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この温もりをただ抱きしめたくて-5

前:この温もりをただ抱きしめたくて-4

890 :アクエリアス [sage] :2008/02/22(金) 00:56:57 ID:aC8dWTbG
ごきげんよう
今日も行きますフェイなのパラレル小説!!
戦いも終わったのでこの章は短め


891 :この温もりをただ抱きしめたくて [sage] :2008/02/22(金) 00:58:40 ID:aC8dWTbG

第二十二章 終わり




「ん…?」

誰かに肩を揺らされて、なのはは目を開けた。
いつの間に気を失っていたのだろう。

「なのはちゃん…!!」
「ん、はやてちゃん…?」

呼びかけに答えると、ホッとしたように表情を緩めた。

「良かったぁ…」

そういえば…ここは…。

「なんや、大丈夫か?」

もう一度聞こえたはやてちゃんの声を聞いて、完全に今どんな状況なのかを思い出した。

「ここは…!!」

私は辺りを見回した。

「大丈夫」

何とかな、と空を見上げる彼女につられて、私も仰ぐ。

自分たちの周りには結界が張ってあり、空ではあの金色の髪が舞っていた。


892 :この温もりをただ抱きしめたくて [sage] :2008/02/22(金) 00:59:28 ID:aC8dWTbG
「はやてちゃん!!私達も早く手伝いに…!!」
「大丈夫だよ」

結界の外から、別の声が聞こえた。
驚いて振り向くと、彼女にそっくりの少女が立っていた。

「今、交渉しているだけだから」
「交渉?」
「勝利宣言とでもいうべきかな?」

私が意識を失ってから、何があったのか。
そういえば、もう一つパーツが足りない。

「プレシアさんは…!?」

それを聞いて、アリシアは一度なのはを横目で見て、再び視線を上に戻した。

「フェイトが…倒したよ…」
「…え?」
「さすがダンピール。純粋なバンパイアを術式無しで滅せられるなんて…」
「なんで…?」
「何でって…あなたも見ていたでしょう?私達を…助ける為だよ」

なのはは地面の土をえぐるように拳を握って俯いた。

「でも…」

そんな様子のなのはにため息をついて、アリシアはもう一つ続けた。

「フェイトの所為じゃないよ…」

何を言っているのか、分からない。

893 :この温もりをただ抱きしめたくて [sage] :2008/02/22(金) 01:00:17 ID:aC8dWTbG
どういう意味か問いただそうとしたとき、

「なのは!!」

フェイトが上空から戻ってきた。

なのはは腹部や足から滴る血を見て、慌ててフェイトの下に駆け寄った。

「フェイト!!」
「なのは…?」

血相を変えて向かってきた私を不思議そうに見つめていた。

「こんな酷い怪我…!!無茶しちゃ駄目って言ったじゃない!!」
「なのは…大丈夫?」

私がバリアジャケットを破ろうと伸ばした手を逆に取られて、そう言われた。
よく見ると、私の腕には包帯が巻かれていた。

「うん。大丈夫だよ…」

痛みもそんなにあるわけではない。

「良かった…」

彼女はそう囁くような小さい声で言って、崩れ落ちた。

「フェイト!」

私は何とかその身体を支える。
はやてちゃんとアリシアちゃんの足音とフェイトを呼ぶ声が後ろから聞こえた。

894 :この温もりをただ抱きしめたくて [sage] :2008/02/22(金) 01:01:06 ID:aC8dWTbG
「二人も無事だね……」
「私らは大丈夫やから…とりあえずフェイトの傷の手当てを…」
「銀で受けた傷だから…血はそう簡単に止まらないよ……」
「でも、一応医療班が来るまで…」

なのはは常備していた包帯を巻き付ける。

「なのは……」
「どうしたの?」
「良かったの…かな…?」

言わんとしていることは分かった。でも、何て答えればいいのか分からない。

「……母さんは、わざと私に殺されたんだ…」

フェイトはポツリとそう言った。

「きっと…母さんのバンパイアの誇りを…捨てられなかったんだね……」

プレシアは、わざとアリシアとなのはを襲い、自分を殺させるように仕向けた。
アリシアが人間側について、プレシアがバンパイアとして生きたなら、アリシア自身にも風当たりが強くなる。
だからと言って、人間に降伏するのはきっと今までの自分を否定することだと思ったのだろう。

