可能[2][14]。CS/AR1は口径53mmの擲弾を投射して、水上目標と水中目標の打撃を行う。照準はソナーと光学装置を用いる。射程は500mで、脅威となるフロッグマンを発見した場合殺傷用の擲弾、もしくは威嚇用の大音響弾を打ち込んで対応する[14]。艦内には、B515 324mm3連装魚雷発射管2基が搭載されており、魚雷発射の際には舷側のドアを開放して魚雷を射出するが、これも052D型駆逐艦と同じ方式。

052D型から大きな変化を見せたのは艦載ヘリコプター関連の艤装である。052C/052D型までの中国駆逐艦は、ロシア製Ka-28対潜ヘリコプターやフランスからライセンス権を得て国産化したZ-9C対潜ヘリコプターという二種類の艦載ヘリを搭載していたが、両機はいずれもコンパクトな機体であり格納庫もヘリ甲板もそれに合わせたサイズとなっていた。しかし、中国海軍では次期対潜ヘリとして10tクラスのZ-20Fの採用を決めており、既存の駆逐艦やフリゲイトの航空艤装では対応が難しいことは明白であった。055型は最初からZ-20Fのサイズに合わせた格納庫とヘリ甲板を採用し、さらに大型船体を生かして格納庫は二機分を確保した[15]。Z-20Fの導入に合わせて、荒天での着艦を支援するヘリコプターの着艦拘束装置についても変更が見られ、既存のフランスから導入したハープーン着艦拘束装置に加えて、カナダのベア・トラップ着艦拘束装置に似た新装備をヘリコプター甲板に組み込んでいる[15]。これはZ-9よりも大型のZ-20Fの着艦において既存の着艦拘束装置では能力不足となった可能性があり、新たに新型の着艦拘束装置を採用せざるを得なくなった可能性が指摘されている[15]。

Z-20Fは055型駆逐艦での発着艦テストを行っているのも確認されており、各種試験の結果が順調であれば程なくして配備にこぎつけるものと思われる[2]。複数のヘリコプターを一度にASW作戦に投入できることで、055型は多様な戦術的選択肢を得ることが可能となり、これは今後の中国海軍のASW作戦能力向上に重要な役割を果たすことになるであろう[7]。

【電子装備】
055型の艦橋構造物4面に貼り付けられた346B型多機能フェーズド・アレイ・レーダーは、052D型が装備していた346A型の拡大改良型であり、346A型よりアンテナ面積が拡大され、アンテナに組み込まれるアクティブ素子(移送器付の半導体送受信素子)の数も大幅に増加している。同レーダーは、窒化ガリウム半導体による送受信モジュールで構成され、周波数帯はSバンドを用いている[6]。大量の送受信モジュールで構成されるフェーズド・アレイ式レーダーは、アンテナ取り付けのため上部構造物や大型マストなどの壁面に一定の面積が必要とする。052D型と比較すると、前部の二面の取り付け位置は大差ないが、後部の二面については、米アーレイ・バーク級駆逐艦フライトA況燭里茲Δ法▲▲鵐謄覆療觝椣銘屬魄戝幣紊欧討り、探知距離を少しでも稼ごうとする努力が伺える。

052C/D型駆逐艦では、346/346A型を補完する省電力かつ長距離警戒が可能な517B型もしくはJY-27HA対空警戒レーダーを搭載して対空警戒の役割分担を行っていたが、055型ではこれらのレーダーは廃止された。代わりに採用されたのが異なる周波数のフェーズド・アレイ・レーダーを組み合わせたデュアル・バンド・レーダーの概念であった[2][6]。055型の場合は、艦橋構造物に取り付けられた346B型多機能フェーズド・アレイ・レーダーと、統合マストの中程に取り付けられたXバンドもしくはCバンド式のフェーズド・アレイ・レーダーを組み合わせてデュアル・バンド・レーダーとして活用されている[2][3][6]。346B型は、目標の探知と追尾を担当し、346B型よりも高い位置にあるXバンドレーダーは低空域の警戒・水上目標の探知と追尾・対空ミサイルの管制に用いられる[6]。055型はこの二種類のレーダーをデュアル・バンド・レーダーとして活用することで、ステルス目標を含めて、レーダーによる検出距離を60%向上させたとされている[2][3]。

