否定派主張

「『戦争とは何か』が中国国民党の宣伝本であったことは百パーセント確実である。
 東中野教授が見つけた「極機密」の印が押された、『中央宣伝部国際宣伝処工作概要』という題の文書の「対敵宣伝科工作活動概況」という項目で、国際宣伝処が編集・印刷した単行本として『外人目睹中之日軍暴行』を挙げている。

 東中野教授は台湾の調査で、一九四三年に発行された『中央党部職員録』も見つけ、その中の「対敵宣伝委員会」のメンバーに、ティンパーリーと対外宣伝について協議した曽虚白がいることを確かめた。

また、国民党中央党史史料編纂(へんさん)委員会の所蔵史料から、『戦争とは何か』の中国語版に掲載されている写真と同じ写真を見つけた。

 『戦争とは何か』をめぐっては、ノンフィクション作家の鈴木明氏が、ティンパーリーが中国国民党の顧問だったことを指摘し、立命館大学の北村稔教授が、ティンパーリーと曽虚白の関係を明らかにしている。今回の発見は、鈴木、北村両氏の調査を補強する証拠になるとみられる。

反論

東中野が「宣伝本である」と主張する5項目の根拠はまったくたわいのないものである。
1.『中央宣伝部国際宣伝処工作概要』と『曾虚白自伝』それに、王凌霄『中国国民党新聞政策研究』に「宣伝刊行物」と書いてある。
2.『曾虚白自伝』に「お金を使って頼んで、本を書いてもらい、それを印刷して出版」したと書いてある。
3.ティンパリーが中央宣伝部の顧問であった。
4.英語版と漢訳版の出版がともに1938年7月である。同時出版である。
5.国民党が『戦争とは何か』の中国語版に載せた写真を収集した。

1.国民党の文書が「宣伝本」と書いているので、国民党が宣伝本と考えていたことは間違いがない。問題は「宣伝」とはどういう意味か、である。ある目的、意図をもって広く知らせるという意味である。ところが、目的、意図が強調されれば、事実を誇大に伝えたり、あるいは誇大に伝えていると受け取られる場合が起こりうる。そこからどの国の言語においても「宣伝」という言葉には虚偽を広く知らせるという意味が派生しがちである。日本語では特に虚偽事実の広報というニュアンスが強いが、中国語ではニュートラルな意味合いで使われる。日本の政府機関に「宣伝」の名を冠したものはないが、中国では広報機関の名称として宣伝の名を冠している。もし中国においても「宣伝」に、虚偽事実の広報というニュアンスが強いのであれば、公正であるべき政府機関に「宣伝」という名を冠することがあるはずはない。中国語の「宣伝」はannounce、広報の意味であると理解できよう。

軍事力において日本に劣る中国が日本軍の暴行の実態を宣伝して、欧米が日本に圧力をかけるようにし向ける政策をとるというのは当然の行動であろう。

国際宣伝処が『戦争とは何か』の中国語訳本である『外人目睹中之日軍暴行』を日本語に翻訳し、日本に持ち込んで「対敵宣伝」に使おうとしたのは事実である。日本軍の暴行を心ある日本人に反省してもらおうとしたのは当然のことであろう。

2.『曾虚白自伝』の記述は裏付けがないと信用できないことはすでに述べた。
3.ティンパリーが中国国民党政府の顧問になったのは1939年である。ティンパリーが『戦争とは何か』を書く以前において中央宣伝部の顧問であった、という事実は『曾虚白自伝』にも書いてはない。ただ北村稔が根拠なく断定しただけである。
4.同時出版だから宣伝本だという主張は意味不明という他はない。
5.英語版『戦争とは何か』にはないが『外人目睹中之日軍暴行』には日本軍の暴行を示す写真が掲載されている。これらの写真は広く民衆に訴えて、日本軍兵士や外国マスコミが撮影した写真を収集した。その写真が国民党の所蔵資料にあったということはまったく不思議はない。

東中野氏は「宣伝本」=「ウソ本」といいたいのであろうが、本の内容がうそか本当かは、国民党が編集・印刷したかどうかにはまったく関係がない。本の内容と事実をつきあわせて事実と違うことが書いてあり、かつ、事実と異なることを知りながら編集・印刷してはじめて「ウソ本」と言える。東中野は本の内容が事実と異なることを証明していない。

曾虚白は国際宣伝計画書のなかで、国際宣伝を実効あるものにするためには第一に絶対嘘を言って人を騙したり、誇張してごまかしてはならず、事実に基づいて本当のことを言ってこそ真に人を動かすことができる。第二に的の残虐さを曝露し、これを広く宣伝して国際的な同情と援助を獲得するようにする。第三にもっとも重要なことには共同抗敵の連合戦線を作るようにする、ということを挙げている。つまり、真実を広報することによって欧米と連合しようと考えたのである。

この文書は『自伝』と異なり、戦後になって記憶をたどって書いたものではなく、当時書かれたものである。また、内部に向けて書かれたものであるから、虚偽のことを書く必要はない。そこに事実に基づいて国際宣伝をすることが述べられているのであるから、「ウソ」を宣伝する意図はなかったということが明らかである。

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