日本の周辺国が装備する兵器のデータベース


性能緒元(RGM-84A)
全長4.55m
直径34.29cm
全幅91.44cm
重量661.5kg
弾頭重量221kg(HE)
推進装置J402ターボジェットエンジン
最大速度855km/h
射程140km
誘導方式(中間)慣性航法誘導/(終末)アクティブ・レーダー誘導

ハープーンは1965年に開発検討が開始されたアメリカの対艦ミサイルである。当初は米国近海に接近・浮上した潜水艦を標的としていたが、1967年の第3次中東戦争においてイスラエル駆逐艦「エイラート」がソ連製対艦ミサイルによって撃沈された「エイラート事件」を受けてハープーンの主要な攻撃対象は水上艦艇に変更された[1]。本格的な開発計画は1968年に開始され、1971年にはマグダネル・ダグラス社が主契約社に選定された(現在はボーイングがハープーンの開発販売を行っている)[1]。1975年5月には、ハープーンの射程を90kmとすること、派生形として艦対艦型(RUG-84A)、空対艦型(AUG-84A)、潜水艦発射型(UGM-84A)の3種類を開発することが決定された。マグダネル・ダグラスでは射程延長に対応するためミサイルの推進装置としてターボジェットエンジンを採用することとした。同年10月にはハープーンの最初の発射実験が実施。1975年にはRGM-84Aが米海軍での運用を開始、続いて空対艦型のAGM-84Aは1977年に、潜水艦発射型のUGM-84は1981年に実用化された[1]。

ハープーンは胴体中央部に切り落としデルタの安定翼が4枚あり、尾部には切り落としデルタの制御翼が4枚装着されている[2]。ランチャー収納型のRGM-84とUGM-84は安定翼と制御翼が折り畳み式になっており[3]、ミサイル後端には射出用の小型ブースターが用意されている。推進装置はJ402ターボジェットエンジンで、ミサイル後部下面に小型インテークが配置されている[1][2]。誘導方式は中間段階が慣性航法誘導で終末段階がアクティブ・レーダー誘導方式。ハープーンは発射後、レーダーの探知を避けるため低空を亜音速で飛行し、目標の予測位置直前まで接近すると搭載レーダーを作動して目標を探知する。レーダーの作動は目標の正確な位置が判明していればレーダー波を探知され電子妨害を実施されることを避けるため直前まで行わないが、目標の位置が正確に判明していない場合はBOL (Bearing-Only Launch)と呼ばれるレーダー起動モードを実施する。BOLモードではミサイルは事前に入力された方位に沿って飛行しながら、飛翔の早い段階でレーダーを作動させ、前方45度の範囲で目標の捜索を行い、目標を探知・攻撃するというものである。目標を発見した場合、1,800mまで接近した時点でポップアップして目標の甲板に向けて急降下する。ハープーンの弾頭は221kgの爆風・貫通弾頭であり、目標に命中後船内で爆発を起こす様に設定されている。

艦対艦型のRGM-84は、専用の4連装発射機Mk141に搭載されるが、対潜ロケット「アスロック」用の8連装発射機Mk112やターター/スタンダードSAM用のMk11/13/26発射機から打ち出すことも可能[1。潜水艦型のUGM-84は耐圧発射機に収納されたまま魚雷発射管から射出、発射機が海面に浮上した後に発射される[3]。空対艦型のAGM-84は発射機に収められることなく、そのまま航空機のパイロンに搭載される。

ハープーンは実用化以来、継続的に改良が行われており、多数の派生型が開発されている。主な派生型を表に纏めると以下の様になる([1][2][4][5][6]を参照)。
RGM/AGM/UGM-84AハープーンBloc11975年から1981年にかけて実用化された基本型。
RGM/AGM/UGM-84BハープーンBloc1RGM-84Aよりも低高度を巡航飛行する。ポップアップ動作を行わずそのまま舷側に命中するシースキミング攻撃モードを採用。
RGM/AGM/UGM-84CハープーンBloc1B1982年に登場した改良型。ECCM((Electronic Counter-Counter Measures:対電子対抗手段)能力が向上。
RGM/AGM/UGM-84DハープーンBloc1C射程を220kmに延伸。ポッポアップ攻撃とシースキミング攻撃を選択可能。慣性航法装置の改良、選択式捜索、ECCM能力のさらなる改良等が行われる。
RGM/AGM-84FハープーンBloc1D射程延伸、目標の再攻撃能力の付与が行われる予定であった。1993年に開発中止。
AGM-84E「SLAM」ハープーンBloc1ESLAMとはStandoff Land Attack Missile(スタンドオフ対地攻撃ミサイル)の略称。ハープーンを基に開発された長射程の空対地ミサイル。1990年代初めから部隊配備が開始。
RGM-84E「Sea-SLAM」ハープーンBloc1ESLAMの艦対地型。生産は行われず。
RGM/AGM/UGM-84GハープーンBloc1GBlock1CにBlock1Dの再攻撃能力を付与したアップグレード型。ECCM能力も向上している。
AGM-84H「SLAM-ER」ハープーンBloc1FERはExpanded Responseの略称。SLAMの射程延長・能力向上型。ステルス性に配慮した形状変更が実施。安定翼を折り畳み二枚翼として滑空性能を高めている。2000年から米海軍での運用を開始。
ハープーンBlock2マグダネル・ダグラスのプライベート・ベンチャー「ハープーン2000」として開発開始。沿岸部での目標攻撃能力を向上させたタイプ。中間誘導にGPSを併用、艦艇だけでなく地上目標の攻撃も可能となる。
RGM/AGM-84LハープーンBlock2Block2の輸出型。
RGM/AGM-84JハープーンBlock2AGM-84DをBlock2仕様にアップグレードしたタイプ。
AGM-84K  AGM-84Hの改良型。2002年7月に初度運用能力を確保。既存のAGM-84HもAGM-84K仕様にアップグレードされる。
SLAM-ER ATAハープーンBloc1GAGM-84H/Kの改良型。ATAはAutomatic Target Acquisitionの略称。赤外線画像誘導方式が採用。
RGM/AGM-84MハープーンBloc3Block2の発展型。双方向データリンク機能が追加される。AGM-84Mは2008年に発注、RGM-84Mは2011年に実用化の予定。米海軍は850発のBlock2をBlocl3仕様に改良する予定。

