日本周辺国の軍事兵器 - 多用途フリゲイト(多任務護衛艦)

▼IDEX2011に出展された多用途フリゲイトの模型


 多用途フリゲイト(Multi-Mission Frigate/多任務護衛艦)は中国船舶重工国際貿易有限公司(China Shipbuilding and Offshore International Co:CSOC)が輸出向けに提案中の小型フリゲイト。南アフリカ共和国の首都プレトリアで開催されたAAD2010(Africa Aerospace & Defence Exhibition)で初めてその模型が展示された。
 同艦は、全長97m、幅10.9m、排水量1,500tとフリゲイトとしてはかなり小型でコルベットにも分類可能なサイズの艦。積極的にステルス性に配慮した平面を多用した設計を取り入れているのが特徴。対レーダー・ステルスのために舷側はV字型に傾斜しており、上部構造物は逆方向に傾斜させるため、艦首から艦尾まで全通するナックル・ラインを設けている。船体は中央船楼型を採用しており、上部構造物周囲はレーダー波反射を抑えるためブルワークで覆われている。艦橋構造物直後の塔型マスト頂部のボックスには多機能レーダーが内蔵されているが、この方法は近年各国で開発されている水上戦闘艦艇でも採用例が増えているもので、レーダーアンテナを内蔵することでレーダー反射率を低減する効果を狙ったもの。船体中央には煙突が配置され、上部構造物後端にはヘリコプター格納庫が用意されている。最高速力は30kts。搭載機関に関する情報は不詳。
 兵装としては、艦首部にH/PJ-26型76mm単装砲1門を搭載、その直後にVLS(Vartical Lunch System:垂直発射システム)が埋め込まれている。この他にミサイル発射機は搭載されておらず、対艦ミサイルや対空ミサイルは全てこのVLSに収納されるものと思われる。参考資料[2]によるとこのVLSには24発のHQ-16艦対空ミサイルが搭載されるとの事。CIWS(Close-In-Weapon System:近接防御システム)としては、AK-630 30mmCIWS2基を艦橋構造物直前の第二甲板とヘリコプター格納庫上に搭載。船体中央の煙突を挟んだ両舷には主に哨戒・警備活動における水上目標への対処用に056型コルベットなどへの搭載が行われているH/PJ-15型30mm単装機関砲2基が配置されている。対潜兵装は外部からは確認できないが、近年の中国水上戦闘艦と同じく、短魚雷発射機を艦内に装備している可能性がある。
 艦載ヘリコプターとしては、中国海軍の標準的な艦載ヘリであるZ-9C対潜ヘリコプター1機を搭載。

【展望】
 多用途フリゲイトについては、公開された情報はそれほど多くなく、具体的な設計方針や搭載兵装についても不明な点が多いのが正直な所。実際に採用される場合は、兵装や艦形などはユーザーの要望に応じて所定の変更が施されると思われるので、模型とはだいぶ異なるものになる可能性が高い。同艦の模型外観からは、船体や上部構造物を含めたステルス性重視の設計、マスト内蔵式多機能レーダー、VLSの採用など、近年の各国水上戦闘艦艇で取り入れられているコンセプトを取り入れているのが伺える。これは、輸出市場において競争力を確保するために必要な措置と言える。

性能緒元
排水量1,500t
全長97m
全幅10.9m
主機
速力30kts
航続距離
乗員

【兵装】
対空ミサイルHQ-16艦対空ミサイル24発(VLS搭載)
対艦ミサイルVLS搭載?
艦砲H/PJ-26型76mm単装砲1門
近接防御AK-630 30mmCIWS2門
H/PJ-15型30mm単装機関砲2門
搭載機Z-9C対潜ヘリコプター1機

【参考資料】
[1]MDC軍武狂人夢「多任務護衛艦」
[2]平可夫「図片新聞 阿布達比国際防務展中国軍品在中東」(『漢和防務評論』2013年4月号)9頁

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