日本の周辺国が装備する兵器のデータベース


▼ロシア海軍のSu-33艦上戦闘機


【概況】
中国海軍はウクライナからスクラップの名目で購入した空母ワリヤーグを大連で改装中であり、同艦は2012年9月に空母「遼寧」として再就役した。また、2008年12月28日の朝日新聞によると、中国は2009年から初の国産空母の建造を上海で開始するとの報道もなされ、空母保有に向けた動きが活発化してきている[3]。空母保有の動きと並行して、空母艦載機の調達に関する報道も成されるようになった。

2006年10月、ロシア国営テレビは露ロソボロン・エクスポート社が中国当局とSu-33(NATOコード:フランカーD)艦上戦闘機の購入交渉を行っていると報道した[1]。この報道によれば中国海軍は最大50機のSu-33を約25億ドルで購入する予定で、最初の2機が2007年8月に中国へ送られるという内容であった。ただし、Su-33の調達に関する交渉は、ロシア側が提示した48機で25億ドルという価格や中国側が技術移転とライセンス生産を要求した事などがネックとなり、結局の所妥結には至らなかった[2]。

一方、『漢和防務評論』2007年10月号の記事によると、中国はウクライナからSu-33の試作機であるT10Kを1機輸入することに成功したとの事[4]。この機体はソ連解体後、ウクライナに1機だけ譲渡されたSu-33(Su-27K)の増加試作機(先行量産機)T10K-7(もしくはT10K-3)と見られている[5]。艦上戦闘機の現物を入手した事は、中国にとって艦載戦闘機の実用化に向けた得がたい技術的財産となった。

中国はウクライナからT10Kの調達を実現するのと並行して、ロシアとの交渉決裂後も、水面下でSu-33の調達に関する協議を継続していた。2008年10月28日付けのJane's と10月30日付けのロシアのコメルサント誌のインターネット版の報道では、中国海軍とSu-33の製造を担当したKnAAPO(コムソモルスク・ナ・アムーレ航空機製造工場)との間でSu-33などの輸出に関する交渉が断続的に行われていることが報じられた[6][7]。これらの報道によると、ロシアは中国海軍に対して、中国海軍が艦載戦闘機のパイロットを訓練するための機体としてSu-33 14機の輸出を提案していた。Su-33の生産は既に終了していたが、契約が成立すれば、KnAAPO において生産が再開される予定であった。さらに、次の段階としてSu-33を36〜50機程度輸出する事が想定されていることも伝えられていた[7]。スホーイが提案している中国向けSu-33にはSu-30MK2のレーダーやアビオニクスが搭載されると見られているが、最新型のSu-35の技術がフィードバックされる可能性もあった[7]。Su-33の調達が実現すれば、購入したSu-33は地上に設置された模擬空母飛行甲板で訓練や試験に供され、ワリヤーグの練習用空母への改修が順調に行われれば、同艦を使用して本格的な空母パイロットの養成を実施すると考えられていた。

中国では空母艦載機の候補として、ロシアのSu-33の他にも、瀋陽飛機工業集団公司が開発中とされるJ-11Bの艦載機型(J-15)や完全新設計の艦載戦闘機[8][9]、同じく成都飛機工業集団公司が開発中とされるJ-10をベースにした艦載戦闘機等も選択肢に含めた検討がなされていた。

漢和防務評論2009年3月号は、2008年11月に広東省で開催された珠海航空ショーに参加したスホーイ社副総裁Boris D. Bregman氏の発言として、中国とのSu-33の調達交渉は現時点では打診の段階に留まっており、政府同士の正規の交渉は行われていない事を明らかにした[10]。航空ショーに参加したロシア軍事産業筋の情報を総合すると、中国側は数個空母部隊の需要として50機のSu-33を必要としている事をロシア側に伝えているとの事。中国側は評価用にまず2機のSu-33の購入を希望したが、ロシア側は中国によるコピーを恐れてこの要請を拒否した。その後、中国側は第一段階として14機の調達を提示したがこれも拒否された。ロシア側は、既に停止されているSu-33の生産ラインを再開させるには14機という生産数では費用対効果に合わない事を理由として掲げたとの事。ロシアのある航空軍事アナリストは、Su-33の生産ライン再開には最低でも24機程度の発注機数が必要との見通しを示している。漢和防務評論2010年1月号では、ロシア航空業界への取材から、ロシアと中国の間でのSu-33購入交渉は、生産ラインの再開の費用込みで合計40機を20億ドルで輸出したいとするロシア側と、7機という少数購入に留めたい中国側の見解の相違が埋まらず交渉の進展が全く見られない状態に陥っており、ロシア側ではこの交渉は「死亡状態」にあるとの認識に達しているとの報道がなされた[31]。

最終的にSu-33の中国への輸出は実現せず、中国はウクライナから入手したT10K(Su-33の試作機)やSu-27SKの独自改良型J-11Bの技術を元にしてJ-15艦上戦闘機を開発することになった。

【開発経緯】
Su-33はロシア(旧ソ連)のスホーイ設計局が開発した大型制空戦闘機Su-27の艦載機型。

スホーイは、1970年代、計画中の航空母艦に搭載する艦載戦闘機に関するスタディを開始した。開発に当たっては、同設計局が手がけていたT10戦闘機(Su-27の試作型)をベースにする事が決定していたが、T10が要求性能を満たせず設計の全面見直しが行なわれることになったため、艦載戦闘機の開発作業は余り進まなかった[11]。

開発が本格化したのは、空母「トビリシ」(後のアドミラル・クズネツォフ)の設計作業が完了した1984年からで、スホーイ設計局がSu-27、ミグ設計局がMiG-29をベースにした艦載戦闘機の開発に着手する事が正式に了承され、それぞれ、ロシア語の艦載機の頭文字であるKを付けた「Su-27K」、「MiG-29K」と呼称される事になった[11]。スホーイは、Su-27の試作機であるT10-3を使用して、陸上基地に設置されたスキージャンプ台からの模擬発艦試験、着陸時に着艦拘束装置を使用した場合の機体への損傷度合いの試験を実施して、Su-27を空母で運用することが可能かどうか基本的な技術実証試験を行った。T10-3による模擬発着艦試験の成功を受けて、Su-27Kの開発作業が本格的に進められる事になった。その後、Su-27Kの試作機製作に先立って、カナード翼を装備したT10-24(1985年5月初飛行)、カナード翼装備の陸上試験型T10-25(1985年9月1日初飛行)、複座型のSu-27UBを基にしたテスト支援型T10U-2(02)、空母格納庫での運用テストのためのモックアップT10-K20(KTM)が製作され、Su-27K製作に必要なデータの蓄積を行った[11][12][13][14]。

