日本の周辺国が装備する兵器のデータベース





▼中国海軍航空隊所属のJL-9

▼ベントラル・フィンを撤去して、アレスティング・フックを装着したJL-9の派生型JL-9G/JT-9。空母の発着艦模擬訓練に使用されるものと推測される。


性能緒元
重量7,800kg(最大離陸重量9.800kg) 
全長14.555m
全幅8.32m
全高4.105m
エンジン渦噴13F(WP13F) A/B 63.25kN ×1
最大速度M1.6
航続距離1,600km(機内燃料のみ)、2,500km(増倉装備)
上昇限度16,000m
武装23mm機関砲
 PL-9赤外線誘導空対空ミサイル(霹靂9)
 PL-8赤外線誘導空対空ミサイル(霹靂8/Python-3)
 爆弾/ロケット弾ポッドなど2t(3,5tとの説もある[8])
乗員2名

【開発経緯】
2000年11月に機体設計が明らかにされた超音速高等練習機で、Su-27(J-11)Su-30MKKなどの高性能戦闘機パイロットの養成に使用する事を目的にした機体である[1]。開発は、JJ-7などの練習機の生産を担当してきた貴州航空工業集団公司により行われている[2]。当初はFTC-2000「山鷹(Plateau Eagle)」の輸出名称で呼ばれていたが、後にJL-9(教練-9)の制式名が与えられた[3][5]。

JL-9の開発の起源は1992年にまで遡る。貴州航空工業集団公司は、中国軍が1990年代に入って第4世代戦闘機(中国では第3世代戦闘機と呼ばれる事が多い)であるSu-27の導入を開始したことを受けて、現用のJJ-7では高性能な第4世代戦闘機への転換訓練をこなす事は困難であり、高い機動性を有する高性能高等練習機の需要が生じる事になると予測した[3]。(実際に、Su-27の性能は従来の中国戦闘機とは次元の異なるもので、機種転換用の複座型Su-27UBKが不足していた事もあり、事故が多発する事になった[4]。)同社では、次世代高等練習機の研究を開始し、10年をかけて技術者やパイロットなどから広範な意見を集約した上で、第4世代戦闘機の転換訓練を行う十分な能力を有した高等練習機の開発に着手する事を決定した[3]。

2001年1月、貴州航空工業集団公司は正式に新型高等練習機(通称「新高練」)の開発作業に着手した。新高練の開発は、政府からの援助は無く同社の自己資金により賄われたが、軍用航空機の自社資金による開発というのは中国では余り例の無いケースであった[3]。貴州航空工業集団公司は、JJ-7を開発のベースにして電子装備などに新技術を導入する事で、比較的安価でそれなりの性能を有した高等練習機を短期間で開発する事を目指した。2000年末までに風洞実験を完了して詳細設計を終え、2002年3月15日には、貴州航空工業集団公司が所属する中国航空工業第一集団公司がFTC-2000(新高練)の開発を正式に承認、5月には機体設計案の審査が行われた。翌2003年10月31日には試製1号機が完成し、完成式典において「山鷹」の名称が与えられた[3]。試製1号機による初飛行は同年12月13日に実施された[3]。

【性能】
JL-9はタンデム複座のターボジェット単発機で、胴体両側面にインテイクを有する[1]。主翼はJ-7Eと同様の前縁に2重後退角を付けた切り落としデルタで、後縁内側にフラップ、外側に補助翼を備えている。その翼面積は26.25屬J-7Eよりも1.27崑腓くなっており、その分翼面加重が少なくなり、飛行性能が改善されている[3]。主翼の変更で、JJ-7よりも低速での旋回性能が改善され、中低空域での亜音速飛行時の機動性や離着陸時の安定性が向上している。機動性の向上により、目標とされた第4世代戦闘機への転換訓練を行う十分な能力を確保することに成功したとされる[3]。尾翼はJ-7に似た形状と構成で、水平尾翼は全遊動式になっている。また後部胴体下面には2枚の大きなベントラル・フィンが装備されている。