「フェイトは…悪くない!!」

なのはは突然叫んだ。自分でも何が言いたいのか分からない。
でも、フェイトが自分を責めているような気がしたのだ。

「私は…後悔してないよ?」

そんななのはの頬を片手で包んだ。

895 :この温もりをただ抱きしめたくて [sage] :2008/02/22(金) 01:01:55 ID:aC8dWTbG
「だからなのはも…気にしなくていい」
「でも…!」
「大丈夫だから…」

フェイトはそのまま手を後ろに回し、なのはの頭を抱き寄せた。

私が泣くべきじゃないのに…。

必死に堪えようとしても、勝手に涙は溢れてきた。

「ごめんね…!本当に…、ごめっ!!」
「何で…謝るの?」
「だって…!!」
「私は…これで正しいと、思ってるよ……。少し、母さんの気持ちに気づくのが…遅かったけどね」

だからと言って、止められはしなかったのだけれど…、と続ける彼女の顔は本当に清々しかった。


896 :この温もりをただ抱きしめたくて [sage] :2008/02/22(金) 01:02:18 ID:aC8dWTbG
「フェイト…」

何で彼女はこんなに強いのだろう。
いつか私も…こんな風に強くなれれば……

「大丈夫……だか、ら……」

不安に思っていると思ったのか、フェイトはまた安心させるように呟く。
だが、途切れ始めている言葉を聞いて、なのははフェイトの顔を覗いた。

「なの、………に…だいじょ……、……ら……」

「フェイト!!」

その状態のまま逆に私に身体を預けて、彼女は意識を手放した。



続く

898 :アクエリアス [sage] :2008/02/22(金) 01:05:14 ID:aC8dWTbG
後書き
本当はプレシア生きてるはずだったのですが、気に入らなくて全部書き直しました。
それにこの章は元々ありませんでした。


次章からはもう甘甘(?)です。


124 :アクエリアス [sage] :2008/02/26(火) 00:59:31 ID:RMr8kpRF
ただいまです。間を開けてしまって申し訳ありません。
予告通りフェイなのパラレル小説投下です。


前書き
スミマセンorz全然甘くなかったです。っていうか…なんか前半はギャグ、後半シリアスかも。


125 :この温もりをただ抱きしめたくて [sage] :2008/02/26(火) 01:00:07 ID:RMr8kpRF

第二十三章 これから




何だろう

何かに包まれているような感覚

温もりが、心地良い

ゆっくりと目を開ける

そこにいたのは…


************


なのは達が隊長・フォワード陣全員で見舞いに来ると、彼女が目を覚ました。

「なの…は?」

呆然と上を見ていた顔がこちらを向き、身体を起こした。
なのはとはやては驚いて彼女の下に駆け寄った。

「起き上がって大丈夫なの!?」

フェイトはボーッとしたままだ。

「なのは…」

フェイトはそのまま近づいてきたなのはを抱き寄せた。

126 :この温もりをただ抱きしめたくて [sage] :2008/02/26(火) 01:01:05 ID:RMr8kpRF
「フェ、フェイト!?」

皆の前で急に抱き寄せられて、驚いて声を上げた。

しかし

急に首筋にピリッとした痛みを感じた。

「ふあぁっ!!!」

噛まれたんだと気づく前にあの気持ちよさが駆け巡って、腰が抜けた。

「何しとるん!!」

はやてはフェイトを引っぱたいた。その拍子に意識が完全に覚醒したのか、フェイトは目を瞬かせた。

「あ…れ?私、何してた?」

ふと、抱きしめていたその人の顔を見た。その顔は茹で蛸のように真っ赤になっていた。

「フェイトの…ばかぁあっ!!」

起きてからまだ数分と経たないうちに、フェイトは平手を二発も食らった。


************


127 :この温もりをただ抱きしめたくて [sage] :2008/02/26(火) 01:01:35 ID:RMr8kpRF
結果的に言えば、戦争――のちに第二次聖戦と呼ばれるが――は初日、二日目にして
首謀者二人が死亡、という形であっけない幕引きだった。
これだけ大規模な戦争がたった二日で終わったというのもかなり稀だろう。


でも、この結末は、あのときから決まっていたのかもしれない。


戦いが終わってから三日経った。私やはやてちゃんは、身体的ダメージはほぼ無かったので、今日から出勤することにした。
さっきフェイトの病室に行ったのだが…まあ、色々とあってすぐに戻ってきてしまった。彼女もまた寝ているらしい。

