日本周辺国の軍事兵器 - GDF002 35mm連装機関砲

▼GDF002 35mm連装機関砲。


▼35mm機関砲の管制を行うスカイガード射撃統制システム。



性能緒元
重量6,700kg(牽引状態)、6,300kg(戦闘状態) 
全長7,870mm(牽引状態)、8,830mm(戦闘状態) 
全幅2,260mm(牽引状態)、4,490mm(戦闘状態)
全高2.610mm(牽引状態)、1,710mm(戦闘状態) 
砲身長4,424mm
武装Oerlikon 90口径35mm機関砲×2(238発×2)
砲口初速1,175m/秒
発射速度550発/分(一門あたり)
使用可能砲弾HEI-T(曳光焼夷榴弾)、HEI(焼夷榴弾)、SAPHEI-T(半徹甲曳光焼夷榴弾)、演習弾など。
最大射高4,000m
有効射高3,000m
上下射角-5〜+92度
左右射角360度
砲員3名
(注)「天武7号」能力向上改修によりAHEAD弾の運用能力が新たに付与された

1950年代、スイスのエリコン・コントラヴェス社(現在はラインメタル社の傘下)はスイス陸軍の防空火器として1ZLA/353MK牽引式35mm連装機関砲を開発した。1959年に完成したこの機関砲は2ZAL/353MKとして量産化された。この機関砲は後にGDF001と改称され、エリコン社を代表する大口径対空機関砲として世界各国で採用されるGDFシリーズ35mm機関砲の開祖となった砲である。GDFシリーズは、様々な改造を加えられつつ現在にいたるまで生産を継続しており、世界の20ヶ国を越える国々に採用されるベストセラー機関砲となった。

台湾では空港などの要地防空任務に当てるため、1980年代にGDF002 35mm機関砲をスカイガード射撃統制システムと共に導入した。GDF-002は、1970年代に開発されたGDFシリーズ第二世代の機関砲で、目標データの処理をアナログ式からデジタル式に変更したタイプである。なお、GDF002は中国軍でも90式35mm連装機関砲として導入されている。

GDF002の主要スペックは以下の通り。重量6,700kg(牽引状態)、6,300kg(戦闘状態)、全長7,870mm(牽引状態)、8,830mm(戦闘状態)、全幅2,260mm(牽引状態)、4,490mm(戦闘状態)、全高2.610mm(牽引状態)、1,710mm(戦闘状態)。武装Oerlikon 90口径35mm機関砲×2基、口径35mm、砲身長4,424mm(90口径)、弾薬数は1門につき238発。砲口初速1,175m/秒、発射速度は550発/分(一門あたり)。使用可能砲弾はHEI-T(曳光焼夷榴弾)、HEI(焼夷榴弾)、SAPHEI-T(半徹甲曳光焼夷榴弾)、演習弾など。最大射高4,000m、有効射高3,000m、上下射角-5〜+92度、左右射角360度。GDF002は野戦トラックなどの車両により牽引される。砲架の前後には牽引用に4つの車輪が装備されているが、射撃時には車輪は外側に跳ね上げられ砲架は4基の安定脚で支えられる。行軍状態から射撃可能な態勢になるまでの時間は、操作要員3名の場合1.5分、一名の場合でも2.5分で展開が可能。砲の操作要員は一門につき通常砲手1名と装弾手2名の計3名。

目標の発見と追尾、砲の射撃統制は捜索用・追尾用レーダー、各種光学照準機器を備えたスカイガード射撃統制システムにより行われ、各砲架はスカイガードにより自動制御されるが、各砲架に搭載されたフェランティGSAMK3光学照準装置によって目標の照準を行う事も可能である。目標の発見から射撃までに要する時間は4.5秒、2秒以内に40発の砲弾を目標に打ち込む能力を有している。