胴体下に1箇所、主翼下に4箇所のハードポイントがあり、2tの最大搭載量を有している。実物大モックアップでは主翼下には内側にPL-9短射程AAM、外側にPL-8短射程AAMが装備されていた[1]。その他、多連装ロケットや各種航空爆弾などを搭載可能。固定武装としては胴体下部に23mm連装機関砲を搭載している[2]。JL-9はレーザー照射ポッドを搭載する事で、レーザー誘導爆弾を使った対地攻撃機訓練を行う事も可能[3]。

エンジンは、WP-13Fターボジェットエンジン(A/B 63.25kN)を搭載[1]。WP-13FはJ-7EやJ-8IIなどに広く使用されているWP-13ターボジェットエンジンの派生型で、既に量産体制が整っており、安価で信頼性も確保されていることから、導入コストが低減され整備面で有利になると見られている[3]。飛行時間延長のため燃料搭載量の増加が行われ、航続距離はJJ-7の1,450kmから1,600kmに延伸され、飛行可能時間は30分増えている。機内燃料搭載量は2,660リットルで、主翼下に2つ、胴体下部に1つの増加燃料タンク(480リットル×3、もしくは480リットル×2+720リットル×1)を搭載することも可能[2]。増加燃料タンク搭載時のフェリー航続距離は2,500km。近年需要が増えている空中給油に関する訓練を実施するため、JL-9は機首左側に空中給油用プローブを設置しており、空中給油の模擬訓練を行う事が可能[3]。

操縦席は前席と後席に大きな段差が設けられていて、後席からも十分な前方視界が確保されている。操縦席の計器盤は多機能表示装置(MDF)を用いたグラス・コクピットが採用され、操作性が大いに向上している。この他、操作性向上のために操縦桿から手を離すことなく兵装や装置の制御を行うHOTAS概念が取り入れられている[3]。前座席の訓練生の操作・制御情報は、後部座席のMDFに表示され同乗する教官が随時把握することが可能[3]。射出座席は中国国産のTY6Dゼロ・ゼロ射出座席を採用している[1][3]。インテイクを胴体両側面に配置したことで機首部はいわゆるソリッド・ノーズになっており、レーダー火器管制装置の搭載も可能とされる[1]。試作機の写真を見る限りでは機首部が黒く塗られていて、電波透過材を使ったレドームになっているようだ。ユーザーの要望に応じてイタリアのグリフォS-7パルス・ドップラー・レーダーなどの外国製、もしくは中国製レーダーを搭載することが可能[2]。アビオニクスのデータバスにはアメリカが開発したMIL-STD-1553を採用している[2]。

【今後の展開と派生型について】
JL-9は、エンジンなど主要コンポーネントを既存のものを多く使用し、開発リスクの軽減に努めたことにより開発はさしたるトラブルも無く順調に行われた。

しかし、中国軍での採用について直ぐには決まらなかった。2006年からは中国空軍向けに10機の生産が行われると伝えられ[2]、2008年に入ってようやく中国空軍に採用されたとの報道がなされた[3]。第4世代戦闘機の機種転換に必要な高等練習機の需要はあるはずなのに、なぜ空軍での採用が遅れたのかについては現時点では理由は不明。Chinese Military AviationのJL-9の記事によると、空軍ではJL-9と並行して洪都航空工業集団公司が開発中だったL-15練習機「猟鷹」との比較試験を望んでいたが、L-15の開発遅延により比較試験が遅れた事がJL-9採用遅延になったのではないかとの見解を示している[5]。

JL-9は中国空軍だけでなく、中国海軍航空隊でも使用されていることが確認されている[6]。また、JL-9GもしくはJT-9と呼ばれる、胴体下部のベントラル・フィンを撤去してアレスティング・フックを装着、FC-1/JL-17戦闘機などと同じDSI(Diverterless Supersonic Inlet)インテイクを採用した機体も製造されており、中国が保有を目指している航空母艦の発着艦模擬訓練に使用されると推測される[6][9]。

