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Hello, Again 21



342 名前: Hello, Again [sage] 投稿日: 2008/09/13(土) 21:09:49 ID:E53JJvw9


*  *  *  *  *



五年後



*  *  *  



本日早朝、第107管理外世界より現地にて潜入捜査のため
長期出張していたT.ランスターとその補佐官の二名が帰還。
現地ウィルスの感染等異常もなく任務は無事遂行された。
報告を終えた後、予定通りの時間に解散し、そのまま三日間の休暇に入る。


ティアナは自らの執務官室に戻ると
二週間前に室内常備の冷凍庫に用意してあった小さな紙カップとスプーンを取り出した。
表面の紙を剥がし、固いくらい冷えたアイスクリームを口に入れた。

「くぅ〜 生き返る!」
「はは、準備いいですね」
共に任務から戻った若い補佐官が笑う。
「管理外107から帰って来るともなれば当然でしょ?あなたはあの暑さ平気なの?」
「僕?僕は――」
「あ、そうだった」
ティアナは自らの質問に彼が答える前に言った。
「そっか、あなたの育った世界でもあんなふうに暑い年があるものね」
「……ええ、よくご存知ですね」
懐かしい気持ちになり思わず微笑んでしまうティアナ。
当時ティアナにとって目標の上司であった彼女のことが思い出される。
彼女は今頃――

「緊張してるかな……」

「え?」

帰り支度をしていた補佐官は振り向いて不思議そうにティアナを見た。
「あぁ、別に何でもないわ」
「そうですか……?」
「試験に受かった新人さんのことを考えてただけ。今日から各地の上官に挨拶に行ってるんだなって」
なにやら嬉しそうに話すティアナの様子に、補佐官の青年にも自然と笑みが浮かんだ。





343 名前: Hello, Again [sage] 投稿日: 2008/09/13(土) 21:12:58 ID:E53JJvw9


「僕も早く執務官になれるようにがんばらないと」
「そうねー、それじゃ休みの間も死ぬ気で勉強することね」
「はい、そのつもりです」
「それから並大抵の任務でへこたれないこと!何があっても諦めないこと!」
「もちろんです!」
「お、なかなか根性あるわね」
「こう見えても僕、最近まで高町教導官のところで鍛えられていましたから」
「あぁ、なら大丈夫だわ」
そう言って笑うティアナに青年は軽く敬礼をすると、それでは、と大きなトランクを握った。
「僕はちょっと約束があるのでこれで」
「……なるほどね〜 道理で荷をまとめるのが早いワケだ」
「そんなこと言って、執務官の方こそいつも待ってる人が――」
「それはいいから!もうさっとと帰りなさいよっ」
ティアナに急かされて、青年はクスクスと笑いながら部屋の扉へ向った。

「では執務官、休暇明けにまた」
「ええ、休暇明けに」




一人執務官室に残ったティアナは、
今は自らの場所である立派なオフィスチェアに手を伸ばし、そっと触れた。
いつかここに座っていた自分以外の人物が思い浮かぶ。

昔は自分の方が彼女を追っていたのに不思議なものだ。
けれど今なら彼女がどんな気持ちで自分たちを見守ってくれていたのかがよく解る。
色々なことが変わってしまったけれど、ティアナはそれでも
やっと彼女と同じステージに立つことが出来ることを誇らしく思う。

