Love Again 2
576 名前: Love Again 2 [sage] 投稿日: 2008/10/01(水) 22:31:31 ID:vkQRsPh3
タイトル迷いましたがLove Againにします。
ご期待に沿えるようがんばる。。。
前書き
19スレからこの22スレまで投下された長編、Hello, Againのいち読者による番外編です。
なので、本家の前後編を読んでないと何のことか分かりません。
空白の五年間を全部じゃないけど少し埋めてみようと……
後ろに行くほど甘くなる……予定
ゴメンなさい前回の分はタイトルが「ヘロアゲ番外1」です。
577 名前: Love Again 2 [sage] 投稿日: 2008/10/01(水) 22:32:22 ID:vkQRsPh3
* * *
なのはが箱をフェイトに渡し書斎を出た後、フェイトはその白い箱を机に置き眺めた。
私物だからということなのだろうか、管理局の印が入った封はそのままにされ、少し黄色く変色している。
しばらく躊躇ったのち、思い切って封を剥がしてみた。
一番上に、保護施設からの手紙類。そして気に入って使っていたものなのか、官給品ではない文房具類が少し。法務関係のハンドブックが数冊。
その下にフォトスタンドがいくつか重ねてあった。
ひとつは、母とアリシアの写真。母はフェイトの持つ記憶の中と同じに静かに微笑んでいる。あの日資料室でP.T.事件のことを知った後も、フェイトの母への想いは変わらなかった。
母はもうこの世にはいない。そして真実を知るまでは自分自身だと信じていた、アリシアも。
アルフと私、バルディッシュが残されて―― けれど今は自分にはなのはがいて。今では母のことを時に想う時も、胸の痛みを感じることはなくなっていた。
もうひとつは、ハラオウン家の集合写真。そこに写っている自分は少し困ったように、だが笑顔で家族に囲まれている。私、本当にいい家族に恵まれたんだ――
なのははリンディをフェイトのもう一人の本当の母さんだと言った。フェイトは結局ハラオウン家に戻らないという選択をしたが、リンディは今もいろいろとフェイトの相談に乗ってくれている。母さん、と呼ぶ時はまだ少し照れてしまうけど……
そして、最後にヴィヴィオを抱き上げているなのはの写真。なのはの優しげな微笑みに、思わずフェイトも微笑み返した。
箱の中に最後に残ったものがあった。
取り上げてみると、それはフォトアルバムのようで、携帯用なのか版型は小さく、ページもそれほど多くはなかった。
フェイトはその飾り気のない黒の表紙をめくる。
最初の二枚は小さな頃のエリオとキャロの写真。――エリオもキャロも、うん、今も面影は十分残ってるね……
二人の仕事の関係もあり、最近はなかなか会えなくなっていたが、二人の元の境遇や、フェイトが保護者になった経緯を知った今なら、フェイトがどんな想いでこの写真をアルバムの最初に入れていたか分かる気がした。
その次は、白い学校制服姿の少女たちの写真。小学生……?そしてこっちの子がアリサで、こっちがすずかかな?
