日本の周辺国が装備する兵器のデータベース






▼SH-1の試作型。45口径155mm榴弾砲を搭載。シャーシも量産型とは異なる。



性能緒元[13]
重量22.5トン
全長9.68m
全幅2.58m
全高3.5m
エンジンディーゼル330馬力
最高速度90km/h
航続距離600km
武装52口径155mm榴弾砲×1門
 88式12.7mm重機関銃(QJC-88)×1門
装甲あり(断片防御程度)
乗員6名

近年、仏GIAT(現ネクスター社)のカエサル(CAESAR)や瑞ボフォース社のFH-77Bのように、野戦用トラックに155mm榴弾砲を搭載した装輪式自走砲が各国で登場しているが、中国でもNORINCO(North Industries Corporation:中国北方工業公司)が同様の装輪式155mm自走榴弾砲を開発しているのが確認されている。開発は2002年から始まったとの由。

この自走砲は万山特殊車両製造廠製のWS5252型6×6トラックをベースとして開発された。車体前部は動力部で、その後ろが乗員区画となっており、軽火器や砲弾の破片に抗堪する装甲が施されている[13]。(一両製作された試作車両では通常のキャブのまま)。1輌の運用に必要な兵員は6名で、全員がこの乗車区画に搭乗できる。キャビン上部には自衛火器として88式12.7mm重機関銃(QJC-88)1門が搭載されている[13]。

車体後部には155mm榴弾砲と、射撃の反動を吸収するための大型駐鋤を搭載している。

戦闘重量は22.5トンで、330馬力のディーゼルエンジンを搭載し、路上最高速度は90km/hで航続距離は600km、最大安定傾斜角40度、1.2mまでの河川の渡渉、1.2mの壕を乗り越える能力を備えている[13]。SH-1は、装軌式自走砲と異なり自走しての長距離移動を得意とし、道路網を活用した迅速な展開能力を備えている。中国空軍のIL-76MD輸送機Y-8輸送機(運輸8/An-12)輸送機などの大型輸送機での移動も可能。

搭載する榴弾砲は、1987年に完成したPLL-01 155mm榴弾砲(WA-021)の45口径155mm榴弾砲をベースに開発されたと推測されている。試作型では、PLL-01と同じ45口径の155mm榴弾砲が搭載されていたが、量産型では、さらに長砲身の52口径155mm砲に変更された。水平鎖栓式閉鎖機を採用しており、付仰角度は-3〜+70度、方向射界は左右各20度[13]。乗員は車内から砲システムの各種操作が可能であり、車体後部の大型駐鋤を油気圧駆動で地面に設置させ、射撃管制システムを用いて目標を自動照準するまでの過程を車内で済ませることが可能[13]。自走状態から射撃状態になるまでの所要時間は1分未満[13]。

SH-1の155mm榴弾砲は、NATO規格の各種155mm砲弾の発射が可能で、モジュラー型装薬を採用している。最大射程はERFB(Extend Range Full Bore:低抵抗)弾で32km、ERFB-BB(Extend Range Full Bore-Bass Bleed:低抵抗ベースブリード)弾で41km、ERFB-BB-RA(Extend Range Full Bore-Bass Bleed Rocket Assisted:低抵抗ベースブリード/ロケット推進)弾をフル装薬で発射した場合の最大射程は53kmにも及ぶという[13]。GP-1型155mmレーザー誘導砲弾の発射も可能[13]。

SH-1は合計20発の砲弾を搭載する[13]。発射速度は装弾補助装置を使って毎分6発[13]。砲口には初速感知用のセンサーが装備され、これが射撃管制システムと連動している。射撃管制システムは、慣性航法システム、GPSシステム、無線、照準システムと連携しており、操縦手の横にある車長席にはデータ端末が、後部座席の砲手席には各種諸元を表示する4基の液晶パネルと照準装置が用意されており、データリンクで入手した目標座標から自動的に射撃諸元を算出することができる[13]。現在の砲兵車両の「標準装備」というべき先進的なC4IRシステムも導入されており、ネットワーク化されているという[13]。ただし、開発当初はこれほど充実したシステムが実現できていたかは不明であり、2008年に実施されたパキスタンでの運用試験ではシステムの完成度に問題があることが指摘されている(詳しくは【海外市場への売り込み】の節で紹介)。ユーザーからの要望にもこたえる形でシステムを高度化していったことが想定される。

