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rglc85tj8h 2022年06月21日(火) 13:35:30履歴



▼仏GIAT社製の爆発反応装甲(ERA)装着型

■性能緒元
重量 | 54トン |
全長 | 9.306m |
全幅 | 3.631m |
全高 | 3.3m |
エンジン | テレダイン・コンチネンタル AVDS-1790-2Cディーゼル 750hp |
最高速度 | 48km/h |
航続距離 | 480km |
武装 | M68A1 51口径105mmライフル砲×1 |
M8512.7mm重機関銃×1 | |
74式7.62mm機関銃×2 | |
M239 60mm6連装発煙弾発射機×2 | |
装甲 | 車体前面143mm/砲塔前面114mm |
乗員 | 4名 |
M60A3の車体にM48A5の砲塔を搭載した、台湾独自のMBT。当初台湾はM60の購入を希望していたが受け入れられず、1984年にアメリカのジェネラル・ダイナミックス社との技術提携で開発が始まり、1988年に試作車2輌が完成した。1990年4月に制式に公表され、1995年までに450輌が生産された。台湾名はCM11「勇虎(ヨンフー)」、米軍名はM48H。
【性能】
車体はM60A3、砲塔はM48A5と同様だが、外見上では砲塔両側面の発煙弾発射機がイギリス製のものになっている事、車長用のキューポラが背の低いイスラエル製のウルダン型に変更された事、砲塔後部にM1A1と同型の高性能な環境センサーが装備されている事が主な相違点となっている。主砲は信頼性の高い英L7系のM68A1 105mmライフル砲で、副武装は主砲同軸及び装填手ハッチに取り付けられた7.62mm機関銃、車長用キューポラに装備された12.7mm重機関銃となっている。105mm戦車砲は西側諸国では一世代前のものになっているが、体格的に劣る東洋人にとって120mm砲弾の連続装填は難しく、また海峡を渡洋し上陸してくる中国軍の軽車輌に対しては105mm砲で充分と考えられていたようだ。
射撃統制システムは全て台湾国産で、その性能はM60を凌ぎM1戦車と同等といわれている。砲手用には赤外線暗視装置を組み込んだAN/VGS-2照準器が用意され、AN/GVS-5レーザー測距器、M1エイブラムズと同級の高度な弾道計算機、環境センサー、2軸の砲安定装置(M60は1軸)によりきわめて高い命中率を有している。AN/GVS-5の最大測距距離は約8,000m。砲手が目標に指向している際、車長はより脅威度の高い目標を発見した場合に砲の操作を優先して行うことができる、オーバーライド機構も導入されている。台湾陸軍によるとCM11はこれらの先進的な射撃統制システムのおかげで行進間射撃能力、全天候戦闘能力を有し、固定目標に対する主砲の初弾命中率は2000m以内の目標であれば82%に達するという(M60A3は1,500mで75%だと言われる)[1]。ただ車長用の外部視察装置はキューポラのペリスコープだけで専用サイトは無く、緊急時に車長が砲手に優先して脅威度の高い目標に対して照準・射撃を行うオーバーライド機能は有していない[1]。これらの最新式の射撃統制システムを採用したことにより、CM11の一両あたりの単価は300万ドル近くに達し、これは費用対効果の観点からの批判を招くことになった。
M60よりも軽いM48の砲塔を載せているため、CM11の機動性は良好だという。山がちな地形が多い台湾では、険しい地形を走破して迅速に戦力を集中させる為に機動性は重要な性能のひとつである。但し砲塔が軽いと言う事は装甲が薄い(114mm)という事で、中国軍が保有するありとあらゆる対戦車兵器に貫通される可能性がある。これはCM11の大きな弱点といえよう。また、M60の砲塔よりも容積が狭いM48の砲塔に105mmライフル砲と新型FCSを詰め込んだことで、砲塔内はかなり手狭となり、それによって電子機器の廃熱が逃げ難くなってしまい、高温多湿な台湾の環境も相まって射撃統制システムの故障が頻発する事態を招いた[1]。操縦手用ハッチには3基のペリスコープが設けられ、中央の1基はAN/VVS-2夜間暗視装置に換える事ができる。エンジンはM60と同じテレダイン・コンチネンタル製のAVDS-1790-2Cディーゼル・エンジンで、自動消火装置(緊急時には手動で車外からも操作できる)も装備しており、NBC防護装置もM60と同じ物を装備している。
【配備とその後の状況】
CM11の調達は、当初の予定では1992年までに完了することになっていた。しかし、湾岸戦争の勃発によりアメリカからの部品調達が滞ったことから、すべての車両の導入が完了したのは1994年にずれ込むことになった。その後、台湾陸軍所属のM48A3もCM11に準じた近代化改装が施されることとなり、これらの車両はCM12と命名されることとなった。
2002年から仏GIAT社製の爆発反応装甲(ERA)を砲塔前面と側面に装着し防御力を向上させたたタイプも登場した。ただしERAを装着したCM11は試作に留まり一般部隊のCM11は原形のまま運用が続いている。この原因については不明な点が多いが、一説にはERA装着により重量が増加、足回りのトーションバーサスペンションへの負荷が高まり、破損が生じやすくなったため、陸軍ではCM11へのERA装備を断念したとも伝えられている[2]。台湾陸軍ではM60A3についてはアップグレード改修の余裕があるとして近代化改修を計画しているが、CM11についてはM48譲りの狭い砲塔により電子機器の追加搭載や大口径砲への換装といった改修は困難であること[2]、台湾軍では空軍や海軍の装備調達が優先され、陸軍内でもCM32装輪装甲車とヘリコプター戦力の近代化に重点がおかれたこと[1]も影響したのか、特段の能力向上計画は現状では存在しない。
2020年、台湾国防部は後備戦力(予備戦力)の強化のため、アメリカから調達するM1A2T戦車、既存のM60A3戦車の近代化改修、CM34装輪歩兵戦闘車「雲豹」(二代雲豹)やその派生型である装輪対戦車自走砲の配備が進んだ段階で、CM11戦車とM113装甲兵員輸送車を常備部隊から後備部隊の装備に移管することを決定した[3]。これらの装備を後備部隊の打撃戦力となる後備打撃群に配備することで、常備部隊と後備部隊の戦力差を減らし、有事の際の動員戦力の底上げを図る狙いがある。
【参考資料】
[1]MDC軍武狂人夢「M-48H(CM-11)勇虎式主力戰車」http://www.mdc.idv.tw/mdc/army/m48h.htm
[2]NOWnews 今日新聞「軍武/國軍勇虎戰車防護力差 難敵共軍新一代戰車」(2019年6月20日/記者呂炯昌/台北報導)https://today.line.me/tw/v2/article/v227JQ
[3]自由時報電子報「強化後備戰力》國防部:先撥配105榴砲 CM11、M113戰甲車逐年轉」(2020年10月21日/記者羅添斌/台北報導)https://news.ltn.com.tw/news/politics/breakingnews...
軍事研究 1990年10月「台湾陸軍-ハイブリッド戦車“勇虎”」(ジャパン・ミリタリー・レビュー)
戦車名鑑現用編
戦車研究室
M48AVLB戦車橋
台湾陸軍
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戦車名鑑-現用編 ミリタリーイラストレイテッド 田中 義夫 (編集)/出版社:光栄