日本の周辺国が装備する兵器のデータベース




高高度迎撃機と対地攻撃のデュアル・ファイターを目指して、J-8戦闘機を基に開発された機体。開発を担当したのは瀋陽飛機工業集団公司。旧ソ連のMig-23に対抗できる戦闘機を実用化する事が目標とされた。開発着手は1982年で、同年中に設計作業は完了、試作01号機は1984年6月に初飛行を成功させている。

J-8IIは大型の火器完成システムを搭載するために機首スペースを確保して、サイドインテイク化した事が外見上の最も顕著な変更点。エア・インテイクの移設は、従来の機種に装備する方式ではコーンの大きさに制約があり、本格的なレーダーを搭載するには容積不足であったために行われた。移設されたエア・インテイクにはF-4PhantomIIやMig-23に似た斜板付きの矩型になっている。それ以外にも機体の主翼など全面的な見直しが行われ、J-8との共通部分は30%しかないともいわれている。エンジンは当初J-8Iと同じ渦噴7を搭載していると思われていたが、後にロシア製トゥマンスキーR-13のコピーである渦噴13A(A/B6,000kg)に変更されてパワーアップされている事が判明した。

J-8IIは大型の超音速要撃戦闘機で、推力重量比も十分に大きく、運動能力の高い機体と言える。しかし最大の問題点はアビオニクス(特にレーダー)が低性能な事だった。従来のレーダーの発展型である208型パルスドップラー・レーダーは信頼性が低く、また中国空軍が要求していたBVR(見通し線外射程)攻撃能力を持つ新型AAMを誘導する事が出来なかった。このため中国はJ-8IIを世界的に通用する戦闘機にするためアメリカのグラマン社と5億ドルの契約を結び、AN/APG-66(v)レーダーや航法装置などを搭載して50機調達する計画を立てた。計画名は「PeacePearl(英語)/和平典範(中国語)」と命名され、1989年初めには改装のためJ-8IIがアメリカに送られたが、同年6月4日に発生した天安門事件を契機にアメリカ政府は対中国政策を転換し、この計画は頓挫してしまい結局中国独自で改良を行わなければならなかった。同時期には、中距離空対空ミサイルとしてイタリアのセレニア社(現アレニア社の一部門)が開発したアスピーデAAMを中国で量産化することも取り決められいたが、こちらも天安門事件による西側各国の対中制裁の影響で中断を余儀なくされている。。

その後70kmの捜索範囲を持つSL-8Aパルスドップラー・レーダーを搭載した改良型J-8IIが1989年11月に初飛行を行った。このタイプは後にJ-8Bと呼ばれ、1995年12月に設計が完了し生産が開始された。さらに南シナ海での運用を前提として、航続距離延伸のための空中給油用プローブを装備したJ-8Dが開発され、1990年11月に初飛行に成功している。J-8B/Dは各種の改良が行われていたが、いずれもBVR戦闘能力は有していなかった。

冷戦終了後、中国はJ-8IIを改良するためにロシアに接近し、1996年の珠海航空ショーで輸出型のF-8IIMが公開された。F-8IIMはロシア製のZhuk8IIパルスドップラー・レーダーを搭載しており、10目標を同時追尾しその内の2目標を同時攻撃する事が可能になっている。これによりR-27空対空ミサイル(AA-10 Alamo)の運用が可能になり、Kh-31A対艦ミサイル(AS-17 Krypton-A)も発射できるようになった。エンジンは出力強化型の渦噴13B(A/B7,000kg)に換装されている。F-8IIMは1996年3月に初飛行を行ったが、結局どの国もF-8IIMの購入に興味を示さず、量産はされていない。2004年には国産のJL-10A火器管制レーダーを搭載した新しいF-8IIMが公開された。そのレーダーはロシア製Zhuk8IIよりも高性能だと言われており、中射程AAMを誘導できるほか、様々な精密誘導対地ミサイル、対艦ミサイルを運用できるようだ。