なのはから、自分が小学校三年から中学校の六年間を日本で過ごした事は聞いていたが、アリサ、すずかとはメールをやり取りしただけで、会ったことはまだない。
ページをめくると、同じ白い制服でなのは一人が写り、レンズに笑いかけている写真。小さい頃のなのは、可愛い――
次は中学校の卒業式と思われる、フェイト、なのは、はやてが、ピンクの花が満開の木の下で写っている写真。
いつか近いうちに日本に行ってみたい。とフェイトは思った。
なのはと通った学校やハラオウンの家、なのはの実家の喫茶店にも行ってみたい。
なのはの両親兄弟、アリサとすずかにも会ってみたい――
その隣は機動六課時代のものと思われる、集合写真。
全て今の自分の記憶にはない思い出の写真だった。
だがフェイトは、不思議とそれが自分の経験であったような、懐かしいような、暖かい気持ちが溢れ、その気持ちがじんわりと染みてきた。
うん、そうか……私はこんな素敵な人たちと一緒に想いを分け合って、夢を形にしていったんだね……
――きっと自分も出来る。フェイトはそんな気がしてきた。
アルバムのページはあと半分程だった。しばらくその暖かい気持ちをじっと味わったのち、フェイトはページをめくる。
次の写真では、訓練用の隊服を着たフェイトが笑顔でヴィヴィオを肩車し、隣に立つ制服姿のなのはが少し眩しそうにフェイトを見上げている。
今よりやや幼い顔のヴィヴィオは、笑い声が聞こえてきそうなほどの喜びの表情だ。
私なんだかどこかのお父さんみたい……とフェイトは思った。
今はヴィヴィオはフェイトにとっては妹のようなもので、ヴィヴィオの方もフェイトをフェイトママとは呼ばず、なのはが呼ぶのに倣い、フェイトちゃんと呼んでいた。
その写真に写し出された三人の表情は、幸せな夫婦と娘そのもの以外ではありえなかった。そしてなのはの視線は――
その視線と、視線の先にある自分を見ているとフェイトは急にどぎまぎとし、あわてて隣の写真に目をやる。
隣のページには、執務官の漆黒の制服を着たフェイトと、白いスーツ姿の私服のなのは、真ん中に二人に手をつないでもらっているヴィヴィオの写真。
入学式のものだろう。執務官の制服を着ているところを見ると、フェイトは仕事先から直行してきたのかもしれない。
――執務官の制服を含め、家にあった官給品は当の昔に全て返納されていた。個人の情報端末はセキュリティのためか、いったん局に返却され、完全に初期化さたのちにフェイトに戻されていた。
だからフェイトにとって制服姿の自分を見るのは辞職を願い出て、引き返して資料室で倒れたあの雨の日以来となる。
フェイトはしばし自分の制服姿を眺めた。その姿は――過去のものなのに、フェイトにとって未来の自分のように感じられた。
それにしてもなのはのスーツ姿、綺麗だなぁ……普段の教導隊の制服もかっこいいけど、こんなフォーマルな格好のなのはも……フェイトは仄かに頬が熱くなるのを感じて、最後のページをめくる。
――と、そこには黒い台紙があるだけだった。アルバムをめくっている間に写真が落ちたのかと思い、周りを見渡すが、なにも落ちていない。
不思議に思って台紙をふと手でなぞってみた。すると、なにかが挟まっているような感触がしたため、中を探ってみると、パラリと床に写真が落ちた。
床に落ちた写真を拾って裏返してみると、そこにあったのはシーツだけをまとったなのはの寝姿だった――
機動六課で一緒の部屋になったばかりの頃のものだろうか、ベッド脇には管理局の真新しい制服が掛けられている。
この写真の意味は――
さらに頬が熱くなりながらも、フェイトは台紙に堂々とその写真を表向きに貼り直した。
が、結局目のやり場に困り、ページを前に戻す。そして三人が写った写真をもう一度眺める。
