日本の周辺国が装備する兵器のデータベース


▼051C型駆逐艦に搭載されたS-300FM「リフM」(SA-N-20)のVLS(垂直発射装置)。

▼S-300FMの管制を行う30N6E1(ツーム・ストーン)フェイズド・アレイ・レーダー。


性能緒元
全長7.5m
直径0.515m
重量1,800kg
弾頭重量143kg(HE)
最大速度マッハ6
射程120km
射高25,000〜30,000m
誘導方式指令更新付慣性、セミアクティブTVM(Track-Via-Missile)。終末セミアクティブレーダー誘導
装備機種051C型駆逐艦(ルージョウ型/旅洲型)

【概要】
48n6Ye艦対空ミサイル(システム全体の名称はS-300FM「Rif-M」。NATOコードネームはSA-N-20「Gargoyle」。)は、ロシアのAltair設計局が開発した長距離SAMシステムで、中国海軍は2002年に2セットのリフMをロシアから購入し、051C型駆逐艦(ルージョウ型/旅洲型)に搭載した。

1970年代、ソ連海軍ではキーロフ級、スラヴァ級といった開発中の新型巡洋艦に搭載するエリア・ディフェンス用艦対空ミサイルシステムの開発をAltair設計局に命じた。ソ連海軍の艦対空ミサイルシステムは地対空ミサイルを転用して開発されるケースが多いのが特徴であるが、この新型艦対空ミサイルも例外ではなく、Almaz設計局が開発した長距離地対空ミサイルS-300(SA-10「Grumble」)をベースにして開発される事が決定された[2][3]。

S-300は、V-75(SA-2「Guideline」)地対空ミサイルの後継として1960年代後期に開発に着手された長距離地対空ミサイルシステムであり、長射程と多目標同時攻撃能力を有する先進的な地対空ミサイルであった。S-300艦載型(S-300F「Fort」(NATOコードネームSA-N-6「Grumble」))の開発は1971年に開始された。ミサイル発射機はリアクションタイムに優れた垂直発射方式が採用されたが、これはソ連海軍の艦対空ミサイルとしては初の試みであった。フォールトの試作品は、1977年にカーラ型巡洋艦「アゾフ」に搭載されて海上での運用試験が行われた[11]。実戦配備は、1980年であり、同年に就役した巡洋艦キーロフに搭載された。ソ連海軍では、長距離ミサイルのフォールト(射程75〜90km)、中距離ミサイルのウーラガン(射程30km)、短距離ミサイルのキンジャール(3K95/SA-N-9)(射程12km)による多層的迎撃システムを構築して、強固な防空網を形成することを意図していた。

1992年に登場したフォールトの改良型がS-300F「フォールトM」。フォールトMは、地対空ミサイルS-300の発展型であるS-300PMU1と共通の技術を使用して開発された。ミサイルのレーダー兼イルミネーターは最大探知距離300kmの30N6E(NATOコード「Tomb Stone」)レーダーに変更され、ミサイルの射程も延伸されている。フォールトMは、ロシア海軍ではキーロフ級巡洋艦4番艦「ピョートル・ヴェリキー」に搭載されている。中国に輸出されたS-300FM「リフM」はこのフォールトMの輸出型。

【性能】
48n6Yeの主要項目は以下の通り。全長7.5m、直径0.515m、重量1,800kg、弾頭重量143kg(HE)、最高速度マッハ6、最大射程120km、最大射高25,000〜30,000m[1][6][7]。射程距離150kmは、中国海軍の艦対空ミサイルの中で最長の射程となる。誘導方式は、中間誘導が指令更新付慣性、セミアクティブTVM(Track-Via-Missile)、終末誘導ではセミアクティブレーダー誘導が使用される。目標に接近すると、弾頭が爆発し重さ4gの弾片20,000個を四散させて目標を破壊する[6]。48n6yeは、航空機や対艦ミサイルだけではなく、限定的ではあるが戦術弾道ミサイルの迎撃能力も有しているとされる。ただし弾道ミサイル迎撃時には最大射程40kmと、航空機迎撃時に比べて射程は制限される。

