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▼KJ-500の開設動画(動画タイトルはインドネシア語)


KJ-500(空警500)は2000年代後半に開発が開始された中国の新しい空中早期警戒管制機[1]。機体の開発は陝西飛機工業集団公司が、レーダーシステムは中国電子科技集団公司第三十八研究所が担当した[1]。開発では、KJ-2000早期警戒管制機(空警2000)KJ-200早期警戒機(空警200)の運用経験や、パキスタンに輸出されたZDK-03「カラコルム・イーグル」早期警戒管制機の設計が生かされている。

【開発経緯】
中国空軍では、KJ-500に先駆けてIL-76MD輸送機をベース機としたKJ-2000早期警戒管制機(空警2000)Y-8/Y-9輸送機を用いたKJ-200早期警戒機(空警200)という二種類の早期警戒管制機を運用していた。中国はKJ-2000とKJ-200の実用化により、長らく課題であった早期警戒管制機の欠如という課題を解決することに成功したと言える。

しかし、両機にはそれぞれ固有の問題があった。KJ-2000は大型輸送機の転用であることから、大型で高い性能を有するレーダーシステムの搭載が可能で、早期警戒機には欠かせない長い航続距離を備えていたが、IL-76の供給を外国に依存していたため十分な機数を揃えられなかった[2]。KJ-200は、国内に生産ラインのあるY-8/Y-9を母機としているので調達には問題なかったが、中型輸送機をベースとしているため、搭載システムのサイズに制約がありレーダーの性能はKJ-2000よりも低いものとならざるを得なかった。ビーム式ASEAレーダーを搭載したことから、機体の前後がレーダー探知の死角になるという点も解決を要する課題とされた[4]。

KJ-500の開発では、KJ-2000とKJ-200の課題を解決することが求められた。ベース機については国産機とすることとされたが、早期警戒レーダーシステムを搭載可能なペイロードを有する中国製大型機としてはKJ-200と同じくY-8/Y-9輸送機しか存在せず、開発陣には他の選択肢は存在しなかった。そのため、Y-8/Y-9に搭載可能なサイズながらKJ-2000に搭載されたものと遜色のない性能を有する早期警戒レーダーシステムを実用化するという難しい課題を実現しなければならなかった。これを可能としたのは、中国の電子技術や集積回路技術における急速な進歩であり、技術的進歩がシステムのコンパクト化と高性能の両立を実現する基盤となった[2][4]。

新型早期警戒管制機の開発を外部に窺わせるきっかけとなったのは、新型の円盤型レドームを搭載したY-8CEテストベッド機の写真がインターネット上に紹介されたことによる[1]。その時点では、このレドームの開発目的について確たる情報は得られなかったが、2013年初め、Y-9輸送機にこれとよく似たレドームを搭載した試作機の写真が撮影され、新型AEW&C機の開発が確実になった[1][3]。この時点で開発はほぼ完了していた模様で、空軍では翌2014年から、海軍航空隊でも2015年からKJ-500の運用を開始した[1]。その存在が初めて公にされたのは2015年9月3日に北京で開催された反ファシズム抗日戦争勝利70周年紀念軍事パレードでの展示飛行であり[4]、翌2016年の珠海航空ショーではKJ-500の地上展示が行われた[5]。

【性能】
KJ-500は前述の通りY-8/Y-9輸送機に早期警戒レーダーシステムを搭載して開発された。輸送機としてはY-9、特殊任務機として各種システムを搭載するプラットフォームとしては「運-8三類平台(Y-8カテゴリー祁織廛薀奪肇侫ーム)」の名称が付与されている。「運-8三類平台」は、もともとKJ-200の母機として開発されたが、KJ-500ではコクピットのグラス化をさらに進め、エンジンを出力向上型に換装するなどの改良が施されている[4]。円盤型レドーム搭載による機体の不安定化解消のためか、Y-8/9やKJ-200、ZDK-03には無いベントラルフィン二基が尾部に装着されている。