Su-27Kの最初の試作機T10K-1は、Su-27の空軍部隊への配備が始まって間もない1987年にKnAAPOで製造が開始され、1987年8月17日には初飛行に成功した。T10K-1は1988年9月下旬に試験飛行中に発生した油気圧系統の故障によって墜落したが、試製2号機T10K-2によって飛行試験が継続され、各種データの蓄積が進められていった[11]。1989年末にはSu-27Kの試験飛行作業が完了し、同年11月1日には空母トビリシでの最初の着艦試験に成功した。スホーイではさらに7機の増加試作機を製造し、空母アドミラル・クズネツォフ(トビリシから改名)での発着艦を含めた運用試験が1991年から1994年にかけて行われた[11][12][13][14]。ロシア海軍は、1993年からSu-27Kの試作機を用いてパイロットの養成を開始すると共に、1994年8月には、KnAAPOに対してSu-27K量産型24機を発注した[12]。1995年にはSu-27Kを搭載したアドミラル・クズネツォフが初の長期試験航海を実施し、その結果を受けてロシア海軍はSu-27Kの採用を決定した。ただし、当時のロシア海軍は財政的に極めて切迫した状況にあり、Su-27Kの実用化に向けた作業も数年間の遅延を余儀なくされたが、1998年には「Su-33」として制式化に漕ぎ着けた。Su-33の製造は全てKnAAPOで行われ、量産型24機の生産は既に完了している。

【機体構造】
Su-33は、長距離迎撃戦闘機であるSu-27をベースにして開発された事もあり、艦載機としては大形の機体になっている。機体構造は基本的にSu-27のそれを踏襲しているが、外見上の変更点としては以以下の様な点を挙げる事が出来る[11][17]。
カナード翼の採用離着陸時の運動性改善等の目的で、主翼前方のLEX部にカナード翼を追加装備。これにあわせてLEX部の形状も変化。
折り畳み翼の採用空母格納庫やエレベーターでの運用を考慮し主翼と水平尾翼を折畳み翼に。
主翼フラップの設計変更空母への着艦を前提として、着陸距離を短縮するためフラップの設計変更が行われ、外側をエルロンでドループをつけ、内側を2枚式のダブルスロッテッド後縁フラップにした [15]。
着艦フックの採用着艦時に機体を停止させるため、テイルブーム下部に着艦フックを装備。
テイルブーム短縮着艦時の機首上げの姿勢の際、テイルブームが甲板と接触する危険性があったため全長を短縮。
空中給油用ブロープの装備空中給油能力の付与により、機首左側に伸縮式の空中給油用ブロープが新設された。
赤外線/レーザー照準装置の移設Su-27では機体中心線上にあった赤外線追尾/レーザー照準装置がキャノピー手前右側に移動。これは着艦時の前方視界向上を目的とする。

機体構造についても、艦載機化を前提として各種の設計変更が行われている。前輪は二重タイヤに変更され、着艦時の衝撃に備えて機体構造や降着装置の強化が行われた。この設計変更により、Su-33は荷重5Gで降下速度7m/秒での着艦に耐えられる機体となった。洋上での運用を前提とするため、各種の防水・防錆対策が講じられ、機体塗料を腐食に強い物に変更、機体の継ぎ目に沿って防水素材を封入して機内への海水や湿気の浸透を防ぐなどの措置が取られている[12]。

最初の試作機T10-3ではカナード翼を装備していなかったが、2番目の試作機T10-25で空母への着艦に必要な低速飛行時の運動性改善と離陸性能を向上させるため、主翼前縁部にカナード翼が装備された[11]。これは量産型のSu-33でも踏襲されることになった。これにより、Su-33は、カナード翼、主翼、水平尾翼の3組の翼を持つ事になったが、スホーイではこの翼形状をタンデム・トリプレーン方式と称している[16]。

三翼面形態では、カナード翼、主翼、水平尾翼がそれぞれ上向きの揚力を発生しており、主翼を挟んでカナードと水平尾翼の揚力の釣り合いがとれるため、三翼全ての揚力を上昇に利用できる。また、揚力が主翼だけでなく、カナードや水平尾翼にも分散されるので、主翼に掛かる負荷を分散でき主翼付け根の荷重を軽減され構造を軽量化できる利点も生じる[11]。Su-27シリーズで最初にカナード翼を搭載したT10-24試作機は、これによって構造強化をせずに設計荷重を1G上げる事に成功している。もう1つの利点としては、空中機動に際して大迎角をとった際にも、水平尾翼が主翼の気流を被って操作が困難になるのとは異なり、主翼より前にあるカナードは制御力を保持し続ける利点、カナードが発生させる渦流が主翼上面の気流を整えて失速を遅らせる事でポスト・ストール時の機動性を確保する効果がある。また、カナード翼により、静安定性を劣化させて、機動性向上に資する効果も期待できる[16]。

ただし、三翼面形態は飛行制御システムが複雑になるデメリットがあり、フライ・バイ・ワイヤなど高度な制御システムが無ければ実用化は困難であった。そのため、Su-33の機体制御装置は、4重のデジタル・フライ・バイ・ワイヤ方式を採用している。Su-27では、フライ・バイ・ワイヤによる制御はピッチ軸のみで、横軸およびヨー操縦系統は安定増強を行うだけだったが、Su-33ではピッチ・ヨー両軸の制御をフライ・バイ・ワイヤで行うようになっている[11][17]。

カナードの装備により、Su-33の翼面積はSu-27の62屬ら67.4屬冒加している。Su-33のカナード翼は+7度〜-70度の可動域を持つが、左右が同調して可動する方式を採用しているため縦方向の機動制御のみ行う事が可能。(後のSu-30MKIやSu-27KUB、Su-34、Su-35/37では左右のカナードを別々に動かす事で、横方向の機動制御にも利用する事が出来る様になっている。)[11]

逆に、カナード翼のデメリットとしては、カナードが機体正面のレーダー波反射率を拡大してしまう、主翼や垂直・水平尾翼以外に制御系統が増える事で機内容積が減ってしまい機体重量も増える事、空気抵抗が増加する等の点が挙げられる[11]。また、機体制御技術の発展に伴い、カナード翼無しでも、その効果を有る程度再現する事が可能となってきており、カナード翼搭載のメリットは少なくなってきている。そのため、フランカー系の最新の機体であるSu-35BMでは、レーダー反射率の削減を目的としてカナード翼を廃止している[16]。(Su-33自体のレーダー波反射率は、大形の機体で設計年次からもステルス性への配慮がなされなかったこともあり10数屬箸なり大きくなっている[18]。)

