日本の周辺国が装備する兵器のデータベース


▼右の写真はM-7地対地ミサイルの自走発射機とされる。ただし、HQ-2 SAM用自走発射機の可能性もある。
右側写真はM-7の原型となったHQ-2地対空ミサイル。


▼イランに輸出されたM-7。現地では「Tondar69」の名称を付与されている。


性能緒元
全長10.84m
直径50cm(ミサイル本体)、65.4cm(ブースター)
翼幅1.7m(ミサイル本体)、2.5m(ブースター)
発射重量2,650kg
弾頭190kgもしくは250kgの榴弾、科学弾頭
推進装置二段式固体燃料ロケットモーター
射程50〜150km
誘導システムストラップダウン慣性航法装置(HQ-2の航法装置を流用)
ミサイル単価750,000ドル

【開発経過】
M-7短距離弾道ミサイルは、HQ-2長距離地対空ミサイル(紅旗2/CSA-1)をベースに開発された地対地ミサイルである。M-7は輸出名であり、中国軍ではDF-7(東風7)の制式名称が与えられている。NATOコードはCSS-8。M-7はイランに輸出されており、イラン軍では「Tondar69」の名称で運用が行われている。

1970年代後半から開始された小平による改革開放政策は経済開発を最優先としており、中国軍では100万人の兵員削減が実施されると共に軍事支出の抑制が行われるようになった。軍事費抑制を受けて、中国の兵器輸出は1970年代までの、イデオロギー重視、友好国支援の一手段から、外貨獲得を優先とした利益追求型へと大きく姿を変える事となった。

兵器産業でも、開発計画の見直しが進められ、多くのプロジェクトが整理対象となった。その一方で、独立採算制と市場原理が導入され、兵器産業の多角化経営や輸出市場を対象とした兵器開発などが認められるようになった。この時期から、中国の兵器産業では中国軍以外を対象とした輸出向け兵器の開発を積極的に行うようになっていく。

この流れは、ミサイル開発部門でも例外ではなかった。中国は1984年から、国際兵器市場向けに頭文字に「M」を冠する「Mファミリー」ミサイルと呼ばれる4種類の輸出用戦術弾道ミサイルの開発を開始することになった。そのラインナップは以下の通りである。
輸出名中国軍での制式名NATOコード詳細
M-7DF-7CSS-8HQ-2地対空ミサイルを地対地ミサイルに転用。弾頭重量190〜250kg、射程150km
M-9DF-15CSS-6中東諸国への売込みを目指して開発。弾頭重量500kg、射程距離600km
M-11DF-11CSS-7中東諸国への売込みを目指して開発。弾頭重量800kg射程距離280km
M-18射程距離が1000kmを超える弾道ミサイル、開発中止。

ただし、「Mファミリー」ミサイルは、ファミリーと銘打って入るが開発部署は共通では無く、中国航天科工集団公司(CASIC)所属の異なる研究所によって行われている。本稿で取り上げるM-7の開発は、CASIC所属の第二研究院(後の長峰機電技術設計院)によって行われた。第二研究院は、長年HQ-2地対空ミサイルの開発と改良を行ってきた研究機関であり、HQ-2を転用した地対地ミサイル開発を行うにはうってつけの部署であるといえた。同研究院でのHQ-2転用地対地ミサイルの開発名称は「8610工程」と命名された。M-7の開発は1986年4月に開始され、開発は1992年に完了したとされるが、その最中の1989年には200発のM-7と30両の自走発射機がイランに輸出されたことが報じられた[1](輸出は1992年に開始され、最初は90発、後に110発が追加輸出されたとの情報もある[2])。

HQ-2は、ソ連のS-75ドヴィナ/ヴォルガ(V-750/NATOコード:SA-2 Guideline)のライセンス版であるHQ-1の改良型として1966年から生産に入り、1990年代に至るまで中国防空部隊の主力の地位を占めることになった地対空ミサイルである。S-75/HQ-2は、高高度から飛来する戦略爆撃機や高高度偵察機を迎撃するために、大型ブースター付きの二段式ロケットモーターが採用され、その全長は10mを超える大型弾体となった。S-75が投入された、いくつかの戦争では本来の地対空任務だけではなく対地攻撃に投入されたケースも発生した。また、イラクや北朝鮮などでは、S-75のコンポーネントを用いて地対地ミサイルの開発が行われている。