前述の通り、最大離陸重量60tのY-8/Y-9と、最大離陸重量190tのIL-76ではサイズの違いは明らかであり、KJ-500にとっては、小型かつ高性能のASEAレーダーの実用化が開発成功に不可欠な条件であった。KJ-500が搭載する固定式円盤型レドームには、KJ-2000と同じく3基のAESAレーダーが内蔵されておりレドームを旋回させる事無く全周捜索が可能[2]。KJ-500のAESAレーダーには新しいデジタルレーダー技術が採用されており、KJ-2000のレーダーアンテナよりも小型でフェイズド・アレイ・レーダーの素子数も少ないにも拘らず、同等の性能を発揮することを可能としたとされる[1][6]。デジタルレーダー技術の採用により、信号を直接デジタル合成して位相と幅度を加えて、パルスから空間画像に変換できる。同時にデジタルパルスの受信も可能であり、これまでのAESAレーダーと比較して、アンテナ重量の軽量化、探知精度と探知可能距離の向上が成し遂げられている[6]。デジタルレーダー技術は、レーダーのコンパクト化のみならず、形成されるレーダー波の頻繁な切り替えを可能とし、電子妨害に対して高い抗湛性を備えている[4]。早期警戒管制機にとって重要な、複数目標の処理能力を強化し、特にステルス機、高速、高機動目標への対処能力が高まっているとのこと[6]。

KJ-200と比較すると、KJ-200の課題であった機体前後の死角がなくなって全周観測が可能となっただけでなく、ビーム式レーダーでは困難とされる探知した目標の高度測量も出来る点でも優位に立っている[2]。AESAレーダーや情報処理を担当するコンピュータのコアシステムに至るまで完全な国産化が達成されており、この点でも中国の半導体、集積回路、電子技術の発展の恩恵を得ていると評価されている[2]。なお、パキスタンに輸出されたZDK-03「カラコルム・イーグル」早期警戒管制機も「運-8三類平台」に円盤型レドームを搭載しているが、KJ-500のレドームが固定式なのに対し、こちらは全周捜索を行うためにレドームを回転させるロートドーム方式を採用しているのが相違点。KJ-500のレドーム上部には衛星通信アンテナを内蔵したドームが設置されているのも識別点となる[4]。

KJ-500は円盤型レドーム以外にも、機体各部に各種センサーやアンテナを搭載している。胴体前部上方には6組のESM(Electronic Support Measures:電子支援対策)アンテナが整列しており、地上や空中の電波を探知して、その精密な方位や位置を測定する[4]。胴体下部にも電子偵察システム用の複数のアンテナが配置されている[4]。機首レドーム後部には光学/電子センサーを内蔵したターレットが配置されている[4]。このほか、尾部や後部胴体側面にもセンサーを内蔵したレドームやフェアリングが配置されている。後部胴体側面のフェアリング内部には、電子偵察システムのアンテナが内蔵されており、垂直尾翼頂部のアンテナと共に、レーダー波や無線通信を傍受収集し、ESMと電子戦の双方の任務に利用される[4]。

探知した目標情報や管制指示はデータリンクを介して各部隊に伝達される。KJ-500は中国各軍共通データリンクである「三軍聯合数据鍵(聯合信息分発系統(JIDS)」を採用しているため、KJ-500の探知した情報は陸、海、空、ロケット軍の各軍種で共有でき、統合運用作戦において極めて有効に機能する[7]。KJ-500は、自ら探知した情報を提供するのみならず、他部隊や航空機、艦船などと構築される戦場ネットワークの中継局としての役割を果たすことも可能であり、この点においても中国各軍種の統合運用における重要な役割を果たす[6]

【生産状況と今後の展開について】
KJ-500は、KJ-2000とKJ-200が有していたそれぞれの問題を解消する次世代早期警戒管制機として開発された。開発成功を受けて、空軍と海軍航空隊での配備が開始され、かなりのペースで調達が進んでいる模様。生産を担当する陝西飛機工業集団公司では、同社の航空機の生産ラインに生産効率の高いムービングライン生産方式を導入しており、KJ-500のハイペースの生産もその恩恵にあずかったものとされる[8][9]。これまでの生産機数は、2018年10月現在で試作機2機を含めて15機程度が確認されているとのこと[1]。