Su-33は、上記の艦載機化に伴う改装により、空虚重量は18,400kgと原型のSu-27に比べて2,200kg増加した。最大離陸重量は、陸上基地からの場合は33,000kgだが、空母での運用時には26,000kgに制限される[18]。外部兵装搭載量はSu-27と同じ8,000kgだが、艦上運用の際には6,500kgに制限される。これは、カタパルトに比べて制約の多いスキージャンプ甲板からの発艦を運用の前提としている所が大きい。兵装搭載ステーションはSu-27の10箇所から12箇所に増やされている[18]。

搭載燃料は構造変化のためにSu-27に比べると減少しているが、それでも9,200〜9,500リットルと相当の量になる(Su-27と同じく外部増倉は搭載しない。)[17][18]。燃料満載の状態での作戦行動半径は、空対空任務で800海里/1481.6km(Hi-Hi-Hi)、低空飛行の場合415海里/768.5kmになる。ただし、空母からの発艦の場合、最大離陸重量が26,000kgに制限されるため、空対空ミサイル8発(合計重量2t)搭載の場合は搭載燃料を60%に制限する必要がある。この場合、母艦から800km先に進出して哨戒を行える時間は30分に制限される事になる[18]。

この問題を解決するため、Su-33は空中給油能力を備えている。空中給油能力を獲得したのはフランカーシリーズの中でもSu-33が最初であり、機首左側に伸縮式の空中給油用ブロープが収納されている。空中給油方式はプローブ・アンド・ドローグ方式を採用。Su-33は空軍のIL-78「マイダス」空中給油機からの給油を受けるほか、Su-33自体も胴体下部にバディ給油ポッドを装着することで、アメリカ海軍のF/A-18のように僚機への空中給油を行う事ができる[11]。

【動力系統】
Su-33は、リューリカ AL-31F3 シリーズ3(別名AL-31K)ターボファンエンジンを二基搭載している。AL-31F3の原型であるAL-31Fは、十数年の歳月をかけて1986年に制式化に漕ぎ着けた高推力エンジンで、同系列のエンジンはフランカーシリーズ(Su-27/30/33/34/35)、中国のJ-10、インドのMiG-27近代化改修型等に採用されている。

AL-31F3は、空母での運用を前提とした各種の改良が加えられている。標準状態の推力はドライ7,670kg、A/B 12,500kgとAL-31Fと変わらないが、発艦時や着艦に失敗して急上昇する等の場合に備えて、短時間であればA/B状態の推力を平時の12,500kgから12,800〜13,000kgにアップさせる事が可能[30]。エンジンコントロールはKRD-99B統合型デジタル調整器を使用しており、推力のきめ細かな変更が可能。

また、海上での運用に対応して腐食対策が施されており、高湿度、空気中の塩分濃度の高いエンジンにとって悪条件の多い環境下での信頼性を確保している。エンジンの空虚重量は1,520kg、全長4.950m、最大直径1.3m。推力はドライ7,650kg、A/B 12,503kg。オーバーホール間隔は1,000時間、エンジンの最大寿命は原型のAL-31Fよりも500時間長い1,500時間。4段の低圧圧縮機、9段の高圧圧縮機、冷却式高圧及び低圧タービン各1段を有する[11]。

AL-31系列のエンジンは、機体の速度や位置の変化によるエアダクトへの流入空気量の変動に対して高い対応能力を有しており、あらゆる状態において優れた信頼性を実現しており、フランカーの高機動性を支える重要な要素となっている。この特性には優れたインテーク設計も寄与している。そして可変式の取り入れ口ガイドベーンをコンピュータ制御することにより、エンジンのコンプレッサー・ストールを防止している[19]。

なお、Su-27のエアダクトには、不整地からの離陸に際してエンジンへの異物吸い込みを防止するために網目状の吸い込み防止装置が装備されており、Su-27Kの試作機にも搭載されていたが、量産型では機体重量軽減のために撤去されている[11]。

【コクピット/アビオニクス/電子妨害系統】
Su-33のコクピットはSu-27Sの物を踏襲している。単色の多用途液晶表示装置が1つ用意されているが、設計年次が古い事もあり多くの計器は従来型のアナログ計器で、後のSu-30/35系列に比べるとグラスコクピット化はあまり進んでいない。操縦桿には各種のボタンやスイッチが付いており、操縦桿を握ったままで計器操作が可能なHOTAS概念に基づいて設計されている[11]。

搭載レーダーはSu-27のファザトロンN001 Zhuk(NATOコード:スロット・バック2)パルス・ドップラー・レーダーの改良型で水上目標の探知能力が改善されている[18]。ただし、Su-33のレーダーは、対空・対艦攻撃モードは備えているものの、多用途性には乏しく本格的な精密誘導兵器運用能力は有しておらず、探知距離や電子妨害への抗堪性についても問題があった。スペックとしては、最大探知距離250km、目標の最大追跡距離154km。レーダー反射面積3崢度の目標では前方からは最大100km、後方からでも最大40kmの距離で補足する事ができる。Su-33のレーダーは同時に10目標を捜索し、内2目標に対して照準・攻撃する事が出来る[20]。ただし、TWS(スキャン中追跡)機能は備わっておらず、目標へのミサイルの誘導を行いながら他の目標を捜索する事はできない。洋上目標の捜索能力としては、駆逐艦程度の大きさの目標であれば、最大200kmの距離での探知が可能[12]。

このほかSu-27と同じく、RLPK-27ヘルメット装着目標指示装置とOEPS-27 IRST(Infra-Red Search and Track:赤外線捜索追跡)機材及びNSTs-27レーザー測距装置が搭載されている[11]。前述の通り、正面視界改善を目的としてIRSTの位置はキャノピー手前中央から右側に移動されているが、これはSu-30/35に引き継がれる事になる。OEPS-27は操縦席正面に装備されている赤外線捜索システムで、戦闘機級の目標ならば約50km先のエンジン放熱を探知できる。OEPS-27は捜索・探知が出来るだけなので、目標を探知すると組み込まれているNSTs-27レーザー測距器(測距距離10km)で目標との距離を測り攻撃に必要な各種データを揃える。これらの装備によりSu-33は高電子戦下でもレーダー波を発せずに最大40kmまでの目標を捜索・追跡する事が可能。RLPK-27ヘルメット装着目標指示装置はR-73赤外線誘導ミサイルのシーカーと連動しており、機軸から60゜の角度までの範囲にいる目標をロック・アップするオフ・ボアサイト交戦能力を有する[11]。

