日本周辺国の軍事兵器 - 艦載ロケット砲(中国)

122mm40連装艦載ロケット砲




性能緒元
重量5.0t
全長3,000mm
全幅2.174mm
全高2,520mm
武装122mm40連装ロケット発射機
俯仰角0〜60度
左右旋回左右各120度
俯仰速度16度/秒

性能緒元(81式122丱蹈吋奪斑)
重量46.3kg
全長2.873mm(榴弾)
 2.870mm(対人用破片榴弾)
直径122mm
弾頭重量約20kg(榴弾)
初速50.7m/s
最高飛行速度692m/s
射程20km(81式)/30km(81-I式)

122mm40連装艦載ロケット砲(原名は122毫米40管艦載火箭炮)は、中国陸軍の81式122mm40連装自走ロケット砲の技術を基に1980年代末に国際市場向けに開発された対地攻撃用の多連装ロケットである。本システムは、200〜500トンクラスの小型船舶に搭載してシーステート4の状況でも正常な運用が可能であり、零下40度から50度までの幅広い気象条件の下での運用が想定されている。

81式をベースに開発されたこともあって、砲安定装置などの基本的なシステムは81式と共通しているが、ランチャーと砲架の結合部の設計変更により砲の位置固定が容易になったため平衝機は廃止されている。これらの設計変更により駆動系の消耗率を減少させる事に成功している。砲の操作やロケット弾の装填は自動化され、船体動揺への対策もとられている。砲架は水平/垂直方向に安定化されており、射撃に際しては射撃諸元と共に、検知装置から送られた船体の傾斜角度や動揺の振幅/周期が射撃統制用コンピュータに入力され最適な設定が成される。ロケットは厚さ2.2mmの発射管に搭載され、ランチャーは10列4段になっている。全弾発射に要する時間は20秒。使用可能なロケット弾は、81式122丱蹈吋奪斑討伴幼延伸型の81-I式122丱蹈吋奪斑討用意されている。弾頭には榴弾と対人用破片榴弾がある。ロケット尾部には折り畳み式の安定翼4枚が装備される。安定翼はロケットの軸線に対して1度傾いており、発射後は旋転して弾道を安定させる役割を果たす。最大射程は81式が20km、81-I式が30kmとされている。

122mm40連装艦載ロケット砲は輸出に成功したか否かは明らかではない。しかし、この後中国海軍は対地攻撃用多連装ロケット砲の研究開発を継続し、50連装122亟郎椒蹈吋奪繁い8連装300mm艦載ロケット砲などが登場することになる。この点から、122mm40連装艦載ロケット砲は以後の艦載多連装ロケット開発の技術的基礎となったと位置付けることができるであろう。

122mm40連装艦載ロケット砲は中国海軍では073-III型揚陸艦(ユデン型/玉登型)の一部に搭載されている。

【参考資料】
現代兵器 1997年1月号「中国122毫米40管艦載火箭炮」
Chinese Defence Today
中国武器大全「81式122侘惻絢行火箭炮」

122mm50連装艦載ロケット砲

▼対地攻撃用に122mm50連装ロケット発射機5基を搭載した#516「九江」。

▼「九江」の50連装ロケット砲発射機。


▼122mmロケット弾

▼122mmロケット弾の発射シーン


上記の122mm40連装艦載ロケット砲は、運用試験で良好な成果を収めた反面、いくつかの問題点も発覚していた。1つは、発射機に装填されたロケットが海水や湿気によって各部が腐食し寿命が縮むことが分かった。これは、陸上型の多連装ロケットを転用した際に、十分な塩害対策が施されていないことによる物であった。また、ロケットを一斉発射した際に命中精度が低下することも判明した。各種の分析によりこの原因はロケット発射機の設計に起因することが分かった。

ロケット自体の問題とは別に、ロケット砲の再装填装置についても問題視された。これは陸上部隊の89式122mm40連装自走ロケット砲の再装填装置と類似した装置であったが、設置には発射機と同程度のスペースを必要としており、狭い艦上では設置箇所が不足する懸念があることが指摘された。海軍では、これらの問題を解消した新設計の艦載多連装ロケットを開発することを決定、これが122mm50連装艦載ロケット砲として実現することとなる。