給弾用の弾薬運搬車(20発搭載)も開発されている。運用はSH-1が6輌と指揮管制車輌が1輌で1個砲兵中隊を構成し、4個中隊(SH-1計24輌)で1個砲兵大隊を編制する。

【改良型SH-1A】
SH-1は中国第一世代の車載式装輪自走榴弾砲であり、この手の兵器システムを実用化した点で重要な存在であるが、【海外市場への売り込み】でも触れるように第一世代の装備であるために改善の余地も存在していた。これを受けて、2018年4月27日、NORINCOはSH-1の改良型SH-1Aの存在を公にした[9]。

SH-1Aは、SH-1を基礎として、性能と運用面に関するユーザーの要望を満足させるため、砲システム、シャーシ、射撃管制システム、砲弾について総合的にアップグレードを図った改良型とされる[9]。

主な改良点は以下の通り。
シャーシについては、フロント先端を短縮し、キャブ部分を前方に拡大して乗員区画の容積を増大。これにより操縦席の視界の改善を図ると共に、車体の重心バランスを前方に移動させることで走行時の安定性と登攀能力を向上[9]。乗員区画の装甲はSH-1よりも強化されており、生存性を高める措置が取られた。エンジンを停止した状態でも操砲作業を可能にするため、APU(Auxiliary Power Unit:補助動力装置)を搭載。APUはキャブ近くに設置され、エンジンが停止した状態でも砲や駐鋤の操作、照準システムの作動に必要な電力を供給する[9]。

155mm砲については照準装置、操砲系統、油気圧系統など全面的に手が加えられた[9]。砲身の素材を強度の高いものに変更。さらに閉鎖機の後方に装填補助装置を装着し、大仰角での射撃時に装薬が落下してしまう問題を解決[9]。閉鎖機の改良を行い、これに伴い横軸傾斜検知器を廃止[9]。操砲要員には専用のイヤーカバー式通話装置を用意し、砲撃音が轟く中、大声で伝達するというこれまでの手法に別れを告げた[9]。火砲の設計では各コンポーネントにモジュール概念を採用したが、いたずらに最新機能を盛り込むことは避けられた[9]。これはユーザーの要望に応じた簡素で実用性の高い野砲を設計する方針による [9]。夜間射撃用の暗視装置も用意されている[9]。

砲架右側上部に新設計の光学電子照準装置を搭載。この照準器は三軸安定化され、砲撃により砲架が動揺しても微調整の必要はない[9]。SH-1Aの照準システムは、伝統的な照準方式に現代的な自動照準を組み合わせた簡単かつ実用性と高い効率性を兼ね備えたものとされる[9]。 155mm砲弾についても新型砲弾が採用され、従来のものよりも加工・精度を改善したことで、命中精度の一層の向上を実現した[9]。

【海外市場への売り込み】
2002年から各国での兵器ショーで宣伝が行われている。アラブ首長国連邦(UAE)で行われたIDEX2007ではSH-1という名称で展示された。2007年頃には、パキスタンがNORINCOとの間で売買契約に調印したと報じられ[7]、2009年にはパキスタンにおいて実際にSH-1を用いた評価試験が実施された[10]。パキスタン軍では、SH-1は最大射程のテストではERFB-BB-RA弾を用いて実際に50kmを超える長射程射撃能力を備えていることを確認したが、その一方で、長距離射撃時の命中精度に問題があることも発見され、システムとしての自動化や操作性についても改良の余地があることが確認された[10]。何より問題となったのは、この時点でのSH-1は簡素な車載化した榴弾砲に留まっており、操砲システムの効率が悪く、指揮システムと制御システムも完備していなかった点である[11]。さらに、SH-1の調達に最も影響を与えたのは、最大の仮想敵であるインド陸軍の砲兵戦力の近代化が順調に進まなかったことであり、これを受けてパキスタン側でもSH-1の大量調達は見送られ、パキスタン軍では米軍から退役した155mm自走榴弾砲M109A5を115輌することになる[10][11][12]。

