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なのはちゃんとの交際が始まって、何ヶ月か経った頃。
その日、私と彼女は映画館近くの喫茶店にいた。
彼女は微笑を浮かべながら、私に向かい合って座っていた。私の頬もきっと同じように緩んでいただろう。
彼女の髪型は普段のサイドテールではなく真っ直ぐに下ろされたロングで、
黒のヘアバンドがそれにアクセントを加えていた。
髪を下ろした彼女は、可愛いと言うよりは綺麗という印象が強い。
逆に私は普段のロングではなく、低めの位置で髪を束ねた一本結びだった。
髪を縛るのにはピンクのリボンを使い、いつも付けている白いヘアバンドは外している。
誰か知り合いに見つかっても、遠目なら誤魔化せるかもしれないという程度の変装だった。
それでも気休めには違いなかったが。
それよりも、互いに平常と違う装いをしていることが重要だった。
学校で五人と一緒にいる時の姿ではなく、彼女しか知らない私の姿と私しか知らない彼女の姿でいることが、
私を彼女の特別だと強く意識させたからだ。
いわばそれは五人の世界から私となのはちゃんを切り離し、二人だけの世界に造り替える一種の魔法であった。

注文を頼んでから、先ほど一緒に見ていた映画の感想を言い合っていた。
失くした恋人の記憶に、夢の中で縋りつく男の話。
夢と現とどちらで生きる方が幸せだったのかと私が言うと、夢の中でも永遠なんてないと彼女は切って捨てた。
妙に苦々しい口調だった。
そのままとりとめのない話をしていると、注文の品が来た。
ジュースが注がれた大きいグラスにストローが二本刺さった――いわゆるカップル向けのドリンクである。
なのはちゃんは手早くストローを咥えて中身を吸うと、すずかちゃんも飲みなよとあっさり薦めてきた。
頼んだのは私だが、いざ飲むとなると少し気恥ずかしい。
それでも話してて喉渇いたでしょと彼女が急かすので、恐る恐るストローを口につけた。
吸い上げたジュースはとてつもなく甘かった。

私は幸せだった。
もしこれが夢ならば、永遠に目が覚めなくても良いと思うほどに。


【君の恋が嘘でも僕は】


抱いてくださいと、一回だけ彼女に頼んだことがあった。
するとなのはちゃんは、すずかちゃんはいけない子だねと言ってそれを拒んだ。
彼女は過度の性的接触を嫌った。
ハグやバードキスは数え切れない程したけど、フレンチキスとなると一度もしたことがない。
無理矢理舌をねじ込もうとすれば、彼女は途端に顔を引き離した。
どうせ終わる恋ならば、ただ一つだけでも確かなものが欲しかった。
ただ一度だけでも交わることができれば、私の中で彼女を永遠に出来るというのに。
あわよくば彼女の心の一片を奪い去れるかも知れない。
そのためならば、私はどんな悪い子になろうとも構わなかった。

デートから戻ってきた私は、まず鍵付きの引き出しを開けてその中にリボンと映画の半券をしまい込んだ。
彼女との交際の記録のようなものだ。たまに一人で眺めて悦に浸ることもある。
ヘアバンドをつけて平常の月村すずかに戻った私は、いつも通りに食事を済ませ入浴し、
私室のベッドの上で物思いに耽っていた。
なのはちゃんと出掛けた日はいつもこうだ。普段の就寝時間になっても、精神が昂ぶったまま寝付けない。
窓を見ると、鏡になったそれが私の顔を映し出した。
何故彼女は私と交わることを厭うのか。抱くのはともかくとしても舌を絡めるくらいなら。
期限付きとはいえ、私は彼女の一番であるはずなのに。
瞬きをすると、鏡の中の自分が一瞬だけなのはちゃんになったように感じた。酷い錯覚だ。
こうなるともう駄目だ。頭から彼女のことが離れなくなる。身体が彼女のことを求めて止まなくなる。
今の私は盛りのついた猫同然だった。そのまま衝動のままに、服の下に手を伸ばした。



 ◆

彼女が、うっかり指先を切ったことが一度あった。
刃物の扱いを誤ったのかそれとも紙のふちで擦ったのか、理由はよく覚えていない。
苦笑する彼女の指に、赤い雫がぷっくりと浮かんだ。私にはそれが極上の甘露に見えた。
すぐさま彼女の手を掴んで、その血に舌を這わせた。
ぺろりとそれを舐め取って、口の中で味わうように転がす。
そのまま彼女が何を言うのも聞かず、その指を口の中に咥え込んだ。
鉄の臭いが鼻膣に昇ったが、それすら興奮する要素でしかなかった。
傷口に唾液を垂らして、少し血液の混ざったそれを舌で拭き取り喉の奥へと流し込む。
消毒液と脱脂綿を使って丁寧に手当てをするように。
さらに血を出させようと、傷の周りを甘噛みしてちろちろと舌先で舐め回した。
口の中でぴちゃぴちゃと音が立つのが頭の中で響く。
挙句には喉の奥まで指を差し込んで、付け根から思い切り吸い上げた。
私が我に返ったのは、赤面したなのはちゃんがもういいからと言った時だった。
慌てて口を放すと、私の舌先と彼女の指先に透明な糸が一本吊られてすぐに切れた。
指はもうしわしわにふやけていた。必死に謝ると、彼女は呆れ気味に許してくれた。
唯一それが、彼女の体液を得ることができた経験だった。
唾液でも愛液でもなく一滴の血液が、私と彼女を初めて交わらせたのだ。
赤ちゃんのように指をしゃぶり上げる、フェラチオにも似た疑似性交に私は完全に陶酔していた。
それからの私は暫く、彼女がどこか怪我をしていないか目敏く見るようになった。
まるで吸血鬼のように。

