日本周辺国の軍事兵器 - CM12戦車(M48A3改)

▼台湾陸軍のM48A1


▼CM12



性能緒元
重量48.5トン
全長9.37m
全幅3.64m
全高3.26m
エンジンテレダイン・コンチネンタル AVDS-1790-2CMRSディーゼル 750hp
最高速度48km/h
航続距離203km
武装M68A1 51口径105mmライフル砲×1(53発)
 12.7mm重機関銃×1(525発)
 7.62mm機関銃×2(3,000発)
 M239 60mm6連装発煙弾発射機×2
装甲車体前面120mm/砲塔前面114mm
乗員4名

アメリカの戦後第一世代の中戦車として開発されたM47は、ステレオ式測距器や弾道計算機など各種の新機軸を取り入れた意欲的な戦車であったが、朝鮮戦争の勃発を受けて開発を急いだことから技術的な成熟度という点では問題を残すこととなった。特に新装備のM12ステレオ式測距器は、戦車砲の発射の衝撃により誤差が生じるため、射撃のたびに再照準を行わなければならず、射撃速度が著しく低下するという欠陥が発生した。

これを受けて、アメリカ陸軍省兵器局は1950年11月にクライスラー社に対してM47の後継車両の開発を要請した。開発が始まったのは1950年10月から(当初はデトロイト戦車工廠で行われた)、早くも翌年の1951年12月には試作1号車が完成した。当時は朝鮮戦争の真っ只中でアメリカ陸軍はこの新型中戦車に大きな期待を抱いており、試作車完成を待たずにゼネラル・モータース社とフォード社に対して生産準備が命じられた。量産1号車は1952年7月に完成し、1954年5月にM48として制式化された。愛称は、「ジェネラル・パットンIII」。M48は朝鮮戦争には間に合わなかったものの、1950〜60年代のアメリカを代表する戦車として大量生産が行われ1975年の生産終了まで各型や派生型を含め11,730輌が生産され、うち6,000輌が西側各国に輸出された。

M47の車体はM46の物を流用したものであったが、M48の車体は新設計の全体的に避弾傾始を考慮した形状の車体が採用された。車体は防弾鋼の鋳造で製作されており、車体前面下部や底部は地雷の威力を低減させるため、舟形に溶接されている。車体内前部は操縦席で、中央は砲塔とバスケットがある戦闘室、その後方が機関室になっている。戦闘室と機械室の間には防火隔壁が設けられている。このレイアウトは続くM60戦車でも踏襲された。エンジンはM48A2までAV-1790系のガソリン・エンジンが搭載されていたが、A3型以降はAVDS-1790系のディーゼル・エンジンが搭載され燃費が改善するとともに被弾時の安全性も向上した。砲塔も車体と同じように避弾傾始を考慮した亀甲型で、防弾鋼の鋳造製。主砲はA3型までM41 48口径90mmライフル砲が搭載され、A4・A5型はイギリスが開発したL7系のM68 51口径105mmライフル砲が搭載された。M41 90mm砲は徹甲弾を用いた場合、射距離1,000mで150mm(RHA:均質圧延鋼板換算)の装甲板を貫徹でき、発射速度は毎分8〜9発。またM68 105mm砲はAPDS弾(装弾筒付徹甲弾)を用いた場合、射距離1,000mで300mmの装甲板を貫徹でき、発射速度は毎分6〜8発である。M47戦車で問題のあった測距器は発砲時の衝撃を避けるために砲塔中央部に装備され、A2型まではステレオ式のT46E1だったが、A3型以降は単眼合致式のM17が装備された。M17で得られた測距データは砲手若しくは車長によって弾道計算機に入力され、そこから射撃緒元が算出されて主砲の俯仰角度が調整される。

【台湾におけるM48】
台湾に対するM48の供給は1973年から開始された[1]。アメリカから調達したM48A1/A2の台数は、一説によるとM48A1 286両、M48A2 23両。[1]だとM48A1 309両とされる。それまでM24やM41といった軽戦車を装備していた台湾陸軍は、M48の調達により初めて90mm戦車砲を搭載した中戦車を配備することに成功し、装甲部隊の戦力を大幅に強化することができた。1980年までに五個装甲独立旅所属の7個戦車営(大隊に相当)に309両のM48A1が配備された[1]。1982年6月から、既存のM48A1をM48A3水準にアップグレードする作業に着手し、M48は1980年代を通じて台湾陸軍の装甲部隊の中核を占め続けた[1]。