彼女は今頃やっと胸を撫で下ろしているころだろうか。
それとも、もう家族の待つ帰路についただろうか。

ティアナはそんなふうに想いを馳せた。



*  *  *





344 名前: Hello, Again [sage] 投稿日: 2008/09/13(土) 21:16:20 ID:E53JJvw9




クラナガン、時空管理局ミッドチルダ地上本部。

幾つもの飛行機雲が交差する快晴の空の下。

本館正面に位置するゲートのすぐ外に、丁度一台の真新しい車が止まった。
初心者マーク付きの、その真っ白な車体を確認するや否や、
局の敷地内から漆黒の制服に身を包んだ人物が歩いて来る。
運転席からなのはが出て来くると、その足取りは、そして鼓動は一掃早まる。
「なのは」
「フェイトちゃん、お疲れさま」
フェイトはなのはのもとに一気に駆け寄り、満面の笑顔を見せた。
「どうだった?お偉いさんばっかりで緊張した?」
「うん、でも明後日からはちゃんとした任務につけるから」
フェイトがそう言うと、なのはは今から名残惜しいと言わんばかりに
黒い制服の腕を引き寄せ、その肩に額を乗せた。
「あぁ、これからなかなか逢えなくなっちゃうんだ……」
「なのは……」
「家に帰って来なくなっちゃうんだ……」
フェイトに髪を撫でられながら、なのはは言った。
「フェイトちゃんの嘘つきー 私と同じ教導官になるって言ったのになぁ」
その声は拗ねているようではなく、どこか冗談めいていた。
「ごめん、なのは……でもね、教導官とは違うけど今でもなのはのようになりたいと思ってるよ」
「……そうなの?」
「うん。私を救ってくれた君のようになりたい、そう思ってる。
それで母さんや私のような辛い思いをしている人たちを助けたいから……この道を選ぶのがいいと思ったんだ」
「…………そっか……うん」
なのはは既に微笑んでいた顔を上げ、静かで優しい、そして今は希望に満ちあふれた瞳を見つめた。

実際のところ、なのははフェイトがそんなふうに思っていることをもう知っていた。
フェイトなら、いつかそんなふうに思うのだろうと知っていた。
だから書斎の本を片手にこっそりティアナに会いに行くフェイトに気づいても、何も言わなかった。
ある日突然執務官試験に受かったと告げられた日にも、本当は驚かなかった。
けれどなのはを驚かせようとソワソワするフェイトが可愛くて、知らないフリをした。
本当はフェイトが以前と同じ道を選んだことが嬉しくてたまらない。
フェイトはどんなことがあってもフェイトなんだと思えるから。
そしていつかはこうして純粋な気持ちを教えてくれるとなのはは確信していた。
が……

「だけど執務官になろうと思った一番の理由は他にあるよ」





345 名前: Hello, Again [sage] 投稿日: 2008/09/13(土) 21:20:22 ID:E53JJvw9


なのはが再びフェイトの肩に頭を凭せかけようとしたそのとき。
そう言われて、どうやら自分が知らなかったこともあるのだとなのはは思った。
「え、何??」
「う、うん、その……」
フェイトは急に落ち着きをなくし、仄かに頬を染めた。

「……この制服、なのはがかっこいいって言ったから……」

「へ……?」
「……覚えてないの?」
「や、お、覚えてる……けど……」
「急に着て見せて、なのはを喜ばせたかったんだ。なのははあまりびっくりしてくれなかったけどね。
それからね、昔誰かに、高町教導官は何も出来なくなった私に失望してるって言われて、
本当はずっと悔しくて……なのはに頼られる人になりたくて……それからだよ、執務官を目指そうと思ったのは」

それは五年前、本局機密区間の小会議室である提督との会話。
クロノに制止され、『失望なんかしてない』と口に出来なかったあのときのこと。

「フェイトちゃん……聞こえてたの?あの会話……ごめん、酷いこと言われたのに私何も言い返せなくて――」
「もういいんだ、そんなの。だって……」
「……?」
「これで少しは近づけたでしょ……? なのはが好きだった人に」
「え……」
「……執務官になったこと、なのはは喜んでくれなかった?私のことまた好きになってくれない……?」

まさかフェイトがそんなことを考えていたとは知りもしなかった。
なのは当然驚いて固まってしまう。
しかしその嬉しい事実を考えれば、表情はすぐに柔らかく溶けてゆくように笑顔へと変化する。
フェイトの制服の腕を掴む手に、キュッと力が隠る。

