日本周辺国の軍事兵器 - SH-5哨戒飛行艇(水轟5)



老朽化した旧ソ連製Be-6飛行艇の後継として、中国が初めて開発したターボプロップ4発の大型飛行艇。

本機の開発はハルビン航空機製作会社と水上機設計研究所との共同作業で1969年から始まったが文化大革命の影響で大幅に遅れ、1973年12月に原型機完成、1976年4月3日に初飛行が実施された。1984年から85年にかけて静荷重供試体1機を含む7機が完成し、うち4機は1986年9月に海軍に引き渡され、1機は水上滑走で取水した8tの水を運搬できる消防型に改造され評価試験を実施している[1]。呼称のSHは「洋上爆撃機」を意味するが、対艦攻撃以外にも対潜哨戒、哨戒監視、機雷敷設、救難、貨物輸送などの任務に従事する能力を有する。

本機の主翼はY-8輸送機とほぼ同じ構造と推定され、エンジンナセルの取り付け方法もよく似ている。ビームローディングの高い細長い艇体は全般的に海上自衛隊のUS-1飛行艇に酷似しているが、機首の航法士席や尾部銃座、固定式MADブーム、上反角付きの水平尾翼と楕円形の双垂直尾翼などにも、旧ソ連式の設計手法が残されているように見える。

標準的な乗員は操縦要員5名に搭載機器の操作員3名で計8名。ほかに便乗者用に3座席が用意されている。兵装は翼下4ヶ所のハードポイントに対艦ミサイル、魚雷、爆弾、爆雷などを装備するほか、胴体後部にソノブイや救難機材を収容している。当初はラムジェット推進のYJ-1(C-101)対艦ミサイルを搭載する計画であったが、YJ-1は開発が難航し1980年代末に中止された。そのため現状のSH-5の搭載可能な武装は爆雷や魚雷などに限定されている。

SH-5の生産は上記の7機で打ち切られた模様。4機のSH-5が北海艦隊に所属して山東省青島付近の飛行艇基地において哨戒機として運用されていたが[2]、この内1機は2013年5月30日に発生した墜落事故で失われている[4]。一部の機体は電波情報収集(エリント/ELINT:ELectronic INTelligence)機に改造されているとの情報もある[2]。一機は北京郊外にある中国航空博物館に展示されている[3]。

性能緒元
重量26,500kg
全長38.90m
全幅36.00m
全高9.80m
エンジンハルビン渦奬5甲C 3,150hp ×4
最大速度555km/h
巡航速度450km/h
航続距離4,750km
上昇限度10,250m
武装23I型23mm連装機関砲×1
 YJ-1対艦ミサイル(C-101)注:後に断念される。
 爆弾、爆雷、魚雷等約6トン
乗員8+3名

▼離水するSH-5

▼着水した搭乗員の救助訓練を行う#9113号機

▼事故を起こして大きく右に傾いた#9113号機

▼SH-5に搭載予定だったYJ-1(C-101)対艦ミサイル(画像右)とその模型(画像左)


▼SH-5の訓練動画。離着水シーンなど


【参考資料】
[1]別冊航空情報 世界航空機年鑑2006〜2007(酣燈社)118頁
[2]Chinese Defence Today「ShuiHong-5 Amphibious Aircraft」
[3]田辺義明「新装なった中国航空博物館を訪ねて」(『航空ファン』2010年11月号/文林堂)68〜71頁
[4]中国海事「海军一架水上飞机在飞行训练中失事坠海」(2013年5月30日)

中国海軍