J-8IIIはJ-8Cとも呼ばれ、J-8IIACTでテストされた4重のフライ・バイ・ワイヤ操縦装置を備え、エンジンを出力強化型の渦噴13F供A/B7,960kg)、もしくは渦噴14「崑崙」(A/B7,500kg)に換装している。レーダーはイスラエルのエルタ社製EL/M-2034火器管制レーダーも装備し、各種飛行試験が行われていたが、試作機が大破し計画は中止となった。その後、同機の開発で得られた成果を元に改良型のJ-8Fが開発されることになる。

瀋陽航空機工業は1990年代にJ-8IIの改良を続け、1998年12月にJ-8Hと呼ばれる新型機の初飛行を成功させた。このタイプはKLJ-1パルスドップラーレーダーと統合デジタル火器管制装置を装備してPL-11セミアクティブ・レーダー誘導ミサイルの運用能力が付与された。エンジンはWP13Bを採用。J-8Hは2002年から配備が開始されたが、より能力の高いJ-8Fの登場により生産は少数で終わった。なお、J-8BやJ-8Dの一部にもJ-8Hに準じた近代化改装が施されており(J-8BH/J-8DH)、PL-11によるBVR戦闘能力を得ている。

これとは別にJ-8Fと呼ばれるマルチロールファイター型の開発も行われており、こちらは2000年に初飛行、2003年から配備が開始された。149X多モードレーダーやロシア製のグラス・コックピットを導入し、エンジンは出力強化型の渦噴13BII、もしくは渦噴14「崑崙」エンジンに換装、PL-12アクティブ・レーダー誘導空対空ミサイルの運用が可能となり、対地・対艦攻撃用に各種誘導爆弾や対艦ミサイルの運用能力も付与された。J-8H/Fともに空中給油用プローブの装備が可能であり、中国製HUDとINS/GPS(慣性航法装置/全地球測位システム)を搭載、操作にはHOTAS概念が取り入れられているという。J-8Dの一部はJ-8Fに順ずる近代化改装を受けている(J-8DF)。

J-8IIの派生型には、各種の技術開発用の技術実証機も何種類か存在する。1988年に初飛行したJ-8IIACT(Active Control Technology) は、J-8Bを原型にして開発されたカナードとフライ・バイ・ワイヤ制御技術を導入したCCV(control configured vehicle)試験機である。J-8IIACTは、従来試験機として使用されていたJ-8ACTとBW-2(殲教6が原型)に替わって技術実証機として使用された。更に、次世代戦闘機に必要な技術開発の技術実証機としてJ-8IIIACTが開発された。このほかにも複数の実証機があるが、注目すべき技術実証機としてはJ-8II艦載試験機がある。中国海軍航空隊は、将来の空母保有を目指して、遼寧省葫芦島市緩中県に空母への発着艦を想定した訓練基地を作り、カタパルト発進や着艦訓練を行ったが、この基地で運用するため開発されたのがJ-8II艦載試験機型である。この機体の詳細については不明であるが、カタパルト発進や短距離での着艦を可能とする改良が施されているものと思われる。この基地での最初のカタパルトによる離陸は、1987年4月7日に李国強操縦士によって行われた[5]。

J-8IIシリーズは現在、中国空軍/海軍航空隊で約300機が運用されている。

J-8II各タイプ
J-8II1984年6月初飛行試作型。208型パルスドップラー・レーダーを搭載。中距離AAM運用能力は有さず。
J-8II「PeacePearl(英語)/和平典範(中国語)」近代化案 米グラマン社との共同開発。アメリカ製レーダーやアビオニクスの搭載で近代化を図る計画だったが、1989年の天安門事件によるアメリカの対中兵器禁輸政策により開発は頓挫する。
J-8II艦載試験機 空母の運用ノウハウを得るために開発された機体。海軍航空隊で試験運用。
J-8B1989年11月初飛行最初の量産型。J-8IIの改修型でSL-8Aレーダーや改良型アビオニクスを搭載
J-8BHJ-8BをJ-8H水準にアップグレードした近代化改修型。
J-8D1990年11月初飛行J-8Bの改良型。空中給油用プローブを装備。
J-8DFJ-8DをJ-8F水準にアップグレードした近代化改修型
F-8IIM1996年初飛行輸出型。露製Zhuk8II多モード・パルスドップラーレーダーを搭載しR-27中距離AAMや対艦ミサイルが運用可能
J-8IIACT1988年初飛行カナードとフライ・バイ・ワイヤ制御を導入したCCV(control configured vehicle)試験機。
J-8III J-8Cとも呼ばれる新型エンジン(WP14)搭載の改良型。試作機が大破し計画中止。
J-8IIIACT 次世代戦闘機の技術開発用に製作された技術実証機。
J-8H1998年12月国産のKLJ-1パルスドップラーレーダーとWP13Bエンジンを搭載。PL-11の運用が可能になる。
J-8F2000年初飛行149X多モードレーダーや露製グラスコクピットを採用、エンジン出力を強化した多用途戦闘機型。
J-8FR偵察機(殲撃8FR/JZ-8F/殲偵8F)J-8Fの偵察型。J-8Rの後継。
J-8G 敵防空網制圧(Suppression of Enemy Air Defence:SEAD)型。
F-8T2008年の珠海航空ショーでその存在が明らかにされた輸出型。2009年9月に開催された第13回北京国際航空展覧会で模型が展示された[6]。