通信装置については、Su-27の物を踏襲しており、R-800L VHF無線通信機、R-864L HF無線通信機、P-515機内通信システム、P-503無線通信記録機などを搭載している[11]。Su-33の通信システムは、編隊間で各種戦術データを共有するデータリンク機能も備えている。航法システムとしては、A-317遠距離無線通信誘導システムを搭載しており、飛行コースの航法、航空基地への自動帰還、自動着艦、着陸誘導などの機能を有している。機内には慣性航法装置も搭載されているが、Su-33の航法システムはそれほど充実しておらず、長距離飛行での航法精度は比較的低い。そのため、長距離飛行、ないしは遠距離目標への対地攻撃任務の際には、地上/空母、もしくはAWACSの情報提供を受ける必要が有る[18]。

自己防御システムについては、パッシブ式のSPO-15LM全方位レーダー波警戒装置とそれに連動するチャフ/フレア発射装置が内蔵されている[11][21]。SPO-15LMは、敵味方識別装置と連動しており、一定距離で敵のレーダー波を感知した場合、警告ランプで搭乗員に危険を知らせ、搭乗員は回避行動やチャフ/フレアの発射などの対抗措置を行う。しかし、1996年に地中海を航海中のアドミラル・クズネツォフから飛び立ったSu-33はイスラエル空軍のF-16から追跡を受けたが、Su-33は全く気付く事が無かったという。スホーイ設計局は後に警戒装置に重大な欠陥がある事を認める発表を行った[22]。この外に、主翼翼端のパイロンにECMポッドを搭載することも可能であり、各編隊中の1機がECMポッドを搭載して電子防御を幕機に提供する運用も行われている[11]。

ソ連海軍の計画では、空母の建造に合わせて艦載型早期警戒機も同時に実用化することで、目標を遠距離で早期発見を行うと共に、早期警戒機を中心として艦船や戦闘機などをデータリンクで結合し有機的に連携させた防空システムを構築する予定であった。海軍の要求に応じて、アントノフとヤコブレフの2つの設計局がそれぞれ早期警戒機の開発に着手して、試作機(An-71、Yak-44)の製造に漕ぎ着けていた。しかし、冷戦の終了とロシアの経済混乱に端を発する深刻な財政難を受けて空母機動部隊計画は大幅な縮小を余儀なくされ、早期警戒機開発計画も中断に追い込まれた。

開発が取り消された早期警戒機の代わりに、カモフKa-28対潜ヘリをベースにして早期警戒レーダーを搭載したKa-31の開発が行われ、Su-33はKa-31とデータリンクを行い、Ka-31からの情報提供を受けて作戦を遂行する事になった[11]。ただし、固定翼機に比べて飛行性能や機内容積で遜色の有るKa-31では、当初想定していたAn-71やYak-44に比べて、管制能力、探知範囲、航続距離や飛行速度等のさまざまな面で制約が生じるのは止むを得ない事であった。

【兵装】
Su-33の兵装は、Su-27に順じている。固定武装としては、右主翼前縁部にGSh-30 30mm機関砲一門を搭載している。GSh-30のスペックは、発射速度1,800発/分、有効射程120〜800m、搭載弾数150発[12][23]。

Su-33は、12基のパイロンを有しており、空対空任務では最大12発のR-27、R-73空対空ミサイルを搭載する事が可能(内訳はR-27×8、R-73×4)[18]。

中距離空対空ミサイルとしてはR-27(AA-10 Alamo)シリーズが使用される。R-27は、Su-27やMiG-29などの第四世代戦闘機向けに1970年代にヴィンペル(Vympel)設計局により開発された中距離空対空ミサイルで、1980年代に配備が開始された[24]。R-27は、セミアクティブ・レーダー誘導方式のR-27Rと赤外線誘導型のR-27Tがあり、通常同一目標に対してR-27RとR-27Tを連続して発射する事で命中率を高める手法が採用されている。R-27Rの最大射程は2〜80km、R-27Tの最大射程は70km[23]。ただし、実際の運用ではより近距離から発射される。

R-27は、モジュール式設計を採用しており誘導システムを換装する事が可能で、各種の派生型が開発されている。特にSu-33向けには、洋上での運用を前提としたR-27MEが開発されている。R-27Rは、海面間近のシークラッターの強い環境では目標を攻撃する事が困難だった、R-27MEはR-27Rと同じセミアクティブ・レーダー誘導方式であるが、低空域での運用に合わせて誘導システムに改修が施されており、低空から飛来するシースキマー型の対艦ミサイルや巡航ミサイル等に対する迎撃能力が大きく改善されている[25]。このほか、射程延長型R-27ET(赤外線誘導)、 R-27ER(セミアクティブ・レーダー誘導)、終末誘導にアクティブ・レーダー誘導方式を採用したR-27A、R-27AE等も開発されているが、アップグレードされていないSu-33が全てのタイプのR-27を運用できるかは不明。

Su-33は、近距離用の赤外線誘導空対空ミサイルとしてはR-73(AA-11 Archer)とR-60赤外線誘導空対空ミサイル(AA-8 Aphid)を使用する[24]。

R-73はロシアのスペツテクニカ社が開発した第五世代の赤外線誘導空対空(IRAAM)ミサイルである[24]。最大射程は20km。R-73は前述の通りシーカーとSHCH-3UM-1ヘルメット装着目標指示装置を連動させる事により、ミサイルの照準軸から目標が外れていても、60〜120゜の範囲内で目標をロックオンできるオフ・ボアサイト能力持つ世界で初めての空対空ミサイルである。R-73の誘導方式はそれまでのIRAAMと違い赤外線画像認識誘導であるため、フレアなどの妨害措置に対しても惑わされる事なく目標を追尾する事が可能だ。また推力偏向方式により急激な方向転換ができ、この素晴らしい機動性と誘導方式により航空機だけでなくAMRAAMのような空対空ミサイルまで迎撃することが可能と言われている。

R-60はソ連第一世代のIRAAMであるR-13(AA-2 Atoll)の後継として1960年代末から70年代初めにかけて開発され1973年に実用化された。最初の生産型(R-60T/R-60K)では目標後方からの攻撃のみ可能だったが、赤外線シーカーの感度を高め電子光学式信管を採用した改良型のR-60M/TM/MKでは全方位からの発射が可能となった、また、R-73と同様に赤外線シーカーとヘルメット装着目標指示装置を連動させることでオフ・ボアサイト能力を獲得している。最大射程は8km[24]。

Su-33は、Kh-31AやKh-41モスキートといった対艦ミサイルの運用能力を有しているとされる。ただし、Kh-41の重量は4,500kgに達するため、搭載数は1発に限られる。空母での運用の際には、Su-33の最大離陸重量は26tに制限されるため、Kh-41を搭載した場合、機内燃料は4tまでの搭載が限度で、戦闘行動半径は300km程度に制限されるため、余り現実的な運用であるとは思われない[18]。より軽量なKh-61(重量2,500kg)であれば主翼下に2発、重量600〜700kgのKh-31Aであれば4発程度の搭載が可能[12]。

