日本の周辺国が装備する兵器のデータベース


▼動画「中国颇为神秘的歼11D战机,战力远超苏35,为何至今仍未服役?【军武科普号】」J-11Dの説明と不採用に至る経緯を紹介した動画


J-11D性能緒元
重量 
全長 
全幅 
全高 
エンジンWS-10B改良型 A/B 13800kg×2
最大速度 
航続距離 
上昇限度 
ハードポイント12箇所(主翼8、胴体下4)
武装GSh-301 30mm機関砲×1(150発)
 PL-15中距離空対空ミサイル(霹靂15)
 PL-12アクティブ・レーダー誘導空対空ミサイル(霹靂12/SD-10)
 PL-10短距離空対空ミサイル(霹靂10)
 各種ミサイル/爆弾/ロケット弾など8トン
乗員1名

瀋陽飛機工業公司では、1990年代に開始したSu-27SK戦闘機のライセンス契約(J-11/J-11A)に続いて、中国製コンポーネントを多用した独自の派生型J-11B、ロシアのSu-33を意識して開発された艦載戦闘機J-15、ロシアのSu-30シリーズに相当する複座・多用途戦闘機としてのJ-16と、フランカーの発展型の開発を続けてきた。

実は、空軍向けに大量生産されたJ-11BとJ-16の陰に隠れる形となった、新世代のフランカーとしてJ-11D戦闘機(殲撃11D)という派生型が存在する。J-11Dは2015年4月に初飛行を行っている[1][2]。

【性能】
J-11Dは、J-11Bを発展させた新世代の大型単座戦闘機として企画された。開発はJ-16戦闘機の開発が完了した2010年代半ばから開始されたものとみられている。開発は空軍からの要求に基づくものではなく、瀋陽の自主資金で行われた模様[3]。同時期、瀋陽では、J-11Dと並行して第五世代戦闘機J-31/FC-31もプライベートベンチャーの形で開発に着手していた。同社が、二種類の戦闘機の自主開発に踏み切ったのは、第五世代戦闘機の競争試作で成都飛機工業集団公司案(後のJ-20戦闘機)に敗れたことが影響していると思われる。瀋陽が生産しているのはJ-11B、J-16、海軍向けのJ-15と全てフランカー系の戦闘機であり、長期的な視点で見た場合、その次をにらんだ開発作業に今から着手しておくことで需要が生じた場合に即対応可能な体制を整えることを目指した可能性が高い[3]。さらに、J-16の開発完了で手の空いた開発陣に経験を積ませ、次世代戦闘機に必要とされる技術を確立しておくことも目的とされたと考え得る。

J-11Dは、J-16の開発によって得られた技術水準を基にしてJ-11Bを「第4.5世代機」に発展させた機体として開発が行われた[3]。J-16が複座機として多用途性を追求したのに対して、J-11Dは単座機であり一義的に戦闘機としての性能向上を目指した点が異なっている[4][5]。

2015年中期にはJ-11Bを基にして製造されたJ-11Dの最初の試作機が初飛行に成功した。これは技術実証機と言うべき機体であり、J-11BのアビオニクスをJ-16のものに換装してPL-15PL-10と言った新世代の空対空ミサイルの運用能力を付与したものとみられている。この試作機の試験結果は有益で、瀋陽では完全な第4.5世代戦闘機としたJ-11D試作機の製造に移行する。

J-11Bを基に第4.5世代戦闘機にするというのは、単にアビオニクスを換装して新しい空対空ミサイルの運用能力を付与すればそれで済むという話ではなく、アビオニクスの全面的アップグレードや機体構造の見直し、新型エンジンの搭載が不可欠であり、レーダー一つ取ってもRCS値低減に配慮した取付方法を取る必要が生じるなど、様々な問題を解決していかなければならない過程であった[3]。

J-11Dは機体構造の複合材使用割合を増やすことで期待構造の強化と軽量化の両立を図った。主翼のハードポイントはSu-27SKやJ-11Bよりも一組多くなり、合計12か所のハードポイント(主翼8、胴体下4)を持つに至った[3]。空対空兵装としては、J-11BのPL-12PL-8の組み合わせから、最新のBVRAAMであるPL-15、近距離AAMとしてPL-10短距離空対空ミサイル(霹靂10)、さらに射程数百キロと推定される長射程AAMに対応するようになった[5][2][6][7]。PL-15の長射程を有効に活用するには、長距離探知能力と同時処理能力に優れたのAESAレーダーとの組み合わせが不可欠となる。

