○日本におけるグレートマザーは?日本で辻々に見ることができるお地蔵さんは、実は女性で、お地蔵さんの本性が女神であるということは、そのサンスクリット名、クシチ-ガルバ(Ksiti-Garbha)から知ることができる。クシチ(Ksiti)は大地、ガルバ(Garbha)は子宮(胎蔵)という意味である。つまり、「地蔵菩薩」は太地母神であり、なんと女神だった。太地母神がさまざまに、変化することはつと言われていることであるが、驚くべきことに太地母神がお地蔵さんの中に潜んでいた。
人々はむずかしい教義・教理を理解して信仰するわけではなく、病気や苦難をそくざに癒してくれることを望んだ。その点、信仰の対象は神でも仏でも菩薩でも、どちらでもよかった。ひとびとは明日の糧や、病苦の身代わりになってくださる地蔵をこよなく愛した。
この世の利益はお地蔵さまがなんといってもすごい。なにしろ、地獄の責め苦も身代わりになってくださるお方である。ある男が肋骨にひびが入って、痛くてたまらない日が続いていた。みかねた友人が、お地蔵さんのお札をもってきて、それを水で飲むように薦めた。信仰心もほとんどなかったが、男は痛みに耐えかねて半信半疑で飲んだ。すると翌朝には、うそのように痛みがすっかり消えてしまった。びっくりしたのは本人で、さっそく横浜から巣鴨のとげぬき地蔵様にお礼詣りをした。大衆に人気があるということは、このような奇跡が起こるからだ。この世に奇跡を起こすのは境界神である。境界神とは、平たく言えば、この世と、あの世を行ったり来たりできるということである。そして、さまざまなお姿でこの世に垂迹される。こうした意味において、あの世の浄土に在住される仏には、こうした現世的な奇跡をおこす力はないとされる。そこで、とりつぎをしてくれる境界神ががぜん大きな力を持っておられる。地蔵菩薩は地獄の閻魔天にもっともつぶしが効く。地蔵菩薩を信じている人は善人だとして娑婆に戻したり(延命菩薩)、たとえ地獄の裁きをしても罪を免ずると御利益がある。こういうとりなしをしてくれるという存在は、観音菩薩とカソリックにおけるマリア様などもおられる。たぶん、ディオニソスもそうした力があって、人気があったのだろう
*石神(いしがみ・しゃくじん)セックスをシンボルにした石を神体として祭った祠。良縁・安産・子育てなどの霊験をもっている。 *塞の神 障の神(さえのかみ)邪霊の侵入を防ぐ神。行路の安全を守る神。村境などに置かれ、近世にはその形から良縁・出産・夫婦円満の神ともなった。みちのかみ。道祖神。さいのかみ。(広辞苑)