Su-33は、艦隊の防空圏の外延部に展開して、艦隊に接近する航空機や対艦ミサイルといった経空脅威を排除することが求められた事もあり、対地攻撃任務は二義的な任務とされ、原型となったSu-27と同じく精密誘導兵器の運用能力は備わっていない。ただし、必要に応じて通常爆弾、無誘導ロケット弾、クラスター爆弾、焼夷弾などを搭載して作戦を行う事は可能[12]。

【派生型】
"Su-33アップグレード型"
Su-33アップグレード型は1999年にスホーイ/KnAAPO/ロスボルジュエニィが公開したパンフレットでその存在が明らかになった[26]。

アップグレードの主眼は、レーダーやアビオニクスの換装によりSu-33に欠如していた多用途性能を獲得する事であった。原型のN001レーダーは、改良型であるN001Mモノパルス多モードドップラーレーダーに換装[11]。N001Mは、インド向けのSu-30MKIにも使用されているXバンドレーダーで、レーダー反射面積5崢度の目標では前方からは最大100km、後方からでも最大40kmの距離で補足する事ができる。グラウンドクラッターやシークラッターの中から目標を探知する能力が向上しており、戦車部隊であれば30km先から、大形水上艦艇であれば最大120kmの距離で探知が可能。目標の同時処理速度が向上した事でN001には無かったTWS(スキャン中追跡)能力を獲得し、目標の捜索を行いつつ同時に2目標を追尾・ミサイルを指向させる事が可能となった。また、N001搭載型にはなかったR-77アクティブ・レーダー誘導空対空ミサイルの運用能力を獲得した事で、空対空戦闘能力は大幅に向上した。レーダーやアビオニクスの換装に合わせて、グラスコクピット化が行われ、多機能液晶表示装置が新たに2基装備された。

N001Mには、本格的な対地・対艦モードも備わっており、Su-33では不可能だった各種精密誘導兵器を運用する事が出来る様になった。新たに運用可能となった装備としては、TV誘導方式のKh-29、Kh-59M、KAB-500Kr、レーザー誘導方式のKh-29L、KAB-500L、KAB-1500L、パッシブレーダーを使用した対レーダー攻撃型のKh-31P等が挙げられている[27]。

2001年頃からロシア海軍のSu-33に対してこのアップグレードが適応されるようになり、現在までに海軍の保有機の半数程度が改修を受けたものと見られている[5]。

Su-33は20年の運用期間を前提として設計され、多くの機体が就役から約10年以上が経過している[28]。ロシア海軍では次期艦載戦闘機に関する検討を行っているが、配備開始は2016年以降になる事が見込まれており、それまでは現用のSu-33の使用が続けられる事になる。そのため、Su-33の運用寿命の延長とさらなる能力向上が検討されている[29]。

"中国向けSu-33"
スホーイでは、Su-33アップグレード型のほか、中国向けにSu-33改良型を提案している。この改良型には、Su-30MK2のレーダーやアビオニクスが搭載されると見られているが、最新型のSu-35の技術がフィードバックされる可能性もあるとの事[7]。ただし、前述の通りSu-33の対中輸出は実現せず、このタイプが製造されることはなくなった。

"Su-27KM"
1980年代にはソ連海軍の空母向け大型艦載戦闘機として前進翼を採用した「Su-27KM」の開発が開始された。同機は名称こそSu-27Kと似ているが、完全新規設計の機体であった。Su-27KM自体は、ソ連軍事産業委員会により1989年4月に開発が中止されたものの、同機の開発で得られた成果は後のS-37「ベルクト」に繋がる事となる[34]。

上記以外のSu-33の派生型としては並列複座座席を採用したSu-27KUB/Su-33UBが存在するが、同機は名称こそ似通っているものの、開発時期が異なり、機体や各種装備、兵器システムとしての位置付け等かなりの相違点があるため、以下に別項を立てて扱う事とする。

Su-33性能緒元
空虚重量18,400kg
最大離陸重量26,000kg(艦上)/33,000kg(陸上)
全長21.19m
全幅14.70m
全高5.90m
燃料搭載量9,200〜9,500リットル(満載)
兵器搭載量6,500kg(艦上)/8,000kg(陸上)
エンジンリューリカ AL-31F3 シリーズ3(別名AL-31K)×2
エンジン推力ドライ7,670kg、A/B 12,500kg(緊急推力12,800〜13,000kg)
最大速度マッハ2.165(高度11,000m)
巡航速度マッハ1.06
航続距離3,000km
上昇限度17,000m
機体荷重限度9G
 ハードポイント×12
乗員1名

■武装(Su-33初期型)
武装GSh-301 30mm機関砲×1(150発)
 R-27中距離空対空ミサイル(AA-10 Alamo)
 R-73赤外線誘導空対空ミサイル(AA-11 Archer)
 R-60赤外線誘導空対空ミサイル(AA-8 Aphid)
 Kh-31A空対艦ミサイル(AS-17クリプトン)
 Kh-41モスキート空対艦ミサイル
 各種誘導爆弾・通常爆弾・ロケット弾
注:Su-33初期型はR-77や精密誘導兵器の運用能力を有していない。またKh-41は重量の問題から空母での運用は実際には困難。

■Su-33アップグレード型になって新たに運用可能になった兵装
 R-77アクティブ・レーダー誘導空対空ミサイル(AA-12 Adder)
 Kh-35空対艦ミサイル(AS-20 Kayak)
 Kh-29テレビ誘導短距離空対地ミサイル(AS-14ケッジ)
 Kh-29Lレーザー誘導空対地ミサイル
 Kh-59Mテレビ誘導短距離空対地ミサイル(AS-18 Kazoo)>Kh-59空対地ミサイル(中国)
 KAB-500Krテレビ誘導爆弾
 KAB-500Lレーザー誘導爆弾
 KAB-1500Lレーザー誘導爆弾
 Kh-31P対レーダー攻撃型ミサイル