十分な発電能力を有する055型は、発電量に限度がありレーダーの使い分けで電力を節約していた052D型とは異なり、複数のフェーズド・アレイ・レーダーを同時に作動させるに足る発電量を備えているが故のデュアル・バンド・レーダーを採用したと評することが出来るだろう。

055型の外観上大きな特徴は、レーダーや電子装備の多くが平面アンテナ化されて、艦橋やマスト、さらには船体各部に張り付けられたことである。艦橋構造物直後の統合マストには、上記のXバンドレーダーだけでなく、電子戦用アンテナ、通信アンテナなどが平面アンテナとして取り付けられている[2][3]。統合マスト上部の台形部分には、前方に航海用レーダー、その背後の塔マストには戦術データリンクシステム用アンテナと戦術航法装置TACAN用アンテナを配置している[2][3][6]。このほかにも、上部構造物側面に複数の平面アンテナが配置されており、それらの用途について様々な憶測が流れている。レーダーや電子機器の用途を一から再検討して、用途ごとの整理・再編を行ったうえで、ほとんどのアンテナを平面アンテナとしたことで055型の外観は極めてすっきりしたものとなり、電子装備ごとの干渉を減らしステルス性においてもRCS値低減に功を奏することとなった[2]。

後部構造物のマスト頂部には衛星通信用アンテナを収納したレドームが配置されており、そのマストを挟む形で各舷側に二基ずつのデコイ発射機が搭載される[3]。これは052D型に至る駆逐艦が搭載していた726-4型18連装デコイ発射機の発展型と思われる。同発射機は、32連装と24連装の二種類のランチャーで構成され、726-4型では筒柄ランチャーがむき出しだったのに対して、ランチャーをカバーで覆うRCS値低減策が施されている[16]。同システムは、フレア・煙幕弾、ミリ波/メートル波妨害用チャフ、対魚雷用デゴイなどを搭載し、レーダー/赤外線/光学誘導方式の誘導弾やミサイル、魚雷などの脅威から艦を保護する[16]

なお、2011年には055型と将来建造されるCATOBAR(Catapult Assisted Take Off But Arrested Recovery)式空母(後の003型空母「福建」)の搭載する戦闘システムと電子装備システムの技術を共有化することが決定された[2]。これは052C型駆逐艦001型空母「遼寧」052D型駆逐艦002型航空母艦(山東級)も見られた開発手法の踏襲であり、システムの共有化と開発リソースの節約に寄与したものと思われる。

【戦闘システム・データリンク】
米海軍が世界に先駆けて実用化した高い目標同時迎撃能力を有するイージス・システムの肝は、対空戦、対潜戦、対艦戦などあらゆる戦闘において、自動的に脅威度を判定し自艦のみならずデータリンクを通じて僚艦を含めた最適の攻撃方法を下す統合戦闘システムの存在である。

中国海軍でも052C型、052D型に至るまでの駆逐艦において高度な機能を有する統合戦闘システムの開発と改良を続けており、それらの経験を土台とした戦闘システムが055型では採用されている[2]。

前述したように、055型の開発ではシステムの整理と統合が進められたが、それは戦闘システムにおいても例外ではない。052D型駆逐艦では、自艦用のZKJ-5Aと艦隊指揮用のH/ZBJ-1という二系統の戦闘システムを搭載していたが、055型では指揮/火器管制/艦隊指揮の三分野を一体化した統合戦闘システムに進化することになる[2]。