122mm50連装艦載ロケット砲では、新設計の50連装発射機を採用している。この発射機は、モジュール化されたロケットコンテナ(モジュールにはロケット発射筒25本搭載)を2組装備している。ロケット発射時の命中精度低下に対応した設計が施されており、一斉発射時の散布界減少に成功している。ロケットの発射筒は従来の金属製からグラスファイバー製に変更された。素材変更の理由としては、温度変化や湿度、塩害からロケットを保護するためとのこと。ロケットの再装填はロケットコンテナを取り替えることによって行われる。簡易式クレーンでロケットコンテナを吊り上げて発射機に収める方式が採用されており、122mm40連装艦載ロケット砲の大柄な再装填装置は廃止されている。

なお、このロケット発射機と似た設計の発射機が、2006年に登場した輸出向けのWS-1E 122mm50連装自走ロケット砲(衛士1E/PR-50)の発射機として採用されている。両者の関係は不明であるが、艦載ロケット砲の設計が陸上型に転用されたものと思われる。

122mmロケット弾の最大射程は40km。使用可能な弾頭には、榴弾、破片効果榴弾(HE-FRAG)、焼夷榴弾(HEI)、対戦車/対人クラスター弾、サーモバリック弾、対戦車地雷散布弾などが用意されている。一斉射撃による投射弾量は900kg(弾頭重量換算)になる。

122mm50連装艦載ロケット砲は、053H型フリゲイト(ジャンフーI型/江滬I型)の1隻である#516「九江」を使用して運用試験を行うこととされ2004年に改装が行われた。改装では、艦中央部に装備していたSY-1艦対艦ミサイル(上游1/FL-1)対艦ミサイル発射機2基と後部100mm艦載砲直前の後部構造物を撤去してロケット砲の搭載スペースを確保している。ロケット発射機は計5基が搭載されている。搭載箇所は、マスト直後に1基、煙突と後部100mm砲の間に3基、2番砲直後に1基。この改装では、対艦ミサイル発射機のほか、37mm機関砲×4、517型対空捜索レーダーも撤去された。79式100mm連装砲はシールドをステルス対応にした79A型56口径100mm連装砲(PJ33A)に変更され、近接防空火器は艦橋直前の76式37mm連装機関砲2基のみとなった。

5基の多連装ロケット発射機を搭載する「九江」は、強力な火力制圧能力を備えており、中国軍では一個自走ロケット砲中隊に相当する火力を有していると見なしている。しかし、「九江」の運用試験の結果、同艦にはいくつかの問題があることが分かった。1つは、ロケットの射程に関する問題である。最大射程40kmの122mmロケット砲により、上陸部隊への支援射撃を行うには、上陸地点にかなり接近して射撃を行う必要がある。しかし、上陸地点に接近することは、必然的に防衛部隊からの反撃を受けやすくなることに繋がる。地対艦ミサイルや野砲の射程延伸に伴って、陸上からの反撃の脅威は大きく増大しており、122mmロケット砲の射程ではこれらの攻撃圏内に入らなければならず、危険性が大きいことが指摘された。対空火器としては艦載砲と機関銃しか保有せず自己防空能力の脆弱な「九江」では、これらの脅威に対処することが困難であることは明白であった。また、海軍では、弾頭部の小さい122mmロケット砲では制圧能力に不安があり、精密誘導兵器を搭載するにも不十分で将来の発展性に乏しいと見なした。

中国海軍では「九江」の運用経過を受けて、122mmロケット砲では射程距離不足であり火力も十分では無いと判断し、より大口径の艦載対地ロケット砲の開発を行う方針を決定した。この決定により、「九江」以外の053H型フリゲイトの50連装122mmロケット砲の搭載は見送られることとなった。

【参考資料】
于子雲「浅談中国艦載火箭炮発展過程」『現代艦船』2007-06B(現代艦船雑誌社)

300mm8連装艦載ロケット砲

国防動員艦「世昌」において運用試験を行う300mm8連装艦載ロケット砲



中国海軍では、上記の122mm艦載ロケット砲の開発と並行して1990年代中盤から、より大口径・長射程の多連装ロケットの開発に着手していた。

これは、冷戦終結後の国際情勢の変化により、従来洋上での艦隊護衛が主任務であった水上戦闘艦艇の新たな任務として沿岸から内陸部への火力支援が注目を浴びるようになったことが背景にある。西側各国では、艦載砲の砲身長延伸や誘導砲弾の採用により、水上戦闘艦艇に内陸部の目標に対する精密攻撃能力を付与する動きが相次いでいた。