1990年代に入ると、台湾軍はM48A3に、台湾が開発したCM11戦車「勇虎」(M48H)に準じた近代化改修を施すことを決定した。これは台湾軍のAFV近代化計画の一環であり、この計画の四番目のAFVであることを示す「万乗四号車」の計画名称が与えられた[1]。台湾軍ではこの近代化改修型M48に「CM12」という制式名称を付与している。なお、CM12は台湾以外の国の文献ではM48A5と記述されることがあるが、改修内容はM48A5とは差異がありCM12をM48A5と見なすことは出来ない。

CM12の改修での主な変更点は、射撃統制システムの近代化、主砲の105mm砲への換装、エンジンの換装である。外見上の変化は、砲塔両側面の発煙弾発射機がイギリス製のものになっている事、車長用のキューポラが背の低いイスラエル製のウルダン型に変更された事、砲塔後部にM1A1と同型の高性能な環境センサーが装備されている事などが挙げられる。主砲は90mm砲から、CM11「勇虎」と同じM68A1 105mmライフル砲に換装された。副武装は主砲同軸及び装填手ハッチに取り付けられた7.62mm機関銃、車長用キューポラに装備された12.7mm重機関銃となっている。

射撃統制システムもCM11「勇虎」と同じ物に換装された。台湾はCM11「勇虎」の生産に当たって、550セットの射撃統制装置を調達し、そのうち100セットがCM12の改修に回された。その後さらに150セットが新規生産されCM12への改修に使用されたとも伝えられるが、参考資料[1]ではCM12改修を受けた車両は100両のみとしている。射撃統制システムは全て台湾国産で、その性能はM60を凌ぎM1戦車と同等といわれている。砲手用には赤外線暗視装置を組み込んだAN/VGS-2照準器が用意され、AN/GVS-5レーザー測距器、M1と同級の高度な弾道計算機、環境センサー、2軸の砲安定装置(M60は1軸)によりきわめて高い命中率を有している。AN/GVS-5の最大測距距離は約8,000m。行進間射撃が可能であり、砲手が目標に指向している際、車長はより脅威度の高い目標を発見した場合に砲の操作を優先して行うことができる、オーバーライド機構も導入されている。操縦手用ハッチには3基のペリスコープが設けられ、中央の1基はAN/VVS-2夜間暗視装置に換える事ができる。射撃統制システムの近代化により、CM12は初期の西側第3世代戦車に匹敵する命中精度を獲得した(初弾命中率は2000m以内の目標であれば82%)。またCM11「勇虎」と共通の射撃統制システムを採用したことで、乗員の訓練や車両転換も容易になったことも大きなメリットである。

CM12のエンジンは、CM11やM60A3戦車と同じ出力750hpのテレダイン・コンチネンタル AVDS-1790-2Cディーゼルが搭載された。車体重量がCM-11に比べて軽量なため出力/重量比はCM11よりも高い数値を得ている。出力/重量比は、CM11が15.2、CM12が15.5。ただし、エンジン換装により原型に比べ機動力は向上したが、車内に搭載可能な燃料の量は657リットルとCM11(1463リットル)の半分にも満たないため、航続距離もCM11(450km)の半分以下の203kmに留まっている。足回りの変更点としては、履帯がT142に換装されている。

CM12はこれらの改修によって、CM11「勇虎」とほぼ同等の性能を得ることに成功した。ただし、車体はM48のままなので、M60A3の車体を使用しているCM11「勇虎」に比べて車体の装甲厚で劣っており、燃料搭載量もCM11「勇虎」の半分に留まっている。なお、CM12の車体前面の形状はM48の舟型形状を引き継いでおり、CM11「勇虎」とCM12を見分けるポイントになっている。CM12は各種コンポーネントをCM11「勇虎」やM60A3と共通化しており、これは整備や訓練の上で見逃せない利点であった。

CM12への近代化改修は1992年から開始され、まず100両が改修を実施された。その後、アメリカからのM60A3の導入が開始されたことに伴い1996年からM48シリーズの退役が開始され、2000年までにCM12を含む全てのM48が現役を退くこととなった[1]。第一線部隊から引き揚げられたM48の一部は、操縦装置をハンドル式から操向レバー式に代えた上でM60A3やCM11に乗車予定の戦車兵の操縦訓練車両に改造された。これは現役戦車を訓練任務で消耗させることを防ぐための措置であり12両のM48がこの改修を受けて配備が行われた[1]。M48の中でも近代化改修を受けた100両のCM12は、予備装備としてモスボール保管される。これは整備維持コストの節約、戦車兵の人数不足などに対処するための措置でもあるとされる[2]。

【参考資料】
[1]坦克贏「國軍M48戰車服役始末」『尖端科技軍事雜誌』2014.03(第355期)24〜32ページ
[2]自由時報電子報「妥善率不佳 CM12戰車擴大封存」(2018年2月21日/記者羅添斌/台北報導)https://news.ltn.com.tw/news/politics/paper/117793...

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