目が覚めると、そんな歪な記憶が思い返された。
欲情した私は何度か気をやった後に、ぐったりと倒れ込むように眠ったのだった。
目覚めの気分は甚だ悪い。
ふと自分の指を見た。先ほどまで自分の体液に塗れていたそれは、まだ僅かに湿っている。
内股のあたりは酷い有様で、掻きだした愛液が飛び散ってぐしょぐしょになっていた。
お姉ちゃんもノエルさんもファリンも、まだ眠っている頃だろう。目が覚める前にシャワーを浴びてしまおう。
クロゼットから、服と下着を適当に選んで手に取った。動くと肌に張り付いたショーツが余計に気持ち悪い。

部屋を出る前に、換気のつもりで窓を開けた。途端に冷たい空気が流れ込んでくる。
少し身を震わせて、ふと空を見上げる。日はまだ昇っていなかったが、東の空が赤色に染まっていた。
影一つない世界に、何処までも濃い青色の空。地面に向かって墜ちてゆく飛行機雲。
夜の終わりも夢の終わりも、もうすぐそこに来ていた。

 ◆

おしまい。
仮題「恋するすずかちゃんはせつなくてなのはさんを想うとすぐ発情しちゃうの」
前々作と前作の間を繋げる感じ。らぶらぶが無理ならエロスに走ればいいじゃないと思ったけど結局駄目だった。
この一連のすずなの掌編もこれでおしまいかな、と。





【おまけ】

アリサちゃんにデートに連れ出されて、二人で町中をぶらぶら歩いていた時の話。
ふと彼女がこんなことを言った。
「もしあたしが、すずかとなのはが付き合ってるってバラしたらどうなったかな」
難しい質問だった。
「……良いようには、ならないと思う」
「だよねえ、フェイトなんかどんな顔をするやら」
フェイトちゃんのなのはちゃんへの好意――最早執着と言ってもいいそれは、私にだってありありと分かる。
「でもね、もしバレちゃったとしてさ。あたしもなのはが好きだって言って
二人でしがみついたら、なのははあっちの世界には行かなかったんじゃないかって」
……その可能性は、考えたことがなかった。
「きっと今頃こうやって三人で歩いて、進路どうするって話をしてたかも知れない。
すずかは理工の方に行くんでしょ?
なのはも機械には詳しかったし理数系得意だったから、同じ大学目指したかも」
あたしは学部は違うだろうけど、とアリサちゃんは付け足した。
一緒に電子ラジオを組み立てた時、妙にはしゃいでいた彼女を思い出した。
なのはちゃんと同じ大学。隣にはアリサちゃんもいる。
それはかつての三人の世界だ。幼い私が永遠に続くと信じていたものだ。
そして彼女はもう何処にも行かずに、私達とずっと一緒にいる。
「あたし達はまた、あの頃に戻れた」
だけども。

「でも、なのはちゃんは調理学校に行ったかも知れない」
「ああ、翠屋を継ぐならそうなっちゃうか」
アリサちゃんは息を吐いた。それに、と私は続けた。
「同じ大学に行ったとしても、いつかまた道は分かれるよ。
アリサちゃんはお父さんの跡を継ぐだろうし、私は機械のエンジニアになるかも知れない。
なのはちゃんだって翠屋の二代目になるのなら、もう私達だけの世界にはいられない」
「それでも、なのははこっちの世界にいる」
「こっちの世界でも遠くに――例えば海外にいるのと、あっちの世界にいるのとにそれほど違いはあるのかな」
するとアリサちゃんは、違うわと激昂した。
「覚えてるでしょ、小学五年生の時になのはが大怪我して半年休んだのを!
フェイトが世界が滅んだような顔して、はやてと毎日お見舞いに行ってたのを!
またあんなことになるかも知れないのに!」
「あの時とは、もう違うよ」
「違わないわ、すずかなら分かるでしょ!?
あたし達が呑気に授業受けてたら、ある日突然何処とも知れない世界で誰とも知れない奴の所為で
なのはが死んだなんて言われる夢見て、どんな気持ちで目を覚ますか!」
彼女は捲し立てた。その気持ちは痛いほどに分かる。そのような夢は私も幾度となく見た。
起きても暫く動悸が収まらずに、大量の寝汗がたまらなく不快だった。
それでも。
「あの頃には、もう戻れない」
私は彼女を遮って言った。
「だから永遠なんてないって、なのはちゃんは言ったんだ」


ふと周りを見渡すと、なのはちゃんと行った映画館がすぐそこにあった。
恋人の記憶に夢で縋った男。彼女の優しさに縋って夢に溺れた私。
それでも結局、夢は所詮夢でしかないのだ。
私はなのはちゃんがいなくなることに泣いていたのではなく、
現実のなのはちゃんを無理矢理にでも引き留められない自分が情けなくて泣いていたのだ。
アリサちゃんは暫く俯いていた。
彼女も私と同じだ。自分が嫌になって泣いていたはずなのだ。彼女は私より先にそれに気付いていた。
「ねえ。やっぱりアリサちゃんも、なのはちゃんのこと好き?」
「そんなの、当たり前に決まってるじゃない」
少し涙ぐんだ声だった。
私はアリサちゃんを抱き寄せて、しゃくり上げる彼女の背中を暫くさすっていた。

空を見上げると、眩しい太陽が照りつけていた。
夜は既に明けて、夢もとうに過ぎ去っていた。
もう私もアリサちゃんも、彼女の瞳に映る自分を見て悲しむのではなく。
ただ純粋に彼女を想って涙を流せるのだと分かった。

 ◆
2012年11月18日(日) 22:40:03 Modified by sforzato0




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