『戦争とは何か』を執筆し日本軍の暴虐を宣伝したH・J・ティンパリー(「マンチェスター・ガーディアン」中国特派員)の経歴は謎に包まれていたが、近年になって国民党中央宣伝部国際宣伝処の顧問であったことが明らかになった。
『戦争とは何か』は南京と東京の裁判で「大虐殺」を立証する重要証拠とされたが、なぜかティンパリーは法廷に姿を現さなかった。
情報工作者が身元を秘すのは「世界の常識」であろう。このように考えると、ティンパーリーの著作に登場する多くの欧米人が「南京大虐殺」を裁く南京や東京の法廷に出廷したにもかかわらず、ティンパーリー自身が全く姿を現さなかったことにも説明がつく。姿を晦ましていたのである。
(北村稔『「南京事件」の探求』p34より)