日本周辺国の軍事兵器 - LT-2レーザー誘導爆弾(雷霆2型)

▼LT-2

▼弾頭部

▼尾部

▼Q-5E攻撃機に搭載されたLT-2

▼JH-7A攻撃機に搭載されたLT-2

▼目標指示に使用するFILAT多機能前視赤外線・レーザー捜索/照準ポッド


性能緒元
全長368cm
直径37.7cm
翼幅95cm
重量496kg
射程10km
誘導方式セミアクティブ・レーザー誘導方式
命中精度CEP:2.5〜6.5m
装備機種J-7GJ-8IIJ-10J-11BFC-1Q-5JH-7H-6など

LT-2レーザー誘導爆弾(雷霆2型)は、中国航空第一集団公司の傘下にある洛陽光電技術発展中心公司によって開発された500kgクラスの精密誘導爆弾である。GB1という輸出名称も有している。LT-2は中国空軍で最初に使用された国産精密誘導爆弾として知られている。

中国は1980年代からレーザー誘導爆弾の研究開発を行っており、1990年代には中国北方工業公司(NORINCO)が輸出向けレーザー誘導爆弾を開発している。この爆弾はアメリカのペイヴウェイ2に類似した形態をしており、設計においてペイヴウェイ2の影響を受けたと思われている。ただし、この誘導爆弾は中国軍には採用されることはなかった。中国はその後もレーザー誘導爆弾の開発を続けていたが、21世紀に入ってロシアの技術支援を受けることで開発が軌道に乗った。ロシアの技術支援を受けて実用化された中国最初の精密誘導爆弾と見られているのが、本稿で紹介するLT-2である。

LT-2の構造は、レーザー誘導装置や制御系統を搭載した前部、爆弾本体がある中部、飛翔制御翼などを装備した後部に分類できる。前部と後部にはそれぞれX字型に安定/制御翼が装備されている。この内前部のX字翼は固定式安定翼で、後部のX字翼は可動式の制御翼であり飛翔制御を担当する。この形式はロシアのKABシリーズレーザー誘導弾に類似しており、ロシアの技術支援が窺える。

中央部の爆弾本体は、500-4型低抵抗爆弾を元にしている。中央部の重量は440kgで、内部には160kgの高性能炸薬が充填されている。

LT-2はセミアクティブ・レーザー誘導を採用している。目標へのレーザー照準は発射母機、僚機、地上観測員のいずれによっても行うことが出来る。弾頭部に搭載されているレーザー受光部は、±12.5度の視野を有している。レーザー受光部の直後には環状の装置が装備されているが、これは±20度の角度で回転しており、これによりさらに広い範囲からのレーザー反射を受け取ることが可能となる。同様の機構はアメリカのペイヴウェイ2でも採用されている。

中国は1990年代後半から航空機によるレーザー誘導爆弾の運用についての研究開発を行ってきた。運用試験を実施するためQ-5攻撃機(強撃5/A-5/ファンタン)を改造し爆弾投下母機であるQ-5Eと目標指示ポッドを搭載する捜索/誘導機であるQ-5Fが製作され、E型とF型が一組になってレーザー誘導爆弾の投下から目標指示、命中までの過程に関する試験を行い各種ノウハウの蓄積に勤めていた。わざわざ2つの種類の改造を行ったのは、Q-5は搭載力が少なく、誘導弾と目標指示ポッドの両方を1つの機体に搭載することは困難であったためである。4機のE型と1機のF型による投下試験では、一分間に8発のLT-2が投下され、8つの目標に命中させることに成功している。

Q-5E/Fの開発作業は、LT-2などのレーザー誘導爆弾の目標指示に使用するFILAT多機能前視赤外線・レーザー捜索/照準ポッドの開発も兼ねていた。FILATの開発を担当したのはアビオニクスの開発を中心に行っている613研究所。このポッドは重量63kgで、形状は円筒形。光学照準装置と赤外線視認装置、レーザー照準照射装置の3つの機能を兼ねている。レーザー照準装置の最大視認距離は7〜10km。FILATポッドは、Q-5Fでの運用試験を経た上で中国軍での採用に漕ぎ着けた。同ポッドは、J-7GJ-8IIJ-10J-11BFC-1などの戦闘機、Q-5、JH-7などの攻撃機、H-6爆撃機など多様な機体への搭載が可能。LT-2の誘導以外にも、陸軍で運用されている122〜155mmレーザー誘導砲弾の照準誘導を行うことも出来る。

誘導制御装置にはデジタル自動制御システムが採用されており、火器管制装置の弾道予測を基にして最適な飛翔コースを選択する。LT-2の命中精度は半数必中率(CEP: Circular Error Probability)換算で2.5〜6.5mとなっている。

LT-2の実用化は、中国空軍における精密攻撃能力の欠如という長年の懸案を解決するものであった。レーザー誘導爆弾は、命中精度が飛躍的に向上しただけではなく、無誘導爆弾や対地ロケットによる攻撃よりも遠距離から目標に爆弾を投下するため、攻撃機の生存性も向上することになった。ある軍事専門家の試算では、4発のLT-2を搭載したJH-7攻撃機2機による強化陣地への攻撃の効果は、H-6爆撃機50機による500kg通常爆弾の水平爆撃に相当するとしており、これは誘導弾の効率の高さを如実に示す事例であるといえる。

LT-2は、モジュール構造を採用しており、中央部の爆弾本体を簡単に換装することが出来る。派生型としては中央部分を1t爆弾としたLT-3のほか、クラスター爆弾、反跳爆弾、地中貫通爆弾など合計15種類のバリエーションが用意されている。

【参考資料】
呉思「九天落雷終有時-中国精確制導炸弾的発展與最新動向」(所載:『現代兵器』2006年12月号/中国兵器工業集団公司)
『ミリタリー選書8-軍用機ウエポン・ハンドブック』(青木謙知/イカロス出版/2005年)

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