台湾では、GDF002とアメリカから輸入したMIM-7F「スパロー」地対空ミサイル・システムをスカイガード射撃統制システムにより統合運用する「スカイガード防空システム」を採用している。このシステムは、長い射程を有するミサイルと電子妨害に強くリアクションタイムの少ない機関砲を組み合わせることで、強固な防空体制を構築するのが特徴である。

台湾空軍は現在、3個対空砲連隊が4個スカイガード部隊を保有している。部隊一個につき、GDF002×2基、MIM-7F「スパロー」4連装発射機×2基、スカイガード射撃統制システム×1基、電源車などで構成されている。スカイガード部隊は、空軍基地やレーダーサイトなど重要地点の拠点防空を担っている[7]。

【「天武7号」能力向上計画について】
台湾空軍では、2000年にGDF002の近代化案を提示していたが、民進党政府になって台湾とシンガポールが共同開発したT92 40mm機関砲によってGDF002を代替することに決定していたため、近代化案は中止された[4]。

その後、T92の開発が難航した事により、スカイガード防空システムの運用を当面継続する必要が生じたため能力向上計画が再浮上。2009年から「天武7号」計画の名称で、30億8000万新台湾圓を投じて2012年までに台湾空軍の全てのスカイガード防空システムの能力向上改修を実施する事が決定された[5]。

「天武7号」計画では、既存のGDF002については、改良型のGDF006水準にアップグレードされる。改修により機関砲一門あたりの発射速度は50〜70発増加する[7]。

これに加えて、エリコン・コントラヴェス社が開発した調整破片型ABM(Air Burst Munition)弾である35mm AHEAD(Advanced Hit Efficiency And Destruction)弾の運用能力が付与される。ABM弾は、従来の近接信管とは異なり、各弾丸の正確な空中での起爆位置を調整する事により目標付近に濃密な弾幕を形成する。これにより、目標打撃力を増すと共に付帯的被害を軽減する事を狙った先進砲弾の1種[6]。AHEADシステムは、対空レーダーで目標を捕捉、追尾してその諸元を砲側の弾道計算機に伝達。AHEAD弾を発射すると砲口部にあるコイル手前2組で1発ごとに弾丸の通過時間を計測。これにより弾道計算機は各弾丸の信管を作動させる時限秒時を計算し、3つめのコイルで各弾丸の信管に起爆時限秒時を伝達するシステム[6]。弾丸は、電子時限信管とデータ受信コイルを弾底部に配置して、径5.85mm、重量3.3gのタングステン弾子152発を内蔵。プログラムされた位置で0.9gの火薬が爆発すると、タングステン弾子が前方に円錐形に拡散して目標を包み込む。AHEAD弾は、対地目標に対しても有効。対地攻撃の場合は、レーザー測遠器で目標までの距離を測定してその諸元を弾道計算機に送って、最適な位置で起爆する様に信管作動時間を算出・入力する[6]。

射撃統制システムについてもアップグレードが実施され、AHEAD弾に対応した改修のほか、照準器をフェランティ社のものに変更、システムの作業工程の簡易化により、目標の探知から迎撃までに要する時間の短縮を実現する[7]。

【参考資料】
[1]週刊ワールド・ウエポンNo.97 2004年8月(デアゴスティーニ・ジャパン)
[2]『台湾百種主戦装備大観』 2000年 (杜文龍:編著/軍事科学出版社)
[3]ラインメタル社公式サイト
[4]聨合新聞網「軍備問題>>研発40防砲 層層卡関」(聨合晩報/高凌雲/2008年9月2日)
[5]華夏經緯網「臺軍“天兵”系統簡介」(2012年4月19日)
[6]山下一郎「技術者解説 対地・対空機関砲/基本弾薬/先進砲弾/自衛火器 装甲車の火力技術」(『軍事研究2008年11月号別冊 新兵器最前線シリーズ7 陸戦の新主役ハイパー装輪装甲車』/ジャパン・ミリタリー・レビュー)32〜51ページ
[7]華夏經緯網「臺軍"天兵"防空系統料2012年全部完成升級」(2011年12月29日)

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