日本周辺国の軍事兵器 - AGM-65空対地ミサイル「マーベリック」

▼台湾空軍のAGM-65BとF-5F


▼台湾空軍のF-16に搭載されたAGM-65G


性能緒元
 AGM-65BAGM-65G
全長249cm249cm
直径30.48cm30.48cm
重量207.90kg307kg
最大速度1,150km/h1,150km/h
射程3km25km
弾頭HEAT(56.25kg)遅発信管付きHE(136kg)
誘導方式テレビ誘導赤外線画像誘導方式

AGM-65マーベリック(Maverick)はAGM-12ブルパップの後継として、アメリカのHughes Aircraft社(現在はRaytheon社が権利を所有)で開発された戦術空対地ミサイルである。開発は1968年から開始され、1972年8月から部隊配備が開始された。AGM-65は戦車などの機動性の高い目標から、SAM陣地、トーチカ、橋梁、砲兵陣地への攻撃等の多様な戦術目標に対する攻撃が可能である。1991年の湾岸戦争では5,000発以上が発射され、85パーセントの命中率を記録している。

AGM-65は前部に誘導装置、その直後に弾頭部、後部が推進装置という構造になっている。各部はユニット化されており、容易に換装・改造を行うことが出来る。中央部にデルタ型の安定翼が4枚X字型に、その後方のロケットのノズル部に操舵翼がX字型に装着されている。AGM-65は空対地ミサイルとしては比較的小型なため、1つの機体に複数個を搭載することが可能で、戦術的柔軟性を高めている。AGM-65用のランチャーはLAU-117/A、LAU-88/A等がある。LAU-117/Aは1発、LAU-88/Aは並列レールで2〜3発を搭載する。

AGM-65の生産は1999年で終了している。これまで開発されたAGM-65シリーズは以下の通りである。
AGM-65A最初の生産型。誘導方式はテレビ誘導式で打ちっぱなし式ではなかったが、第4次中東戦争では82パーセントの命中精度を発揮。全長2.49m、直径30.48cm、重量210kg、射程3km、弾頭はWDU-20/B HEAT(56.25kg)。CEPは約1.5m
AGM-65Bテレビの解像能力を2倍にして、より遠くから照準を行うことを可能とした。目標画像を記録することで発射後の"打ちっぱなし"能力を獲得した。A/B型合わせて1975年から1978年にかけて35,000発が生産
AGM-65C空軍用に開発が開始されたが、のち海兵隊用に変更。セミアクティブレーザー誘導式を採用、弾頭を113kgのHEに換装。高コストのため少数の生産に留まる
AGM-65D誘導方式を赤外線画像誘導方式に変更し、全天候能力を獲得・ロケットモータを排煙の少ないThiokol TX-633 (SR114-TC-1)に換装。射程は約15kmに延伸される。1983年から就役
AGM-65D-2AGM-65Dのアップグレード型。命中精度と移動目標の追尾能力が向上
AGM-65E海兵隊が運用するセミアクティブレーザー誘導型。AGM-65Cの発展型。重量293kg、射程20km。1985年から運用開始
AGM-65F海軍で運用される対艦攻撃型
AGM-65G空軍で運用されるAGM-65Dのアップグレード型。新型のデジタル自動操縦装置を採用。1989年から就役
AGM-65G-2AGM-65Gのアップグレード型。命中精度と移動目標の追尾能力が向上
AGM-65H高温による赤外線誘導装置の不良を解消するために開発。既存のAGM-65A/Bのシーカーを赤外線CCDカメラに換装して生産。ただし夜間運用能力は有していない
AGM-65JAGM-65Kとほぼ同じ型で、海兵隊で使用される
AGM-65JXAGM-65Jの改良型
AGM-65Kアメリカ空軍向け。A、B型を改修して生産。弾頭を貫通式爆風破砕弾頭(136kg)に換装。誘導装置に赤外線CCDシーカーを採用し、射程を25kmに延長した。2003年のイラク戦争で初使用される
AGM-65L1990年代後半に開発に着手されたが、AGM-65(LOAL)の開発と統合される
AGM-65(LOAL)GPS誘導システムとデータリンク機能を搭載、悪天候時の運用能力を向上させると共に発射後の再ロックオンが可能となった。LOALはLock-on-after-Launchの略称
CATM-65E/F/H/KAGM-65E/F/H/Kの訓練用に開発された。航空機への搭載訓練に使用。
TGM-65A/B/D/F/GAGM-65A/B/D/F/Gの訓練型。発射訓練に用いる。空軍での名称はA/A37A-T9
DATM-65地上での取り扱い訓練に使用する。空軍ではA/E37A-T60、海軍ではDATM-65E/Fの名称で呼ばれる
RB75スウェーデンでのライセンス生産型の名称

台湾空軍では、1977年に500発のAGM-65Bをアメリカから輸入している。これはF-5E/Fに搭載され対地/対艦攻撃任務に使用される。2001年にはF-16用の装備として40発のAGM-65Gが発注され2003年に配備された。さらに2007年3月2日、アメリカ国防安全保障協力局(Defense Security Cooperation Agency)は台湾にFMS (Foreign Military Sales) 経由でAGM-65G2 235発、TGM-65G訓練用ミサイル4発などを部品供給、訓練、メンテナンスや機体の改修などの各種サービス込みで売却することを議会に報告した。この取引には、AIM-120C-7 218発なども含まれており、総額は4億2100万ドルになる。

【2009年10月10日追記】
2009年9月10日、アメリカ政府は台湾と韓国向けに266発のAGM-65DとAGM-65Gの輸出を承認した。輸出総額は合計7740万ドル[9]。

【参考資料】
[1]DefenceTalk.com "AMRAAM and Maverick Missiles for Taiwan"
[2]Designation-Systems.Net
[3]FAS
[4]Kojii.net
[5]Missile Index
[6]Raytheon公式サイト
[7]SIPRI Transfers and licensed production of major conventional weapons: Imports sorted by recipient. Deals with deliveries or orders made 1989-2004
[8]青葉山軍事図書館
[9]Defense Industry Daily「aytheon to Supply AGM-65 Maverick Missiles to Korea, Taiwan」(2009年9月14日)

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