JL-9は、中国軍での運用だけでなく外国への輸出も視野に入れている。輸出型の価格は、レーダーを装備しないタイプで240万ドルとの事[1]。インドネシア空軍のホークMk53の後継となる次期練習機整備計画への立候補を行っていた[7]が、これは2011年5月に韓国のT-50が採用される結果となっている[11]。2016年11月、スーダン空軍がFTC-2000を6機発注したことが明らかになった[1]。これはJL-9/FCT-2000の初の輸出事例となる。スーダン空軍が購入するFTC-2000は「FTC-2000S」の型式名が付与される[13]。2018年5月14日、FTC-2000Sのスーダン空軍への引き渡し式典が行われ、5月末には同機を使用したパイロット養成が開始された[13]。

このJL-9の発展型として2002年11月に模型が公開されたのがCY-1である[1]。北京超翼技術研究所が研究を行っているモデルであるが、計画が承認されればJL-9の発展型として貴州航空機工業(GAIC)で製造されることになるという。このタイプでは主翼は前縁が直線のデルタ翼になり、その前方のコクピット脇の部分にカナード翼が付く。さらにカナード翼後縁部分に当たる胴体両側面に小さなフィンが付き、これはサイド・プレート・カナードと呼ばれる。また水平尾翼はかなり小型化され、前縁部には小さな前縁付け根延長部が設けられている[1]。2004年にはCY-1に設計変更を加えたLFC-16の模型が公開されている[8]。ただしその後の動きは不詳であり、CY-1/LFC-16が実際に製造されるかどうかは現時点では不明。

2012年11月に開催された珠海航空ショーではJL-9の発展型としてFTC-2000G軽多用途機(中国語だと軽型多用途飛機)の模型が出展された[10]。FTC-2000Gは高等練習機としての任務だけでなく、国際市場への売込みを視野に空対空、空対地戦闘能力を強化して多用途航機としての性格を強めた機体。兵装搭載能力改善のため、パイロンを4つ増設(翼端2基、胴体下部2基)、最大離陸重量は原型の9,800kgから11,000kgに高められている。主翼面積も増加されており、搭載能力の強化や運動性・離着陸性能の改善がなされている。模型では機首が黒く塗られており、ユーザーの要望に応じて任意のレーダーを搭載することが想定されていると考えられる。インテイクには海軍航空隊で運用されているJG-9Gと同じDSI方式が採用されている。改造による機体重量増加のためか、最高速度は原型のM1.6からM1.4に下がっている。FTC-2000Gは、空対空、空対地攻撃任務のほかに、偵察用ポッドを搭載することで戦術偵察任務に使用することも可能。比較的低コストで調達できる費用対効果の高い多用途航空機として各国への売込みが図られるものと思われる。

【参考資料】
[1]青木謙知『戦闘機年鑑2007-2008』(イカロス出版/2007年)233頁
[2]Chinese Defence Today「JiaoLian-9 Advanced Jet Trainer」
[3]新浪网「国産山鷹高教機已量産並装備中国空軍」(2008年10月13日/航空知識2008年第10期)
[4]搜狐军事资料库「SU-27在中国最真实的状况」
[5]Chinese Military Aviation「JL-9/JJ-9 Plateau Eagle」
[6] China Defense Blog「JL-9 Plateau Eagle」(2011年1月22日)
[7]ANTARA「Air Force wishes to replace its Hawk Mk-53s」(2008年9月18日)
[8]Jane's All the World’s Aircraft 2007-2008(Jane's Information Group)107〜108頁
[9]Chinese Military Review 「Chinese JL-9G Naval Fighter Jet Trainer」(2011年12月)
[10]Defense News Blog「China’s FTC-2000 Upgraded」(Wendell Minnick(顔文)/2012年11月20日)
[11]青木謙知『戦闘機年鑑2013-2014』(イカロス出版/2013年)210頁
[12]AIN online「China Shows FTC-2000 Fighter-Trainer for Sudan」(Chen Chuanren/2017年6月5日)
[13]新浪网「包教包会!中国山鹰教练机在苏丹开启训练征程」(2018年5月28日)http://slide.mil.news.sina.com.cn/k/slide_8_61342_... (2018年7月4日閲覧)

中国空軍
中国海軍

amazon

▼特集:自衛隊機vs中国機▼


▼特集:中国の海軍力▼


▼特集:中国海軍▼


▼中国巡航ミサイル▼


























































メンバーのみ編集できます