日本周辺国の軍事兵器 - 07P式装輪装甲車

▼試験中の07P式装輪装輪装甲(右)と07PA式120mm自走迫撃砲(左)


07P式装輪装甲車は、解放軍系企業である中国保利集団公司の所属企業の1つ保利科技(Poly Technologies)が開発した輸出向け8×8装輪装甲車[1]。07Pの「P」は、保利(Poly)を表している。

なお、IDEX2009国際兵器博覧会では、まったく同じ「07P」式という名称で中国北方工業集団公司(NORINCO)が開発したVN-1装輪歩兵戦闘車が出展されている、これは本稿の07P式とは別[2]。なぜ同じ名前が別々の車両につけられたのか、詳しい経緯は不明。

【車内配置】
07P式のサイズは、全長7m、全幅2.65m、全高2.83m(砲塔含む)、全備重量は装輪装甲型の場合15,600kg[1]。車体は圧延防弾鋼板を溶接して製造されている。付加装甲に関しては情報がない。

車体配置は、前部左側が操縦手席で、その右側にも座席が1つある。車体中央は動力部となっておりエンジンと変速機を搭載するが、動力部左側に車内前方の操縦席と後部の兵員室をつなぐ細い通路が設けられている。動力部の直後に二人用砲塔を設置、車体後部は兵員室とされている[1]。

車体前部は避弾経始を意識した楔形形状を採用しているが、操縦席前方は操縦時の視界を確保するため一段高くなっており、正面と左右に各一枚の防弾ガラスが嵌め込まれている[1]。操縦手は、操縦席の直上にある操縦手用ハッチ、もしくは操縦手席の真横にあるドアを利用して乗降を行う[1]。操縦手席の左側座席には直上ハッチはあるが、車体側面ドアは設けられていない[1]。その代わり、より小型の開閉パネルが複数用意されており、これは車両整備用に設けられたものと推測される[1]。

車体中央左側に搭載されたエンジンと変速機はパワーパック化されている[1]。排気管は車体中央右側に、空気取り入れ口は車体上面に配置される[1]。

パワーパックの直後が兵装搭載区画で、装輪装甲型や治安部隊向けYLGA1装甲車は一人用砲塔を、自走迫撃砲型は2名用砲塔を搭載。この後ろが兵員室で、搭乗歩兵の座席は対面式。兵員室上部には大型ハッチが二箇所設けられており、必要に応じてこの部分を開放して乗降や射撃を行うことも可能[1]。車体後部には兵員乗降用に横開式ハッチ1基が設けられている。

07P式はエアコンを標準装備しているが、これは乗員の戦闘力を維持するための取り組みの1つ。熱交換器の位置はタイプによって異なり、車体左側中央部にガンポートを配置した装輪装甲型と治安部隊向けのYLGA01装甲車では車体左型後部に、ガンポートのない自走迫撃砲型では車体左側中央部に熱交換器を配置している。

【機動力】
07P式は335hpの6LTAA8.9型ディーゼルエンジンを搭載[1]。出力/重量比は21.5hp/tで、路上最高速度は100km/h。タイヤの空気圧は車内から調整が可能で、路上の状態に応じて最適化される。停車状態から32km/hまで加速するのに必要な時間は13秒[3]。最小旋回半径は11m[3]。1.8mまでの溝や塹壕、50cmまでの壁を踏破する能力を有している[3]。

07P式は水上航行能力を有するが、スクリューなどの推進装置は装備されておらず、推進力は車輪の回転により確保。水上航行時の最高速力は4km/h[1]。

【武装】
07P式装輪装甲車は、近年の装輪装甲車の流行に漏れず開発当初からファミリー化を前提とした設計が施されており、実際に製造された07P式装輪装甲、07PA式120mm自走迫撃砲、治安部隊向けYLGA01装甲車(中国語だと装甲公安応急処突車)の他にも、指揮通信車、装甲回収車、各種ミサイルのプラットフォーム、装甲偵察車など各種派生型が構想されている[1][3][4]。

装輪装甲型が搭載する1人用砲塔には、30mm機関砲と7.62mm機関銃が同軸装備されている[1]。この他補助武装として、3連装発煙弾発射機2基が砲塔正面左右に装着される。30mm機関砲の防盾上にはサーチライトが装備。砲塔駆動は機械式だが、バックアップとして人力駆動も可能。砲塔上部には砲手用サイトが設置されている。30mm機関砲に銃身を支える枠が付けられ、発煙発射装置が3連装2基から連装4基に変更されるなどの各部の設計が異なる砲塔を搭載したタイプの装輪装甲型も存在する。