【注】
[1]Kommersant2006年10月23日「Russia to Deliver Su-33 Fighters to China」
産経iza「進む中国軍近代化 艦上戦闘機調達へ露製50機 空母計画に関連か」(2006年11月6日)
[2]Kommersant 2007年5月7日「China Lays Down Russian Arms」
[3]asahi.com(朝日新聞社)「中国、初の空母建造へ 来年着手、15年までに中型2隻」(峯村健司/2008年12月30日)
[4]漢和防務評論2007年10月号 「J11B系列戦闘機在中国的新生」
[5]Yahoo!ブログ〜ロシア・ソ連海軍〜「艦上戦闘機Su-33」(2006年11月23日)
[6]Jane's Information Group公式サイト「China considers next-generation Su-33s for aircraft carrier programme」(Reuben F Johnson/2008年10月28日)
[7]Kommersant 2008年10月30日「China Ready to Buy Su-33 Shipboard Fighters in Russia」
[8]大旗網「瀋飛的早期艦載戦闘機方案:気動外形酷似台軍IDF[図]」(2008年12月28日)
[9]Chinese Military Aviation「Fighters (Cont.)-J-13」
[10]漢和防務評論2009年3月号(No.53) 「Su33與中国海軍的最新進展」
[11]航空档案2007年5月号「蘇-33艦載機解析報告」(王野、李浩、王忠明/《航空档案》雑誌社)
[12]National Defence防務-専供疏武弘棒鐺機「遠洋之鷹-俄羅斯海軍蘇-27K及蘇-33戦闘機的発展」(梁爾郁/海陸空天慣性雑誌社/2005年)
[13]РУССКАЯ СИЛА - современное「SU-33 FLANKER-D ship-based fighter」
[14]Yahoo!ブログ〜ロシア・ソ連海軍〜「艦上戦闘機Su-27K(Su-33)試作機」(2008年2月11日)
[15]月刊エアコマンド1994年5月号「特集●スホーイSu-27“フランカー”」P35(同朋社出版/1994年)
[16]軍事研究2008年8月号「日本防空の仮想敵:空自戦闘機の脅威(2) ロシア大形戦闘機Su-27/30フランカー」(石川潤一/ジャパン・ミリタリー・レビュー)
[17]Уголок неб「Сухой Су-33」
[18]航空档案2007年6月号「蘇-33艦載機解析報告(続)」P31(王野、何世朝、朱春剛/《航空档案》雑誌社)
[19]戦闘機年鑑2009-2010「スホーイSu-27/-30/-33“フランカー”」(青木謙知/イカロス出版/2009年3月25日発行)
[20]KnAAPO公式サイト「Production - Defense - Su-33」
[21]Yahoo!ブログ〜ロシア・ソ連海軍〜「Su-33と「後方警戒レーダー」」(2008年3月29日)
[22]MASDF 戦闘機と軍用機のファンサイト「Su-33 - Su-27K FLANKER D-フランカーD」
[23]軍事研究2008年9月号「日本防空の仮想敵:空自戦闘機の脅威(3) MiG-29&Su-27のウエポンシステム」(石川潤一/ジャパン・ミリタリー・レビュー)
[24]ミリタリー選書8-軍用機ウエポン・ハンドブック(青木謙知/イカロス出版/2005年)
[25]EnemyForces.com「R-27 (AA-10 Alamo) Medium-Range Air-to-Air Missile」
[26]Scramble on the Web「Sukhoi Su-33」
[27]Aerospaceweb.org Aircraft Museum「Su-33 'Flanker'」
[28]空軍世界「蘇聯/俄羅斯海軍 蘇-33艦載戦闘機」
[29]Yahoo!ブログ〜ロシア・ソ連海軍〜「ロシア海軍は、2016年以降に新しい艦上戦闘機を採用する」(2008年9月7日)
[30]航空档案2008年第3期A(総第206期)「第三代戦闘機用大推力渦扇発動機巡礼(三)昔日雄風今猶在一 - AL-31F系列発動機」(Maya/《航空档案》雑誌社)
[31]漢和防務評論2010年1月号(No.63) 「Su33戦闘機出口中国談判基本「死亡」」(Yuri Baskov)
[32]Yahoo!ブログ〜ロシア・ソ連海軍〜「幻の前進翼艦上戦闘機Su-27KM(S-37ベルクト原案) 」(2010年3月23日)

Su-27KUB/Su-33UB艦上戦闘機



Su-27KUB/Su-33UB性能緒元
空虚重量
最大離陸重量26,000kg(艦上)/38,000kg(陸上)
全長21.20m
全幅15.90m
全高5.7m
燃料搭載量 
兵器搭載量7,000kg(艦上)/8,000kg(陸上)
エンジンリューリカ AL-31F3 シリーズ3(別名AL-31K)×2
リューリカ AL-31PF×2(2003年に換装)
エンジン推力(AL-31F3)ドライ7,670kg、A/B 12,500kg(緊急推力12,800〜13,000kg)
(AL-31FP)ドライ7,700kg、A/B 12,500kg
最大速度マッハ1.73
巡航速度マッハ1.06
航続距離3,200km
上昇限度17,000m
機体荷重限度8.5G
 ハードポイント×12
乗員2名
武装GSh-301 30mm機関砲×1(150発)
 R-27中距離空対空ミサイル(AA-10 Alamo)
 R-77アクティブ・レーダー誘導空対空ミサイル(AA-12 Adder)
 R-73赤外線誘導空対空ミサイル(AA-11 Archer)
 R-60赤外線誘導空対空ミサイル(AA-8 Aphid)
 Kh-31A空対艦ミサイル(AS-17クリプトン)
 Kh-41モスキート空対艦ミサイル
 Kh-35空対艦ミサイル(AS-20 Kayak)
 Kh-29テレビ誘導短距離空対地ミサイル(AS-14ケッジ)
 Kh-29Lレーザー誘導空対地ミサイル
 Kh-59Mテレビ誘導短距離空対地ミサイル(AS-18 Kazoo)>Kh-59空対地ミサイル(中国)
 KAB-500Krテレビ誘導爆弾
 KAB-500Lレーザー誘導爆弾
 KAB-1500Lレーザー誘導爆弾
 Kh-31P対レーダー攻撃型ミサイル
 各種誘導爆弾・通常爆弾・ロケット弾

【開発の経緯】
Su-33は単座型のみが生産され転換訓練に使用可能な複座型は存在せず、空母への発着艦訓練用にはSu-25攻撃機を改造したSu-25UTG(NATOコードネーム「フロッグフットB」)が使用された。しかし、機体特性の違いや性能の差からSu-33への転換を万全に行うには困難があり、ロシア海軍では機種転換や発着艦訓練に使用するためSu-33の複座型を開発する事を決定した[1]。当初スホーイでは、空軍が使用していたフランカーの複座型Su-27UBを艦載機に転用する事を検討したが、タンデム座席からの十分な前方視界が確保できず着艦に困難が生じる事が明らかになった。再検討の結果、操縦手と副操縦手の視野に差が出ない並列複座型コクピットを採用することを選択した[1]。スホーイでは既にSu-24攻撃機で並列複座座席を設計した経験があった事もこの決定に影響したものと思われる。

