日本周辺国の軍事兵器 - AH-1W攻撃ヘリコプター「コブラ」






性能緒元
重量4,953kg(最大離陸重量6,690kg)
全長17.68m
全幅14.63m(ローター直径)
全高4.44m
エンジンジェネラル・エレクトリックT-700-GE-401(1,285kW) ×2
最大速度281km/h
巡航速度278km/h
航続距離519km(増槽なし)
上昇限度4,220m
ホバリング上昇限度4,495m(地面効果内)、3,195m(地面効果外)
武装M197 20mm3砲身機関砲×1(750発)
 AGM-114 「ヘルファイア」対戦車ミサイル×8
 BGM-71 TOW対戦車ミサイル×8
 AIM-9サイドワインダー赤外線誘導空対空ミサイル×2
 M261 2.75in 19連装ロケット弾ポッド×2
乗員2名

ベルAH-1W「スーパーコブラ」は、台湾軍に最初に配備された攻撃ヘリコプターである。アメリカは1992年2月に、台湾に対してAH-1W 18機(24機オプション)とOH-58D「カイオワ」偵察ヘリコプター26機を売却することを決定した。これは、米中国交回復後初の台湾に対する「攻撃型兵器」の輸出であり、これ以降、アメリカは台湾に各種の新型兵器を引き渡すようになった。なお、台湾への兵器輸出に関するアメリカの政策変更は、1989年の天安門事件や冷戦の終結という国際環境の大きな変化が背景にある。初年度発注分の8機は1993年11月に台湾陸軍に配備が行われ、1997年までに合計42機が台湾陸軍に就役することになった。同年、AH-1Wの性能に満足した台湾陸軍は21機の追加調達を行うことを決定。追加調達分は2001年までに配備が完了した。台湾が調達したAH-1Wは合計63機だが、一機を事故で喪失しているため現在の就役数は62機となっている。

AH-1Wの原型となったのはアメリカ海兵隊向けに開発されたAH-1J/T「シーコブラ」攻撃ヘリコプターである。AH-1Jは、アメリカ陸軍で採用されていたAH-1G「ヒューイコブラ」をベースにして開発された海兵隊向けの攻撃ヘリである。最大の特徴は、洋上飛行での安全性向上のためにエンジンを双発化したことである。これにより、エンジントラブルや被弾時の機体の生存性が改善されると共に、より多くの装備を搭載することが可能となった。AH-1Jを改良し、エンジンを強化してBGM-71 TOW対戦車ミサイルの運用を可能としたAH-1Tに続いて登場したのが、AH-1W「スーパーコブラ」である。

AH-1WはAH-1Tの改良型として開発され、1983年に初飛行し、1985年から海兵隊への配備が開始された。機体形状は、基本的にはAH-1Tと大きな変化は無く、正面投影面積を減らすためのタンデム操縦席配置で、前席が銃手、後席に操縦士が搭乗するのも共通している。機体の主要部には防弾装甲が施されており、被弾時の被害を軽減する様になっている。台湾はAH-1Wの生存性を向上するために、導入後にAN/ALQ-144赤外線対策システムを導入すると共に、AN/ALE-39チャフ/フレア ディスペンサーを装備して、携行式地対空ミサイルなどの脅威に対する対策を行っている。AH-1Wは、能力向上のためエンジンを最大出力1,258kWのジェネラル・エレクトリック社製T-700-GE-700×2基に換装している。エンジンは並列に配置されギアトレインで連結されており、どちらか一方が使用不能になった場合、そのエンジンを切り離して残ったエンジンで飛行を継続できるのもAH-1J以来の特徴である。

兵装システムは、当初はAH-1Tの物を流用していたが、後の改良により、イスラエルIAI-タマム社製のNTSF-65夜間目標指示システムが装備された。これは、赤外線前方監視装置、レーザー照準/測距装置、CCD-TVカメラ、自動ボアサイト機能を統合化したものである。これにより、AH-1Wは全天候性能を手に入れると共にAGM-114 「ヘルファイア」対戦車ミサイルやAIM-9サイドワインダー空対空ミサイル、AGM-65「マーベリック」空対地ミサイルなど多様な兵器を運用することが可能となった。兵装は、胴体側面に取り付けられた小翼に搭載される。長距離飛行の際には小翼に落下式増槽を装備して航続距離を延伸することも可能。台湾はAH-1WとOH-58Dの導入に合わせて、1,000発のAGM-114ヘルファイアと約300発のAIM-9サイドワインダーを調達しており、1999年にはヘルファイアの改良型であるAGM-114K3 1「ヘルファイアII 」240発を追加調達している。AH-1Wは固定武装として、機首下部の兵装ターレットにM197 20mm3砲身機関砲を1挺装備している。

AH-1Wは陸軍空中騎兵旅(旅団)の攻撃ヘリコプター大隊に配備されて、その機動力を生かした快速打撃戦力と位置づけられている。台湾陸軍では、AH-1Wを中国軍の着上陸作戦に対する有力な反抗戦力と見なしており、対戦車戦闘だけでなく洋上目標に対する攻撃もその任務に取り込んでいる。現在、台湾軍ではAH-1Wに続く攻撃ヘリコプターの導入を計画しているが、新型ヘリコプターの調達後もAH-1W部隊は維持されることになっている。陸軍ではAH-1Wの戦力陳腐化を防ぐため、改良型ヘルファイアの運用能力付加や照準システムの改善、自己防御システムの導入などのアップグレードを継続的に行っている。

【参考資料】
『江畑謙介の戦争戦略論II-日本が軍事大国になる日』 1994年(江畑謙介/徳間書店)
「戦闘機年鑑2005-2006」(青木謙知/イカロス出版)
『台湾百種主戦装備大観』 2000年(杜文龍 編著/軍事科学出版社)
中華民国国防部公式サイト
Army Technology
EAGLET-イーグレット-
FAS
TaiwanAirPower.org

台湾陸軍

戦闘機年鑑(2005-2006) 青木 謙知 (著)/出版社: イカロス出版