89A式装甲兵員輸送車
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rglc85tj8h 2024年09月08日(日) 17:56:27履歴
▼中国国家博物館で開催された改革開放40周年記念展示会において公開された89A式装甲兵員輸送車の模型（2018年12月3日に撮影）
89A/89G式装甲兵員輸送車は、85式/89式装甲兵員輸送車（YW-531H/YW-534）に代わって21世紀に入ってから量産が開始された装軌式装甲車。開発は85式/89式のメーカーである中国北方工業公司によって行われた。当初、正式な名称が不明であり、中国語の改Gaiを意味する「89G式」「89改進型」などと呼称されていたが、2018年の年末に北京にある中国国家博物館で開催された「伟大的变革——庆祝改革开放40周年大型展览（偉大な変革――改革開放40周年祝賀大型展覧会）」において同車の模型が「89A式装甲運輸車」として公開されたことで、その名が明らかになった[1]。
一見、85式/89式の派生型と思われる名称であるが、実際には89A式は、89式の派生型ではなく、新規設計された別個の装甲車ファミリーを構成していることが指摘されている[2]。89A式の開発のベースとなったのは、89式装甲兵員輸送車ではなく、21世紀を迎える中国陸軍の自走砲などの共通シャーシとして開発された「第2.5世代シャーシ（中国語だと「二代半底盤」）」であった[2]。ただし、装甲兵員輸送車化に当たって、設計にかなり手を加えたので、外観上の共通点は少なくなっている。
【89A式の特徴について】
89A式の外観は、車体前面を楔形に成形し、車体側面は垂直装甲を採用し、「第2.5世代シャーシ」よりも装甲厚と強度を増した装甲板に変更して防御力の改善が図られている[2]。車体前面の前照灯は、正面装甲に切り欠きを設けてその中に配置されており[2]、これは89式装甲兵員輸送車の外装式に比べて走行時の破損のリスクを抑える設計を取り入れたものと推測される。
上記の設計手法は、89式装甲兵員輸送車よりも04A式歩兵戦闘車との類似性が見受けられる[2]。しかし、形状こそ類似しているものの、04A式のメーカーが湖南江麓集団なのに対して、89A式は89式を開発した中国北方工業公司が手掛けており、両車は外観こそ類似点があるものの、異なる種類のAFVである。
両車の識別箇所は、車体前面下部の装甲板の形状、車体上部のエンジングリルやパネルの配置、そしてサイドスカートの補強リブの処理の相違にある[2]。それぞれの特徴については下記の通り。
車体上部にあるエンジングリルが確認できる機会はあまりないので、サイドスカートの補強リブの違いが、89A式ファミリーと04A式ファミリーを区別するもっとも一般的な方法とされている[2]。
【89A式の性能】
89A式の車体は圧延溶接鋼板装甲を採用している。車体正面は前方に突出して良好な避弾経始をなしているが、車体の側面と後面は垂直装甲で構成されている。車内配置は、車体前部左側に操縦手席と車長席、前部右側に機関室、その後方が兵員区画となっている。操縦手と車長には液晶パネルの情報端末が用意されており、車載式総合電子システムとデータリンクを活用し、情報戦を前提とした充実した装備を備えている。兵員区画は装甲兵員輸送車型では歩兵の輸送に、それ以外の派生型では多様な装備を搭載するスペースとして用いられている。
動力系統はパワーパック化されており、エンジンはドイツ (Deutz AG)社製のエンジンを基にして中国で製造したBF6M1015C型V6ターボチャージド水冷ディーゼルエンジン（450馬力）とCH300型トランスミッションから構成されている[3]。新型パワーパックの採用により、89A式の機動力は89式装甲兵員輸送車と比べて、その性能が大きく向上したとのこと[3]。中国のAFVは水上航行性能を備えていることが多いが、89A式もその例に漏れず、水上浮航が可能[3]。車体後部にはスクリューやウォータージェットなどの装備がないことから、水上航行時の推力は履帯の回転によって得られるものと思われる。