J-11Dは、性能向上のためエンジンをJ-16が搭載するWS-10Bを推力アップさせたWS-10B改良型に変更した。最大推力はWS-10Bの13,200kgから13,800kgにまで向上し、推力重量比ではJ-16を上回り、原型となったSu-27SKと比較して顕著な機動性の改善を達成したとの事[3]。

アビオニクスも全面的な能力改善が図られており、新たにAESAレーダーを搭載。これに合わせて機首ピトー管は廃止された。レドームの付け根はJ-16までの直角から、傾斜が付いたものになっているが、これはステルス性改善のためAESAレーダーを傾けて搭載したことを表している[2][3]。J-11Dの搭載するASEAレーダーは、大型機をプラットフォームとすることで直径が大きく優れた探知能力と同時処理能力が期待でき、試算ではJ-11Bと比較して探知距離を80%増大させ得ると見積もられた[5]。AESAレーダーを採用することで、電子妨害に対する抵抗力が高まり、ステルス機探知において有利となり、長い探知距離を実現できる[2]。優れた探知性能を持つAESAレーダーを搭載するJ-11Dは、データリンクを活用することで、探知した情報を他部隊と共有することが可能となり[2]、センサーノードとしての能力を発揮することも出来ただろう。

機首左側には収納式の空中受油用プローブが内蔵され、空中給油を受けることで航続距離を大幅に延伸することが可能となった。プローブ搭載のため空間を確保する必要から、J-11Bではキャノピー手前の機体中心線上に配置されていたIRSTは右側に移設された[2]。電子戦システムも新世代のものが搭載されることで自己防御能力を向上させることが目されていた[8]。技術の進歩により機内に収納できるサイズにまで小型化されたことで、貴重なパイロンに電子戦ポッドを搭載せずに済むようになった[7]

【不採用に至る経緯】
瀋陽では、高度な能力を有するJ-11D戦闘機を、成都飛機工業集団公司の第5世代戦闘機J-20のバックアップを勤め得る戦闘機として考えていたように思われる。無論、ステルス戦闘機であるJ-20と第4.5世代機であるJ-11Dは同等に並べられる戦闘機ではないが、J-20が採用する分散開口システムをJ-11Dも取り入れているなど、J-20の設計の影響を受けているところも確認されている[4]。

実は、新世代のフランカーとして、中国はロシアから24機のSu-35S戦闘機(フランカーE)を調達済みであった。どちらもSu-27をベースとして21世紀の需要に応え得る全面的な能力向上を施した機体という点では共通している。

J-11Dが有利な点としては、ヽ発着手が2010年代であることから2000年代に開発されたSu-35よりも新しい技術を用いることが可能、∧9膾爐了藩冏楼呂広く、Su-35Sよりも機体の軽量化を図り得る、レーダー波吸収塗料を用いた低RCS値化、ASEAレーダーの搭載、ナ散開口システムの採用、などがあげられている[4]。

しかし中国空軍が選択したのはJ-11Dではなく、Su-35Sの輸入であった。Su-35が既に量産体制に入っており、即戦力として配備可能であったのに対して、J-11Dは開発途上の機体でありその実用化までにはなお時間を要することは明らかであった。そして、Su-35Sが搭載する大推力かつ推力偏向装置を備えた117Sターボファン・エンジンを入手して実際に用いることが出来る点も、中国空軍にとっては魅力的な存在であった[1]。117Sの最高推力はJ-11Dが搭載するWS-10B改良型の13,800kgに対して、142.2Kn(14,495kg)と優位に立っており、推力偏向装置を備えている点でも優れていた[9]。

確かに2010年代に開発されたことで性能の向上は見込まれるものの、本格的なステルス戦闘機であるJ-20の配備が順調に進む中で、あえて第4.5世代戦闘機であるJ-11Dを新たに配備することについて空軍を納得させるに至らなかったのである。J-11Dは、確かにJ-11BやJ-16と比べても双発の大型戦闘機として優れた性能を発揮できるのは間違いないが、その分だけ機体単価も上昇している。同じ瀋陽のJ-16戦闘機のアビオニクス単価はJ-11Bの2.5倍に高騰して、一機当たりの総額ではJ-20の70%前後に達していたとの情報もある。J-11Dはさらに充実したアビオニクスや新型エンジンを搭載し、機体構造も大きく手を加えていることもあり、さらなる値段の高騰は免れなかった[3]。J-20と比較すると、ステルス機特有の整備面での負担はないので、その分だけ運用コストや整備面での負担は低くなり、合計12か所のハードポイントに多種多様な兵器を搭載できることで、兵装を機内搭載するJ-20を補完する戦闘機となり得るのは確かだった[5]。しかし、J-20を補完する任務であれば、既に配備が進んでいるJ-16を用いればそれで済み、わざわざJ-16とは別にJ-11Dを調達する必要性は低かった。