ハープーンはこれまでに各型合計7000発以上が生産され、世界各国で運用が行われている。またハープーンの発展型であるSLAMシリーズは約1000発が生産されている[1]。


台湾海軍では艦対艦型のRGM-84、空中発射型のAGM-84が導入済みで、潜水艦発射型のUGM-84についても導入を計画している。

艦対艦型ハープーンについて、台湾では1980年からアメリカに対して輸出許可を求めていたが、台湾に攻撃的兵器を提供しないというアメリカの方針により、その提供は1990年代になるまで実現しなかった[7]。1992年、アメリカからのノックス級フリゲイト調達に合わせて38発のRGM-84を6800万ドルで発注、1995年に配備を行った[8]。その後1997年と2001年にもノックス級用に52発と71発のRGM-84を購入。2003年には導入を予定していたキッド級駆逐艦用の艦対艦ミサイルとしてRGM-84L 22発を発注し、2005年から200年にかけて海軍への配備が実施されている[8]。RGM-84Lは中間飛翔制御に衛星航法システムを追加して命中精度を向上させ、艦艇だけでなく対地攻撃も可能となっている。また、沿岸部での目標攻撃能力が大幅に改善されているのも特徴の1つで、従来型と比べて艦艇群の中からの目標艦船選別能力は約7倍に、沿岸の艦船目標に対する選別能力は約10倍になっているとされる[2]。台湾対岸に位置する中国福建省の沿岸部は島嶼が多く、海岸線も入り組んだ複雑な地形を形成しているため、中国海軍の小型艦艇は沿岸部の地形に隠れることで対艦ミサイルの攻撃を避けることができたが、RGM-84Lはそれらの艦艇に対しても有効な攻撃手段となる。

空中発射型のARG-84はまず台湾空軍での導入が行われた。1999年、空軍はF-16A/B戦闘機の空対艦用兵装として58発のAGM-84を導入した[8]。参考資料[8]では台湾空軍が導入したのはAGM-84 BlockCTSとなっているが、AGM-84A/Gも導入された模様。AGM-84 BlockCTS(Coastal Target Suppression)は対艦攻撃だけでなく対地目標に対する攻撃能力も有しているのが特徴。2008年には中間飛翔制御に衛星航法システムを追加して命中精度を向上させ、沿岸部での目標攻撃能力が改善され艦艇だけでなく対地攻撃も可能となったAGM-84L Block IIを9000万ドルで60発調達している[8]。空中発射型ハープーンは空軍のF-16A/Bと海軍が導入予定のP-3C対潜哨戒機に搭載されることになる。

台湾海軍では海龍級潜水艦(ズヴァールドヴィス級)の能力向上化の一環としてUGM-84 L Block2の運用能力を付与することを計画している。UGM-84 L Block2は対地攻撃能力を有しており、改装が実現すれば海龍級は中国の主要海軍基地全てを照準下に納めることが可能となる。2008年10月4日、アメリカ国務省は議会に台湾向けの64億6300万ドルに及ぶ兵器輸出を通知した。ブッシュ政権末期の駆け込み通知によって上記の兵器供給の一時凍結が解除された形になる。これによって海龍用のUGM-84L Block2の台湾への輸出が決定した。内訳はミサイル32発と訓練用シミュレーター2基で2億ドル[9]。

【参考資料】
[1]Directory of U.S. Military Rockets and Missiles「Boeing (McDonnell Douglas) AGM/RGM/UGM-84 Harpoon」
[2]ミリタリー選書8 軍用機ウエポン・ハンドブック(/青木謙知/イカロス出版/2005年)58〜59頁。
[3]艦載兵器ハンドブック改訂第2版「スタンダードRIM-66/67」(海人社)35頁。
[4]Global Security「AGM-84 Harpoon」
[5]FAS「AGM-84 Harpoon SLAM [Stand-Off Land Attack Missile]」
[6]ミサイル事典―世界のミサイル・リファレンス・ガイド (小都 元/新紀元社/2000年)490〜492頁。
[7]台湾問題 中国と米国の軍事的確執(平松茂雄/勁草書房/2005年)125頁。
[8]SIPRI 「The SIPRI Arms Transfers Database」
[9]Defense Security Cooperation Agency「Taipei Economic and Cultural Representative Office in the United States – UGM-84L HARPOON Block II Missiles」

台湾海軍

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