日本周辺国の軍事兵器 - YJ-8対艦ミサイルの派生型

YJ-82(C-801Q)



YJ-82は1990年代末に実用化された潜水艦発射式対艦ミサイル[3]。輸出用名称はC-801Q。YJ-8の派生型として開発が進められた。YJ-8Qは水中発射用のコンテナに収められて潜水艦に搭載され、533mm魚雷発射管からコンテナごと射出された後に海面からミサイルが発射される。この水中発射用コンテナの技術については、米国製のハープーンUSMを運用しているパキスタンから秘密裏に得られた可能性が指摘されている[3]。

C-802(CSS-N-8 Saccade)


▼イランのC-802。イラン名では「Noor」の名称で現地生産を実施


性能緒元
全長6.392m
直径36cm
重量715kg
弾頭重量165kg(HE)
最大速度マッハ0.9
射程120km
誘導方式慣性誘導
 アクティブ・レーダー誘導(終末段階)

C-802はYJ-8の射程距離延伸型(YJ-81)をベースに開発された。C-802は輸出用名称で中国軍では不採用のため制式名は存在しない[3]。

誘導装置などはYJ-8と同じだが、推進部は固体ロケットではなくターボジェット・エンジンになっており、燃料を多く搭載するために胴体は延長されている。このため射程距離はYJ-8の40km、YJ-81の80kmから120kmまで延びた。C-802は中国軍からの発注は無かったが、1991年にイランが車載型の採用を決定し60発を購入、その後Noorの名称でライセンス生産を実施している。またインドネシアも2005年にC-802を1,120万ドルで発注している。上記以外の派生型としては空中発射型C-802Kが存在する[3]。

YJ-83(鷹撃83/C-802A)




C-802が中国海軍に採用されなかったため、中国海鷹電気技術学院(CHETA)は更なる改良を続けた。その結果1990年代中頃に完成したYJ-83は150〜200kmの射程をもち、艦艇やヘリコプター、航空機などが探知した目標情報をデータリンクで飛行中に受け取って中間軌道を修正する指令アップデート機能を有する。また飛行速度は高速になり、最終段階ではマッハ1.5まで加速する(インテークの形状やエンジン出力から超音速の発揮は困難ではないかという分析も存在する[3])。現在YJ-83は中国海軍の主力艦載対艦ミサイルとしてYJ-8を置き換える形で配備が進んでいる。

YJ-83は艦対艦型YJ-83、空対艦型YJ-83K(輸出名C-802AK)、対レーダー・ミサイル型YJ-83KH(輸出名CM-802AKG)などのバリエーションが存在する[3][4]。また、YJ-83をベースとしてKD-88空対地ミサイルが開発されている[3]。

YJ-83の輸出名としてはC-803が想定されていたが、[3]の分析ではC-802Aが正しい輸出名称となるとしている。C-802Aは、2005年9月にはロンドンで開かれたDSEIで初公開されている。2007年には、タイ海軍がC-802Aをアメリカ製ハープーンSSMとの比較検討の結果、053HT/HT(H)型フリゲイト(チャオプラヤー級)のC-801対艦ミサイルの更新用として採用することが決定した[2]。

YJ-85(鷹撃85/C-805)


YJ-85(C-805)はYJ-81をベースに開発された空対地巡航ミサイル型。GPSを搭載して多彩な飛行コースの設定が可能になっており、また海上ではINS(慣性航法装置)、陸上ではTERCOM(地形等高線照合装置)により精密攻撃が可能になっている。

CY-1/2/3(長纓1/2/3号)対潜ミサイル



CY-1対潜ミサイルはYJ-8艦対艦ミサイル(鷹撃8/C-801)をベースに開発された。YJ-8の先端部に魚雷が装着されており、艦から発射されあらかじめ設定された空域まで飛行した後に魚雷を投射する。ミサイル重量610kg、全長4.5m、直径360mm。射程は20km。中国海軍での運用状況に関しては不明だが、039型潜水艦(ソン型/宋型)から発射試験が行われたといわれている。CY-2(長纓2号)はC-802対艦ミサイルをベースに開発された空中発射型で、1994年にSH-5哨戒飛行艇(水轟5)からの発射テストに成功した。CY-1及びCY-2はYJ-8及びYJ-82対艦ミサイルのキャニスターがそのまま使用できるため、艦艇や潜水艦のみならず地上からも発射できる。CY-1及びCY-2の配備は恐らく行われていないと思われる。理由として中国艦艇が装備するソナーの探知能力が低く、対潜ミサイルを使用するような遠距離の潜水艦を探知できないためと言われているが、詳細は不明である。イギリスやドイツ、フランスなど遠距離での対潜攻撃を対潜ヘリに完全に任せている海軍は幾つか存在する。現在CY-2の改良型でデータリンク機能などが追加されたCY-3が開発中との事。

【参考資料】
[1]艦載兵器ハンドブック改訂第2版(海人社)
[2]「漢和防務評論」2008年1月号(漢和防務評論社)
[3]defensemedianetwork「China’s Eagle Strike-Eight Anti-Ship Cruise Missiles: Designation Confusion and the Family Members from YJ-8 to YJ-8A」(Christopher P. Carlson/2013年2月4日)
[4]Chinese Military Aviation「YJ-83KH」

Jane's Defence Weekly
Chinese Defence Today
Kojii.net
中国武器大全

【関連項目】
YJ-8艦対艦ミサイル(鷹撃8/C-801)

中国海軍