日本の周辺国が装備する兵器のデータベース





性能緒元(中国が入手したタイプに限る)
名称NATOコード重量全長翼幅直径最大速度最大射程誘導方式
R-27R-1AA-10A(Alamo A)253kg4.08m0.77m0.23mM2.3〜4,570km慣性+セミアクティブ・レーダー誘導
R-27T-1AA-10B(Alamo B)254kg3.79m0.77m0.23mM2.3〜4.570km赤外線誘導
R-27ERAA-10C(Alamo C)350kg4.78m0.8m0.26mM2.3〜4,5130km慣性+セミアクティブ・レーダー誘導
R-27ETAA-10D(Alamo D)343kg4.5m08m0.26mM2.3〜4.5120km赤外線誘導
R-27PAA-10E(Alamo E)      パッシブレーダー波誘導

装備機種
機種J-11戦闘機(殲撃11/Su-27SK/Su-27UBK)
 J-11B戦闘機
 Su-30MKK/MKK2戦闘機
 F-8IIM戦闘機

【R-27概要】
R-27は、Su-27やMiG-29などの第四世代戦闘機向けに、ヴィンペル(Vympel)設計局により1970年代に開発された中距離空対空ミサイルで、1980年代前半からソ連軍への配備が開始された。

R-27シリーズは、高度20mから27,000mまでの範囲で、最高速度3500km/hまでの目標に対して有効。ミサイルの最高速度はM2.3からM4.5、全てのシリーズで39kgのHE弾頭を使用しているミサイルの構造は、前端部が誘導系統でその後ろが照準系統、炸薬・信管部分と続く。シーカー直後には菱形の短い安定翼4枚が配置、中央部前方に「バタフライ」と呼ばれる独特の形状を持つ制御翼4枚が装着されている。後方部分はロケットモーターと推進薬で、尾部には安定翼として固定式切り落としデルタ翼4枚が装着される。この構成は全てのシリーズで共通している。各部分はモジュール式になっており、誘導装置やロケットモーター等のコンポーネントを変更する事が容易であり、多くの派生型が開発される事になる[4]。

ソ連では、幾つかの空対空ミサイルで、複数の誘導方式を持つ派生型を開発し、同時に発射する事で敵の妨害・回避行動を困難にし、撃墜率を高める手法がとられていた[1]。R-27もその一例であり、R-27初期型はセミアクティブ・レーダー誘導(SARH)方式のR-27R、赤外線誘導(IRH)方式のR-27T、パッシブレーダー波誘導(パッシブ無線周波誘導/PRFH)方式のR-27Pの3種類から構成されていた。通常の空中戦闘ではR-27RとR-27Tが用いられる。R-27RとR-27Tを半々ずつ搭載する場合、通常同一目標に対してR-27RとR-27Tを連続して発射する。誘導方式の異なるミサイルを同時に使用することで撃墜率が高まるだけでなく、回避機動等で終末段階まで発射機から誘導の必要なR-27Rの誘導が出来なくなったとしても、打ちっぱなし式のR-27Tはそのまま目標に向かうため、敵は尚も対処を迫られる事になる。

R-27R(AA-10A「Alamo A」は、中間誘導は、指令アップデート機能付きの慣性航法装置によって行われ、終末誘導段階に入るとセミアクティブ・レーダー・シーカーに切り替わる。最大射程は向かってくる目標に対して80km、離れつつある目標に対して50kmとされる[13]。ただし、低空域の目標に対してはより短い射程となる。また、シーカーの精度の問題から、グラウンドクラッターやシークラッターの多い地上や海面すれすれを飛行する目標に対しては攻撃が困難になる問題が存在し、改良型ではシーカーの改良が施される事になった。SARH方式のR-27Rでは、ミサイルの飛行過程の多くを発射母機が管制・誘導する必要があり、同時に攻撃できるのは1目標に限定される。

赤外線誘導方式を採用しているR-27Tは、慣性航法装置は搭載されておらず、目標誘導には赤外線シーカーのみが使用される。最大射程は向かってくる目標に対して70km、離れつつある目標に対して45kmとされる[13]。ただし上記はスペック上の数値であり、現実にはより近距離で運用される。R-27R/Tの最大射程は70〜80kmとされているが、実戦での最大有効射程は20km前後になると見られている[11]。Su-27やMiG-29といったIRST(Infra-red search and track system:赤外線照準追尾システム)を装備する機体では、IRSTによって目標探知とR-27Tの照準を行う。IRSTはパッシブ式の照準追尾方式なので、電子妨害下の状況でも目標の攻撃が可能で、目標とされた機体が攻撃を事前に探知する事は難しい。R-27Tの赤外線シーカーは、+-50度の視野を持ち、発射後は自律的に目標に誘導されるので母機による管制・誘導は必要ない。悪天候では探知距離が短くなるというIRH方式固有の問題は有るが、命中まで誘導を行う必要の有るSARH方式のR-27Rに比べると発射後は即座に別の目標に対処する事が可能というメリットが有る。R-27Tの赤外線シーカーは低空域から飛来する巡航ミサイルに対する探知能力の面で遜色があったが、改良型ではその点についても改修がなされている。

R-27Pは、レーダー波を発している敵戦闘機や早期警戒機、地上レーダー等に対する攻撃に使用される。ミサイル自身がレーダー波発射源に向かって自動誘導されるので、発射後の母機による誘導の必要は無い。ミサイル自身はレーダー波を発射しないパッシブ式誘導方式なので、目標とされた機体は探知や対応が難しくなる[4][10]。