各国の水上艦艇による対地攻撃能力強化の動きを受けて、中国海軍でもこの流行に追随することとなった。ただし、西側諸国との技術格差から長射程の艦載砲や誘導砲弾を短期間で開発することは困難であった。また、西側先進国の海軍と比べて小型艦の多い中国海軍の水上戦闘艦艇は、重量が嵩み易い大口径艦載砲を搭載するプラットホームとしては問題があった。

最終的に中国海軍が選択したのは、対地攻撃用の大型艦載ロケット砲を開発することであった。中国では、すでに陸軍向けに各種多連装ロケットを開発しており一定程度の技術蓄積があったこと。砲弾よりも容積に余裕のある大口径ロケット弾は、より大きな精密誘導装置を搭載することが可能であり、砲弾に比べて射撃時の衝撃の少ないロケットであれば精密誘導装置を組み込む際に、それほど衝撃対策を施さずに済むことも、電子技術の蓄積の少ない中国にとっては開発リスクを軽減することに繋がった。また、ロケット砲は艦載砲に比べてシステム全体の重量を軽減できることも利点であった。

中国海軍では、口径300mmで最大射程70kmの大型対地ロケットを開発することを決定した。これは、ロシアから技術導入して開発された96式300mm10連装自走ロケット砲(PHL-96/A-100)のものと同系統のロケットであり、開発においては96式のノウハウが応用されたとされる。70kmの射程は、沿岸防衛部隊の野砲や対艦ミサイルの射程外からの攻撃を可能とすることが目的。300mmという大口径ロケットであれば、陸上目標に対する十分な破壊力を確保できる上、クラスター弾頭や精密誘導弾頭など任務に応じて各種弾頭を組み込むことも122mmロケットに比べて容易になるとしてこの口径が選択された。

発射機については、当初12連装が検討されたが、この場合発射機にロケットを装填した状態で10tを超える重量となり艦の重心に悪影響を与えること、自動装填装置の構造が複雑になり、開発リスクが増すなどの問題から、より小型で弾薬をスライドさせれば再装填が出来る8連装発射機に変更された。

300mmロケット弾は7m近い全長を持ち、その装填方法は機械装填でなければ困難であった。そのため、ロケットの開発と並行して自動装填装置の実用化も行われた。300mmロケット砲の自動装填装置は、輸送用コンテナを転用して、その内部に弾薬と一緒に納められた。コンテナ内には、ランチャーに収納されたロケット4発を収めたモジュールコンテナが用意されており、ロケットの再装填はロケットコンテナを発射機に装填することによって行われる。自動装填装置の開口部とロケット発射機はほぼ同じ高さに設置されており、ロケットコンテナをスライドさせれば発射機に装填することができる。設計においてはモジュール化が追求され、ある程度の艦上スペースのある艦艇であれば簡単に同システムを設置することが可能。モジュール化によって、揚陸艦や輸送艦、また戦時動員した民間船などを簡単に火力支援艦に改装することが出来るようになった。これは、平時において火力支援艦を維持するコストを節約できること、戦時においてさまざまな艦艇を短期間で火力支援艦に転用できるなどのメリットがある。

300mm8連装艦載ロケット砲は、一斉射撃で2t近い弾頭重量を投射することが可能で、これは50連装122mm艦載ロケット砲の900kgを大きく上回っている。通常型の最大射程は70kmであるが、原型となった96式300mm10連装自走ロケット砲(PHL-96/A-100)では、150〜180kmの射程を有する長射程ロケットの開発が進められており、実用化されれば艦載型でも運用されると見られている。ロケット弾には200〜250kgまでの各種弾頭(収束破片弾頭、単一破片弾頭、対戦車子弾収納弾頭、燃料気化弾頭、対戦車地雷散布弾頭など)を装備する事が可能。

300mm8連装艦載ロケット砲は1990年代後半から約10年の歳月をかけて実用化された。製造された発射機と自動装填装置、コントロール部は、国防動員艦「世昌」に搭載され、運用試験が行われた。「世昌」は船体中央部に広い搭載区画を有しており、各種モジュールを搭載して試験を行うのに適した艦であった。「世昌」は試験終了後に発射機や再装填装置を撤去しており、現在中国海軍で同システムを搭載している艦艇は存在しない。しかし、有事においては、必要に応じて各種艦艇に300mm8連装艦載ロケット砲が搭載されて、揚陸作戦に投入されるものと思われる。

【参考資料】
于子雲「浅談中国艦載火箭炮発展過程」『現代艦船』2007-06B(現代艦船雑誌社)

中国海軍