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PL-15(霹靂15)は、PL-12空対空ミサイル(霹靂12/SD-10)に続いて開発された中国第二世代のアクティブ・レーダー誘導中距離空対空ミサイル[1]。開発は第607研究所が担当[2]。

【開発経緯】
中国空軍では、ロシアから輸入したR-77アクティブ・レーダー誘導空対空ミサイルと、ロシアの技術支援を受けて開発されたPL-12(霹靂12/SD-10)の実用化により、打ちっ放し可能な中距離空対空ミサイルの配備と国産化を実現した。しかし、この分野での各国の技術的進歩のスピードは速く、PL-12の性能ではAIM-120D(米)やAAM-4B(日)、ミーティア(欧州)などの新世代中距離空対空ミサイルに対して射程や命中精度の点で不利になるのは明らかであった[1]。

また、PL-12を搭載する中国空軍の戦闘機が探知距離の長いAESAレーダー(active electronically scanned array radar)を搭載すると、PL-12の射程ではレーダーの探知距離の長さを有効に生かす事が出来ないという問題も浮上した[1]。一例をあげると、AESAレーダーを搭載するとされるJ-16の場合、レーダー反射断面積3屬箸い戦闘機大の目標に対して、150km前後の距離での探知、80km近い距離での追尾能力を有しているとされるが、PL-12の射程(最大射程70km台、有効射程は50km前後)では、せっかくのレーダーの能力に追いついていなかった[1]。

この状況に対して中国ではPL-12の改良を行うと共に、新世代の中距離空対空ミサイルの開発にも着手することになった。新世代中距離空対空ミサイルでは、J-20ステルス戦闘機のウエポンベイへの搭載が前提とされたことで、ウエポンベイの限られた空間を有効活用するため、ミサイルの重量、全長、翼幅のコンパクト化が不可欠とされた[1]。新世代の中距離空対空ミサイルの存在は2011年ごろから噂されるようになった[2]。当初はPL-12の発展型(PL-12C?)と見られていたが、後に新設計のミサイルであることが明らかになり型式名もPL-15と呼ばれるようになった[2]。最初のその姿が写真に収められたのは2012年で[2]、2016年前後には開発作業が終了し、軍での試験を経て量産が開始された[1]。PL-15は、J-20以外にもJ-10CJ-16などの中国第3.5世代機(西側の第4.5世代機に相当)の標準的な兵装として、PL-12に代わる中距離空対空ミサイルとして配備が進められている。

【性能】
PL-15はミサイル中央部に4枚の固定式の安定翼、ミサイル尾部に4枚の操舵翼を配置している。PL-12と比較すると、安定翼は単純デルタ翼から翼端を切り落として台形に近い形となった。操舵翼はPL-12が翼端を斜め切り落とし形状として付け根に大きなノッチを付けた形状になっていたのを、PL-15では翼端切り落としデルタに変更されている。安定翼、操舵翼ともにウエポンベイでの搭載を前提として、翼面積はPL-12よりもかなり小型化されているのが特徴。ミサイルの全幅は0.5m前後と推測されているが、これはF-22のウエポンベイ搭載を前提に開発されたアメリカのAIM-120Dに近いサイズ[1]。翼面積の小型化は、空気抵抗の軽減効果があり、射程の延伸や終末段階での機動性向上にも有効。

PL-15では射程延伸のためミサイル本体の軽量化も図られており、軽量化と強度維持の両立のため新しい製造技術や新素材の導入が行われた。これによりミサイル本体重量をPL-12(180kg)よりも軽い170kg程度にまで軽減できたとの推測も存在する[1]。

PL-15は、命中率、目標探知能力、ECCM能力の向上を目的として、双方向データリンクシステム、レーダーシーカーのASEA化が盛り込まれた。双方向データリンクシステムの採用により、PL-15はミサイル発射後も、発射母機および他のプラットフォームから伝達される情報をもとにして目標情報の更新が可能となり、飛翔コース修正や目標変更を行い得るようになり、戦術的柔軟性が大きく向上している[1]。