48n6yeは発射セル8基を円形に配置して組み合わせたB-303A VLSに装填されている。S-300FMのVLSは、ミサイルを打ち上げるのは1セルのみで、発射後はVLSが回転して次のミサイルランチャーが打ち上げセルにセットされるリボルバー式VLSとなっている。ミサイルランチャーに収められたミサイルは10年間のメンテナンスフリーを達成している[2]。S-300FMは、セル下部から高圧ガスで打ち出され高度20〜25mに達した後ロケット・モーターに点火するコールドガス発射方式を採用している[5]。コールドガス発射方式はロシアやフランスで採用されているもので、利点としてロケット・モーターの点火が発射機外で行われるため船体側が安全であり、発射機内でのブラストの処理を行う必要がなく、その結果VLSの構造を簡素・軽量化できる。051C型駆逐艦はB-303A VLSを艦橋直前の第2甲板に2基、後部上構に4基(計48発)装備している。

目標の探知及びミサイルの管制は30N6E1(NATOコード「ツーム・ストーン」)フェイズド・アレイ・レーダーによって行われる[1][4]。30N6E1は最大探知距離300km、最大120kmまでミサイルの誘導が可能[6][12]。レーダー1基で同時に6発のミサイルを誘導する能力を有している。通常、撃墜確率を高めるために1目標に対して2発のミサイルを指向させるので、同時に迎撃可能な目標数は3つとなる[10]。051C型は、後部上構に1基の30N6E1を搭載している。ただし、この位置だと艦橋構造物が視角となって前方の一部のエリアが観測できないという問題が存在すると見られている[6]。30N6E1は、作動時にレーダーアンテナが立ち上がる構造になっており、未使用時にはレーダーアンテナは折り畳まれる様になっている。

S-300FMを搭載した051C型の就役により、中国海軍で唯一エリア・ディフェンス防空艦を配備していなかった北海艦隊もようやくその欠如を補う事が可能となった。中国海軍がHHQ-9艦対空ミサイルを開発しつつ、ロシアからS-300FMという似た位置づけの装備を並行して調達した件については、新規開発のHHQ-9のバックアップとして購入されたとの見解が一般的である。S-300FM搭載艦2隻はいずれも北海艦隊に配属されているが、これについては弾道ミサイル迎撃能力を有する051C型を黄海や渤海湾に展開させることで、北京首都圏や天津といった人口密集地や原子力潜水艦の基地など重要拠点への弾道ミサイルや海上からの巡航ミサイルによる攻撃を防ぐ役割が与えられると見られている[6]。

「漢和防務評論」2008年5月号の報道によると、中国はロシアとの間でS-300FM艦対空ミサイルシステムの購入に関する交渉を行っているとの事[13]。これは中国海軍が051C型の追加建造、もしくはその発展型防空駆逐艦を建造する意向の表れではないかと推測される。

【参考資料】
[1]Jane’s Fighting Ships 2007-2008「DESTROYERS:LUZHOU CLASS(TYPE 051C)(DDGHM)」(Jane’s Information Group)122頁
[2]Naval Weapons Systems ISSUE44-2006「SA-N-6’Grumble’(V601 Fort/Rif)」(Jane’s Information Group)407-409頁
[3]Strategic Weapons Systems ISSUE45-2006「SA-N-6’Grumble’(S-300 Fort/Rif)」(Jane’s Information Group)297-299頁
[4]世界の艦船2008年2月号「注目の中国新型艦艇2 水上戦闘艦」(海人社)
[5]現代艦船2008-09B「独木握天-俄羅斯“里夫”艦空導弾系統」(兪丹雯/現代艦船雑誌社)
[6]現代兵器2007年7月号(総第343期)「天降蛟龍-中国海軍新鋭戦艦巡礼」(杜東冬 編訳・一然 編集/中国兵器工業集団公司)

[7]Chinese Defence Today「S-300F - RIF Ship-to-Air Missile」
[8]Encyclopedia Astronautica「S-300」
[9]WAFARE.RU:Russian Military Analysis「SA-N-6 Grumble - S-300 Rif」
[10]Yahoo!ブログ〜ロシア・ソ連海軍〜「広域防空システムS-300F「フォールト」」(2007年5月5日)
[11]Вестник ПВО Авторский проект Саида Аминова「КОРАБЕЛЬНЫЙ ЗРК С-300Ф "ФОРТ"
(SA-N-6 Grumble)
[12]rocet.boom.ru「ЗРК Форт-М」
[13]漢和防務評論2008年5月号「俄羅斯與中国的水面艦合作前景」(平可夫)

【関連項目】
051C型駆逐艦(ルージョウ型/旅洲型)

中国海軍

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