日本周辺国の軍事兵器 - 康定級フリゲイト(ラファイエット級)

▼3番艦昆明(#FF-1205)

▼左:後方から撮影された昆明。右:同艦の20mmファランクスCIWS

▼2番艦西寧(#FF-1203)のヘリコプター格納庫


▼2017年からの搭載工事が計画されている天剣II型艦対空ミサイル


性能緒元
満載排水量3,680t
全長124.2m
全幅15.4m
喫水4.0m
主機CODAD 2軸
 SEMT-Pielstick 12-PA6-280 STCディーゼル 4基(20,800馬力)
速力25kts
航続距離7,000nm/15kts
乗員176名

【兵装】
対空ミサイルRIM-72艦対空ミサイル「シーチャパレル」 / 4連装発射機1基
対艦ミサイル雄風II型 / 4連装発射筒2基
魚雷Mk46 324mm短魚雷 / Mk32 3連装発射管2基
オットー・メララ Mk75 62口径76mm単装砲1基
近接防御Mk15 ファランクスBlock1A 20mmCIWS1基
 ボフォース 350PX 70口径40mm単装機関砲2基
 T75S 20亠ヾ慄ぁM39A3)2基
搭載機S-70C(M)-1/2対潜哨戒ヘリコプター1機

【電子兵装】
2次元対空レーダーDRBV-26D1基
対空・対水上レーダーTriton-G1基
火器管制レーダーCastor-IIC2基
航海レーダー20V902基
光学照準装置CSEE Najir Mk21基
電子戦システムDR3000S 
チャフ・フレアDagain Mk22基
戦闘システムTavitac 2000 
データ・リンク・システム大成(台湾型Link-11/14) 
 Link-16 JTIDS 
ハル・ソナーSpherion-B1基
曳航ソナーATAS(v)21基

フランス海軍のラファイエット(La Fayette)級をベースに台湾独自の兵装を搭載した汎用フリゲート艦。タレス社(トムソンCSF)に発注され1996〜1998年に同型6隻が就工した。6隻ともフランスのロリアン海軍工廠で建造され、台湾へ回航されている。

台湾は10年兵力整建計画の光華2号計画艦として1,500tクラスのフリゲート艦16隻を整備する計画をたて、アメリカやアルゼンチン、ドイツなど様々な国から出された提案の中から韓国のウルサン級フリゲートを選定する方向に傾いていた。1988年には韓国艦隊が台湾を訪問して導入ムードが高まったが、その後ウルサン級フリゲートの対空・対潜能力が著しく低い事が問題になり、また韓国政府が中国との外交関係に配慮して台湾と国交断絶してしまったために、ウルサン級導入の計画は白紙に戻された。一部にはドイツからMEKO型フリゲートを購入するべきだとの声もあったが、中国との関係を優先するドイツと契約を結べる可能性は低く、結局台湾は対台政策を転換し、積極的に売り込みを行っていたフランスからラファイエット級(F-3000)を導入する事に決定した。ラファイエット級はステルス性の高い先進的なフリゲート艦で性能は旧式なウルサン級とは比べ物にならず、そのスマートな艦形は1989年にフランスを視察した台湾要員たちの目を惹きつけたのである。元々光華2号計画艦は高価な光華1号計画艦(成功級/ペリー級)8隻とハイ・ロー・ミックスで運用するために安価な小型艦になる計画だったが、ラファイエット級は高価な上に更に調達価格が高騰し(6隻で70億フラン→160億フラン)6隻しか整備できなかった。導入費用で問題があった康定級は、リベートのバラ撒きや予算獲得方法などの不正が大きな事件になっており、台湾政界を揺るがす大きな事件に発展してしまった。契約には4隻を追加建造するオプションもあったが、不正問題の影響もあり結局立ち消えになっている。

康定級は価格面の問題と中国の圧力でフランス製の兵装が調達できなかったため(フランスは台湾の足元を見てかなりの値を提示した)、船体はフランスで建造し、独自に用意した兵装を台湾で搭載したが、その結果オリジナルの最大の特徴であったステルス性(モーターボート以下のRCSといわれる)は著しく低下した。稼動率は成功級フリゲートと比べて低く、6隻全てが何らかのトラブルで港に留まらなければいけない事態も起こっている。また性能などの機密情報がフランスから中国へ漏れているといわれる。中国は台湾との紛争に突入した場合フランスに圧力をかけ、フランスは康定級のサポートを打ち切るだろう。康定級はこのように様々な問題があるが、これは台湾が国際的に孤立している為に兵器導入の選択肢が著しく狭い事が大きく影響しており(軍上層部の腐敗も問題ではあるが)、台湾の苦しい現状を表しているといえよう。