寝起き、悪かったんだ…。

噛まれたことは驚いたが、また新たな発見が出来たことに頬が緩んだ。

「なのはちゃ〜ん?廊下歩きながらニヤニヤするんはやめといた方がええよ?」

いつの間にか、隣りにいたはやてちゃんが私を苦笑してみている。

「に、ニヤニヤなんかしてないよ!!」

慌てて両手を振って否定する。

「そうかぁ〜?」

はやてがからかうように私の顔をのぞき込んだ。

「ま、今度は寝惚けてへんやろから、後で行ってあげな?」
「はやてちゃん!!」
「はいはい。それより」

軽く私をいなして、はやては打って変わり真剣な顔を見せた。

128 :この温もりをただ抱きしめたくて [sage] :2008/02/26(火) 01:02:02 ID:RMr8kpRF
「あのホムンクルス達について、ちょっとやって欲しいことがあるんやけど…」

確か全部で十二人。人工的に作られ、何も知らずに命令に従っていただけの子達を、頭から
決めつけて処分してしまうのはどうかと思っていたが。
ちなみに、アリシアは事件に直接的には関わっていないので、話を聞かれることはあっても
それ以上のことをされることはなかった。
彼女はもうすでにアースラの組織に入っている。

「でもその前に…こちらに権限がある訳じゃないんでしょう?」

なのはははやてに問い返す。

「いや、それがな…お偉いさん達は第六教会の栄誉を称えて処分は私らに任す言うとんのや。でもな…」
「厄介払いだね…」

なのはははやての言葉を受け継いだ。簡単に言えば、面倒なのだ。本部はそれ以外の対応でもう手一杯なのは分かっている。

「そうやな…。でも、とりあえず更正プログラムを受けてもらうように手配はしたんやけど…」
「どこの教会に?」

元々どの支部よりも人数が少ない第六教会だけで、そんなに手が回るとも思えない。

「いや、アースラや」
「…本気?」

ホムンクルスをバンパイアに更正させようとするなら、当然批難が出るに決まっている。

「だから、そこでなのはちゃんに頼み事があるねん」
「…何?」
「いや、更正プログラムの確認と、実施しているときの監視役や。かなり時間取られると思うんやけど…」

129 :この温もりをただ抱きしめたくて [sage] :2008/02/26(火) 01:02:57 ID:RMr8kpRF
つまり、教導官の仕事があまり出来なくなるということか。
あまりにも深刻そうに言うので、何かと心配になった。

「いいよ、そんなこと」

なのはが快く承諾すると、はやてはあからさまにホッとしたようだった。

「しかし、あれやなぁ。内部に敵がおったことに、聖王教会本部は相当焦っとる。
 やから、もっと他の教会支部との連携を考えろ言うてんのに…」

はやてはもう一つ気になっていたことを口に出した。
実際あの大がかりな戦争にすぐに対応できたのは私達第六教会と他一つ。
次の日になってもたった三教会しか動かなかった。

「頑張って…変えられると良いんだけどね……」
「でも、なのはちゃんは現場で教えとる方がええんやろ?」
「まあね」

ずるいなぁ、とはやては頬を膨らました。

130 :この温もりをただ抱きしめたくて [sage] :2008/02/26(火) 01:03:38 ID:RMr8kpRF
「まあ…嘆いてもしゃあないし…頑張りますか?自分達の場所で」

はやては一度伸びをして笑った。

「うん、そうだね」

なのはも笑い返した。



まだまだやるべきことはある


今はまだ、一歩ずつ


いつか大きな進歩になるように



続く



後書き
次章は(といっても最終章だけど)甘甘です!!多分!!


149 :アクエリアス [sage] :2008/02/26(火) 23:41:38 ID:RMr8kpRF
多分、椅子に座ってるときに額に指を当てると立てなくなるっていうのと同じ原理じゃないかと…違うか。

よし!フェイなのパラレル小説最終章行きます!!


前書き
口から砂糖を出すくらいの甘さを目標にしてみたつもり


150 :この温もりをただ抱きしめたくて [sage] :2008/02/26(火) 23:43:13 ID:RMr8kpRF

最終章 温もり




私は木陰でのんびりと柔らかい風を感じていた。

もうすぐ、春が来るんだ。

そう思うだけで、頬が緩んだ。

「フェイト…」

名前を呼ばれる。

「何?なのは」

私はそう言って振り返る。
彼女ははにかんだように笑い、私の隣りに座った。

「病室にいなきゃ駄目でしょ?」
「だって…」

真っ白で何もない部屋なんて、有害とまでは言わないが、気持ち悪い以外のなにものでもない。
だから勝手に点滴を早めて、終わったらそのまま出てきてしまった。木陰にいるのも、日には当たりたくないからだ。
普段なら何でもないが、弱っている今はすごく体力を消耗する。

