日本周辺国の軍事兵器 - HN-6携帯対空ミサイル(紅纓6/FN-6/飛弩6)

▼HN-6。アンテナ状の機材は敵味方識別装置。

▼HN-6の発射シーン。

▼HN-6の発射機とミサイル本体。下の写真では発射機先端にセンサー保護カバーが付いた状態。



性能緒元
全長1.496m
直径0.71m
全備重量17kg
ミサイル重量10.77kg
最大速度600m/s
射程500〜3,800m
高度15〜5,500m
誘導方式全方位赤外線誘導

HN-6/HY-6(紅纓6。輸出名はFN-6/飛弩6)は1990年代末期に登場した中国第二世代の携帯地対空ミサイル。開発は中国精密機械進出口公司(China National Precision Machinery Import&Export Corporation:CNPMIEC)によって行われた。紅纓の中国語発音はHong Yingとなるが、略称はHYよりもHNの方がよく使用されている。おそらく対艦ミサイルの海鷹(Hai Ying)の略称「HY」との混同を避ける狙いがあると思われる。

【性能】
HN-6は主に低高度からの経空脅威に対抗する事を目標とした装備であり、兵士一名での携帯、運用が可能。HN-6は、ミサイル本体、ミサイルランチャー、光学照準サイト、敵味方識別装置、バッテリー、赤外線シーカー冷却用ガスボンベ等から構成される[1]。システム全体の重量は17kg。バッテリーと冷却用ボンベは連続2時間の運用が可能で、1つのミサイルに2セット用意されている[3]。

ミサイルのサイズは、全長1.495m、直径0.71m、重量10.77kg。ミサイルは、先端部に赤外線シーカー、その後部に引き込み式の制御翼と炸薬部分、中央部が固体燃料とロケットモーターとなっており、尾部には4枚の折り畳み式安定翼とアシスト用ロケットモーターが装備されている。ミサイルはランチャーに収納されており、メンテナンスフリーを実現している。

ミサイルを発射する際には、ランチャー先端部の保護キャップを外し、目標を光学サイトで照準して敵味方識別装置で友軍機でないことを確認後、赤外線シーカーを作動させて、ミサイルを発射する。射撃用引き金を引くと、後炎流の少ないアシスト用ロケットモーターが作動しミサイルが発射される。射撃までに要する時間は最短4秒。発射後、30mほど飛翔するとミサイル本体の固体燃料ロケットモーターが作動し、最高速度600m/sに加速される。これはロケットモーターの噴流炎が射手に被害を与えるのを防止するための機能である。HN-6の誘導方式は赤外線誘導方式を採用している。ミサイル尖端の赤外線センサーには4セルの中距離赤外線探知装置が組み込まれている。赤外線シーカーには優れた目標処理能力を有するフル・デジタル技術が採用されており、ジャミング対応、目標判断、目標への誘導は全てコンピュータにより自動処理される。HN-6の赤外線シーカーは全方位攻撃能力を有しており、フレアーなどの妨害装置への抵抗力が強く、雲や太陽、地上の高熱目標などに誤誘導され難い、優れた目標判別能力を有しているとされる。

ミサイルの射程は最小500m、最大3,800m。射撃可能高度は最小15m、最大5,500m。正面からの照準では速度360m/sまでの、後方からの照準の場合は速度300m/sまでの目標への攻撃が可能。ミサイル1発当りの目標撃破率は70%。運用可能温度は-40度から+50度まで。

HN-6を装備する防空小/分隊は、射手、偵察員から構成され、偵察員は自身での目標発見に加えて、通信・空中情報システム、前線でのレーダー捜索システムからの情報をデジタルデータリンクシステムを通じて入手して、射手に目標情報を知らせる。射手は偵察員から得た目標の大まかな方位を元にして、ミサイルの赤外線センサーを作動させ発射準備を行う。目標を確認後、センサーで捕捉して射程範囲内に入った時点でミサイルを発射する。事前に目標の飛来情報を得ている場合には、7,000m前後で目標を発見し、5,000m前後で撃破が可能[3]。分隊単独での対空戦闘、防空システムの中に統合された運用のいずれも可能。

HN-6の派生型としては、HN-6の4連装発射機×2基を4輪駆動車に搭載したFB-6A自走対空ミサイルシステム、HN-6の発展型であるFN-16等が開発されている。

【配備状況】
HN-6の設計は成功したものと評価された模様で、これまでに30,000発が中国陸軍に配備されている[6]。

CNPMIECはHN-6を「FN-6(飛弩6)」の輸出名称で各国への売込みを図ってており、これまでにカンボジア、マレーシア、ミャンマー、パキスタン、ペルー、スーダンへの輸出が実現している[4][6][7]。パキスタンでは中国との間でFN-6の輸入と自国でのライセンス生産に向けた交渉を実施している[5]。さらに、内戦中のシリアにおいてシリア政府軍と交戦中の自由シリア軍(Free Syrian Army:FSA)がFN-6を使用しているのが確認されている[7][8]。FN-6はシリア政府軍では運用されておらず、このミサイルがいかなるルートで自由シリア軍に供給されたのかは不明[8]。

2012年にはジンバブエがFB-6A自走対空ミサイルシステム一個中隊分の購入を決定[6]。引渡しは2013年に開始される予定。ジンバブエはFB-6Aの導入により野戦防空能力の改善を目指している。FB-6Aはタンザニア陸軍でも採用が確認されている[]

【参考資料】
[1]「CNPMIEC FN-6 low-altitude surface-to-air missile system Development」(『Jane’s Land-Based Air Defence 2006-2007』)
[2]CNPMIECパンフレット
[3]中華網「国産飛鷹-6防空導弾遠勝法国“西北風”」(2007年4月3日)
[4]Chinese Defence Today「HongYing 6 (FN-6) Shoulder-Fired Air Defence Missile」
[5]「巴基斯坦進口FN6肩扛式地対空導弾」(『漢和防務評論』2009年6月号)
[6]Zafar Hassan「中国陸軍接収FN-16肩打式地対空導弾」(『漢和防務評論』2013年3月号)43ページ
[7]GLOBAL NEWS「Jane's: FN-6 portable missile inflow of Syria's anti-government armed」(2013年2月28日)
[8]Defense News「Success of Chinese Missiles in Syria To Boost Image of Country’s Weapons, Paper Says」(2013年3月14日)
[9]Defence & Security Intelligence & Analysis - IHS Jane's 360「Tanzania parades new Chinese kit」(Stijn Mitzer/2014年5月14日)

FN-16携帯対空ミサイル(飛弩16)
中国陸軍