日本周辺国の軍事兵器 - 88式155mm自走榴弾砲(PLZ-45)





▼「PLZ45 الجيش الكويتي المدفع الصيني」クウェート陸軍に配備されたPLZ-45A1の動画


▼PCZ-45弾薬運搬車


▼704-1対砲レーダー


▼702-D気象測定車


ZCY/ZCL-45砲兵指揮車


GCL-45砲兵観測車


▼「Meet the Chinese Army's PLZ-45A4 Self-propelled Howitzer - AOD - YouTube」
PLZ-45の改良型であるPLZ-45A4の紹介動画


性能緒元
重量33トン
全長10.52m
全幅3.30m
全高2.60m
エンジン液冷ターボチャージド・ディーゼル 525hp
最高速度56km/h
航続距離450km
武装45口径155mm榴弾砲×1(30発)
 12.7mm重機関銃×1(480発)
装甲 
乗員5名

PLZ-45はNORINCO(中国北方工業公司)が開発した輸出用自走砲である。榴弾砲システムは北京大学との共同研究により開発された。1997年、PLZ-45はアメリカやヨーロッパ各国の自走砲を押さえてクウェートの新型自走砲契約を勝ち取り、2個砲兵大隊分の54輌が対砲レーダーや指揮車などの砲撃システム一式とともに輸出された。その後、クウェートは2001年に24輌の追加発注を行なっている。さらに2007年には、サウジアラビアとPLZ-45の購入に関する契約に調印(購入数は1〜2個砲兵大隊分[1]で54両を調達[3])、2014年にはアルジェリアに50両[3]と中東・マグレブ諸国への輸出に成功している。クウェート輸出型はPLZ-45A1、サウジアラビア輸出型はPLZ-45A2、アルジェリア輸出型はPLZ-45A3という型式名が付与されている[4]。なお、PLZ-45は西側の砲システムに合わせて設計されているため、中国軍には少数のテスト用車輌を除いて配備されていない。

【性能】
PLZ-45は中国軍が使用しているどの無限軌道車体も使用しておらず、新規設計されたより高性能の車体を装備している。この車体は「第二世代履帯式共通シャーシ(第二代履帯式通用底盤)」と呼ばれるシャーシであり、各種自走砲の共通プラットフォームとして開発された[2]。装備している45口径の155mm榴弾砲は1980年代に、ベルギーのブリュッセルに本社を置くSpace Research Corporation (以下SRC社と表記)の技術協力を受けて開発したもので1986年に北京大学研究所とNORINCOの共同研究により完成した。SRC社は、世界的な弾道学の権威であったジェラルド・ブル(Gerald Vincent Bull)博士が創設した兵器設計コンサルタント会社であり、最長射程の野砲と革新的な長射程用砲弾の技術で知られていた。SRC社は、1970年代に当時の常識を覆す最大射程30kmというGC-45 155mm榴弾砲を開発、射程を延伸しつつ高い命中精度を確保したFRFB(Extend Range Full Bore)弾・ベースブリード弾などの技術と共に世界各国に売込みを行い、オーストリア、南アフリカ共和国、スペイン、タイ、ユーゴスラビア、イラクなどの国々がSRC社の技術の導入を行っていた。

45口径155mm砲は、まず牽引型のPLL-01 155mm榴弾砲(WA-021)が中国軍に試験採用された。1986年からは、自走榴弾砲型である91式155mm自走榴弾砲(PLZ-91)の開発が行われたが、PLZ-91の開発は技術的困難などから中断された。その後、NORINCOでは、PLZ-91の開発で得られたノウハウを基にして国際市場向けの自走榴弾砲の開発を行い、これがPLZ-45として実用化されることになった。

PLZ-45の装填装置は半自動(緊急時手動)で、砲がどんな俯仰角度になっていても砲弾の装填が可能。バースト射撃では毎分4〜5発、通常射撃では毎分2発で砲撃でき、最大射程は榴弾(HE弾)は24km、ERFB弾は30km、ERFBベースブリード弾は39kmとなっている。またロシアからの技術援助でレーザー誘導砲弾の開発にも成功しており、装甲車輌に対する効果的な砲撃も可能。

標準的なPLZ-45自走砲大隊は3個中隊(PLZ-45自走砲とPCZ-45弾薬車を各6輌、GCL-45前進観測車3輌、ZCL-45砲兵指揮車1輌)と本部中隊(702-D気象測定車、704-1対砲レーダー車、装甲回収車、射撃統制車など)から成る。

【発展型PLZ-45A4】
PLZ-45は2000年代に入ってから、中東・マグレブ地域の4か国への輸出を実現した。しかし、開発から30年近くが経ち、エンジン出力、自動装填装置やモジュール装薬の未採用、動力系統のシステム化の遅れ、情報化・自動化の水準など、各国の新世代155mm自走榴弾砲と比較すると性能面で遜色のある部分も増えてきた[5]。今後も輸出市場での販売を目指すのであれば時代に合わせたシステムのアップグレードが不可避となっていた。そのニーズに合わせて2019年から開発されたのが、PLZ-45の全面的な能力向上型となるPLZ-45A4である[4]。

・改修内容―車体・砲塔
PLZ-45A4は、車体や砲塔の基本設計には手を加えることなく、モジュール化された追加装備を装着することで能力向上を図るという設計方針が採用された[4]。これは、開発のリスクを下げるとともに、既に輸出されているPLZ-45もPLZ-45A4へのアップグレードを実施しやすくする効果が見込まれる。