【派生型について】
89A式は、中国陸軍の第2.5世代汎用シャーシとして、すでに10を超えるバリエーションが登場している。
下の図表は主な派生型を記載したもの。
【総評】
89A式は、装甲兵員輸送車が先にあって後から各種派生型が登場したというより、当初からとしてファミリー化を前提にした新世代の装軌式装甲車共通車体として開発が成されたと見なすのが妥当だと思われる。
89A式は同時期に登場した04A式歩兵戦闘車ベースのシャーシよりも安価であり、AFVシャーシのハイ・ローミックス体制を構築しているとされる[3]。シャーシに高い搭載力や機動性が求められる場合は04A式を、そうでない場合は価格と性能のバランスの取れた89A式を選択することで、費用対効果のバランスを取ることが可能となる[3]。派生型を前提として相応のサイズを確保し、履帯による良好な野外機動性を有し、各種装備に対応したシャーシをそろえた本車シリーズの配備は、部隊の装軌式AFVの共通性を高め、調達コストの節約、後方支援や整備部隊の負担を軽減するなど多くのメリットを有する[2]。
89A式は、すでに多数のバリエーションが登場しており、21世紀の中国陸軍の重型合成旅の装軌式車両の中で重要な役割を果たす車両としての地位を占めることに成功したと評価し得る。
【参考資料】
[1]东方网-军事「 “战场出租车”也雄壮！83集团军某旅接装新型装甲运输车」(夏阳／2021年5月7日)https://n.eastday.com/pnews/162038932477011983 (閲覧日2021年12月21日)
[2]网易「东部战区列装新型履带侦察车：升降电子桅杆+30毫米机关炮」(演兵场/2021年4月19日) URL: https://www.163.com/dy/article/G7VC0BOK0515DHOR.ht... (閲覧日2021年10月3日)
[3] CareerEngine | 北美生活引�押�89改履带式装甲侦察车侦查设备亮相，引导05式自行火炮打击」(星火观察/2020年12月10日) URL: https://posts.careerengine.us/p/5fd1901b7ea9f024c9... (閲覧日2021年10月3日)
[4]东方网「新型重型侦察车首次亮相：升降式电子桅杆+遥控武器站」（作者：夏阳/2021年8月28日）https://j.eastday.com/p/163012411477012125
10式120mm自走迫撃砲(PLZ-10）
中国陸軍
89A/89G式装甲兵員輸送車は、85式/89式装甲兵員輸送車（YW-531H/YW-534）に代わって21世紀に入ってから量産が開始された装軌式装甲車。開発は85式/89式のメーカーである中国北方工業公司によって行われた。当初、正式な名称が不明であり、中国語の改Gaiを意味する「89G式」「89改進型」などと呼称されていたが、2018年の年末に北京にある中国国家博物館で開催された「伟大的变革——庆祝改革开放40周年大型展览（偉大な変革――改革開放40周年祝賀大型展覧会）」において同車の模型が「89A式装甲運輸車」として公開されたことで、その名が明らかになった[1]。
一見、85式/89式の派生型と思われる名称であるが、実際には89A式は、89式の派生型ではなく、新規設計された別個の装甲車ファミリーを構成していることが指摘されている[2]。89A式の開発のベースとなったのは、89式装甲兵員輸送車ではなく、21世紀を迎える中国陸軍の自走砲などの共通シャーシとして開発された「第2.5世代シャーシ（中国語だと「二代半底盤」）」であった[2]。ただし、装甲兵員輸送車化に当たって、設計にかなり手を加えたので、外観上の共通点は少なくなっている。
【89A式の特徴について】