これって…やっぱり……やっぱり私となのはは、友達なんかじゃなくて―――
「ね、バルディッシュ」
フェイトは傍に置いたデバイスに話しかけた。
「Yes, Sir」
「バルディッシュは全部知っているんだよね、私たちの出会いから今までのことを…」
「Yes, Sir」
「でもきっと教えてくれないんだよね」
「No, Sir」
寡黙なインテリジェントデバイスは質問にそう答えると、いつもの沈黙に戻った。
「フェイトちゃーん? お風呂次どうぞー?」
なのはにリビングから声を掛けられ、はっとしたフェイトはアルバムを閉じた。
――フォトアルバムは長期航行にフェイトが持ち歩いていたものだった。
個人用の情報端末に入っていた写真データもあったかもしれないが、局で初期化された際に消去されてしまっていただろう。
「うん、わかったー」
……と返事をし、箱の中へ私物を戻した。
Love Again 3,4
タイトル迷いましたがLove Againにします。
ご期待に沿えるようがんばる。。。
前書き
19スレからこの22スレまで投下された長編、Hello, Againのいち読者による番外編です。
なので、本家の前後編を読んでないと何のことか分かりません。
空白の五年間を全部じゃないけど少し埋めてみようと……
後ろに行くほど甘くなる……予定
ゴメンなさい前回の分はタイトルが「ヘロアゲ番外1」です。
577 名前: Love Again 2 [sage] 投稿日: 2008/10/01(水) 22:32:22 ID:vkQRsPh3
* * *
なのはが箱をフェイトに渡し書斎を出た後、フェイトはその白い箱を机に置き眺めた。
私物だからということなのだろうか、管理局の印が入った封はそのままにされ、少し黄色く変色している。
しばらく躊躇ったのち、思い切って封を剥がしてみた。
一番上に、保護施設からの手紙類。そして気に入って使っていたものなのか、官給品ではない文房具類が少し。法務関係のハンドブックが数冊。
その下にフォトスタンドがいくつか重ねてあった。
ひとつは、母とアリシアの写真。母はフェイトの持つ記憶の中と同じに静かに微笑んでいる。あの日資料室でP.T.事件のことを知った後も、フェイトの母への想いは変わらなかった。
母はもうこの世にはいない。そして真実を知るまでは自分自身だと信じていた、アリシアも。
アルフと私、バルディッシュが残されて―― けれど今は自分にはなのはがいて。今では母のことを時に想う時も、胸の痛みを感じることはなくなっていた。
もうひとつは、ハラオウン家の集合写真。そこに写っている自分は少し困ったように、だが笑顔で家族に囲まれている。私、本当にいい家族に恵まれたんだ――
なのははリンディをフェイトのもう一人の本当の母さんだと言った。フェイトは結局ハラオウン家に戻らないという選択をしたが、リンディは今もいろいろとフェイトの相談に乗ってくれている。母さん、と呼ぶ時はまだ少し照れてしまうけど……
そして、最後にヴィヴィオを抱き上げているなのはの写真。なのはの優しげな微笑みに、思わずフェイトも微笑み返した。
箱の中に最後に残ったものがあった。
取り上げてみると、それはフォトアルバムのようで、携帯用なのか版型は小さく、ページもそれほど多くはなかった。
フェイトはその飾り気のない黒の表紙をめくる。
最初の二枚は小さな頃のエリオとキャロの写真。――エリオもキャロも、うん、今も面影は十分残ってるね……
二人の仕事の関係もあり、最近はなかなか会えなくなっていたが、二人の元の境遇や、フェイトが保護者になった経緯を知った今なら、フェイトがどんな想いでこの写真をアルバムの最初に入れていたか分かる気がした。
その次は、白い学校制服姿の少女たちの写真。小学生……?そしてこっちの子がアリサで、こっちがすずかかな?