康定級はBRAVOと呼ばれるラファイエット級の対潜型をベースにしている。船形は一見して分かるようにステルス性を強く意識しており、上部構造物全体にレーダー波を分散させるための傾斜角が付けられている。マストも閉囲型構造でアンテナ類は極力その中に収めるようにしてあり、艦前部のSAM装備位置や中央部のSSM装備位置にも囲壁が設けられている。また艦全体にレーダー波吸収剤が塗布され、赤外線シグネチャや騒音も極力抑えるように設計されている。康定級のオリジナルとの相違点はマストの形状とヘリコプター格納庫両脇の40mm機関砲増設、そして艦砲、対空ミサイル、対艦ミサイル、CIWSが台湾の用意したものである事だ。前述したようにこれらの変更により、オリジナルのステルス性は大きく失われた。主機はラファイエット級と同じSEMT Pielstick社製のPA6-280 STC 4基で、最大25ノットを発揮する。兵装がオリジナルのラファイエット級より多いために乗組員の数は176名に増えている(内将校士官20名)。

康定級の防空能力は低く、RIM-72艦対空ミサイル「シーチャパレル」 とファランクス20mmCIWSを装備しているに過ぎない。シー・チャパレルは1967年のエイラート号撃沈事件を契機に開発が本格化した個艦防御ミサイルで、AIM-9サイドワインダー空対空ミサイルをベースにした陸上用SAM MIM-72チャパレルを艦載化したもの。1972年にベトナム沖で作戦展開するアメリカ海軍の駆逐艦9隻に装備されたが、ベトナム戦争終結後は撤去されて台湾にシステムごと売却された。誘導方式はサイドワインダーと同じ赤外線ホーミングで、レーダー誘導ミサイルのようにイルミネーター(ミサイル管制レーダー)を装備する必要がない。射程は約3kmと極めて短く(同じサイドワインダーから発展したRAMの射程は約10km)、対艦ミサイルの迎撃もほぼ不可能。

主砲のMk75 62口径76mm速射砲は伊オットー・メララ社製のベストセラーで、1965年に開発されたもの。甲板下の回転式弾倉から2つのロッキング・アームを使用して給弾する事で、毎分最大85発という恐るべき発射速度を得ている。射程は約12km。但し康定級が装備しているのはステルス・シールド型ではなく、通常タイプだ。ヘリコプター格納庫両脇にはスウェーデン・ボフォース社製の350PX 70口径40mm単装機関砲がそれぞれ1基ずつ装備されている。この機関砲は中国海軍が多数保有している小型高速戦闘艇を迎撃するためのもので、主戦闘システムから独立しており各個に目標を攻撃する事ができる。発射速度は毎分300発で、射程は約9km。もちろんステルス・シールド型ではない。40mm機関砲のやや後には3連装魚雷発射管が、ステルス性を意識する事無くむき出しで装備されている。

捜索レーダーはTriton-G(Gバンド)とDRBV-26D(Dバンド)で、どちらもタレス社製。DRBV-26Dは長距離対空捜索レーダーで、最大探知距離は360km、64目標を同時に追跡する事が出来る。Triton-Gは中距離対空・対水上捜索レーダーで回転速度が毎分40回転と速いために(DRBV-26は毎分15回転)、高速で移動するミサイルなどの目標の探知・追跡に優れている。最大探知距離は60km、同時目標追跡数は32。航海レーダーはRacal社(EADS)製の20V90で、搭載ヘリのナビゲートにも使用される。火器管制レーダーもタレス社製のCastor-IIC(I/Jバンド)で、76mm砲と40mm機関砲の管制とシー・チャパレルSAMの指向用。統合戦闘システムもタレス社製のTavitac 2000で、光学目標追跡システムは英EADSシステムズのNajir MkII。Tavitac 2000戦闘システムは中国海軍でも採用されているため、その能力は敵の知るところとなっている。目標の情報は「大成」データ・リンク・システム(米海軍Link-11の台湾版)を通じて、ほぼリアルタイムに僚艦と共有する事ができる。チャフ・フレア発射機は仏マトラ社製のダゲMk2。旋回式の発射機に34本のチャフ・フレア発射筒を収めたスーツケース大のパッケージを10個まで組み込める。艦首のSpherion-B中周波ソナー(探知距離約32km)と艦尾のATAS(v)2可変深度ソナー(探知距離約100km)はトムソン社製。それぞれ5個と10個の目標を同時追跡可能だ。この優秀なソナーを生かすための対潜ミサイルを康定級は装備していない。また曳航ソナーを使用すると航行時の安定性が失われる問題があるようだ。

【能力向上計画について】
康定級は2000年から「博勝計画」と呼ばれる改修が行われている。これはアメリカ四軍の統合戦術情報分配システム(JTIDS:Joint Tactical Infomation Distribution System)のデータリンクであるLink-16を装備する為のもので、アメリカから50セット導入し成功級と康定級、基隆級に順次配備が進められている。

