日本周辺国の軍事兵器 - HQ-16艦対空ミサイル(紅旗16)

▼054A型フリゲイトの艦橋直前に配置されているのがHQ-16用のVLS。

▼試験艦#891「畢昇」でのHQ-16の試験発射シーン。VLSのセル内でモーターに点火するホット・ローンチ方式であることが分かる。


性能緒元
全長5.55m
直径40cm
翼幅86cm
重量715kg
弾頭重量70kg
最大速度マッハ4
最大荷重24G
射程25kmもしくは42km
誘導方式セミアクティブ・レーダー誘導
搭載艦艇054A型フリゲイト

HQ-16(HHQ-16/紅旗16)艦対空ミサイルは、中国がロシアの9M38M2シュチーリ1艦対空ミサイル(SA-N-12グリズリー)を基礎として開発した中距離対空ミサイルで、試験艦#891「畢昇」での運用試験を経た後、2008年初めに1番艦が就役した中国海軍最新のフリゲイト054A型の主要防空兵装として採用された[1]。

HQ-16は、陸軍の防空部隊で運用されているHQ-16A中距離地対空ミサイル(紅旗16A/LY-80/猟鷹80) と技術を共用しており、「次世代海陸共通中射程防空ミサイル(新一代海陸通用中程防空導弾)」として当初から艦対空型(HQ-16A)と地対空型(HQ-16)を実用化することを想定して開発が行われたとされている[2][3]。そのため、「海紅旗/HHQ」という名称は使われていないとされる.

【性能】
HQ-16の主要項目は以下の通り。全長5.5m、直径40cm、翼幅86cm、ミサイル重量715kg。弾道部重量は70kgで、半径18m以内の目標を撃破可能[1]。ミサイルの最大射程は25km[4]もしくは42km[1]、射高10〜17,000m、最大速度マッハ4、最大荷重24G(HQ-16の性能についてはまだ明確になっておらず、複数の説が存在する。本稿の諸元は基本的に[1]に依拠する。)。

HQ-16は、特に超低空から飛来する目標や、ポップアップ式対艦ミサイルに対する迎撃能力を重視しており、シークラッターの強い低空域での目標探知能力の向上が図られている。一目標に対して二発のミサイルを発射した場合、目標が航空機であれば96%の、対艦ミサイルに対しては86%の目標撃破確立を有しているとされる[1]。航空機や対艦ミサイル以外に、UAV、巡航ミサイル、ヘリコプター、戦術弾道弾などの目標に対する迎撃能力が付与されている。

HQ-16は、発射セル8基を方形に配置して組み合わせたVLS(Vartical Lunch System:垂直発射システム)に装填されている。054A型の場合、32セルのHQ-16用VLSを艦橋直前の区画に搭載している。中国海軍では、HHQ-9A艦対空ミサイル(HQ-9A/海紅旗9A/紅旗9A)、5V55RM艦対空ミサイル(S-300F/リフM/SA-N-6グランブル)に続く、3つめの垂直発射式艦対空ミサイルになるが、前二者がVLSからガス圧で打ち上げた後にロケットモーターに点火するコールド・ローンチ方式を採用しているのに対して、HQ-16はVLS内部でモーターに点火するホット・ローンチ方式を採用している点が異なる[1]。ロシアも9M-38Mの改良型9M317MEミサイル(シュチーリ1)でVLSを採用しているが、HQ-16のVLSとは形状が異なることから、HQ-16のVLSは中国で開発された物と推測される[5]。

ミサイルの誘導方式はセミアクティブ・レーダー誘導方式を採用している。原型となった9M38M2は、中間誘導に慣性航法方式を採用しているが、HQ-16が慣性航法を採用しているかは不明[6]。目標の追尾とミサイルの管制誘導は、HQ-16の原型となった9M38M2と同じく、MR-90オリェーフ(NATOコード:Front Dome/フロントドーム)レーダーによって行われる[1][6][7]。MR-90は、054A型フリゲイトに合計4基が装備されており、艦の全方位に対して死角を作らないように配置されている。MR-90を4基装備している054A型フリゲイトは理論上、同時に4つの航空目標にミサイルを指向できることになる(実際には各レーダーの死角があるので不可能な場合もあるが)[1]。

【今後の展望】
HQ-16は、HHQ-9A艦対空ミサイルに次ぐ中国産エリア・ディフェンス用艦対空ミサイルであり、054A型フリゲイトは、HQ-16は搭載によって中国海軍のフリゲイトとしては初めてエリア・ディフェンス能力を獲得することに成功した。

HQ-16の運用は、長射程エリア・ディフェンスミサイルのHHQ-9やS-300F、ポイント・ディフェンス担当のHQ-7艦対空ミサイル(紅旗7/FM-80/CSA-N-4)などと連携して、中距離での迎撃を担当し、多層式防空網を構築するものと思われる。特に低空域の目標迎撃に優れたHQ-16は、長射程ながら低空目標の迎撃には問題のあるHHQ-9を補完することが想定されているとされる。HQ-16の原型となった同クラスの性能を有する9M38ウーラガン艦対空ミサイル(SA-N-7ガドフライ)9M38M2シュチーリ1艦対空ミサイル(SA-N-12グリズリー)に対しては、前二者が単装発射機を採用しているのに対して、各方向への同時対処が容易でリアクションタイムが少なくてすむVLSを採用している点で有利である。ただし、システムとしての完成度についてロシア製ミサイルに対して優位に立てるかどうかは現時点では未知数ではある。

ともあれ、HQ-16とHHQ-9の量産化によって、中国海軍は2種類の国産エリア・ディフェンス用艦対空ミサイルの保有を実現することが出来た。これは、長く艦隊防空ミサイルの欠如に悩まされてきた中国海軍の歴史における1つの画期であると見なすことができるだろう。

【参考史料】
[1]王浩「海上防空新盾-“江凱”改型導弾護衛艦」(『艦載武器』2007年12月号/中国船舶重工業集団公司)
[2]中国武器大全「中国红旗-16A地空导弹首次曝光!」
[3]铁血网[「巾帼英豪:国产新一代HQ16中程防空导弹的正、副女总指挥!(组图)」(2009年4月13日)
[4]漢和防務評論 2010年9月号「中国改進HQ16艦対空導弾垂直発射系統」25頁
[5]Yahoo!ブログ ロシア・ソ連海軍報道・情報管理部機動六課「22350型の防空システム」
[6]江畑謙介「冷戦時代のソ連最強駆逐艦ソブレメンヌイ級中国へ」(『軍事研究』1999年11月号/ジャパン・ミリタリー・レビュー)65〜81頁
[7]Yahoo!ブログ ロシア・ソ連海軍報道・情報管理部機動六課「ソブレメンヌイ級の防空システム」

【関連事項】
HQ-16A中距離地対空ミサイル(紅旗16A/LY-80/猟鷹80)
054A型フリゲイト(ジャンカイII型/江凱II型)
中国海軍