フランカーファミリーの中で並列複座座席を採用しているのは、艦載戦闘機のSu-27KUBと長距離攻撃型のSu-27IB(後のSu-34:NATOコードネーム「フルバック」)の2機種のみである。両機の外見上の最大の相違点は、Su-27KUBのレドームが円錐形であるのに対して、Su-27IBはアヒルの口ばしの様な「Utkonos(カモノハシ)」と呼ばれる特徴的な形状をしている点である[2]。形状こそ似ているが、両機の性格はまったく異なりSu-27IBは、Su-24の後継機として開発された長距離攻撃機であり空母での運用能力は有していない。

なお、1990年代初めにSu-27IBと同じ形状の機体が「空母トビリシに着艦」する写真なるものが紹介されたため、「Utkonos」型レドームを有するSu-33の練習機型が存在すると思われた事があった。しかし実際には、その様な機体は存在しなかった。誤解が生ずるに至った事の経緯は以下の様なものだった[1][3][4]。

1990年にゴルバチョフ大統領(当時)が夏季休暇のためクリミア半島の避暑地であるソチに滞在していた際に、海軍が大統領を空母トビリシに招いて艦載機を運用するデモンストレーションを実施。Su-27KやMiG-29K、Su-25といった艦載機が空母への発着艦を行ったが、その最後に試作中のSu-27IBが空母への着艦を模したフライパスを実施し、これを撮影したのが前述の写真だったとの事。フライパスを行ったSu-27IBは原型のままであり、着艦に必要な着艦フックや自動着艦システムなどは装備しておらず、降着装置も着艦の衝撃に耐えうるものでは無く、実際に着艦を行う事は不可能であった。しかし、この写真が「重航空巡洋艦トビリシの甲板への着艦」と事実と異なるキャプションつきでTASS通信により世界に配信されたため、あたかもSu-33の複座練習機型が存在するかのような誤解を生じさせてしまう事になってしまったのである。

Su-27KUBのKUBは「艦載練習戦闘機」の略称であるが、同機は単なる転換訓練機に留まらず、Su-33には欠けていた本格的な対艦・対地攻撃能力を有する多用途戦実闘機として開発される事が決定された[3]。スホーイでは、Su-33の試作機T10K-4をベースにして、Su-27KUBに改造する改修作業を実施した[1]。Su-27KUBの開発では、Su-33では盛り込む事のできなかった1990年代に実用化された各種先端技術が採用される事になり、改造作業は、機体コンポーネントの大半を換装する大規模な物になった[5]。しかし、ソ連の崩壊後の混乱の中で、開発予算は大きく削減され、Su-27KUBの開発ペースにも深刻な影響を与える事になった。スホーイでの開発作業は10年の歳月を要する事となったが、T10K-4を改修したSu-27KUBの試製初号機は、1999年4月29日に初飛行に成功[6]。同年モスクワで開催された航空博覧会に出展され、その存在を内外に明らかにした。ただし、この時点では主翼の折り畳み機能は付与されていなかった。主翼に折り畳み機構を組み込んで製造されたのは、2006年に完成した試製2号機。

【機体性能】
Su-27KUBは、並列座席を採用したため機首部分の構造はSu-33とはまったく異なるものになった。座席の位置がSu-33に比べて高くなった事もあり、キャノピーからの前方視界は良好である。ただし、キャノピーは背後のドーサルスパインと一体化した形状となり、後方視界はSu-33に比べてかなり制限される事になった。キャノピーには開閉装置は付いておらず、搭乗員は機首下部の前脚付近に設けられた昇降口から機内に入る。Su-33では前方視界を確保するためにキャノピー右端に追いやられたIRSTは再び機体中心線上に配置されたが、座席の位置が上がったため搭乗員の視界の邪魔にはならない[5]。機首左側には、Su-33と同じく伸縮式空中給油用ブロープが収納されている。

並列複座座席の採用により機体の正面投影面積が拡大して、空気抵抗がSu-33に比べて約10%増すことになった[4]。そのため、高高度における最高速度はSu-33のマッハ2.1からマッハ1.7に低下している。ただし、低空域の最高速度はSu-33と同じマッハ1.06を維持している。複座化による大型化に加えて、電子装備の搭載量が増えたため機首部分の重量は更に増加する事になり、機体バランスが前方に偏る傾向がSu-33に比べても更に強まった。空気抵抗・機体重量の増加による飛行性能や機動性の悪化に対処するため、設計作業ではさまざまな対応策が施される事となった。

重量増加に対処するために、カナード翼、主翼、水平尾翼の翼面積が拡大され合計翼面積はSu-33の67.84屬ら71.38屬冒加された[5]。主翼の延長に伴い、折り畳んだ際に空母格納庫の天井と干渉する恐れが生じたため、主翼翼端をさらに折り畳む二重折り畳み翼を採用する事でこの問題に対処することになった。しかし、これは折り畳み機構の複雑化、翼内燃料タンクの容積を減少というデメリットを伴う事になった。一方、Su-33では折畳み式になっていた水平尾翼については、オイル漏れ等の問題があったことから折り畳み機構は廃止された[3]。空力学的抵抗を軽減するために、機体表面の加工方法や素材の見直しが行われ機体表面から発生する空気抵抗を大幅に減少させる事に成功した[4][5]。

翼面積の拡大や機首部分の大型化による重量増加に対処するため、Su-27KUBでは複合材の使用範囲が大幅に拡大されている。スホーイでは、Su-27KUBは、機内容積はSu-33に比べて大幅に増加したが、複合材の使用により、重量増加は最小限度に留める事に成功したとしている。設計作業では、ある程度のステルス性改善も考慮され、正面投影面積が増加した割にはレーダー波反射面積を押さえることに成功したとされる[5]。

機体形状や加工方法の見直しに加えて、機体制御システムでも、機体の飛行速度や状態に合わせて前縁フラップと後縁フラップが自動制御されて飛行状態に最適な翼面を形成する「適合翼」システムが新たに採用され[4][5]、常に最も効率の良い飛行を行なう能力が付与された。「適合翼」システムは、Su-27KUBで採用されたデジタル多重フライ・バイ・ワイヤの優れた処理・管制能力により初めて可能となった。「適合翼」システムは、常に最適な飛行状態を持続するため、機体の空力力学的抵抗を最小限に抑える効果がある。効率の良い飛行を行う事でSu-33に比べて燃費が15〜20%改善している[4]。それだけではなく、搭乗員の疲労軽減、機体の負荷減少による機体寿命の延長、対地攻撃の際に命中精度を高める等さまざまなメリットが生ずる[5]。この他、Su-33では、縦方向の制御のみだったカナード翼についても、Su-34やSu-35/37と同じ様に横方向の機動制御にも利用可能となり、推力偏向装置付きAL-31FPを採用した事と合わせて、Su-27KUBの機動性能向上に資することとなった[5]。(ただし、Su-27KUBの試製1号機は、T10K-4試作機を転用したこともあり、Su-33と同じAL-31F3 シリーズ3を搭載していた。しかし、これは暫定的な措置であり、AL-31FPに換装されたのは2003年[7]。)