「……好きだったし、好きだし、好きになった」

そう告げてから、息の掛かるほどすぐ側で向いあうフェイトの顔を見ると、なんだか困ったような表情をしている。
「……私が思ってる『好き』なら嬉しいんだけどな……」
「えー?なにそれー こんなに好きなのに不満でもあるの?」
「そうじゃないけど……」
「ほら、フェイトちゃん」
「ん?」
なのははほんの少し背伸びをしてフェイトの額に軽く口づけた。
「ね?解った?」
「……」
トン、と踵が地に着いたころ、フェイトは思わず閉じた瞳を開いて言った。
「それじゃあさ、」
「うん?」
「これ私が渡してもいいかな?」





346 名前: Hello, Again [sage] 投稿日: 2008/09/13(土) 21:24:21 ID:E53JJvw9


フェイトはポケットに手を入れると、無造作に一枚の封筒を取り出した。
「え?何?」
「なのは受け取ってくれる?」
キョトンとするなのはにフェイトは、大したものではないけれど、というような具合に、
はい、と、花の模様がついたそれを差し出した。
「……何?お手紙……?」
「ううん、違うよ。でも……何か書くつもりだったみたい」
「……??」
なのははますます訳が解らないままに、とりあえず目の前の封筒を受け取った。
僅かにカチャンと音がする。
「何が入って…………………………え?」


封筒の口を開くと、四つ折りになった便箋が入っていた。
開くと、そこには何も書かれていなくて…………
けれどそこに挟まれていた二つの指輪が、なのはの掌の上にポトンと落ちて出た。


「これって……」

いつかなのはが買ったものとそっくりの指輪。

けれどあのときのものとは違う。
レプリカではない、本物のそれだった。
その内側にはもちろん――

「片方はなのはの名前で、もう片方は私の名前が入ってる」
「……うん……」
「ずっと前に家で見つけたんだけど……きっと私が買ったものだから、私が持っててもよかったでしょ?」
「うん……」
「驚かせようとして便箋で隠してたのかな?それとも私のことだから、
ここに何か書こうとずっと考えていて渡しそびれちゃったのかな?……はは、多分その両方だよね」
「うん……」
「私ね、執務官になれたらこれを渡そうと思ったんだ。執務官になったらなのはが私のことを、その……」
「うん……」
「……なのは?……聞いてる?」





347 名前: Hello, Again [sage] 投稿日: 2008/09/13(土) 21:29:04 ID:E53JJvw9


「え?」
呆然と指輪を見つめていたなのはだが、小首を傾げるフェイトに漸く気づき、慌てて顔を上げた。
すると次の瞬間、なのはをフェイトの腕の中に抱きしめられていた。
「ちょ、フェイトちゃ――」
不意打ちのせいで、なのはは持っていた便箋を手放してしまった。
指輪だけはなんとか手の中に握りしめて落ちるのを防いだが、
白紙の紙は風に乗ってひらひらと大空に流れていった。
「飛んでいっちゃった……」
「もう必要ないからいいよ」
「……フェイトちゃん……?ここ、本部の真ん前だって解ってる……?」
「うん……」
なのははフェイトの様子を伺おうとするが、解いてほしくないこの体制が表情を見せてくれない。
「ねぇなのは」
フェイトはなのはの耳元で囁いた。
「あの紙に書こうとしたこと、私が代わりに今教えてあげる」
「……うん?」
そしてフェイトはこう言った。


「なのは、愛してる」


「私のものになって」


フェイトは気が遠くなるほど熱く真っ赤になった顔を見られないように、
さらに華奢な体を抱きしめて離さなかった。

「……だ、だめ?なのは……?」

なのははフェイトの腕の中で、眼の奥が熱くなるのをじっと堪えた。
こんなに手が震えても、息が出来ないくらい胸が熱くても、今だけは強がってみせる。

うるさい心音が少しは落ち着くよう深呼吸をし、
そしてやっと――

やっと口にするときが来た。
随分長い間言えなかった、言いたかったその言葉を。


「私も愛してる」

「フェイトちゃんの鈍感」

「フェイトちゃんこそ私のものだってこと、まだ気づかない?」



*  *  *




Hello, Again 22
2009年08月30日(日) 17:48:06 Modified by coyote2000




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