ミサイル先端に内蔵されたレーダーシーカーは、中国の空対空ミサイルとしては初となるAESAレーダーが搭載された[1]。AESAレーダーは、電波妨害に対する抗湛性に優れ、探知範囲、距離、精度で従来のモノパルス・ドップラー・レーダーと比較してかなりの性能向上が可能となる。例えば、探知距離では従来型レーダーと比較して60〜80%延伸されるとのこと[1]。探知能力の向上は、特にステルス機や巡航ミサイルなど低RCS(レーダー反射断面積)値目標の発見に有利であり、従来型レーダーと比較すると、探知距離で5倍以上、回避不能距離は3倍以上になると試算されている[1]。データリンクや自らのシーカーから得られた各種情報を処理するため、高性能なデジタル計算機が搭載され、厳しい環境下でも良好な目標探知・追尾能力を確保している[1]。ミサイルのシーカーにAESAレーダーを搭載するには電子機器の小型化技術と、小型で高い性能を備えたフェイズド・アレイ・レーダーの実用化とそのコンポーネントの量産体制の構築が不可欠である。中国では、2010年ごろに、自国でのAESAレーダーの技術を確立し、その生産に必要な産業インフラを整えたことで、PL-15へのAESAレーダー採用が可能となった[1]。PL-15のレーダーシーカーは、アクティブ式とパッシブ式の二種類の探知方法を選択可能だが[2]、これはPL-12から引き継がれた機能。

PL-15の開発では、要求された100km超という射程を如何に実現するかが課題となった。欧州のミーティアは、射程を伸ばすため高速飛行時に生じる圧力を活用したラムジェット推進を採用したが、この方法だと空気取り入れ用インテークをミサイルに着ける必要がありサイズが大きくなり、推進剤燃焼後はインテークが空気抵抗となる、などのデメリットが存在した[1]。PL-15はウエポンベイ搭載のため小型化が必要で、高機動性を有する目標への打撃性能向上も求められたため、ラムジェット方式ではなくロケットモーターの固体燃料を二種類搭載する二重推力方法が採用された[1]。PL-15は発射後、加速用の推進薬に点火して3秒以内にマッハ4に達して、弾道飛行で射程を稼ぐ巡航飛行に入ると巡航飛行用の推進薬に点火してマッハ2.5以下の速度で飛翔する。巡航飛行用の推進薬は加速用よりもゆっくりと燃焼することで飛翔速度を出来るだけ落とさないようになっている。これにより、最大射程での終末段階でも25Gを下らない機動性を発揮することが可能[1]。PL-15の性能は公式には明らかにされていないが、最大射程は150km[1]から楽観的な見積もりだと180km程度[1]〜200km[2]は確保されているとみられている[1]。

【今後の展望】
PL-15は、射程の延伸、ステルス機や小型の巡航ミサイルなどへの対処能力の強化、いわゆる「ネットワーク中心の戦い(Network-Centric Warfare:NCW)」を前提としたデータリンク機能の付与により、飛翔中のコース変更や攻撃目標の変更を行うことが可能となるなど、今後の中国空軍の目指す方向性に沿った能力が与えられている。

PL-12が、アクティブ・レーダー誘導中距離空対空ミサイルの自給体制を確立した存在とすると、PL-15はAIM-120DやAAM-4B、ミーティアなど新世代中距離空対空ミサイルに伍する性能を備えることが求められたといえよう。2015年頃には、中国がこれらの新世代空対空ミサイルに対抗し得るミサイルを開発配備できるのは2020年代との見通し[3]も存在したが、PL-15の性能が上記の通りだとすれば、中国の中距離空対空ミサイルの開発速度は予想をかなり上回るペースで進んでいることになる。PL-15は配備が開始されたばかりの装備で、その性能はまだ明らかになっていない部分が多いが、要求された能力を実現できているとすれば、その存在はAIM-120Dを有するアメリカにとっても無視できないと指摘されている[4]。

【参考資料】
[1]银河「海空悍将 番外扁-歼16多用途战斗机载武器详解」『舰载武器』2018.04/No.287(中国船舶重工集团公司)17-35頁
[2]Chinese Military Aaviation「PL-15」http://chinese-military-aviation.blogspot.jp/p/mis... (2018年4月15日閲覧)
https://www.nextbigfuture.com/2018/02/the-usa-is-n... (2018年4月15日閲覧)
[3]宮脇俊幸「中華ミサイルは日本の戦闘機に追いつくか!!」『軍事研究』2015年2月号(ジャパン・ミリタリー・レビュー)40-51頁
[4] NEXT BIG FUTURE「The USA is no longer guaranteed future military technology dominance」(Brian Wang/2018年2月18日)

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