日本周辺国の軍事兵器 - WS-1 302mm4連装自走ロケット砲(衛士1)

▼MF-4自走ロケット車両。シャーシはXC2030「鉄馬」6×6トラックを使用。

▼独MAN社製6×6トラックをシャーシに使用したタイプ。

▼QY-88弾薬輸送車。シャーシはXC2030「鉄馬」6×6トラックを使用。


■''性能諸元(MF-4自走ロケット発射機/XC2030「鉄馬」6×6トラック使用)”
重量19トン(兵装未搭載の状態)
全長9.422m
全幅2.5m
全高3.2m
エンジン空冷ディーゼル(300hp)
最高速度85km/h(兵装未搭載の状態)
渉川深度0.7m
兵装302mm4連装ロケット発射機×1
俯仰角
左右射角各102度
乗員3名

■''性能諸元(F-302T自走ロケット発射機/MAN 26.372型6×6トラック使用)”
重量23トン
全長9.2m
全幅2.50m
全高3.10m
エンジンディーゼル
最高速度70km/h
渉川深度
兵装302mm4連装ロケット発射機×1
俯仰角
左右射角各102度
乗員3名

■''WS-1 302mmロケット弾性能諸元”
重量524kg
全長4,737mm
直径302mm
弾頭重量約150kg(炸薬90kg)
運用弾頭榴弾、燃焼榴弾、サーモバリック弾、対人クラスター弾、汎用クラスター弾など
発動機固体ロケットモーター
初速50.7m/s
最高飛行速度マッハ4.2
射程40〜100km

WS-1 302mm4連装自走ロケット砲は、中国航天工業総合公司の傘下企業であった四川航天工業総公司(Sichuan Aerospace Industry Corporation:SCAIC)が開発した大口径多連装ロケット[1]。なお、中国航天工業総公司は1999年に改組され、航天科技集团公司(China Aerospace Science and Technology Corporation :CASC)となっている[2]。WSは衛士/WeiShiの略称で、正式名称はWS-1戦術多連装無誘導ロケット・システム[1]。

WS-1は、1980年代末に提示された次世代大口径多連装ロケット砲の開発計画に対して四川航天工業総公司が提案した開発案がその基礎となっている。開発案は中国軍の採用する所にはならなかったが、四川航天工業総公司では輸出市場向けの新型大口径多連装ロケットとして開発を継続、1990年には初の実弾発射試験を実施した[3]。四川航天工業総公司では、WS-1の開発に関して共同出資者を募集していたが、1991年にはトルコの視察団に対して発射試験を公開している。トルコ側では同時期に試験を行ったWM-80 273mm8連装自走ロケット砲についても発射試験を視察しており、WS-1とWM-80を比較検討している。その結果、WS-1は命中精度では劣るが最大射程の面ではWM-80よりも優位に立っている点が決め手となり、四川航天工業総公司との間でWS-1の共同開発に関する交渉を開始することになった[4]。とることの交渉は1997年に妥結、T-300「Kasirga」300mm4連装ロケット・システムとしてトルコのロケットサン社によりライセンス生産が行われることとなり、WS-1の輸出が実現することになった[4][5](T-300「Kasirga」の詳細については別項を参照されたし)。

SCAICではWS-1に続いて改良型であるWS-1B 302mm4連装自走ロケット砲(衛士1B)の開発に着手することになる。

【性能】
WS-1は、戦術ミサイルと野砲との間のギャップを埋める装備として開発された兵器システムである。WS-1は、集団軍の砲兵旅(師)、もしくは重師団の砲兵連隊に配備され、集団軍や重師団の直轄支援火力部隊として、その長射程を生かして敵機甲部隊や砲兵の集結地、後方の司令部や補給地点への攻撃を主任務とする[5][6]。