ハード・ソフト両面からの対処により、空気抵抗や機体重量の増加にも拘らずSu-27KUBの飛行性能や機動性は高いレベルを保つことに成功し、特に着艦速度では220km/hとSu-33よりも20km/hほど低速での着艦が可能となった[5]。

【コクピット・電子装備】
Su-27KUBの並列複座座席は、搭乗員間の意志疎通に有利で、コクピットの容積も拡大したため長距離飛行時の疲労軽減にも繋がった。Su-27KUBでは、外気を取り込んで酸素を分離して機内の酸素ボンベに充填する装置を備えている。長距離飛行の際には搭乗員の消費する酸素量が増加するが、機内の酸素ボンベの量を増やさずに必要な酸素量を確保するための装置である。この装置は、アメリカやヨーロッパの戦闘機では一般的に使用されているが、ロシア戦闘機でこれを採用したのはSu-27KUBが最初となる[4]。

Su-27KUB試作機は、機首レドームにN010「ジュークMS」多モードパルス・ドップラー・レーダーを搭載している[5]。ジュークMSはXバンドレーダーで、重量230kg、体積450立方メートル、アンテナ直径980mm。同時に20目標を捜索可能で、内4目標を同時に照準・攻撃する事が出来る。戦闘機大の目標であれば、前方からは最大180km、後方からでも最大80kmの距離で補足する事が可能。洋上探知能力も大幅に向上しており、駆逐艦大の目標であれば最大300kmの距離での探知が可能で、長距離対艦ミサイルの射程を有効に活用する事が出来る。メンテナンスフリー間隔は200時間。

Su-27KUBは、ジュークMSレーダーと先進的な機体制御システムを活用する事で、低空域での長時間に及ぶ地形追随飛行を可能としており、防空任務だけでなく長距離侵攻作戦に従事する能力を得ている。

なお、Su-27KUBがロシア海軍に正式採用された場合、ジュークMSよりも能力の高いレーダーに換装される事も十分に考えられる。

【兵装】
Su-27KUBは、Su-33アップグレード型の使用する兵装の全てを運用可能であるが、探知距離や精度に優れた多モードレーダーを採用し、専門の兵装操作要員を設けた事によって搭載兵器の能力を十全に発揮する事が出来るようになった。

Su-27KUBのハードポイントは、Su-33と同じ12箇所だが、艦上での兵装の最大搭載量がSu-33よりも500kg増加した7,000kgになっている[3]。最大搭載量の制限の無い陸上基地からの運用では、最大搭載量はSu-33と同じ8,000kgとなっている[7]。

【派生型】
Su-27KUBは、機内容積が拡大された事で各種装備を搭載するスペースが確保され、複座になったため専任の機材操作要員を置ける様になったこともあり、下記の様な派生型の開発が検討されている。ただし、原型のSu-27KUB自体がまだ制式採用されていないこともあって、これらの派生型の多くはメーカーの提案段階に留まっている[8]。
Su-27KPPSu-33をベースにした艦載電子戦・コマンドポスト機。提案中。
Su-27KRTSu-33、もしくはSu-27KUBをベースにした偵察・目標捕捉型。充実した通信機器、データリンク、電子偵察機器を搭載する予定であった。試作機1機が製造されたという情報も有るが、詳細は不明。
Su-28Su-33、もしくは複座型のSu-27KUBをベースにした早期警戒機型。ロートドーム型レドームを機体上部に搭載する計画であった。開発中止。

【今後の展望】
Su-27KUBは、海軍に採用された場合はSu-33UBの名称が使用されるものと推測されていた。ロシア海軍ではSu-33の後継機に関する研究を行っており、Su-27KUB/Su-33UBとミグのMiG-29Kが次期艦載戦闘機候補となった[9]。しかし最終的にロシア海軍ではMiG-29kの採用と既存のSu-33の寿命延長を決定、Su-27KUB/Su-33UBは不採用という結果になった[11]。

Su-27KUBの外国への輸出についてはインド海軍が検討を行ったとされるが、Su-27KUBは同国が採用する空母ヴィクラマーディティヤ(元ロシア海軍「アドミラル・ゴルシコフ」)のサイズに対して過大であるとしてMiG-29Kが採用されている[10]。

【注】
[1]National Defence防務-専供疏武弘棒鐺機「遠洋之鷹-俄羅斯海軍蘇-27K及蘇-33戦闘機的発展」(梁爾郁/海陸空天慣性雑誌社/2005年)
[2]世界の戦闘機・攻撃機カタログ「スホーイSu-32FN/-34「フランカー」」(日本兵器研究会/アリアドネ企画/2002年)
[3]Yahoo!ブログ〜ロシア・ソ連海軍〜「「新世代艦載機」Su-33UB(Su-27KUB)」(2006年11月15日)
[4]РУССКАЯ СИЛА - современное「SU-34 FULLBACK fighter-bomber」
[5]航空档案2007年6月号「蘇-33艦載機解析報告(続)」P31(王野、何世朝、朱春剛/《航空档案》雑誌社)
[6]Уголок неба「Су-33КУБ」
[7]Стелс Машины「Су-33КУБ」
[8]Aerospaceweb.org Aircraft Museum「Su-33 'Flanker'」
[9]Yahoo!ブログ〜ロシア・ソ連海軍〜「ロシア海軍は、2016年以降に新しい艦上戦闘機を採用する」(2008年9月7日)
[10]別冊航空情報 世界航空機年鑑2006〜2007「スホーイSu-33/-35/-37(フランカー)」(酣燈社/2006年)
[11]Yahoo!ブログ〜ロシア・ソ連海軍〜「ロシア海軍は、今年から艦上戦闘機MiG-29Kの購入を開始する 」(2010年1月15日)

【関連項目】
J-11戦闘機(殲撃11/Su-27SK/Su-27UBK)
Su-30MKK/MKK2戦闘機
J-15艦上戦闘機(J-11BH/殲撃15)
001型航空母艦(アドミラル・クズネツォフ級/1143.6型)

中国海軍

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▼特集:自衛隊機vs中国機▼


▼特集:中国の海軍力▼


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▼中国巡航ミサイル▼


























































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