日本周辺国の軍事兵器 - Y-8CB(運輸8CB/高新1号)電子戦/情報収集機




前世紀末から今世紀初頭にかけて、中国ではY-8C輸送機をベースとして早期警戒機や洋上哨戒機、電子偵察機など一連の各種派生型を実用化した。これらの開発計画は「高新工程」と命名され、開発された機体にはそれぞれ「(高新)〜号工程」の開発名称が付与された[5]。その中で「高新1号」の開発名を有するのが本稿で取り上げるY-8CB(運輸8CB/Y-8ECM/「K/JYZ-8」)電子戦/情報収集機である。同機の名称には幾つかの説があり、Chinese Military Aviationなどでは「Y-8CB」、『Chinese Aircraft:China's Aviation Industry Since 1951』などではY-8CAの名称が採用されているが、本稿ではY-8CBの名称を使用する[1][3]。

Y-8CBは機体各部に複数のフェアリングやアンテナが増設されているのが特徴である。胴体下部にあるカヌー型のフェアリングには、ECMアンテナもしくはSAR(Synthetic Aperture Radar:合成開口レーダー)が収納されていると見られる[2][3]。この他にも、機首下部、操縦席直後、垂直尾翼基部などにもフェアリングが増設されている。この内、垂直尾翼基部のフェアリングは就役後に追加装備されたものであり、同様のフェアリングを有するY-8JB(Y-8EW/Y-8ECM/高新二号)電子戦機と同じくデータリンク用の衛星通信アンテナが搭載されていると見られる[3][4]。胴体下部やカーゴドア部分には多数のブレード型アンテナが設置されている。

Y-8CBの任務は、レーダー波や無線通信、その他の電子通信信号の探査や収集、周辺国の通信の傍受や解読を行っているものと思われる[1][2][3]。収集した各種情報は衛星通信データリンクシステムを使用して、速やかに各クラスの指揮官のもとに配送される[4]。また有事の際には、ジャミング装置によって敵の通信やレーダーの使用を妨害することも可能と見られる[3]。

Y-8CBの試製01号機は2000年1月26日に初飛行に成功[1][3]。その存在が西側に明らかとなったのは2005年7月であった[3]。Y-8CBは少なくとも4機(機体番号S/N 21011〜21013、 5121、5123?)が中国空軍で運用されており、従来電子情報の収集に当たっていたHD-5電子偵察機を更新した[3]。機体番号21011機と21013機は南京軍区の中国空軍第10師(安徽省安慶)の電子戦部隊での運用が行われていることが知られている[1][2][5]。

【参考資料】
[1]Chinese Aircraft:China's Aviation Industry Since 1951(Yefim Gordon & Dmitriy Komissarov著/Hikoki Pubns出版/2008)224〜225頁。
[2]Chinese Defence Today「Y-8 (GaoXin 1) Electronic Intelligence Aircraft」
[3]Chinese Military Aviation「Surveillance Aircraft 〜Y-8CB Cub/High New 1」
[4]陳光文「無形殺〜中国運-8系列電子改型機家族」『現代兵器』2009.11(総第371期)(中国兵器工業集団公司)10〜14頁
[5]新浪網「運八高新機資料大全」
ttp://club.mil.news.sina.com.cn/thread-196043-1-1.html

【関連項目】
Y-8輸送機(運輸8/An-12)
Y-8X哨戒機(Y-8MPA)
KJ-200早期警戒機(空警200/高新5号)
Y-8早期警戒機(Y-8AEW)

中国海軍