日本周辺国の軍事兵器 - 「ミラージュ2000」戦闘機

▼ミラージュ2000-5Ei



▼ミラージュ2000-5Di



性能緒元
重量7,500kg
全長14.35m
全幅9.13m
全高5.20m
エンジンSNECMA M53-P2 A/B9,700kg ×1
最大速度M2.2
戦闘行動半径1,800km(Hi-Hi-Hi)
上昇限度16,460m
武装DEFA554 30mm機関砲×2
 「MICA RF」アクティブ・レーダー誘導空対空ミサイル(雲母導弾)
 R550赤外線誘導空対空ミサイル「マジックII」
 爆弾等最大6,300kg
乗員1名

ミラージュ2000はフランスのダッソー社が開発した軽量戦闘機である。初飛行は1979年に単座のC型が、翌80年には複座のB型が飛んだ。その後も改良型が製作され、インドやカタールなど各国への輸出も盛んに行われている。輸出総数は274機にのぼり、試作機を含めると600機以上が生産された。

ダッソーの戦闘機は伝統的にデルタ翼が多いが、ミラージュ2000もデルタ翼を採用している。デルタ翼の信条は構造が簡単で軽量な事。ミラージュIIIでカナードの追加が効果的だと分かっても、ミラージュ2000は純粋なデルタ翼を守り通した。さらにブレンデッド・ウィング・ボディを用いて空力的にも構造的にも楽にし、またCFRP(炭素繊維強化プラスチック)の積極的な適用を試みて、ますます軽量化に徹した。徹底した軽量化は、デルタ翼の舵面が少ない不利を補って余りあるとの判断である。同時に機動性をあげるために、負の静安定をコンピュータ制御で釣り合わせながら飛ぶリラックス・スタビリティを適用した。これはF-16と同じ思想である。主翼の後縁は2分割された通常のエレボンで、前縁は離着陸時や高機動時の高迎え角に備えてフル・スパンの前縁スラットとなっている。このエレボンと前縁スラットを組み合わせてコンピュータが制御し、空戦フラップとしても活用し機動力向上につなげている。機動時の高迎え角への対応は、ミラージュIIIに比べて高くそそり立った垂直尾翼である。またその時のラダーの効きを確保するため、インテイク脇に一種のボルテックス・フィンが取り付けられた。こうした構造のミラージュ2000は低速度域での操縦特性が極めて良好で、特に格闘戦で恐るべき運動性を持つに至っている。

台湾空軍が採用したのはダッソー社のアップデート5が適用されたミラージュ2000-5。2000-5はレーダーをトムソンが新たに開発した多機能ドップラー・レーダーのRDYに変更しており、機体前方のあらゆる高度域にいる目標を捕捉するために自動電波管理機能(低・中・高のパルス繰り返し周波数変調)を有している。ルックダウン能力は初期のミラージュ2000が装備していたRDMよりも高められ、また多目標同時処理能力として24目標を探知し、その中の8目標を追跡、4目標を同時に攻撃する事が可能。空対空兵装では新世代の撃ちっ放し式AAMである「MICA」空対空ミサイルの携行能力が追加されている。MICAはシーカー部の換装でアクティブ・レーダー誘導型にも赤外線誘導型にもなる空対空ミサイル。ミラージュ2000は通常R550「マジック2」赤外線誘導AAMを搭載するので、MICAはアクティブ・レーダー誘導型(MICA RF)を搭載する。これにより見通し外射程(BVR)での撃ちっ放し攻撃力と複数目標への同時攻撃能力をミラージュ2000-5は得ており、これは中国空軍が装備している初期型のSu-27を性能的に上回っていると言えよう。MICAは最大で4発を携行し、胴体下左右で前後に並ぶステーションに装備される。ミラージュ2000-5は空対空戦闘以外にも各種の空対地ミサイルや精密誘導兵器を搭載して対地戦闘に従事できる多用途戦闘機だが、台湾空軍では制空戦闘専門として使用しており対地攻撃兵装は導入していない。また、本国版では装備されている空中給油能力も台湾輸出版では削除されている。自己防御用の電子機器は統合型対抗手段システム(ICMS)として完全に纏められている。これはレーダー警戒装置やECM装置などを統合化し機内に装備したもので、機外にECMポッドなどを装備する必要はない。

ミラージュ2000-5では以前のミラージュと比べてコックピットのレイアウトが大きく変わっている。ヘッド・アップ・ディスプレイのすぐ下にヘッド・レベル・ディスプレイがあり、主計器板左右に多機能表示装置、中央下にヘッド・ダウン・ディスプレイを持つ5表示装置タイプになっている。ヘッド・アップ・ディスプレイとヘッド・レベル・ディスプレイは単色で、操縦・航法・目標捕捉及び射撃に使用される。多機能表示装置とヘッド・ダウン・ディスプレイはともにカラーCRTが用いられている。多機能表示装置はあらゆるセンサーや機体システムの管理情報を主として表示し、また水平状況などの表示にも使用できる。ヘッド・ダウン・ディスプレイは戦術状況の把握に用いられ、脅威目標などに関する各種情報がまとめて表示されてパイロットが迅速な状況把握を行うことを可能にしている。航法/攻撃システムの操作や兵装の選択などはスロットル・レバーと操縦桿に手を置いたまま行えるHOTAS概念が採用されている。

単座型の2000-5Eiが48機、複座型の2000-5Diが12機の合計60機が1998年11月までに導入された。支援機材や増槽などはもちろんヘルメットや耐Gスーツに至るまでもフランス製のものを購入せざるを得ず、これは台湾空軍当局をうんざりさせ運用上でもかなり面倒な事になっているという。2004年7月には高速道路を利用した臨時滑走路で、着陸・補給・再出撃の訓練を行った。

現在台湾空軍のミラージュ2000は第499戦闘航空団に集中配備され2001年5月にIOCを達成、第41、第42、第48戦闘飛行隊で運用されている(第48飛行隊は訓練飛行隊)。2013年5月までに合計4機が墜落事故により失われている[1]。

【参考資料】
[1]Taipei Times「Taiwan sees second jet crash within a week」(Rich Chang/2013年5月21日)

戦闘機年鑑2005-2006
世界航空機年鑑2005
TaiwanAirPower.org
軍事研究

台湾空軍

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戦闘機年鑑(2005-2006) 青木 謙知 (著)/出版社: イカロス