治安部隊用のYLGA01装甲車も一人用砲塔を搭載しているが、こちらは装輪装甲型とはかなり形状が異なっており、固有武装は付いていない。砲塔正面に機関銃を外装式に装着する銃架が用意されており、任務に応じて5.8mm/7.62mm機関銃、12.7mm重機関銃、35mm自動擲弾発射機など各種火器を選択装備する[3]。治安任務車両という性格上、非殺傷武器として、38mm9連装催涙弾発射機(射程40〜150m)もしくは64mm6連装催涙弾発射機(射程100〜300m)、音響暴動鎮圧装置、サーチライトなど各種暴動鎮圧用装備の搭載が可能[3]。

装輪装甲型とYLGA01装甲車は、車体両側面に合計3基のガンポート(車体右側に2箇所、左側に1箇所)と外部視認窓を備え、搭乗歩兵による乗車戦闘能力を有している[1]。

07PA式120mm自走迫撃砲は120mm迫撃砲を備えた2名用砲塔を搭載しているが、この砲塔は中国軍で運用されている05式120mm装輪自走迫撃砲(PLL-05)と同じもの(具体的な性能については05式のページを参照されたし)[4]。副武装として、車長用キューポラに12.7mm重機関銃一艇がピントルマウント式に装備されている。

【総評】
07P式装輪装甲車は、軍での運用のみならず治安部隊での配備も視野に入れて開発された。

中国軍への配備が進められている08式装輪歩兵戦闘車「雪豹」(ZBL-08)と比べると、同じ8×8装甲車ながら07P式は車重が軽くサイズもやや小型で、搭載武装や防御力など純然たる戦闘車両としての性能は抑えられている(例:08式が車体装甲の上にセラミック付加装甲を装着するのに対して、07P式は車体装甲のみ)。しかし、その分価格は低くなっているものと推測される。上記の点から、07P式は08式ほど脅威度の高くない任務で運用されることが想定されているものと考えられる。

07P式は、2009年から国際市場への売込みが開始され、タンザニア陸軍に07PA式120mm自走迫撃砲が[5]、カメルーン陸軍に07P式装輪装甲車が採用されている[6]。カメルーン陸軍では装甲偵察旅団の二個小隊に07P式装輪装甲車を、三個小隊にCARA 105 mm装輪自走突撃砲が配備されている[6]。

【派生型一覧】
07P式装輪装甲  30mm機関砲と7.62mm機関銃を装備した一人用砲塔を搭載。固有の乗員3名に加えて歩兵7名が搭乗。
07PA式120mm自走迫撃砲車体中央部に120mm迫撃砲を装備した二人用砲塔を搭載。
YLGA01装甲車保利科技と北京和為永泰科技有限公司が共同開発した治安部隊用装甲車。中国語だとYLGA01装甲公安応急処突車。乗員3名に加えて歩兵9名が搭乗。治安・警備任務で長期の車内乗車をする場合に備え、水タンク、エアコンを備え、車体底にカーペットを張るなど乗員の戦闘力維持に配慮しているのが特徴。
上記車両の他、実車の製造は確認されていないが、指揮通信車、装甲回収車、各種ミサイルのプラットフォーム、装甲偵察車など各種派生型が構想されている

性能緒元(07P式装輪装甲)
重量15,600kg
全長7m
全幅2.65m
全高2.08m(車体のみ)/2.83m(砲塔含む)
エンジン6LTAA8.9型水冷ディーゼル(335hp)
最高速度100km/h
浮航速度4km/h
航続距離600km
武装30mm機関砲×1
 7.62mm機関銃×1
 3連装発煙弾発射機×2
 ガンポート×3
装甲均質圧延鋼板
乗員3(車長、砲手、操縦手)+7名(搭乗歩兵)

【参考資料】
[1]Christopher F. Foss『Jane's Armour and Artillery 2010-2012』(Janes Information Group/2011年6月23日)499〜500頁
[2]ASIAN DEFENCE「IDEX 2009Chinese wheeled armoured personnel carrier Type 07P from Norinco」(2009年2月)
[3]北京和為永泰科技有限公司公式サイト「公安応急処突車」
[4]Jane's International Defence Review「More firepower for Chinese Type 07P」
[5]Defence & Security Intelligence & Analysis - IHS Jane's 360「Tanzania parades new Chinese kit」(Stijn Mitzer/2014年5月14日)
[6]Defence & Security Intelligence & Analysis - IHS Jane's 360「Cameroon displays new Chinese armour」(Jeremy Binnie/2014年5月20日)

07P式装輪装甲車の派生型
中国陸軍