なのはから、自分が小学校三年から中学校の六年間を日本で過ごした事は聞いていたが、アリサ、すずかとはメールをやり取りしただけで、会ったことはまだない。
ページをめくると、同じ白い制服でなのは一人が写り、レンズに笑いかけている写真。小さい頃のなのは、可愛い――
次は中学校の卒業式と思われる、フェイト、なのは、はやてが、ピンクの花が満開の木の下で写っている写真。
いつか近いうちに日本に行ってみたい。とフェイトは思った。
なのはと通った学校やハラオウンの家、なのはの実家の喫茶店にも行ってみたい。
なのはの両親兄弟、アリサとすずかにも会ってみたい――
その隣は機動六課時代のものと思われる、集合写真。
全て今の自分の記憶にはない思い出の写真だった。
だがフェイトは、不思議とそれが自分の経験であったような、懐かしいような、暖かい気持ちが溢れ、その気持ちがじんわりと染みてきた。
うん、そうか……私はこんな素敵な人たちと一緒に想いを分け合って、夢を形にしていったんだね……
――きっと自分も出来る。フェイトはそんな気がしてきた。
アルバムのページはあと半分程だった。しばらくその暖かい気持ちをじっと味わったのち、フェイトはページをめくる。
次の写真では、訓練用の隊服を着たフェイトが笑顔でヴィヴィオを肩車し、隣に立つ制服姿のなのはが少し眩しそうにフェイトを見上げている。
今よりやや幼い顔のヴィヴィオは、笑い声が聞こえてきそうなほどの喜びの表情だ。
私なんだかどこかのお父さんみたい……とフェイトは思った。
今はヴィヴィオはフェイトにとっては妹のようなもので、ヴィヴィオの方もフェイトをフェイトママとは呼ばず、なのはが呼ぶのに倣い、フェイトちゃんと呼んでいた。
その写真に写し出された三人の表情は、幸せな夫婦と娘そのもの以外ではありえなかった。そしてなのはの視線は――
その視線と、視線の先にある自分を見ているとフェイトは急にどぎまぎとし、あわてて隣の写真に目をやる。
隣のページには、執務官の漆黒の制服を着たフェイトと、白いスーツ姿の私服のなのは、真ん中に二人に手をつないでもらっているヴィヴィオの写真。
入学式のものだろう。執務官の制服を着ているところを見ると、フェイトは仕事先から直行してきたのかもしれない。
――執務官の制服を含め、家にあった官給品は当の昔に全て返納されていた。個人の情報端末はセキュリティのためか、いったん局に返却され、完全に初期化さたのちにフェイトに戻されていた。
だからフェイトにとって制服姿の自分を見るのは辞職を願い出て、引き返して資料室で倒れたあの雨の日以来となる。
フェイトはしばし自分の制服姿を眺めた。その姿は――過去のものなのに、フェイトにとって未来の自分のように感じられた。
それにしてもなのはのスーツ姿、綺麗だなぁ……普段の教導隊の制服もかっこいいけど、こんなフォーマルな格好のなのはも……フェイトは仄かに頬が熱くなるのを感じて、最後のページをめくる。
――と、そこには黒い台紙があるだけだった。アルバムをめくっている間に写真が落ちたのかと思い、周りを見渡すが、なにも落ちていない。
不思議に思って台紙をふと手でなぞってみた。すると、なにかが挟まっているような感触がしたため、中を探ってみると、パラリと床に写真が落ちた。
床に落ちた写真を拾って裏返してみると、そこにあったのはシーツだけをまとったなのはの寝姿だった――
機動六課で一緒の部屋になったばかりの頃のものだろうか、ベッド脇には管理局の真新しい制服が掛けられている。
この写真の意味は――
さらに頬が熱くなりながらも、フェイトは台紙に堂々とその写真を表向きに貼り直した。
が、結局目のやり場に困り、ページを前に戻す。そして三人が写った写真をもう一度眺める。
これって…やっぱり……やっぱり私となのはは、友達なんかじゃなくて―――
「ね、バルディッシュ」
フェイトは傍に置いたデバイスに話しかけた。
「Yes, Sir」
「バルディッシュは全部知っているんだよね、私たちの出会いから今までのことを…」
「Yes, Sir」
「でもきっと教えてくれないんだよね」
「No, Sir」
寡黙なインテリジェントデバイスは質問にそう答えると、いつもの沈黙に戻った。
「フェイトちゃーん? お風呂次どうぞー?」
なのはにリビングから声を掛けられ、はっとしたフェイトはアルバムを閉じた。
――フォトアルバムは長期航行にフェイトが持ち歩いていたものだった。
個人用の情報端末に入っていた写真データもあったかもしれないが、局で初期化された際に消去されてしまっていただろう。
「うん、わかったー」
……と返事をし、箱の中へ私物を戻した。
Love Again 3,4
2011年07月01日(金) 11:31:13 Modified by goodfan_seo