現在戦の標準装備の一つとなっているのがデータリンクシステムであるが、055型は西側のLinK16に相当するJIDS/三軍共通データリンクシステムに加えて、総合データリンクシステム、ブロードバンド高速データリンクシステムといった複数のシステムを用いて、高速・大容量かつ電子妨害に強く気密性の高いデジタル・音声・データ通信を行う[2]。通信方法についても、通信衛星、水中通信システムなどを備えて通信・情報伝達能力を強化している[2]。055型の統合マストには002型航空母艦(山東級)に搭載されている大容量ブロードバンドデータリンクシステム用の平面アンテナと同じものが搭載されており、これはアメリカ海軍が提唱しているCEC(Cooperative Engagement Capability:共同交戦能力)を実現するためのシステムではないかとの考察も存在する[17]。

055型の電子戦システムは、統合マストの平面アンテナや後部構造物のデゴイ発射器、情報・管制システムなどで構成される。電波・光学・音波など複数のセンサーを用いて各種信号の探知と脅威度の判断を行い、それぞれの脅威に対して分析と警告を発し、各種方法で対抗措置を取ることで、自艦および艦隊の安全を図る[2]。

【ソナー】
055型駆逐艦のソナーは、052D型の装備を発展させたものとみられ、艦首バルバス・バウに収納されたバウソナー、艦尾に配置された曳航式ソナー(TASS)、可変深度ソナー(VDS)から構成されている[2][7]。

具体的な性能については不明な点が多いが、作戦システムが高度化し、音響・磁気ステルスに配慮した船体を備え、COGAG機関の採用によりこれまでの中国駆逐艦より静粛性が改善されているのは間違いないだろう[2][3][7]。さらに、高度な戦闘システムに裏打ちされたデータ処理能力を背景に、YU-8対潜ミサイルによる遠距離投射能力と、二機のZ-20F対潜ヘリコプターを搭載するなどの点で、055型のASW作戦能力はこれまでの中国駆逐艦のなかで最高レベルのものになると見られている[7]。

【派生型】
055型駆逐艦は第一建造艦が2023年までに就役したばかりだが、早くも第二次建造艦に着工していることが衛星写真から明らかになっている[2]。

055型は大型船体に強力な発電装置を備え、装備更新や新型兵装の搭載の余地を十分に取った艦であることから、今後も様々な能力向上が図られるものとみられている。

これから施される可能性のあるアップグレードとしては、第一次建造艦では見送られた統合電気推進機関、現在開発が進んでいる電磁レール砲やレーザー砲といった新装備、さらに弾道ミサイル迎撃能力の付与といったものが考えられており、今後の動向が注目される[2][4][6]。

【総評】
055型駆逐艦は、中国海軍の外洋艦隊化を象徴する艦の一つであり、052C型や052D型で得られた技術やノウハウを十分に反映して開発されたことで、新機軸を盛り込んだ大型艦でありながら3年間で8隻を就役させるという急速な建造ペースを可能とした。

055型は、空母部隊の直衛任務の中核艦となると共に、対空・対地・対艦・対潜の各分野においてその能力を発揮する艦となり、充実した戦闘システムと通信・データリンクにより空母艦隊のネットワーク中心としての役割も果たすことになる[2][3][4][6][9][17]。

055型が採用した技術を見ると、確かにデュアル・バンド・レーダーや統合型戦闘システムなど同級から採用された新装備もあるが、機関や兵装の多くは052C型や052D型での運用実績のあるものが選ばれていることが分かる。その船体サイズについても、空母部隊の直衛艦として長期間の外洋航行を可能とし、各種脅威に対抗し得る十分な兵装を搭載する余裕のあるプラットフォームとして選定されたものであり、13,000tと言う満載排水量も当初の見積もり20,000tからできる限り圧縮した結果であった。

055型は、採用すべきところには積極的な新機軸を盛り込んでいるが、無理に全ての装備を更新するのではなく、実績のある装備は前級から引き継いで、無理のない形で実用化にこぎつけた手堅い設計の艦だと評することが出来るだろう。

