日本周辺国の軍事兵器 - HQ-17中距離地対空ミサイル(紅旗17/トールM1)

▼CCTVで報道された広州軍区第41集団軍防空団(連隊に相当)所属のHQ-17[6][7]。捜索レーダーはHQ-7地対空ミサイル・システムBの捜索レーダー車輌のレーダーと類似した形状


HQ-17地対空ミサイル(紅旗17)は、中国がロシアから輸入したトールM1短距離地対空ミサイル・システムをリバースエンジニアリングによりノンライセンスで国産化したもの。

中国が購入したトールM1は二個大隊分であったが、さらに10個大隊分の需要があるとロシア側に伝えられていた[1]。中国は、さらに多くのトールM1を輸入するためにロシアとの間でトールM1の追加購入に関する協議を行っていたが、1999年以降協議は停止状態になった[1]。同時期にトールM1のライセンス生産に関する協議も行われていたが、こちらについてもロシアからの承認は得られなかった[2]。ロシア側では、1999年頃から中国がトールM1のコピーに着手したと認識し、2001年には協議が完全に中断するに至った[1]。トールM1の国産化という話題は導入直後から話題に上っており2005年頃には量産化されたとの話も出ていたが[3]。この「中国版トールM1」は、HQ-17(紅旗17)の名称が付与されて量産化に向けた作業が続けられ、2010年代に入ると部隊での運用が確認されるようになった。

トールM1とHQ-17の相違点としては、これまでに下記の識別ポイントが指摘されている。
捜索レーダーの変更HQ-7地対空ミサイル・システムBの捜索レーダー車輌のレーダーに似たものに変更[6]
ヘッドライトの変更車体正面左右のヘッドライトが、丸型から方形に変更
排気口の形状変化トールM1では車体左側後部に排気口が配置されていたが、HQ-17ではこの位置には排気口は存在しない[3]
排気口の変化については、エンジンの変更を実施したためではないかと推測されている。

HQ-17は、2011年には広州軍区の演習で07式35mm自走高射機関砲(PGZ-07)と一緒に移動中の所を撮影され、既に部隊運用が行われていることが確認された[4]。これまでに、広州軍区と瀋陽軍区でHQ-17が撮影されているが、両方ともトールM1が配備されていない軍区[5]。

HQ-17は装軌車両中心の重型合成旅に配備されている。HQ-17の技術を基にして、装輪車両中心の中型合成旅向け車両として開発されたのがHQ-17A中距離地対空ミサイル(紅旗17A/FM-2000/HQ-17AE)となる。

▼左:ロシア軍のトールM1。右:HQ-17とされる写真。トールM1の車体後部の赤丸部分にある横長の排気口が、HQ-17では存在しない事が外観上の相違点


▼左:中国軍のトールM1のターレット写真。右:HQ-17のターレット。捜索レーダーの形状の違いが確認できる


【参考史料】
[1]平可夫「中国展示HQ17地対空導弾」(『漢和防務評論』2012年3月号)37ページ
[2]Вестник Мордовии「Еще один факт оружейного пиратства китайцы скопировали российский зенитный Тор」(2012年9月18日)
[3]FAS(Federation of American Sientists)「SA-15 GAUNTLET / 9K331 Tor」
[4]新浪網「广州军区新型自行高炮与HQ-17防空导弹同时亮相」
[5]胡写龍談「某師開始列装HQ-17」(2013年6月23日)
[6]Вестник Мордовии「Китай пиратски скопировал российский ЗРК "Тор"」(2014年4月14日)
[7]飛揚軍事「广州军区41集团军师属防空团国产红旗-17地空导弹今晚亮相了」(2014年4月10日)

【関連事項】
9K331「トールM1」地対空ミサイル(中国)
HQ-17A中距離地対空ミサイル(紅旗17A/FM-2000/HQ-17AE)

中国陸軍