砲塔には追加装甲を付加して防御力の改善を図っている。高温地域での運用を視野に入れて空調能力のさらなる強化を図ったのも特徴であり、空調装置・空調系統のパイプ、冷却用ファンを一体化したモジュールに収め、砲塔上部を蓋う形で搭載された。この大型モジュールは空調システムのほかに、工具箱や機関銃弾の収納スペースも兼ねている。操縦手席にも新たに空調を設け、これにより砲撃時には空調が使えなくなる問題を解決した[4]。砲塔後部には新たにバスルが追加され、合計5発の155mm弾と5発分の装薬を納めている[4]。車内配置も見直され、車内容積には変化はないものの人間工学的により最適化された[4]。

エンジン出力についても大きな変化はないが、自動変速装置を採用することで操縦手の負担軽減が図られている[4]。走行装置の平衡機はPLZ-45では鋳造だったのを鍛造に変更、履帯や転輪の素材を軽量で強度の強いものに変更するなど、細かな点での性能や信頼性改善に努めている[4]。砲塔後部に追加されたバスル、砲塔上面の大型モジュールは非金属素材を活用して軽量化に努めている[4]。これらの措置で、戦闘重量の増加を許容範囲内に収めることが出来たとしている[4]。

・改修内容―砲システム、情報システム
155mm榴弾砲は45口径のままであるが、駐退機をカバーで覆ったうえで、命中精度向上のため慣性誘導装置と砲口初速検知用レーダーが装備された。整備性の向上を意図して、砲身だけをクレーンで釣って前方に引き出す設計が採用され、これにより砲身交換に要する手間を省くことに成功している[4]。

PLZ-45A4は、NORINCOの新型155mm自走砲SH-8 155mm自走榴弾砲(PLZ-52)との52口径155mm榴弾砲で用いられる砲弾との互換性を有しており、SH-8/PLZ-52用に用いられる各種新型砲弾のすべてがしPLZ-45A4でも使用できる。砲弾の装填はPLZ-45と同じ半自動装填装置のままとされたが、装薬については既存の金属薬莢のみならずモジュール式装薬を用いることも可能となり、ユーザーの要望に応じた選択ができるようになった[4]。

副武装としてはPLZ-45と同じく、12.7mm重機関銃×1を砲塔左側キューポラに搭載。そのほか、砲塔正面両側に4連装発煙弾発射器×2を搭載しており、これは基本装甲の上に装着され、その上から付加装甲をかぶせる形を取っている。

現在戦争には不可欠となったネットワーク化への対応も行われ、射撃統制装置、操砲システム、指揮管制システム、防御システム、シャーシ情報システム、戦場管理システムなどは統合化され、各システムの情報を収集、処理、分配、表示することで、その性能をフルに発揮できるようになり、作戦効率を大幅に高めることに成功したとされる[4]。情報は、データリンクを介して各部隊、コマンドポストとの間でも共有され、統合作戦において効果を発揮する[4]。

PLZ-45A4の統合情報管制システムは、情報化、デジタル化、ネットワーク化、自動化、AI化に基づいて設計され、車載ネットワークで接合された各システムの情報は自動処理されて指揮・制御に生かされる[4]。通信制御ユニットは通信システムとデータリンク機器で構成されており、音声や指揮命令などを相互にやり取りする機能を備えている[4]。このほか、砲塔とシャーシの制御システム、車輛の状態や火砲のデータ等を蓄積・診断する自己診断システムなどが備わっている[4]。

PLZ-45A4は、PLZ-45の既存のユーザーが導入しやすいように、基本構造は維持しつつ、現在戦争に必要な新技術を盛り込んで、信頼性や運用性を改善することで総合的な能力向上を図ったアップグレード型だと評価し得る。砲身長を45口径のままに留めたのも同じ趣旨に基づくもので、52口径砲に換装することによる設計変更の手間や改修に要する費用増大を回避する措置だったと見られる。あえて52口径砲を必要とするユーザーには、NORINCOが販売するSH-8 155mm自走榴弾砲(PLZ-52)PCL-181型155mm装輪自走榴弾砲(PCL-181/SH-15)を提案する選択肢を取ることが出来るのも、PLZ-45A4に52口径砲を搭載しなかった理由になるだろう。

【注】
[1]サウジアラビアの購入数に関しては、「漢和防務評論」2008年8月号では1個大隊分27輌としており、Chinese Defence Todayでは2個大隊分54輌としている。
[2]中国武器大全「中国新型双35毫米自行高射炮」
[3]SIPRI Arms Transfers Database
[4]草莽「从A到A4 - 杨庆鸿总师谈PLZ45A4新型外贸155毫米自行加榴炮」『现代兵器』2022.07 (中国兵器工业集团有限公司)28-37ページ
[5]网易「PLZ45A4自行加榴炮首次亮相 采用模块化装药和自动装填 性能更强」(2022年2月16日) https://www.163.com/dy/article/H0AQI2NC055271PU.ht...

【参考資料】
戦車名鑑-現用編-(後藤仁、伊吹竜太郎、真出好一/株式会社コーエー)
Zafar Hasan「中国向沙烏地阿拉伯出口 - PLZ45 155毫米自走炮」『漢和防務評論』2008年8月号
Chinese Defence Today

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