日本周辺国の軍事兵器 - Su-30MKK/MKK2戦闘機(中国)



中国では、1990年代に入ると、南沙(スプラトリー)諸島をめぐる領有権争いや台湾海峡での緊張の高まりを背景として、航空脅威を排除しつつ洋上の敵艦隊への攻撃が可能な航続距離の長い対地/対艦攻撃能力に優れたマルチロールファイターの導入を求める意見が高まった。この種の機体は、当時の中国軍には欠如していたものであった。大型の戦闘攻撃機としてJH-7戦闘攻撃機の開発が行われていたが、実用化にはなお時間を要することは明らかで、軍としては早急に何らかの対策を行う必要に迫られた。

ロシア側はSu-27SKの対地能力向上型であるSu-27SMKを提示したが、中国側は長距離飛行や精密誘導兵器を操作する対地攻撃任務においてパイロット1名ではオーバーワークになる事を懸念した。最終的に中国が選んだ回答は、ロシアから多用途性に優れた複座戦闘機であるSu-30MK戦闘攻撃機を輸入することであった。中国空軍は1996年からロシアとの間でSu-30MK戦闘攻撃機の購入に関する協議をはじめ、1999年8月に38機を20億ドルで購入する事に合意した。このSu-30はMKK(Mnogafunctunali Kommercial Kitayski)と呼ばれている。2001年7月には38機を追加購入する事が決まり、2000〜2003年の間に第1期分と第2期分合わせて76機のSu-30MKKがロシアから送られた。また2004年8月には海軍向けとして第3期分のSu-30MK2を24機導入している。更に中国は改修型のSu-30MKK3の導入を検討中。

Su-30MはSu-27の複座戦闘攻撃型で、アメリカのF-15EストライクイーグルのSu-27版と言う事ができる。機体形状は基本的にSu-27と同じだがより精度の高い航法装置を装備し、対地攻撃用にTV指令誘導システム、対レーダーミサイル誘導システムのポッドを携行できる。後席には対地ミサイル誘導用の表示装置がついており、各種誘導爆弾や対地ミサイルを運用する事が可能だ。

Su-30MKKはインド空軍用のSu-30MKIのようにカナード翼や3次元推力変更ノズルは装備していないが、Su-27の素晴らしい運動性能を受け継いでいる。ロシアの情報によればSu-30MKKは中国からの要請で機体構造や脚部をオリジナルのSu-30より強化し、兵器搭載量を増やしているという。Su-30MKKは空中給油なしでも1,600kmの作戦行動半径を有しており、また長距離戦闘機として計画されたため空中給油装置を装備しており、これにより中国国内の空軍基地から発進してグアムやオーストラリア、インドなどの遠隔地まで進出する事ができる。ただし、Su-30MKKの空中給油方式は中国軍が運用しているH-6U空中給油機(轟油6/H-6DU)との互換性が無いとされており、中国空軍は2005年にSu-30MKKの空中給油機としてIL-78空中給油機(マイダス)4機をロシアから輸入することを決定した。しかし、IL-78を生産していたロシアとウズベキスタンの生産契約をめぐる対立やインフレによる生産価格上昇などの混乱により、現在の所IL-78の納付の目処は立っていない。

第1〜2期分のSu-30MKKはSu-27と同じファザトロンN001VEジューク・パルスドップラー・レーダー(TWS機能付き)を装備しているが、第3期分の海軍向けSu-30MKK2は改修型のN011PHパルスドップラー・レーダー(4目標同時交戦可能)に換装されており、これにより長射程・超音速の対艦ミサイルYJ-91(Kh-31P/AS-17 Krypton)の運用能力を持った。またEW/ECMシステムも最新型のものが装備されている。赤外線捜索・追跡(IRST)システムもOEPS-27の改良型であるOEPS-31-MKが搭載され、新たに装備されたSapsan-E赤外線・レーザー測距離装置との組み合わせでSu-27よりも大幅に性能が向上している。さらにSu-30MKKが搭載するM400偵察ポッドは、100kmの距離で2mの分解能をもつ対地SLAR(側視機上レーダー)、70kmの距離で30〜40cmの解像度を持つFLIR/可視光カメラ、さらにこれらをデータリンクで地上管制にリアルタイムで送信するという高度な偵察能力を持つ。またこのSu-30MKK2は10機のSu-27/Su-30による相互データリンクを管制することが可能だ。

Su-30MKKは空軍の訓練テストセンターと南京軍管区の第3、第29戦闘機師団、広州軍管区の第18戦闘機師団に、また海軍のSu-30MKK2は東海艦隊の第4戦闘機師団に配備されている。現在スホーイ社から提案されている改修型のSu-30MKK3は捜索距離300kmの新型アクティブ・フェイズドアレイ・レーダーを装備し、エンジンもAL-31の改良型が搭載される予定。

【2008年6月17日追記】
中国はロシアのウラル光学機械工廠との間で、中国空軍のSu-27やSu-30シリーズのIRSTやレーザー測遠器といった光学電子システムのアップグレードに関する協定を締結。ウラル光学機械工廠は中国に対して、改修作業や整備・補修に必要な機材を提供することになった[1]。

性能緒元
重量17,700kg
全長21.94m
全幅14.70m
全高6.36m
エンジンLyulka-Saturn AL-31F A/B 122.6kN ×2
最大速度M2.0
戦闘行動半径1,500km
上昇限度17,300m
武装GSh-301 30mm機関砲×1
 R-77アクティブ・レーダー誘導空対空ミサイル(AA-12アッダー)
 R-27中距離空対空ミサイル(AA-10 Alamo)シリーズ
 R-73赤外線誘導空対空ミサイル(AA-11 Archer)
 Kh-59テレビ誘導中距離空対地ミサイル(AS-13 Kingbolt)
 Kh-29テレビ誘導短距離空対地ミサイル(AS-14ケッジ)
 Kh-31A空対艦ミサイル(AS-17 Krypton)
 YJ-91高速対レーダーミサイル(鷹撃91/Kh-31P/AS-17C Krypton)
 KAB-500Krテレビ誘導爆弾
 各種爆弾/ロケット弾
乗員2名

【参考資料】
Jウイング特別編集 戦闘機年鑑2005-2006(青木謙知/イカロス出版)
別冊航空情報 世界航空機年鑑2005(酣燈社)
世界の艦船(海人社)
武装力量 2005年1月「龍之翼-中国蘇-27系列飛機全史 軍購編:中国龍的側衛之翼」(康成毅/内蒙古人民出版社)
Chinese Defence Today
Pravda.Ru2007年5月24日 「Russia does not mind refusing from a billion dollars contract」
中華網「俄将為中国空軍昇級蘇系戦機光電系統」(2008年6月2日)[1]

【関連項目】
J-11戦闘機(殲撃11/Su-27SK/Su-27UBK)
J-11B/BS戦闘機(殲撃11B/殲撃11BS/Su-27)
Su-30MK2戦闘機(フランカーG)(中国海軍)

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