MF-4自走ロケット発射機のシャーシにはXC2030「鉄馬」6×6トラックを使用しているが、ユーザーの要望に応じてシャーシを変更することも可能で、独MAN社製6×6トラックを使用した試作車両も製造されている[5][7]。自走ロケット発射機には射撃時に車体を安定させるため、合計4基の油圧ジャッキが車体に取り付けられている。車両には照準装置と射撃統制装置が備えられている。射撃統制装置は、風速・風向き測定器、弾道計算機、関連ソフトウェアなどで構成される[5]。攻撃の際には、指揮車両から各自走ロケット発射機に目標情報を伝達、各車両では目標諸元に基づき火器管制装置に入力を行い、発射を実施[5]。状況に応じて、自走ロケット発射機単独で目標を照準・射撃を実施することも可能[5]。

4連装ロケット発射機は車体後部に搭載されており、方向射界は左右各102度[5]。4発のロケット弾の発射に要する時間は18秒。発射機への再装填に要する時間は20分[5]。

ロケット本体は、弾頭部、信管、FG-42固体ロケットモーター、安定翼、尾部から構成される。サイズは、重量524kg、全長4,737mm、直径302mm、弾頭重量約150kg(炸薬90kg)[5][6][7]。ロケット弾頭には榴弾、燃焼榴弾、サーモバリック弾、対人クラスター弾、汎用クラスター弾などが用意されている。対人クラスター弾は、弾頭重量152kgで475個の子弾が内包されている[6]。1つの子弾は半径7mの殺傷半径を有している。サーモバリック弾頭の弾道重量は90kg、殺傷半径は70m、致死爆圧半径は50m。燃料榴弾の場合は、炸薬重量70kg、有効殺傷半径70m、24,0000個の弾片を成形する[6]。ロケットの射程は40〜100km。ただし、無誘導ロケットのため、射程が延びると精度も低下してしまう難点が有る。

WS-1ロケット連隊は3個大隊から編成される、一個大隊の編成は以下の通り[3]。
DZ-88B射撃指揮車1両/4名
MF-4自走ロケット車両(4連装)6〜9両/1両あたり3名
QY-88弾薬輸送・再装填車輌再装填用ロケット弾4発を搭載。6〜9両/1両あたり3名
702航空気象観測レーダー車1両/3名
予備ロケット自走ロケット発射機1両あたり40〜60発

交戦の際には、通常4発のロケット弾を目標に向けて発射、対砲兵射撃を受けないように直ちにその場から移動。弾薬輸送・再装填車輌に搭載されたロケット弾を再装填して、次の目標に対して攻撃を行うという手法を採る。

WS-1の弾薬輸送・再装填車輌は、装填作業省力化のために車体後部に自動装填装置が搭載されている。自動装填装置には2〜4発のロケット弾が搭載される。ロケット弾は輸送状態では破損を防ぐために個別の保管容器に収納されている。再装填の際にはこれを開封して、弾薬輸送車の自動装填装置に乗せた上で再装填作業を行う。自動装填装置の作動は油圧式で、ロケットを水平に移動させて自走発射機の発射筒の中に押し込む。

【参考資料】
[1]四川航天工業総公司公式サイト(現在は閲覧できない)
[2]航天科技集团公司公式サイト「中国航天空气动力技术研究院」
[3]Chinese Defence Today「Weishi WS-1, WS-1B, WS-1E, WS-2 Multiple Launch Rocket Systems - SinoDefence.com」
[4]「遠火呼嘯、万鈞雷霆-我国遠程火箭炮発展全掲秘」(『全球防務叢書』第四巻 輔国号/内蒙古人民出版社)6〜17頁
[5]中国武器大全「WS-1式320mm轮式火箭炮(表記ママ)」
[6]「国家”衛士”」(『兵工科技2004増刊 第五届珠海国際航展専輯』/兵工科技雑誌社/2004年)45頁
[7]航天科技集团公司公式サイト「WS-1多管火箭弹」
[8]

T-300「Kasirga」302mm4連装自走ロケット砲
WS-1B 302mm4連装自走ロケット砲(衛士1B)
中国陸軍