こうしてJ-11Dは技術実証機一機と少数の試作機が製造されるに留まり、軍の制式採用を得ることは叶わなかった。

しかし、海洋進出により行動範囲を拡大させる中国空軍にとって、航続距離の長いフランカー系戦闘機の調達はまだまだ需要があり、J-11Bは2017年以降も調達が続けられることになり、2018年頃まで生産されたとみられる[3][6]。J-11Bの生産を完全にJ-16に切り替えなかったのは、J-11Bの方が安価で調達可能で、当座の数を求める空軍の意向に沿った機体だったからだとされる[3]。

Su-27の発展型である双発単座戦闘機というJ-11Dと同じジャンルに属するSu-35Sの調達も24機で留まっている。こちらは中国製兵器搭載を可能とするためのソースコードの開示をめぐる中露の交渉が続き[3]、追加購入の話も具体化しない内に2022年2月の同国のウクライナ侵攻を迎えて、少なくとも戦争が続く間はSu-35Sのこれ以上の増強は極めて困難な情況に陥っている。

J-11Bは200機を超える機数が調達され、中国空軍の主力機の一翼を担っている。その多くが生産から10年程度しか経っておらず十分な機体寿命を残しているが、今後も長い間運用を続けることを考えると、時代に合わせた能力向上は必須となる。

瀋陽では、J-11Dの開発により得られた技術を、既存のJ-11Bのアップグレード計画に生かすこととなり、それはJ-11BにASEAレーダーを搭載し、PL-15やPL-10といった新世代のAAMの運用能力を付与したJ-11BGとなって結実することとなった[6]。試算では、ロシアから調達したSu-35S一機分の代金で、4機のJ-11B/J-11BSをJ-11BG/J-11BSGにアップグレード出来ると見られている[3]。中国空・海軍では200機以上のJ-11B/BS/BH/BHSを運用しており、これらの機体を近代化改修することで、比較的安価に戦闘機戦力の近代化を行うことが出来る形となるが、それはJ-11Dという機体の存在が生かされた形になったと評価することが出来るだろう[6]。

海軍向けに開発が進んでいるJ-15B/J-15T艦載戦闘機についてもJ-11Dの影響が伺え、同機のレーダーはJ-11Dと同様にレドーム基部に傾斜を付けた形状が採用されている[10]。

【参考資料】
[1] The Diplomat「Why China’s Air Force Needs Russia’s SU-35 The PLAAF has a growing fighter fleet, but it needs help on one critical component.」(Jesse Sloman and Lauren Dickey/2015年1月1日) https://thediplomat.com/2015/06/why-chinas-air-for...
[2] 「The J-11D Surprise: China Upgrades Russian Flanker Fighters On Its Own」(BY JEFFREY LIN AND P.W. SINGER/2015年5月4日 2015)https://www.popsci.com/j-11d-surprise-china-upgrad...
[3]银河「锻刃铸山锋—苏-35的引进对中国四代重型战斗揆发展的影响」掲載図『舰载武器』2020年2月号/总第331期(中国船舶重工集团公司)22〜44ページ
[4] The Eur Asian Times「China’s Latest J-11 Derivative Uses The Same Technology As J-20 Stealth Jet; Claims To Be Better Dogfighter Than Russian Su-35」(EurAsian Times Desk/2021年10月24日)https://eurasiantimes.com/chinas-latest-j-11-deriv...
[5]The Diplomat「Why is China Developing a New J-11 Variant? Next generation technologies on the J-11D likely to surpass Russia’s Su-35」(Abraham Ait/2019年4月20日) https://thediplomat.com/2019/04/why-is-china-devel...
[6] Military Watch Magazine「first-j-11bgh-fighters-with-aesa-radars-join-china-s-naval-aviation-how-capable-are-they 」(Military Watch Magazine Editorial Staff /2022 年 3 月 18 日)https://militarywatchmagazine.com/article/first-j-...
[7] 天一(製図)「锻刃铸山锋—苏-35的引进对中国四代重型战斗揆发展的影响」『舰载武器』2020年2月号/总第331期(中国船舶重工集团公司)5〜8ページ
[8]Military-Today.com「Shenyang J-11 Air superiority fighter」http://www.military-today.com/aircraft/j11.htm
[9]青木謙知『戦闘記念艦2023-2024』(イカロス出版/2023)182〜183ページ
[10]Chinese-Mlitary-Aviation「J-15B Super Flying Shark/Flanker」http://chinese-military-aviation.blogspot.com/p/fi...

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