SH-1の最初のユーザーとなったのは東南アジアのミャンマーであった。2013年3月には、ミャンマーの軍事パレードにおいてSH-1が登場し、同国がSH-1を導入していることが明らかになった[8]。SIPRI Arms Transfers Databaseによると、ミャンマーは2008年に調達契約を結び、2009年に6輌のSH-1が引き渡されたとの事[12]。2022年には、同じ東南アジアのカンボジアにおいても、改良型のSH-1Aが導入された[13][14]。カンボジアの調達数については、60輌との数字がネット上にあがっている[13][14]。

【評価】
SH-1/SH-1Aは輸出市場を意識して開発された装備であり、中国軍では採用されていない。

とはいえ、車載式装輪自走榴弾砲は、装軌式自走榴弾砲と比べると、取得・運用コスト共に安価であり、道路網を用いて迅速な展開が可能と様々な利点を有している。

中国ではSH-1をはじめとして複数の車載式装輪自走榴弾砲を開発することでノウハウの蓄積に努め、最終的には2010年代後半に配備を開始するPCL-181型155mm車載式装輪自走榴弾砲として結実することになる。PCL-181は一部設計変更を加えてSH-15の名称で輸出市場向けに提示されており、SH-1を不採用にしたパキスタンが、SH-15の性能を高く評価して236輌を発注している[11]。SH-15の性能はあらゆる面でSH-1を凌駕しているが、値段もその分だけ高額であり、高性能なSH-15とそれよりも低コストで調達が可能なSH-1をそろえることで、ユーザーの選択肢を増やす効果があると見られている[14]。

【参考資料】
[1]軍事研究 2007年5月号「先進国を脅かす中東の防衛産業」(株ジャパン・ミリタリー・レビュー)
[2]世界航空航天博覧 2005年1月下半月号「中国自行火炮的発展概況」
[3]Chinese Defense Today「SH1 155mm Self-Propelled Howitzer」
[4]Jane's Defence Weekly
[5]International Assessment and Strategy Center「Research IDEX 2007 Showcases Chinas Productive Weapons Sector」
[6]中華網「詳訊:中国推出新型155mm輪式自走加榴砲」
[7]軍武狂人夢「SH-1 155mm 52倍徑卡車自走砲/SH-2 122mm卡車自走砲」
[8]Chinese Defense Blog「Norinco SH-1 Truck-mounted 155mm Gun-Howitzer of the Tatmadaw」(2013年3月30日)
[9]新浪网-_新浪军事「中国首次公开SH1A车载加榴炮 甓耽弹药精度更高」(2018年4月20日)http://mil.news.sina.com.cn/jssd/2018-04-20/doc-if...
[10]新浪网-_新浪军事「我SH15车载炮现身巴铁 射程上百公里可压制印度火炮」(2018年11月28日)https://mil.news.sina.com.cn/jssd/2018-11-28/doc-i... (2022年6月20日閲覧)
[11]万维论坛「中国出口巴基斯坦236门SH15车载火炮 单价220万美元」(送交者: 力挽狂澜 2019年12月23日)https://bbs.creaders.net/military/bbsviewer.php?tr... (2022年6月21日閲覧)
[12]SIPRI公式サイト「SIPRI Arms Transfers Database」https://www.sipri.org/databases/armstransfers (2022年6月20日閲覧)
[13]新浪网-_新浪军事「柬埔寨军队鸟枪换炮 迎来全套中国外贸远程打击武器」(2022年6月2日)https://mil.news.sina.com.cn/zhengming/2022-06-02/... (2022年6月20日閲覧)
[14]iNEWS「Big deal!Nearly 100 artillery pieces of 3 models were delivered to Cambodia. Is the spring of Chinese artillery exports coming?」https://inf.news/en/military/1b620f6d065099acae29d...(2022年6月21日)

中国陸軍

amazon

▼特集:自衛隊機vs中国機▼


▼特集:中国の海軍力▼


▼特集:中国海軍▼


▼中国巡航ミサイル▼


























































メンバーのみ編集できます