【性能】
M-7の開発のベースとなったのは、同時期に開発が行われていたHQ-2Bであり、外観はHQ-2Bと殆ど変わりが無いとされる。M-7のサイズは、全長10.8m、直径50cm(ミサイル本体)、65.4cm(ブースター)、翼幅1.7m(ミサイル本体)、2.5m(ブースター)、発射重量2,650kg。弾頭は、190kgと250kgの2種類の榴弾が用意されており、科学兵器を充填した弾頭も存在すると推測されている。ミサイルの誘導は、ストラップダウン慣性航法誘導を採用しているが、この装置はHQ-2の航法装置を流用したものである。命中精度については、正確な数値は知られていないが、それほど高いものではないと見られている。推進装置は、HQ-2では一段目ブースターが固体燃料で二段目が液体燃料式ロケットモーターだったが、M-7では両方とも固体燃料ロケットモーターに変更されている(HQ-2と同じ推進装置であるとの情報もあるが、ここでは)。HQ-2の液体燃料は毒性があったこと、発射直前に注入する必要があるため即応性に問題があった点などから、固体燃料に変更されたものと思われる。一段目ブースターは、4秒間燃焼して本体から切り離される。二段目のモーターは、20秒から30秒間燃焼し、M-7に50kmから150kmの射程を与える。

M-7は、63式水陸両用戦車(WZ-211)を改造した自走発射機の単装ランチャーに搭載される。これはHQ-2用の自走発射機としても利用されている。また、1994年には、6×6野戦トラックをベースにしたTEL(Transporter-Erector Launcher 輸送・起立・発射機)が開発されている。

【総括】
M-7は、前述したとおり、イランには約200発が輸出されており、Tondar69の現地名が与えられている。イランでは、HQ-2地対空ミサイルがSayyad-1の名称でライセンス生産が行われており、Tondar69やその発展型の地対地ミサイルも生産されている可能性がある。イラン以外の国では、北朝鮮やイラクなどにも輸出されたとの情報もあるが、これらに関する詳細は不明。

M-7は、1992年から中国軍でDF-7として運用が開始されたとされる。ただし、どの程度の数が配備されたかなどの詳しい情報は不明(そもそも配備されていないとの情報もある)。中国では、これまでに累計5,000発を超えるHQ-2ミサイルが製造されており、100発から500発がDF-7/M-7に改造されたと推測されている。

M-7は、HQ-2を開発のベースとして多くのコンポーネントを流用しているため、開発・製造コストを低く抑える事ができた。しかしこの事は、反面で地対地ミサイルとしての性能を制約することになったのも事実である。M-7の兵器としての評価は、射程こそ150kmを確保しているものの、弾頭は小型であり十分な命中精度が確保されていないことから、実用性については疑問が拭えない。その役割は、目標を特定しない都市などに対する無差別攻撃、もしくは科学兵器の投射などに限られると思われる。

M-7を開発した第二研究院にとっては、M-7は最初に手掛けた地対地ミサイルであり、同研究院は、その後本格的な戦術地対地ミサイルB-611 を開発することになる。M-7の開発は、第二研究院が地対地ミサイルの経験を積む習作になったといえるだろう。

【参考資料】
『新版ミサイル事典-世界のミサイル・リファレンス・ガイド』(小都元/新紀元社/2000年7月)
Jane's Strategic Weapons Systems ISSUE 45 - 2006(Jane's Information Group)[2]

Chinese Defence Today
Global Security
Jane's Strategic Weapon Systems「Tondar 69 (CSS-8) (Iran)」[1]
Missile Threat「CSS-8」
中国武器大全
中華網

中国第二砲兵

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