「なんか…夢みたいだったね……」
「そう…?」

実際まだ終戦してから一週間しか経っておらず、破壊された教会内部も森も雑然としている。

151 :この温もりをただ抱きしめたくて [sage] :2008/02/26(火) 23:43:55 ID:RMr8kpRF
「…怪我は大丈夫?」
「うん。一カ所以外は…もう治ったかな?」

銀で受けた傷は治るのに人並み以下の時間がかかる。まだまだ治りそうもない。

「痛くない?」

そう言って、怪我の場所を恐る恐る撫でた。

「んっ…」
「ご、ごめん!痛かった!?」

彼女が慌てて手を引っ込めた。

「大丈夫だよ…」

引っ込めようとする手を掴んだ。
私はその手を掴んだまま横になると、彼女の膝に頭を乗せ、目を瞑った。
掴んでいた手は額に置く。

「フェイト!?」
「このままで…いて欲しいな」

呼びかけの意味をすぐ汲み取って答える。彼女が一つため息をついたのが聞こえた。

「しょうがないなぁ、もう。……動けるようになったら、色々手伝ってよね…」
「……分かってるよ」

やっと、始まったのだから。

152 :この温もりをただ抱きしめたくて [sage] :2008/02/26(火) 23:44:36 ID:RMr8kpRF
「フェイト…」

私は目を開いた。目の前に彼女の桔梗色の瞳。それは彼女の穏やかな心そのものだった。

「大丈夫だよ……」

私はいつの間にか険しい顔をしていたらしい。彼女が子供にするように私の頭を撫でた。

「絶対、皆仲良く暮らせる時代が来るよ。そのために私達は動いてるんだし、フェイトも頑張るんでしょ?」
「そうだね」

私は笑った。こんなに穏やかに笑えるようになったのも、彼女のおかげだ。
彼女といると、色んな感情が出てくる。
喜びも驚きも、悲しみも。……愛おしいという気持ちも。

ふと思いつき、私は彼女の膝からおりて、地面に寝転がる。
今度は何だろうと不思議そうに私を見ている彼女。
私はそんな彼女の腕を引いた。

「はにゃぁっ!?」

不思議な声を上げて、私に引かれるまま私の上に乗っかった。
それを機に、私は彼女を逃がさんといわんばかりに抱きしめた。

「ちょ…!?こんなことしたら…!!」

私は抗議の声を上げる彼女の唇をそっと奪った。

「こんなことしたら…何?」

私は笑顔で答えた。固まっていた彼女の顔が真っ赤になり、それを隠すように私の胸に顔を埋めた。

153 :この温もりをただ抱きしめたくて [sage] :2008/02/26(火) 23:45:35 ID:RMr8kpRF
「ばかぁ…」
「だって、前に私の唇奪ったから…仕返し♪」
「だからって…!」

そこまで言って、再び顔を埋め、足をバタバタさせた。

「えっ…!ちょっと!!痛っ!痛いって!!」

流石に上で暴れられれば痛い。

「フェイトなんか知らない!!」

腕から逃れられ、背を向けられてフェイトは狼狽えた。

「ごめん!ごめんってば!!」
「本当に思ってる?」

なのはが頭だけ振り返ってフェイトを見た。

「思ってます」

正座をして、まさに反省のポーズでそう返す。

154 :この温もりをただ抱きしめたくて [sage] :2008/02/26(火) 23:47:33 ID:RMr8kpRF
「じゃあ、ちゃんとキス、して…?」

予想外の言葉にフェイトは顔を上げた。

「ね…?」

なのはがグッと寄ってくる。

「うん……」

フェイトもそんななのはの匂いに吸い寄せられるように近づき、腕を回して引き寄せた。

二人の距離が更に縮まり、ゼロになる。

155 :この温もりをただ抱きしめたくて [sage] :2008/02/26(火) 23:48:30 ID:RMr8kpRF
温もり


彼女の、温もり


もう絶対に離さない


この暖かさを


この温もりを


永遠に…




Fin.



156 :アクエリアス [sage] :2008/02/26(火) 23:50:55 ID:RMr8kpRF
後書き

終 わ っ た

アホな戯れ言に付き合ってくださりありがとうございます!いつもGJくれて凄く嬉しかったです!!。・゚・(ノД`)・゚・。
本はと言えば、某水樹さんヒロインアニメからなんですよね…。かぷ、ちゅ〜に感謝!!

とりあえず、何か番外編書きたいですね…どんなのがいいでしょうか?
もしかしたらノリで書いちゃうかもしれませんwww
2008年06月03日(火) 16:57:28 Modified by sienn1




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