89A式の外観は、車体前面を楔形に成形し、車体側面は垂直装甲を採用し、「第2.5世代シャーシ」よりも装甲厚と強度を増した装甲板に変更して防御力の改善が図られている[2]。車体前面の前照灯は、正面装甲に切り欠きを設けてその中に配置されており[2]、これは89式装甲兵員輸送車の外装式に比べて走行時の破損のリスクを抑える設計を取り入れたものと推測される。
上記の設計手法は、89式装甲兵員輸送車よりも04A式歩兵戦闘車との類似性が見受けられる[2]。しかし、形状こそ類似しているものの、04A式のメーカーが湖南江麓集団なのに対して、89A式は89式を開発した中国北方工業公司が手掛けており、両車は外観こそ類似点があるものの、異なる種類のAFVである。
両車の識別箇所は、車体前面下部の装甲板の形状、車体上部のエンジングリルやパネルの配置、そしてサイドスカートの補強リブの処理の相違にある[2]。それぞれの特徴については下記の通り。
| 車体前面下部の装甲板の形状 | 04A式は一枚板なのに対して、89A式は二枚板で構成され途中で角度が変わっている[2]。 |
| 車体上部のエンジングリルやパネルの配置 | 04A式はエンジングリル二枚が並列に配置されているのに対し、89A式は車体中央のエンジングリルの後ろに点検用ハッチを配置して、ハッチの右隣にもう一枚のグリルを配している点が異なる |
| サイドスカートの補強リブの処理の相違 | 04A式ではサイドスカート一枚ごとに補強リブを斜め線にして4本入れているのに対して、89A式は波状のリブを上下に配置している[2]。 |
【89A式の性能】
89A式の車体は圧延溶接鋼板装甲を採用している。車体正面は前方に突出して良好な避弾経始をなしているが、車体の側面と後面は垂直装甲で構成されている。車内配置は、車体前部左側に操縦手席と車長席、前部右側に機関室、その後方が兵員区画となっている。操縦手と車長には液晶パネルの情報端末が用意されており、車載式総合電子システムとデータリンクを活用し、情報戦を前提とした充実した装備を備えている。兵員区画は装甲兵員輸送車型では歩兵の輸送に、それ以外の派生型では多様な装備を搭載するスペースとして用いられている。
動力系統はパワーパック化されており、エンジンはドイツ (Deutz AG)社製のエンジンを基にして中国で製造したBF6M1015C型V6ターボチャージド水冷ディーゼルエンジン（450馬力）とCH300型トランスミッションから構成されている[3]。新型パワーパックの採用により、89A式の機動力は89式装甲兵員輸送車と比べて、その性能が大きく向上したとのこと[3]。中国のAFVは水上航行性能を備えていることが多いが、89A式もその例に漏れず、水上浮航が可能[3]。車体後部にはスクリューやウォータージェットなどの装備がないことから、水上航行時の推力は履帯の回転によって得られるものと思われる。
【派生型について】
89A式は、中国陸軍の第2.5世代汎用シャーシとして、すでに10を超えるバリエーションが登場している。
下の図表は主な派生型を記載したもの。
| 制式名称 | 型式名 | 主な特徴 | |
| 89A式装甲兵員輸送車型 | ZSD-89A？ | 武装は12.7mm重機関銃一門を車体中央に配置した一人用銃座に搭載。車体両側面にはガンポートが各3基配置されており乗車戦闘能力を有する。 | |
| コマンドポスト型 | 車体後部の兵員室をかさ上げして、指揮管制に必要な装備の搭載スペースを確保している | ||
| 装甲救護車型 | 装甲兵員輸送車型と共通のシャーシを用いる。武装も装甲兵員輸送車型とおなじ12.7mm重機関銃を銃塔に搭載。これは非武装車両であることが通常である装甲救護車としては異例。 | ||
| 装甲回収車型 | 装甲兵員輸送車型と共通のシャーシを用いて、車体後部にクレーンを配置。車体中央の銃塔は撤去された。 | ||
| 装甲救護車型 | コマンドポスト型と共通のシャーシを使用。コマンドポスト型が搭載する伸縮式通信用アンテナは未搭載なのが相違点 | ||