KJ-500では、ベース機のサイズの問題を技術革新により解消することを目指して相応の成果を得たとみる事が出来るが、それでも解決できない問題も残存している[4]。

KJ-500のベース機であるY-9の最高速度は650km/h[10]であるがIL-76MDをベースとするKJ-2000の850km/h[11]と比べると大きな差を付けられている。輸送機にはない早期警戒レーダーシステムを搭載している上に、速度発揮には不利になる円盤型レドームを搭載しているため、KJ-500の最高速度はY-9よりも低くなっていると思われ、最高速度の差はさらに広がるだろう。飛行性能の差は、早期警戒管制機にとって重要な探知距離にも悪影響を与えている。KJ-500は早期警戒管制任務では高度8000m付近を飛行する。これは。プラットフォーム機である「運-8三類」の巡航高度の制約によるもので、より高い高度を巡航飛行するKJ-2000に対して視認可能な探知距離ではどうしても制約がある。例えば、高度10000mでの探知距離が400kmとすると、高度8000mでの探知距離は同じ性能のレーダーを用いても360km前後にまで下がってしまうとされる[4]。上記の性能差は、プラットフォーム機に起因する問題であり、根本的な解決は困難。

もう一つは長時間の哨戒飛行を行う早期警戒管制機にとって重要な性能である航続距離の問題である。KJ-2000では12時間に及ぶ飛行が可能であるが[10]、より小型の機体であるKJ-500では連続飛行時間は8時間に留まっている[5]。この点については、空中給油機による燃料補給を行うことで問題を解消することが可能であり、2018年には機首上部に空中給油用プローブを装着したKJ-500が二機確認されており[1]、今後このタイプのKJ-500の生産が進められると推測される。

【参考資料】
[1]Chinese Military Aviation「Surveillance Aircraft I/KJ-500」
http://chinese-military-aviation.blogspot.com/p/su...(2018年10月7日閲覧)
[2]钟何「空中作战群 预警指挥机梯队 -空警2000、空警-500、运-8指挥通讯机、运-8干扰机、歼-10B」『兵工科技2017/16 纪念中国人民解放军建军90周年沙场大阅兵』(兵工科技杂志社)62-71頁
[3]Chinese Military Review「China's New Generation Y-9 AEW&C Aircraft Revealed」(2013年7月)
http://chinesemilitaryreview.blogspot.jp/2013/07/c...
[4]温杰「”空警”-500中型预警机」『现代兵器2016甦- 2016中国航展专辑』(中国兵器工业集团公司/2016年11月20日出版)92-93頁
[5]木易「空警-500及其与隐身战机的协同作战」『兵工科技2016甦-2016珠海航展专辑』(兵工科技杂志社)27-32頁 
[6]新浪网「中国空军空警-500有何法宝?让隐身战机无处藏身」(2017年12月5日)http://slide.mil.news.sina.com.cn/k/slide_8_193_58... (2018年10月7日閲覧)
[7]新浪网「我055万吨大驱开启首次试航 新质战斗力并不在于坑数」(2018年8月25日)http://mil.news.sina.com.cn/jssd/2018-08-25/doc-ih... (2018年10月7日閲覧)
[8]East Pendulum「AWACS, MPA… le groupe AVIC accélère la cadence de production」(HENRI KENHMANN/2017年12月8日)http://www.eastpendulum.com/awacs-mpa-le-groupe-av... (2018年10月7日閲覧)
[9]East Pendulum「La marine chinoise déploie 4 avions ASW KQ-200 en mer de Chine méridionale」(HENRI KENHMANN/2017年6月27日)http://www.eastpendulum.com/marine-chinoise-deploi...(2018年10月7日閲覧
[10]Chinese Military Aviation「Transport & Tanker/Y-9」
http://chinese-military-aviation.blogspot.com/p/tr...
[11]「空警-2000预警机性能详解」『兵工科技2017/13 中国预警机』(兵工科技杂志社)45-48頁

【関連事項】
Y-9輸送機(運輸9)
Y-8輸送機(運輸8/An-12/カブ)
KJ-200早期警戒機(空警200/高新5号)
KJ-2000早期警戒管制機(空警2000)

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