F-8IIM性能緒元
重量10,371kg
全長21.59m
全幅9.35m
全高5.41m
エンジン渦噴13B(WP13B) A/B7,000kg ×2
最大速度M2.2
戦闘行動半径1,000km
上昇限度20,200m
武装23III型23mm連装機関砲×1
 PL-12アクティブ・レーダー誘導空対空ミサイル(霹靂12/SD-10)
 PL-11セミアクティブ・レーダー誘導空対空ミサイル(霹靂11/FD-60)
 R-27中距離空対空ミサイル(AA-10 Alamo)シリーズ
 PL-8赤外線誘導空対空ミサイル(霹靂8/パイソン3)
 PL-5赤外線誘導空対空ミサイル(霹靂5)
 Kh-31A空対艦ミサイル(AS-17クリプトン)
 LT-2レーザー誘導爆弾(雷霆2型)
 LS-6滑空誘導爆弾(雷石6)
 FT-1/3誘導爆弾(飛騰1型/3型)
 各種爆弾/ロケット弾4.5トン
乗員1名
注:全てのタイプが上記の兵装を搭載できるわけでは無い。

▼J-8B


▼J-8B。主脚内側パイロンにPL-5 IR-AAMを、主脚外側パイロンにPL-8 IR-AAMを装着。主翼手前に置かれているAAMは、少数生産が行われたPL-11中距離AAMと思われる。

▼空中受油能力を備えたJ-8D。コクピット右側に装備されているのが給油用プローブ。搭載ミサイルはPL-8 IR-AAM。

▼ロシア製レーダーを搭載、各種機材の近代化を施した輸出向けのF-8IIM。主翼には内側からPL-5 IR-AAM、R-27中距離AAM、PL-8 IR-AAMが装着されている。

▼海軍航空隊所属のJ-8DH。この機体はJ-8Dからの改修型。

▼J-8F。PL-12、PL-5C空対空ミサイル、ロケット発射機、通常爆弾を搭載。写真の機体はコクピット右側に空中給油用プローブが装着されているタイプ(未装着機もあり)。

LS-6滑空誘導爆弾(雷石6)とPL-10 AAMを搭載したJ-8F。J-8Fの主翼上面の整流板は片側2枚であり、従来機(1枚)との識別点になっている。

▼J-8II艦載試験機型(J-8II試作機との説もある。)


▼海軍航空隊のJ-8II訓練動画。ミサイル発射、ロケット弾発射など


【参考資料】
[1]漢和防務評論 2007年11月号(No.37)「更多J8F装備中国空軍」(漢和防務評論)
[2]Jウイング特別編集 戦闘機年鑑2005-2006(青木謙知/イカロス出版)
[3]別冊航空情報 世界航空機年鑑2005(酣燈社)
[4]Chinese Defence Today
[5]大旗網「中国航空母艦起飛着艦試験第一人」
[6]新浪網「中航工業公開展示国産最新型殲8T型戦闘機」(2009年9月23日)

【関連項目】
J-8戦闘機(殲撃8/F-8/フィンバックA)
J-8FR偵察機(殲撃8FR/JZ-8F/殲偵8F)

中国空軍
中国海軍

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