日本周辺国の軍事兵器 - ASN-206多用途戦術無人偵察機(JWP-01)

▼ASN-206

▼ASN-206の陸軍砲兵科向けバージョンであるJWP-01


性能緒元
最大離陸重量222kg
全長5.2m(胴体長3.8m)
翼幅6m
エンジンHS-700空冷レシプロエンジン×1(51馬力)
最大速度210km/h
巡航航度150km/h
上昇限度5,000〜6,000m
航続距離300km(150km/s、高度2,000m)
連続飛行時間4〜8時間

ASN-206は、西北工業大学西安愛生技術集团公司が開発した軍民両用の多用途UAV(unmanned aerial vehicle:無人航空機)で低高度での偵察・測量・空中撮影などの用途に使用される[1]。

ASN-206の開発は1994年12月に完了し、1996年から量産が開始された[1]。開発では、航空通信や電子戦技術を専門とするイスラエルのTadiran Spectralink社の技術支援が行われたとも伝えられているが、正式には確認されていない[1]。

民生用としては、災害時の被害確認、捜索救難活動、パイプラインや送電線などの監視、空中撮影や地下資源探索などに活用される[2]。中国軍では、戦術URAV(unmanned reconnaissance aerial vehicle:無人偵察機)として、昼間/夜間の戦場監視、放射能測定、砲兵の弾着観測、国境地帯の警備などの任務に用いられる[1]。

【性能】
ASN-206は、双胴双尾翼形式で、胴体尾部にエンジンとプロペラを配置する推進式配置を採用している。この配置の利点は、機首部分に偵察用機材を搭載することにより良好な視界を確保できる点にある[1]。エンジンは51馬力のHS-700空冷4気筒ガソリンエンジンを搭載[1]。ASN-206は、東風EQ1240 6×6野戦トラックの荷台に搭載されたカタパルトに置かれて輸送される[2]。輸送の際には主翼は取り外されており、発射前に胴体に装着される。離陸の際には、カタパルトから補助ロケットモーターを利用して射出されるが、ロケットの噴煙を避けるために、発射台は真横に向けた状態にされる。着陸の際には胴体に取り付けられたパラシュートを使用[1]。胴体下部には着陸時の衝撃を和らげるためスキッドが装備されている。

ASN-206の機体制御は、自動制御システムと地上からの無線制御方式の併用で、事前に入力されたコースを自律飛行するだけでなく、飛行中のどの段階においても地上からの制御による操縦を行うことが可能[1]。

ASN-206は、機体前部に任務に応じて最大50kgまでのモジュール化された各種機材を搭載する。偵察任務の場合は、任務に応じて下記の機材を搭載する[1]。
モノクロもしくはカラーCCDカメラ
カラーCCDカメラ3基
前方監視赤外線装置(帯域8〜12マイクロメーター)
レーザー測距/目標指示器

これらの偵察機材は機首下部の旋回式ターレットに収納され、機体の進行方向に関わり無く任意の方向を見ることが可能[2]。ASN-206が撮影した静止画や動画は、昼夜を問わずリアルタイムで地上に送信される。この電子光学観測システムは上述のTadiran Spectralink社から購入したものであるとの情報もある[1]。

電子戦任務の場合は、JN-1102 EW/ECM装置を搭載して、敵の地上と空の間での20〜500MHzまでの通信に対して、必要に応じて傍受やジャミングを行う。JN-1102 EW/ECMシステムは、機体に搭載された傍受用システム、ジャミング用システムと地上の管制側の傍受・ジャミング制御システムから構成される[1]。

ASN-206無人機システムは、ASN-206無人機6〜10機、発射台を搭載したUAV輸送車輌、指揮管制車輌(通信/情報処理装置を搭載)、整備支援車輌(整備/機材試験機材を搭載)、無線中継車輌、電源車などで構成される[1][2][3]。UAV輸送車輌は上述の通り東風EQ1240 6×6野戦トラックを、指揮管制車輌と整備支援車輌は東風EQ-2018 6×6野戦トラックを、無線中継車輌はミニバス(車輌タイプ名不明)をシャーシに用いている。

ASN-206は、1990年代後半から中国軍への配備が開始された。ASN-206は中国軍から高く評価され、同機をベースとした様々な派生型が開発される事になる[1]。

【派生型一覧】
ASN-206基本型。1996年から生産を開始。
JWP-01ASN-206の陸軍砲兵科向けバージョン。陸軍の砲兵部隊で弾着観測や偵察に使用。
ASN-207ASN-206の発展型。軍の制式名はWZ-6(無偵-6)
BZK-006ASN-207の特殊部隊向けバージョン。
JWP-02ASN-207の砲兵部隊向けバージョン。
ASN-209ASN-206/207の発展型。
「銀鷹」UAVASN-209ベースの海軍向けUAV。遠距離の無線中継任務に従事する。
注:ASN-206シリーズの分類については情報ソースによって異なる解釈が多く、ここで挙げているのも確実ではない。

【参考資料】
[1]Chinese Defence Today「ASN-206 Unmanned Reconnaissance Aerial Vehicle」
[2]「ASN-206 reconnaissance UAV」(Yefim Gordon and Dimitriy Komissarov『Chinese Air Power』MIDLAND/2010)335〜337頁
[3]ASN-206多用途侦察无人机 空军世界

【関連項目】
ASN-207多用途戦術無人偵察機(JWP-02/BZK-006/WZ-6/無偵-6)
ASN-209多用途無人偵察機
「銀鷹」無人通信中継機
中国陸軍