日本周辺国の軍事兵器 - WS-1E 122mm50連装自走ロケット砲(衛士1E/PR-50)

▼HF-122 自走50連装ロケット発射機



▼DZ-88B射撃統制/指揮車とPR-50 122mmロケット弾



性能緒元(注:HF-122のベース車体である鉄馬XC-2030)
重量11.0トン(空虚重量。ロケット発射機未搭載)
全長9.422m
全幅2.500m
全高3.200m
搭載エンジンBF8L413FG空冷ディーゼル 252hp
最高速度 
航続距離 
ペイロード9トン(路上)、8トン(路外)
乗員1+2名

性能諸元(PR-50 122mmロケット弾)
直径122mm
全長2,946mm
全備重量74kg
弾頭重量18〜21.5kg
最大射程40km
最小射程20km

WS-1E 122mm50連装自走ロケット砲(WSは衛士/WeiShiの略)は、2006年の第6回中国国際航空航天博覧会でその存在が公表された。開発元はWS-2 400mm6連装自走ロケット砲(衛士2)WS-1B 302mm4連装自走ロケット砲(衛士1B)の「衛士」多連装ロケットシリーズを開発してきた四川航天工業総公司(Sichuan Aerospace Industry Corporation:SCAIC)である。WS-1Eも「衛士」シリーズの1つであり、最近では別名として、PR-50「沙塵暴(砂嵐)」122mm自走50連装ロケット砲の名が付与されている。

WS-1E 50連装ロケットシステムは、HF-122 自走50連装ロケット発射機、DZ-88B射撃統制/指揮車、弾薬補給車、気象観測レーダー搭載車とPR-50 122mmロケット弾から構成されている。HF-122は鉄馬XC2200 6X6トラックをベース車体としている。WS-1Eは、多連装ロケット大隊を単位として編制され、一個大隊は3個中隊から成る。集団軍の砲兵旅/師団、もしくは大隊として作戦単位の師団に配属されるか集団軍の直属部隊として火力支援任務に当たることが想定されている。

一個多連装ロケット中隊は以下のような編制となっている。
HF-122 自走50連装ロケット発射機6両(乗員3名×6)
DZ-88B射撃統制/指揮車1両(乗員5名)
弾薬補給車6両
気象観測レーダー搭載車1両

90式122mm40連装自走ロケット砲89式122mm40連装自走ロケット砲81式122mm40連装自走ロケット砲といった従来の中国製122mm自走多連装ロケットは、原型となったソ連のBM-21譲りの40連装発射機を搭載してきたが、WS-1Eは新設計の50連装ロケット発射機を搭載した。HF-122 自走50連装ロケット発射機の車体後部には、モジュール化されたロケットコンテナ(ロケット発射筒25本搭載)を2組装備したロケット発射機が搭載されている。車体中央には50発の予備弾薬と機会式装填装置が設置されており、迅速に再装填を行うことが出来る。キャビン直後には予備弾薬とロケット発射機を保護するための油気圧伸縮式カバーが装備されている。このカバーは車体後部全てを覆う事が可能であり、これにより通常の輸送用トラックに偽装することが出来る。このあたりの装備は、90式122mm40連装自走ロケット砲のそれを継承している。車体には、射撃時に車体を安定させる4つの油圧式ジャッキが設置されている。

WS-1Eは50連装ロケット発射機を採用したことで、1個多連装ロケット個中隊(ロケット発射機6両を装備)の一斉投射弾数は81式122mm40連装自走ロケット砲等が240発であるのに対して300発に増加している。WS-1Eの一個大隊(ロケット発射機18両を装備)は、一斉射撃で60トンの砲弾を投射し、18〜22秒以内で5平方キロメートルの区画を火制できる。WS-1Eの攻撃目標としては、軍事基地、飛行場、港湾施設、交通の要所、工場などの軍事関連施設、敵砲兵陣地、その他重要施設等が挙げられている。WS-1Eは、命中精度を高めるために気象観測レーダー搭載車でロケットが飛翔する上空の気象を観測し、そのデータを各諸元と共に計算してDZ-88Z射撃統制/指揮車から各発射機に伝達する。各発射機では、受け取った諸元に基づいて射撃、もしくは各車両の弾道計算機で射撃諸元を計算してロケットの発射を行う。

WS-1EのPR-50 122mmロケット弾は、直径122mm、全長2,946mm、全備重量74kg、弾頭重量18〜21.5kgで、信管、弾頭部、FG-42型固体ロケットモーター安定翼付の尾部の4つの部分から構成されている。最大射程は40km、最小射程は20km。使用可能な弾頭には、榴弾、破片効果榴弾(HE-FRAG)、焼夷榴弾(HEI)、対戦車/対人クラスター弾、サーモバリック弾、対戦車地雷散布弾などが用意されている。このほか、従来の中国製122mmロケット弾、外国製の122mmロケット弾を使用することも可能。

WS-1Eは、各国で使用されているソ連製BM-21多連装ロケットや中国製81式122mm40連装自走ロケット砲を更新する装備として開発された。WS-1Eは、他の衛士シリーズと共に中国精密機械進出口総公司(China Precision Machinery Import-Export Corporation:CPMIEC)により海外市場向けの販売活動が行われているが、現在の所、中国軍や外国の軍隊にWS-1Eが採用されたとの情報はない。なお中国海軍では、2004年に火力支援艦に改装された053H型フリゲイト(ジャンフーI型/江滬I型)の#516「九江」がWS-1Eと同系列の50連装122mmロケット発射機×5基を搭載している。

【参考資料】
四川航天工業総公司パンフレット
Chinese Defence Today
東方網「恐怖的鋼雨製造者:中国沙塵暴新型火箭炮」
中華網「対珠海航展上新曝光的沙塵暴火箭炮的初歩研判」

【関連項目】
WS-2 400mm6連装自走ロケット砲(衛士2)
WS-1B 302mm4連装自走ロケット砲(衛士1B)

中国陸軍