また博勝計画とは別に、康定級の貧弱極まりない防空能力を強化する事も検討されている。最初の計画は、現在装備しているシー・チャパレルに換えて、台湾科学院で開発された国産の天剣2型対空ミサイルの艦載型(海剣?)を2006年から搭載するというものであった。原型の天剣II型は中距離対空ミサイルで射程は約80km(50kmとの説も)、誘導方式はアクティブ・レーダー誘導。地上/海上から発射する対空ミサイルの場合、同等の性能の空対空ミサイルに比べて射程が短くなる傾向があるが、艦載型天剣IIの最大射程も原型の天剣II型より短縮されると予想されている(30km台との説もある)。艦載型天剣IIはVLS(垂直発射システム)から打ち出されるため、尾部にTVCブースターが追加される。艦載型天剣II型の試作型は2005年に完成している。当初はコールドガス発射方式を模索していたが、結局通常のブースター発射方式が採用されたようだ。但し最初の2隻は箱型ランチャーを搭載してミサイルシステム全体のテストを実施し、成功すれば残りの4艦にVLSを装備する予定。新型の兵器を配備する場合、出来れば海上自衛隊のように専用の試験艦でテストを行ってから実戦艦に配備するべきだが、台湾海軍は試験艦を保有していないためこのような変則的な配備方法になった。ミサイル管制レーダーは台湾科学院開発のアクティブ・フェイズド・アレイ・レーダーを搭載する。この防空能力強化計画は2008年までに完了する予定で、康定級は10程度の目標と同時交戦可能になるとされていた。

しかし、天剣II型の垂直発射型を実用化するにはかなりの費用と時間を要する事やVLSを搭載した場合の重量増加などが問題視され、システム重量がより軽量で済む傾斜式ランチャーに天剣II型を搭載する方式に変更された[4]。この方式では、シーチャパレル発射機を撤去した場所に8連装ランチャーを二基搭載することが検討された。しかし、ランチャーの問題とは別に、天剣II型自体に大きな問題が存在していた。原型となる天剣II型空対空ミサイルのコンポーネントの多くが生産を終了しており、天剣II型艦対空型を生産するには各種コンポーネントを改めて開発・調達する必要性が存在した[4]。これを解決するには、やはり多額の経費と開発期間が必要であった。

最終的に、2009年になって台湾海軍は康定級に天剣II型を搭載する近代化改装計画を放棄する事を決定した。しかし、康定級の防空能力の脆弱性は放置するわけには行かない事から、台湾海軍ではアメリカ製の防空システムを庚定級に搭載する防空能力向上計画「定海専案」を現在検討中である。「定海専案」では米レイセオン社製SeaRAM近接防空ミサイルシステムやGDM-008「ミレニアム」35mm機関砲(ラインメタル社傘下のエリコン・コントラヴェスで開発。米ロッキード・マーチンがライセンス生産)の搭載が考えられている[4]。ただし、「定海専案」は検討中の計画であり、その実現時期については未定[4]。

【天剣II型搭載計画の復活】
台湾海軍では、2009年以降も康定級に天剣II型を搭載する改修案に関する検討作業を継続していた。予算不足や改修の規模、ミサイルシステムの信頼性改善などを勘案して検討が進められていたが、2013年11月4日台湾海軍の高天忠参謀長が立法院での質問に回答する形で、民国106年(西暦2017年)から康定級の艦対空ミサイルを天剣II型に変更する改修工事に着手する方針である事を明らかにした[6]。ただし、予算の都合上、改修費用のかかる垂直発射システムの採用は困難であり、傾斜式発射機を艦上に搭載する可能性が高いとされている。

康定級は全艦が龍江型ミサイル艇や錦江型大型哨戒艇と共に基隆の第131フリゲート戦隊に所属しており、主に台湾近海での対潜水艦戦を任務としている。

1番艦康定(Kang Ding)FF-12021996年5月就役
2番艦西寧(Si Ning)FF-12031996年9月就役
3番艦昆明(Kun Ming)FF-12051997年2月就役
4番艦迪化(Di Hua)FF-12061997年8月就役
5番艦武昌(Wu Chang)FF-12071997年12月就役
6番艦承(Chen Du)FF-12081998年1月就役

【参考資料】
[1]『世界の艦船別冊-中国/台湾海軍ハンドブック(改訂第二版)』(海人社/2003年)
[2]Global Security
[3]Naval technology
[4]軍武狂人夢「康定級巡防艦」
[5]Jane's Fighting Ships 2009-2010(Stephen Saunders (編) /2009年6月23日 /Janes Information Group) 789頁
[6]中央社即時新聞 CNA NEWS「強化戰力 康定艦將換裝劍二」(劉麗栄/2013年11月4日)

台湾海軍