日本周辺国の軍事兵器 - CM31装輪装甲車




捷羚SAM 4連装発射機を搭載したCM31(レーダー未搭載、試作のみ。)


性能緒元
重量15.5トン
全長6.45m
全幅2.7m
全高2.2m
エンジンCummins 64TA8.3ディーゼル 350hp
最高速度100km/h
航続距離600km/h
武装12.7mm重機関銃×1、もしくはMK19 40mm擲弾発射機×1
装甲耐14.5mm機関銃弾
乗員2+10名

台湾は1981年にアメリカからV-150四輪装甲車を購入したが、この装甲車は車体が小さいために歩兵7名しか乗車できず、砲塔の武装も貧弱だった。これに不満を持った台湾当局は1980年代からアイルランドのTTL社(Timoney Technology Limited of Ireland)の協力を得て新型装輪装甲車の開発を開始、1992年に2輌の試作車が完成して、1997年の台湾国際航空展示会で初めて公開された。CM31と呼ばれるこの装甲車は、CM32「雲豹」八輪装甲車を製作する為の貴重なデータを多く提供した。

CM31の全体の構成はキャデラック・ゲージ社のLAV-300装甲車やベルギーのSIBMAS装甲車と似ている。車体は防弾圧延鋼板の溶接構造で全体に傾斜がつけられており、優れた被弾径始によって14.5mm機関銃弾を全周防御する事が出来る。また車体は水密構造になっていて、後部のスクリューで浮上航行する事が可能。その際は車体前部の水切板を前方に展開する。足回りは6輪独立懸架式で、タイヤの空気圧はデジタル制御されており走行性能は極めて優秀だと言われている。またタイヤが損傷してもある程度走行する事が可能だ。CM31の機動性は高く、最高時速100km/h、航続距離600km、登坂角45%、越壕力1.6m、超堤力0.55mとなっている。車体内部の空間は広く、完全武装した10名の兵士を載せる事が出来る。車体側面には左右それぞれ3つずつの乗車歩兵用ペリスコープとガンポートが設けられていて、また上部のハッチからも4名が身を乗り出して外に射撃できるようになっている。乗降は後部の動力ハッチ、若しくは側面のハッチから行う。武装は12.7mm重機関銃、もしくはMK19 40mm擲弾発射機1挺。車体両側にCM21装軌式装甲車と同じ発煙弾4連発射機を装備している。

台湾軍はモワグ社のピラーニャ、シュタイアー・ダイムラー・プーフ社のパンドゥール、ザビエム・ルノー社のVABなどと共に、CM31の様々なテストを2ヶ月かけて行った。そこで得られた装甲兵学校の評価はパンドゥールが最高得点で、VABが次点、CM31は最下位だったという。CM31の評価はVABの半分にも及ばなかったようだ。機動性は優秀だが、装輪車輌開発の経験不足による不合理な点がCM31の評価に悪影響を及ぼしている。例えば乗車歩兵用のガンポートはボール状のマウントではなく、ただ孔を可動式の板で塞いでいるだけで、これでは車内の機密性は保てずNBC防護システムを装備できない。また車内の歩兵用座席は対面型になっているため、ガンポートを使用するには不便だ。車載重量は僅か2トンしかなく、より強力な装備(例えば機関砲を持つ小型砲塔など)を搭載する事ができない。車体後部のハッチは油圧式でなく鋼線張力式で、稼動が遅く壊れやすい等々・・・。1997年に展示されたCM31は様々な改良が行われたもので、天剣1型SAMなども搭載できるようになった。しかしより能力の高いCM32装輪装甲車「雲豹」が開発される事が決定したため、CM31は量産される事は無かった。CM31の試作車は台北の憲兵隊が使用している。

【参考資料】
『台湾百種主戦装備大観』(杜文龍 編著/軍事科学出版社/2000年)
軍事研究
戦車名鑑現用編
軍武狂人夢

台湾陸軍