052B型駆逐艦に端を発し、052C型と052D型を経て、既に発展の限界に達していた同シリーズの船体に別れを告げ、将来のアップグレードの余地が十分にある新たなプラットフォームを採用した055型は、21世紀前半の中国海軍の新たな駆逐艦ファミリーの開祖となるだけの潜在能力を備えており、今後、新たな装備を導入して継続的に戦力のフォローアップを図っていく事になるだろう。

性能緒元(現状では未確定なものも多い)
満載排水量12,000〜14,000t(諸説あり)
全長180m
全幅21m
喫水6.7m
主機COGAG 2軸
 QC-280(GAT-25000)ガスタービン 4基(140,000馬力、112,000馬力説もあり)
速力30kts
航続距離5,000nm/20kts、9,000nm/12〜15kts
乗員280名

【兵装】(現状では未確定なものも多い)
対空/対艦/巡航/対潜ミサイルVLS(1組8セル)14基(112セル)
対空ミサイルHQ-9A長距離対空ミサイル(海紅旗9A) / VLS(6セル)
HQ-9B艦対空ミサイル(紅旗9B)/ VLS
HQ-10A艦対空ミサイル(紅旗10A)/24連装発射機1基
対艦ミサイルYJ-18A艦対艦ミサイル(鷹撃18)/ VLS
巡航ミサイルCJ-10巡航ミサイル(長剣10)/ VLS
弾道ミサイルYJ-21弾道ミサイル(鷹撃21)/ VLS(注:型式名など不明点多し)
対潜ミサイルYU-8対潜ミサイル(魚8/CY-3/長纓3号)/ VLS
魚雷YU-7 324mm短魚雷 / B515 324mm3連装魚雷発射管2基
H/PJ-45A 70口径130mm単装砲1基
近接防御H/PJ-11(1130型)30mmCIWS1基
艦載:ヘリコプターZ-20F対潜ヘリコプター2機(予定)
注:必要に応じて55mm10連装擲弾発射機(輸出名CS/AR1対フロッグマンロケット砲/CS/AR1型反蛙人火箭炮)を搭載可能。

【電子兵装】(現状では不明な点が多い)
3次元対空レーダー346B型多機能フェーズド・アレイ・レーダー4基
対空/対水上レーダーCバンドもしくはXバンドフェーズド・アレイ・レーダー4基
 327G型(EFR-1/Rice Lamp)CIWS用2基
航海レーダー 1基
戦闘システム統合戦闘システム1基
ECMシステム
チャフ/フレア発射装置32連装デコイ発射機2基
24連装デコイ発射機2基
ソナーバウソナー1基
曳航式ソナー(TASS)1基
可変深度ソナー(VDS)1基
データリンク三軍通用デジタルデータリンク 
 ブロードバンド高速データリンクシステム
IFF
衛星通信用アンテナ  

同型艦
第一次発注艦
1番艦南昌Nánchāng101江南長興造船廠で建造、2017年6月28日進水。2020年1月12日就役。北海艦隊所属
2番艦拉薩Lāsà102江南長興造船廠で建造、2018年4月28日進水。2021年3月2日就役。北海艦隊所属
3番艦大連Dàlián105大連紅旗造船廠で建造、2018年7月3日進水。2021年4月23日就役。南海艦隊所属
4番艦延安Yán'ān106大連紅旗造船廠で建造、2018年7月3日進水。2022年2月2日就役。南海艦隊所属
5番艦鞍山Ānshān103江南長興造船廠で建造、2019年9月12日進水。2021月11月11日就役。北海艦隊所属
6番艦遵義Zūnyì107大連紅旗造船廠で建造。2019年12月27日進水。2022年11月就役。南海艦隊所属
7番艦無錫Wúxī104江南長興造船廠で建造。2020年5月9日進水。2022年3月10日就役。北海艦隊所属
8番艦咸陽Xiányáng108大連紅旗造船廠で建造。2020年8月30日進水。2022年12月就役南海艦隊所属
注:第二次発注艦の建造も確認済み