| 装甲偵察車型(1) | コマンドポスト型と共通のシャーシを使用。兵員室中央に観測センサーを内蔵した伸縮式タワーを設置。観測センサーは光学／電子センサーと戦場レーダーから構成されるとみられる。固有の武装はなし。なお、装甲偵察車型(1)、同(2)は正規名称が不明につき本サイトで命名した仮名称。 | ||
| 装甲偵察車型(2) | 装甲兵員輸送車を基にして一部改正を加えたシャーシを採用。車体中央に30mm機関砲一門を装備した砲塔を搭載。砲塔後部には観測センサーを内蔵した伸縮式タワーを設置。観測センサーは光学／電子センサーと戦場レーダーから構成されるとみられる。歩兵戦闘車なみの武装を備えていることから強硬偵察や部隊に随伴して弾着観測など火力打撃システムの一環を構成するとみられる。ドローンとの連携運用も考慮されている。重装備で構成される重型合成旅の偵察部隊の装備として開発が成された。なお同車の砲塔は08式装輪歩兵戦闘車「雪豹」（ZBL-08）の装甲偵察車型でも採用されている。 | ||
| 装甲偵察車型(3) | コマンドポスト型と共通のシャーシを使用するが天井のかさ上げ高さはコマンドポスト型より抑えられている。兵員室中央右部に観測センサーを内蔵した伸縮式タワーを設置。観測センサーは光学／電子センサーにより構成されるとみられる。非武装だった装甲偵察車(1)とは異なり、兵員室中央左側に12.7mm重機関銃を装備した遠隔操作ステーションを搭載する[4]。装甲偵察車型(3)も制式名称不明につき本サイトで命名した仮名称。 | ||
| 10式120mm自走迫撃砲(PLZ-10） | PLZ-10 | 装甲偵察車型(2)と共通のシャーシを用いて、後装式120mm迫撃砲を装備した全周旋回式砲塔を搭載した自走迫撃砲。 |
【総評】
89A式は、装甲兵員輸送車が先にあって後から各種派生型が登場したというより、当初からとしてファミリー化を前提にした新世代の装軌式装甲車共通車体として開発が成されたと見なすのが妥当だと思われる。
89A式は同時期に登場した04A式歩兵戦闘車ベースのシャーシよりも安価であり、AFVシャーシのハイ・ローミックス体制を構築しているとされる[3]。シャーシに高い搭載力や機動性が求められる場合は04A式を、そうでない場合は価格と性能のバランスの取れた89A式を選択することで、費用対効果のバランスを取ることが可能となる[3]。派生型を前提として相応のサイズを確保し、履帯による良好な野外機動性を有し、各種装備に対応したシャーシをそろえた本車シリーズの配備は、部隊の装軌式AFVの共通性を高め、調達コストの節約、後方支援や整備部隊の負担を軽減するなど多くのメリットを有する[2]。
89A式は、すでに多数のバリエーションが登場しており、21世紀の中国陸軍の重型合成旅の装軌式車両の中で重要な役割を果たす車両としての地位を占めることに成功したと評価し得る。
【参考資料】
[1]东方网-军事「 “战场出租车”也雄壮！83集团军某旅接装新型装甲运输车」(夏阳／2021年5月7日)https://n.eastday.com/pnews/162038932477011983 (閲覧日2021年12月21日)
[2]网易「东部战区列装新型履带侦察车：升降电子桅杆+30毫米机关炮」(演兵场/2021年4月19日) URL: https://www.163.com/dy/article/G7VC0BOK0515DHOR.ht... (閲覧日2021年10月3日)
[3] CareerEngine | 北美生活引�押�89改履带式装甲侦察车侦查设备亮相，引导05式自行火炮打击」(星火观察/2020年12月10日) URL: https://posts.careerengine.us/p/5fd1901b7ea9f024c9... (閲覧日2021年10月3日)
[4]东方网「新型重型侦察车首次亮相：升降式电子桅杆+遥控武器站」（作者：夏阳/2021年8月28日）https://j.eastday.com/p/163012411477012125
10式120mm自走迫撃砲(PLZ-10）
中国陸軍