前述の通り、R-27はモジュール式設計を採用しており派生型を開発する事が容易だったこともあり、上記のR-27R/R-27T/R-27P以外にも、R-27ET(R-27Tの射程延長型)、 R-27ER(R-27Rの射程延長型)、終末誘導にアクティブ・レーダー誘導方式を採用したR-27A、その射程延長型R-27AE、洋上での運用を前提に開発されたR-27ME(R-27EMの表記もある。SARH方式、低空目標の撃墜率が改善)等の多くの種類が開発・運用されている。

R-27は、1998年から2000年にかけて勃発したエチオピア・エリトリア紛争で実戦投入される事になった。エチオピアはロシアからSu-27を、エリトリアはウクライナからMiG-29を搭乗員込みで調達しており、ロシア人やウクライナ人搭乗員が操縦するロシア製戦闘機同士が交戦するという珍しいケースが発生した。Su-27、MiG-29ともに、R-27中距離空対空ミサイルとR-73赤外線誘導空対空ミサイルを兵装として使用していた。紛争期間中、両軍の間ではR-27が合計24発、R-73が9発発射された。R-73は3機撃墜(撃墜されたのはいずれもエリトリア軍MiG-29)という戦果を残したが、R-24は1機撃破(エリトリア軍のMiG-29。同機はR-27の爆発により損傷、空軍基地に帰還し着陸直前に墜落、全損。)のみと発射数の割には振るわなかった[5]。具体的な運用状況に関する情報が乏しいため、R-27の命中率が振るわなかった原因を特定するのは難しい。1つには、R-27の性能を維持するためには、輸送や保管時の厳密な品質管理、整備に当たる熟練したスタッフの存在が不可欠であったが、この紛争では十分な後方支援体制を確立する事が出来なかったためR-27の信頼性が低下してしまったとされる[10]。

【中国空軍におけるR-27】
1991年、中国はSu-27の購入に合わせて、Su-27SK/UBKの兵装であるR-27中距離空対空ミサイルを250発購入、1992年から導入が開始された。中国が輸入したR-27はウクライナのArtem社が製造していたので、ロシアからではなくウクライナからの調達となった[2][9]。

R-27は幾つかのタイプが存在するが、1991年に中国が輸入契約を結んだのはSARH方式のR-27R-1(R-27Rの輸出版)と、R-27Rの射程延長型であるR-27ERの二種類。その後、1995年に追加で1577発のR-27をウクライナから調達する事になり、2000年から2007年にかけて納付が行われた。この際に導入されたのは、SARH 方式のR-27ERと赤外線誘導(IRH)方式のR-27ETの二種類であった[9]。『漢和防務評論』2008年1月号の記事に掲載されたウクライナの国連への申告情報によると、2000年から開始された中国へのR-27の納付では、IRH方式のR-27T-1(R-27Tの輸出版)、R-27Tの射程延長型R-27ET、PRFH方式のR-27Pも輸出されたとの事[3]。ウクライナはR-27を輸出するだけではなく、ミサイルの保管・管理に関する技術提供も行っている。また1990年代に導入したR-27は運用寿命を迎えつつあるが、これに関してもウクライナの企業が寿命延長作業に協力している[3]

R-27シリーズは、中国ではSu-27/J-11Su-30MKKSu-30MK2での運用が行われている。また、輸出向けのF-8IIMでも搭載兵器の1つとしてR-27が挙げられている。中国空軍では、2002年からアクティブ・レーダー誘導方式のR-77(AA-12 Adder)の導入を開始しているが、R-27の導入はその後も引き続き行われている。R-27の調達が続いている要因としては、Su-27SKやJ-11は兵装システムの改修を受けなければR-77を運用できず、暫くはR-27の搭載を継続せねばならないのが1つ。さらに、Su-27SKやJ-11のSARH方式のR-27R/ERではミサイルの飛行過程のすべてを発射機が誘導する必要があり、同時に攻撃できるのは1目標に限定されるのに対してIRH方式のR-27T-1/ETは打ちっぱなしが可能であり、(ALH方式のミサイルほど射程は長く出来ないが)兵装システム未改修のSu-27/J-11に多目標同時攻撃能力を与えられる事を中国空軍が評価している事も指摘されている[2]。

R-27RはAMRAAMやR-77(AA-12 Adder)のような撃ちっ放し性能(fire-and-forget)は持っていないものの、中国空軍が始めて入手した実用的な中距離空対空ミサイルであり、R-27の導入によって中国空軍は漸く本格的なBVR(Beyond Visulal Range:視認外距離)戦闘能力を獲得した事になる。

【参考資料】
[1]戦闘機年鑑2009-2010 (青木 謙知/イカロス出版)
[2]漢和防務評論2008年1月号「中国従烏克蘭進口大量航空弾薬的背景」(アンドレイ・ピンコフ)
[3]漢和防務評論2009年1月号「R27P雷達的更多技術細節公開」(Y・Sitov、平可夫)
[4]ミリタリー選書8-軍用機ウエポン・ハンドブック(青木 謙知/イカロス出版/2005年)

[5]ACIG.org Journals「II Ethiopian Eritrean War, 1998 - 2000」(Tom Cooper & Jonathan Kyzer, with additional
[6]Chinese Defence Today
[7]details by Nadew & Alexander Mladenov/2003年9月2日)
[8]Military.CZ「Ruská raketa typu vzduch-vzduch R-27 (AA-10 Alamo)」
[9]SIPRI(ストックホルム国際平和研究所)公式サイト「国際兵器取引データベース」(2009年2月15日閲覧)
[10]SISTEMAS DE ARMAS「AA-10 Alamo - R-27」
[11]台灣茶黨「AAM物語」
[12]Уголок неба「Р-27」
[13]EnemyForces.com「R-27 (AA-10 Alamo) Medium-Range Air-to-Air Missile」

中国空軍

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