最終更新: rglc85tj8h 2023年03月16日(木) 16:16:33履歴
▼VN-4(装甲兵員輸送車型)。
▼公安警察向けの装備を施したVN-4。
▼2009年に北京で開催された北京警用装備展示会に出展されたVN-3装甲車(左)とVN-4装甲車(右)
■性能緒元
重量 | 9トン |
全長 | 5.4m |
全幅 | 2.4m |
全高 | 2.05m |
エンジン | カミンズEQB235-20直列6気筒水冷ターボチャージドディーゼル(235馬力) |
最高速度 | 120km/h |
浮航速度 | |
航続距離 | |
搭載量 | 1.7トン |
武装(I案) | 12.7mm重機関銃×1、76mm発煙弾発射機×6 |
(II案) | 14.5mm重機関銃×1、5.8mm機関銃×1、76mm発煙弾発射機×6 |
(GCTWM砲塔搭載型) | 30mm機関砲×1、7.62mm機関銃×1、HJ-73対戦車ミサイル×1 |
(対戦車ミサイル搭載型) | HJ-8対戦車ミサイル発射機 |
(地対空ミサイル搭載型) | QW-2地対空ミサイル発射機 |
この他、35mm擲弾発射機、放水銃、サーチライトなど多様な装備の搭載が可能 | |
装甲 | 防弾鋼板 |
搭乗員 | 車長、操縦手+搭乗歩兵8名 |
VN-4は、中国北方工業公司(NORINCO)傘下の中国北方車輌研究所と重慶鉄馬工業集団有限公司が共同開発した4×4の装輪装甲車。既にNORINCOでは、輸出向け装輪装甲車としてVN-3装輪装甲車を実用化しているが、VN-4はより大型の車輌でありVN-3の上位互換タイプと見なすことが出来る。
VN-4は、装甲兵員輸送車もしくは各種の兵器を搭載するプラットフォームとして使用することが想定されている。開発時からファミリー化を前提とした設計が施されており、ユーザーの要求を想定して多様な派生型が用意されているのが特徴。
【性能】
VN-4の重量は9トン、全長5.4m、全幅2.4m、全高2.05m。四輪駆動車を装甲車化したデザインであり、視界良好な大型防弾ガラスをはめ込まれたフロントミラーを有している。車体前方は動力部であり、操縦手と車長は車体中央部に並列に着座、その後方が武装ターレット搭載区画と兵員室という配置になっている。乗車時の疲労軽減を意図して、車長と操縦手には民間高級車に相当する座席が用意されており、兵員室の座席も良好な乗り心地を確保しているとの事。乗員の体力維持のため、車内には強力な空調装置が装備されており、劣悪な気象条件下での長期の活動を可能としている。兵員の乗降は車体両側面と後部のドア、及び車体上部の3箇所のハッチを使用する。装甲兵員輸送車として運用する場合は、歩兵8名が搭乗する。
エンジンは輸出を考慮して米国カミンズ社製EQB235-20直列6気筒水冷ターボチャージドディーゼル(235馬)を採用。エンジンには補助始動装置が搭載されており、零下35度の状態でもエンジンを正常に作動させることが出来る。エンジンや変速装置は車体前方のフロント部に搭載しておりエンジンマフラーや排気管もここに纏めているが、これは赤外線放出量の削減と騒音の低減が目的。変速装置は6T-80型マニュアル式変速装置を搭載。車輪の空気圧は車内から調整することが可能で、地形に合わせた最適の状態を選択する様になっている。制動性能と制動時の安全性を向上させるため、アンチロックブレーキ制御装置(ABS)とアンチスリップ制御装置(ASR)が標準装備されており、悪天候時においても良好な走行性能を発揮する。
VN-4の出力/重量比は26馬力/トンで、路上最高時速は120km/h。これは中国の装輪装甲車としては最速とされる。最大登坂能力は30度で、0.8mの幅の壕や0.4mの高さの壁を越えることが出来る。水深1mまでの河川の渡河能力を有しており、それ以上の深度であれば水上航行を行う。推進力は車体後部のスクリューによって得ている。
車体は防弾鋼板製で、車体正面は距離100mから発射された7.62mm鋼芯徹甲弾に抗堪し、全周からの7.62mm弾や榴弾の破片、地雷に対する防御能力を有する。必要に応じてモジュール式の付加装甲を装備して対弾性や対地雷抗堪性を向上させる事が可能であり、その際機動性には悪影響を与えないとしている。間接的な防御能力の向上策としては、車体からの赤外線の放射やレーダー波反射性を抑えるステルス性への配慮が取り入れられているほか、NBC防護装置も標準装備されている。
VN-4は各種兵装の搭載が可能であるが、兵員輸送車型では12.7mm重機関銃一挺をピントルマウント式に搭載する。脅威度に応じて、機関銃周囲に銃手の防護用の防弾板を設置する。この他、14.5mm重機関銃と5.8mm機関銃を連装式に搭載した1人用砲塔や30mm機関砲×1、7.62mm機関銃×1、HJ-73対戦車ミサイル×1を備えたGCTWM1人用砲塔を装備する事も出来る。車体側面にはガンポートが左右1基ずつ設けられおり、搭乗歩兵により乗車戦闘を実施する。必要に応じて対戦車ミサイルや対空ミサイル発射機を搭載することも可能。
情報化に対応した装備もVN-4の特徴である。VN-4はGPS装置や先進的な統合型データリンクシステムを装備しており、車長は指揮通信システム操作用端末を使用することで、車両の位置や戦場の状況、他部隊とのデータ交換などを行う。夜間や悪天候時の作戦遂行を実現するため、微光増幅式暗視装置が標準装備されている。
【総括】
VN-4は、国際市場での競争力を高めるため、情報化に対応した装備を施した上でユーザーの様々な要求に対応することが可能な設計を採用しているのが特徴である。
装甲兵員輸送車型以外にも、治安部隊用車輌、国境警備用車輌、対戦車ミサイル搭載型、対空ミサイル搭載型、装甲回収車型、装甲偵察車型、指揮通信車型、装甲救護車型など多様な派生型がラインナップされている。また、車体を延長して車輪を追加する事で、六輪駆動もしくは八輪駆動式の発展型を開発することも考慮されている。
