639型音響測定艦

北調991（造船所での名称は「東遠02」）は中国海軍の音響測定・試験艦。中国船舶重工業集団公司傘下の中国船舶東遠科技発展有限公司が中心となって第701及び702研究所と連携して研究開発を実施し、建造は湖北省武漢市にある武昌造船廠760所で行われた。同艦の特徴であるディーゼル・エレクトリック推進システムは第712研究所が開発を担当、主な船用設備と特殊装備は武漢船用機械有限公司、河南柴油機集団有限公司、山西汾渝西重工有限公司、重慶華渝電気儀表総廠、北京長城無線廠等が開発を担当した。北調991は中国海軍初のディーゼル・エレクトリック推進艦であり「中国が自主開発して知的財産権を保有する排水量1,000tクラスの浅喫水SWATH船」と独自に評価されている。設計では浅喫水SWATH船体、SWATH船体の強度確保、統合式ディーゼル・エレクトリック推進システム、高精度・長距離特殊試験装置、船体状態検知装置などが主要な解決テーマとなった。設計では全面的にCAD設計が取り入れられ、設計の正確性、重量や重心の調整や工作精度の向上に資している。北調991の建造によって、SWATH船体やエレクトリック推進等の技術面において顕著な技術取得がなされたとの事。

北調991はSWATH（Small Waterplane Area Twin Hull）船体の採用により広い甲板面積を確保しており、安定性に優れたプラットフォームを実現している。その甲板一杯に上部構造物が設置されている。船体中央にはソナーを下ろすため水面に開いた開口部と曳航ソナーの吊り下げ・回収を行うためのクレーンが設置されている。停泊しつつソナーを使用する際には船体の前後3箇所にある錨を下ろして船体を安定させる。動力部は振動の少ないディーゼル・エレクトリック方式を採用しており、これは海上自衛隊のひびき型音響測定艦が20年以上前に採用した方式と同じタイプ。機関部が喫水線よりも上部に配置されるなど、水中雑音の発生を極力抑える配置方法を採用している。低速航行しつつ曳航ソナーを牽引して潜水艦を探知する際に効果を発揮すると共に、高精度な各種検知機器に極力影響を与えない事が目的とされている。

北調991は曳航ソナーを使用して静粛性の高い日米潜水艦の長距離探知や音紋収集などに用いられている。所属は北海艦隊で母港は大連。本艦の開発に携った第702研究所では中国科学院向けの海洋観測船として北調991に良く似たSWATH船体の「実験1号」を設計している。

■性能緒元