【参考資料】
[1] U.S. Naval Institute「Type 055 Renhai-class Cruiser: China’s Premier Surface Combatant」(Eric Wertheim/ March 2023 Vol. 149/3/1,441) https://www.usni.org/magazines/proceedings/2023/ma...
[2]MDC軍武狂人夢「055型導彈驅逐艦(新)」http://www.mdc.idv.tw/mdc/navy/china/055-new.htm
[3]Caldwell, Daniel; Freda, Joseph; Goldstein, Lyle J.「China's Dreadnought? The PLA Navy's Type 055 Cruiser and Its Implications for the Future Maritime Security Environment」『China Maritime Report (U.S. Naval War College) 』No.5(2020年2月)
[4]银河「专题-大洋砥柱-055型万吨大驱后续发展方向」『舰载武器』2021.02/No.355(中国船舶重工集团有限公司)20〜36ページ
[5]6park.com「075首次海试有何特点?时间超过15天,海上各种撒欢狂奔!」(2020年8月21日)https://club.6parkbbs.com/military/index.php?app=f...
[6]多田智彦「大型ミサイル駆逐艦に対決「アーレイ・バークFL 供彗弌055型南昌」」『軍事研究2020年12月剛別冊 新兵器最前線シリーズ―米中の”戦場別軍事対決”』(Japan Military Review/2020年12月1日)88〜95ページ
[7]银河「谈谈055型导弹驱逐舰反潜作战能力」『舰载武器』2020.09/No.345(中国船舶重工集团有限公司)16〜24ページ
[8]Youtube「独家探访大连舰 “万吨大驱”罕见公开居住区画面!直击130主炮全力开火 全面感受中国055型导弹驱逐舰的真实战斗力!「军事纪实」20230417 | 军迷天下」https://www.youtube.com/watch?v=9AapFa1JBEg
[9]大塚好古「注目の中国軍艦 055型駆逐艦」『世界の艦船』2021.4(海人社)94〜97ページ
[10]捜狐「值得期待!中国052DE驱逐舰模型亮相珠海航展,这也要卖吗?」(2022年11月4日/《军武次位面》作者:路芷) https://www.sohu.com/a/602584516_120542825
[11]环球网「052D驱逐舰装备世界最强大垂直发射系统」(2012年9月4日/来源:环球网军事综合)https://mil.huanqiu.com/gallery/9CaKrnQgLwS
[12]网易「新生产的红旗-11还挺好看,涂装很有“俄军”的味道。」(2023年3月3日/来源: 八卦了么me)https://www.163.com/dy/article/HUUBG7CB0537MZKA.ht...
[13]手机新浪网「第二艘055驱逐舰即将下水:两船厂建造数量竟然这么多」(2018年1月12日)https://jmqmil.sina.cn/ttspider/doc-ifyqptqv825587...
[14]新浪网「官方首公开055大驱一新式武器 让“水鬼”有来无回」(2020年1月23日/作者:寰球前沿观察) https://mil.news.sina.com.cn/jssd/2020-01-23/doc-i...
[15]银河「鹏翼万里 进入20时代的中国海军舰载直升机」『舰载武器』2020.04/No.335(中国船舶重工集团有限公司)16〜33ページ
[16]新浪网「我055大驱共4部干扰弹发射器 模块化设计比美军高明」(2018年10月25日)https://mil.news.sina.com.cn/jssd/2018-10-25/doc-i...
[17]新浪网「中国双航母服役仍只是解决有无问题 目光还需更长远」(2019年12月18日/观察者网) https://mil.news.sina.com.cn/china/2019-12-18/doc-...
[18]MDC軍武狂人夢「052D導彈驅逐艦」http://www.mdc.idv.tw/mdc/navy/china/052d.htm

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