VN-4の中国軍での運用は確認されていないが、NORINCOによりVN-3装輪装甲車と共に各国軍隊や治安機関への売込みが図られている。VN-4の最初のユーザー国は南米のベネズエラであった。2013年3月、中国国内で鉄道輸送中される複数両のVN-4が撮影され、同車は白色に塗装されベネズエラ国家警備隊(Guardia Nacional Bolivariana)の略称である「GNB」のロゴが記されておりベネズエラ向けに生産されたことを示していた[3][4]。同国は2012年から2015年にかけて合計121輌のVN-4を調達してGNBに配備している[8]。VN-4はベネズエラに続いて、ラオス(調達数不明)[6]、ケニア(2016年に35輌)[5][7]、シエラレオネ(2015〜16年に10輌)[5]、ネパール(2019年に63輌)[8]で採用されている。
ケニアやネパールではVN-4をPKO任務用に調達したが、武装組織のRPG-7対戦車擲弾発射器や地雷・IED(Improvised Explosive Device:即席爆発装置)に対する脆弱性が指摘されている[8]。車体底板が平らなのも対地雷対策として不十分であり、爆風を逃すV字型を採用するよう提言を受けている[8]。VN-4の防御力の問題は、同車の装甲が小銃弾を想定したものにとどまっていることや地雷対策上不利となる平らな車体底板を採用している点から考えて、同車は治安機関での使用が主で脅威度の高い軍事任務で用いるには限界があることを示しているといえよう。それから考えると、大口径機関砲やRPG-7、地雷やIEDなどの脅威に対して限界があるのは止むを得ない面があり、より防御力の高い装甲車両を用いるか、何らかの付加装甲を活用する必要が生じることになる。
【改良型VN-4E】
上記の課題に対処する存在として開発されたのが改良型であるVN-4Eである[9]。VN-4Eは車体をやや大型化して総重量10.8t、全長5.8mとした。車幅は原型と同じ2.4m。重量増加に対応してエンジン出力は300馬力にパワーアップされている。搭載能力は最大2.5tで、歩兵10名の乗車が可能。
大きな設計変更として足回りと車体を分離して、装甲板で製造された車体ボックスをシャーシの上に載せて結合する構造を採用。車体ボックス底部はV字型となり、懸案であった地雷防護能力をNATOの防弾・対地雷規格STANAG 4569の2a/2bクラスを確保した。防弾能力は同じくSTANAG 4569でレベル3とされている。付加装甲板やケージ装甲、対地雷用追加装甲による防御力のさらなる改善も想定されている。非対称戦闘における脅威に対応して、スナイパー捜索装置、IEDや自己鍛造弾の妨害装置、レーザー幻惑装置、周辺捜索センサーなどの追加も可能。
兵装は車体上部に搭載したRWS(Remote Weapon System)に搭載される。各種兵装の選択肢が存在し、主なものとして14.5mm重機関銃、12.7mm三銃身ガトリング機関銃、40mm擲弾発射機など、各種軍用/警察用装備を搭載できる。RWSの基部には発煙弾発射器5基を装備して、必要に応じて煙幕弾を投射する。
VN-4Eの開発においては民生技術、軍民共用技術が多用されており、VN-4Eは性能、信頼性、整備性、人間工学、経済性の各方面での能力向上を実現しているとの事。VNVN-4で指摘された課題についての回答がVN-4Eに結実したと評価し得るだろう。VN-4Eも各種派生型の開発を前提としており、装甲兵員輸送車型、治安任務用、指揮通信型、装甲偵察車、火力支援車、総合整備車両などのバリエーションが構想されており、軍や治安機関向けの装備として売り込みが進められている。
【参考資料】
[1]「共和国『軽騎兵』〜中国VN4輪式装甲車」(周喩/『兵器知識』2010・4A)36〜38頁
[2]鍾鳴網「“鉄馬”打造新“鉄騎”中国VN4型装甲車」(原載「坦克装甲車輌」/2010年6月24日)
[3]China Defense Blog「Photo of the day:VN4 4x4 Light Armoured Vehicle for Venezuelan national guard.」(2013年3月5日)
[4]Юрий Лямин「Китайские бронемашины для Венесуэлы」(2013年3月8日)
[5]SIPRI公式サイト「SIPRI Arms Transfers Database -Trade Registers」https://armstrade.sipri.org/armstrade/page/trade_r... (2022年1月21日閲覧)
[6]World Military and Police Forces「Laos」http://worldmilitaryintel.blogspot.com/2013/05/blo...(2022年1月21日閲覧)
[7]DefenceWeb「Kenya's police receive Norinco VN4 armoured vehicles 」(2016年2月10日)https://www.defenceweb.co.za/land/land-land/kenyas...(2022年1月21日閲覧)
[8]Khabarhub Khabarhub「Nepal Army questions 'suitability' of Chinese armored vehicles - 」(2019年11月28日)https://english.khabarhub.com/2019/28/58054/ (2022年1月21日閲覧)
[9]熊晶「镇暴悍将巡礼―世界警用反恐机动装备市场分析及发展趋向(下)」『现代兵器』2022年11月(总第523期) (中国兵器工业集团有限公司)21〜27ページ
【関連項目】
VN-3装輪装甲車
中国陸軍